北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

COMIC快楽天 2024年1月号の感想

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 表紙。メガネの反射を修正の代わりにしてて天才の発想。
kitaku2kitaku.hatenablog.com

『ギャルと友達になった』亜美寿真

 オタクに優しいギャルだ!! ……と思ったけどよく考えたらオタクではなかった(たぶん)。落ち込んでメンタルが一時的に陰キャに寄っている、という感じ。いつも暗い人ではなく珍しく暗くなってる人に対して優しくしてて、オタクに優しいよりも優しさが深いのではないか……。流行としてギャルが一大ジャンルになってからかなり経ちますが、作家によってギャル像が違うから興味深い。毎度のように「そういうのもあったか~!」と感心しちゃう。あと、プリン状態で髪を結うと黒い部分が横に一線伸びるという逆プリン(意味違うけど)みたいな状態めっちゃ可愛かったです。
 そんな主人公が落ち込む原因。バスケ部のマネージャーの着替えに出くわしてしまい、泣かせてしまったとのこと。前作『種村くるみは今日も可愛い』の出来事ですね。まさかあのエピソードから新作が派生してくるとか予想つかんでしょ……。
 落ち込む主人公とギャルの交流。2人の交流が丁寧に(劇中でも)時間をかけて描かれるんだけど、ヒロインの励ます方法が「パンツを見せる」なので一定のエロさも確保。発明である。しかも、そのパンツを介した2人のやりとり、ヒロインの好きなパンツと主人公の好きなパンツの違いがドラマとしてクライマックスに関わってくるのとか良すぎる。ヒロインが喜ぶホメ言葉の中に “ちょっとかっこいいけど” があるのには普通に感心したというか、たしかにギャルの目指すものの中にはかっこよさも含まれるのかも……と妙な納得。
 最初の頃は女子が複数の状態でパンツを見せてた(いざというとき安心だからだと思う)のが、いつの間にか主人公と2人だけの状態でも見せるようになってて、心の距離感の表現としてすごく良かった。パンツを見せる関係って相当荒唐無稽だと思うんですけど、それでも2人のやりとりはリアルだと感じてしまう。
 リアルという意味では、ギャル及び陽キャグループの怖い面(陰キャにとって)が容赦なく描かれてたのも好き。あの地獄みたいな空気、友達との間に発生するのおかしいでしょ。泣いちゃう。そして、連れ出されたヒロインがすぐにセックスのことだと思い込むのも、「普段どんな会話してたらそういう発想になるの……」と心配になって好き。
 エロパート。ギャルにリードされるセックスは最高だぜ! という定番の良さがあるんですが、ただリードされるだけではなく、常に言葉を交わしながらやりたいこと、やってほしいこと、やってあげたいことを伝えながらセックスしてるのが良い。ヒロインの優しさにも泣きそうになるし、ヒロインに対して “どうしたらいいっ…” と聞ける主人公もナイスガイすぎるのよ。リードされる系の作品の主人公として理想的な姿勢なのではないだろうか。彼も相当必死な状況だろうに。
 あとはあれですね、ヒロインに「やーの」と声をかけられ続けることで恋に落ちちゃう感じがめちゃくちゃリアルだったと思います。オタクが毎日挨拶されると好きになっちゃうのと似た現象。

『よりみち #2』えーすけ

 バイト先の喫茶店で出会った人妻バイトと不倫、の続き。続編とはいえ、2人のキャラクターや物語を掘り下げるというよりは、説明パートが不要なのでひたすらエロに徹したような続編。 “こんなことはきっとそう長く続かない” と主人公が深刻そうに独白したときは、物語が大きく動くかと思ったけど、3週間の禁欲というセックスに向けたスパイスみたいな要素であった。ひたすらセックスしてて、やっぱえーすけ先生はセックス描写がべらぼーにうめぇ……と恐れおののき続ける。
 komifloのコメント欄で本当に人妻か疑ってる人いたけど、たしかにここまで徹底してヒロインの背景が描かれないと逆に怪しくなってしまう気持ちは分かる。続編があるんだったらそこらへんも是非……と楽しみになってしまうが、実際のところはどうなんでしょうね。個人的には、そういうハッピーエンドを必ずしも望んでるわけではないし、主人公は体だけの関係だからエロ以外の面を何も知らないわけで、本作はそれを反映しただけとも思えるので、このバランスは全然アリだし、このまま終わっても納得できるんですが、そりゃあるんだったら続編読みたいし、背景も知りたくなってしまうのがファン心理なんだよなぁ……(わがまま)。
 ヒロインはセックスするときにメガネを外すんですが、エロ自撮りをするときにはその限りではない、というの個人的に本作有数のブチアゲポイントでした。あのエロ界隈ではよく見る謎の構造のセーターのショット、超良い。マジ好き。ヒロインの楽しそうな表情とそれを半分隠すように構えるスマホが芸術的。あれだけエロいのに修正が必要な箇所も乳首も一切出てないのがすごい。

陰キャ同士のセックスが一番エロいよね #2 -天野結華の場合-』どじろー

 快楽天デビュー作の続編、というか裏側。ヒロイン視点の続きではなく、ヒロイン視点で前作のセックスを丸々描くというコンセプトが意外かつ最高。2人の続き(結論)は明示されないという焦らされも好き。「#2」とタイトルにつけることで、読者に「#3」を期待させてる(よね?)のも良い。
 前作主人公というか男の方は根暗タイプだと思うんだけど、本作主人公(ヒロイン)は徹底的にこじらせた果ての陰キャという感じ。前作の段階ではそういう性格の人くらいの認識だったけど、本作でその背景が直接的ではないにせよ語られる。とにかく秀逸、最高だったのは化粧の場面。初めてのセックスに期待を膨らませてる描写として可愛い乙女心……みたいな作品だったらよくあるけど、本作では身だしなみとして女なら身につけるべきと押しつけられる社会の生きづらさみたいなものがうっすらと感じられる。それ故に子供のままでいたい彼女はその圧力によってどんどんこじれてしまったのではないか。逆に言うと、化粧という儀式であり外圧があるからこそ女子の方が男子よりも精神的に早熟なのかもしれない、みたいな説得力も感じれ、「前作主人公何にも考えてねぇな!」みたいな気持ちにもなるw(そこが好ましい) さらに化粧の場面で最高だったのは彼女自身が自分の「女の匂い」にクラクラ来てしまうところ。よく童貞が女性の匂い嗅いだだけで好きになっちゃうとかはあるけど(前作主人公もなってた)、本作ではそれを化粧由来とし、化粧をすることで女子が大人の女性へと階段を登り始める、という儀式として描いたのがすごすぎる。マジでちょっとすごすぎる場面だったし、それが前作の裏側として描かれたことの衝撃よ。前作の時点で鼻の回りのそばかす(しみ)はキャラデザとして存在してたわけだけど、それが本作では化粧と密接に関わる要素として生きてくる。おそらくだけど、化粧で隠すべき存在としてそばかすが設定されてると思う。今後彼女が化粧をスマートにこなすようになったらおそらく消えるのでしょう。キャラデザとして可愛いし、もうあれ込みで愛着があるので消えてほしくない気持ちも無責任な読者としては少し思いますけどw
 晴れて初挿入からの暴発。男性視点の前作だと「童貞あるある」みたいな微笑ましい場面だったけど、本作だと女性としての自信がまったくなかったヒロインが「こんな私でも」と自信を得るというか、ある種の呪いから解放される場面として描かれててこれまた良い……。ここで初めて彼女のこじれた心理が解きほぐされ素直な笑顔を見せるが、そのことによって男の方はガチ恋の予感を得てしまって再勃起。それ以降彼の言葉には男として女を求めるニュアンスが込められてしまい、その機微を彼女の方はビビッドに感じ取る。
 ……などなど、前作と平行して読み比べると異常なほどに楽しい。マジでとんでもなく良く出来てるのが分かる。続けて読むのではなく、横に並べて見比べる、くらいのことした方がいいですよ。作者による副音声解説を漫画の形で発表された、みたいな面白さ。逆に、本作になくて前作にある描写とかを探すのも超楽しい。例えば、最初の射精の直後にヒロインが “おめでと 卒業” と微笑みながら言う場面、前作では明確に恋に落ちる瞬間として描かれるんですが、本作では省略。彼女としては「そんなこと言ったっけ?」くらいの認識なんでしょうね。彼女の心理は晴れやかになってたので別の意味でそれどころじゃなかったわけで。すれ違いと言うと言葉は悪いけど、男女の認識の違いみたいなものまで浮かび上がってくる。ヒロイン視点で描き直しというコンセプト自体はまぁ分かるけど、その実行の精度がちょっとどうかしてるレベルで高い。

『忍者の性欲』鳥茶丸

 こちらも新刊記念の続編。新刊収録分の代表のような印象を受けますが、それも納得。やっぱ忍者可愛いよね……。若様も可愛いし、2人の関係性が超良い。ハンバーグ食べてる若様も可愛かったし、忍者が皿洗ってる絵面もおかしくて超好きw
 元気いっぱいでラブコメの雰囲気もばっちりなんだけど、続編らしく2人がエロに突入するハードルはかなり低い。やっぱこういう特別な初めてではないエロって続編の強みですよね。
 忍者らしくマスク的なもの(名前が分からない……)をしてるんですが、彼女が職務から離れたプライベートの願望として、匂いを嗅ぎたい。公私の境として象徴的だし、その後それを外してエロ本番となった際に口を大きく開ける場面が多い。単純に絵として可愛いってのもあるし、正直大好物だったんですが、普段我慢してるものがここぞとばかりに発散されてる感じがしてめっちゃ良い。彼女の気持ちの大きさであり、快感の大きさの現れだと思う。新刊のタイトルが『でっかい愛』なんですが、本作のこの口もそれとリンクするんじゃないですかね。最近は新刊発売後に発表された販促漫画は電子版の方に収録されることが多いので、本作のそのパターン……に思えたけど、それにしては16ページと普通の読切として文句なしなボリュームなんですよね。悩ましいですわ。とにかく、彼女の大きな感情表現として口を大きく開けていると、そこに快感が押し寄せてきてそのまま直で大きな声として出てしまう、みたいなクライマックスがマジ可愛くて最高でした。

『スイートチェリー・チョコレート』翁賀馬乃助

 続編、というより後編。このままメイド喫茶シリーズを延々と続けてもいいのよ……みたいな気持ちになってたんですが、本作が後編らしい内容になってて、しっかり完結した感じ。てか、正直ここまでドラマチックな方向に掘り下げられるとは予想外でした。前作がキャラクターでぶん殴ってくるような印象もあったので、そこからこんなにもエモくなるとは。前後編の構成として意外でめっちゃ面白い。
 日常パート。ルゥルゥがSNSで店の宣伝動画を撮ってるんですが、そこにコメントしてる「うまのすけ」さん、過去作でもいましたね(『デリヘル嬢~』のときのカラーページ。前編のときだったような)。思わず調べてしまったんですが、他の2人も同じメンツなので笑ってしまった。どちらでも「うまのすけ」さんが場を弁えないエロコメントしてて厄介w
 そんなルゥルゥとの日常。エロのない日常も、日常となったエロも最高……と思ってたらフェラを中断するように場面が変わって前の店の人が登場。このお預け食らう感じが不穏さと、平和な日常が他者の登場で壊される感じの演出として超良い。見た目自体は普通の人なんだけど、漠然とイヤな予感が漂ってて絶品。ぼんやりとした印象ですけど、翁賀作品はこういう場面転換が思い切りよくて鮮やかだと思う。その後エロパートに突入し、小さい畳の部屋にメイド服着たでっかい女性がいる違和感とか超好きなんですが、2人が愛の告白をして気持ちが通じ合った……とページをめくったら互いに全裸でもう始まってる。この切れ味、いつも最高ですよね。気持ちがゆっくりと高まっていって、それが頂点にまで達したら「じゃあ始めましょうか」みたいなセックスの準備段階はまるっとすっ飛ばしてスタート後の場面。漫画的な面白さがそのままエロの迫力、没入感に繋がってて最高。
 そんなエロパート。日常的にエロの関係にはなってるんだけど、前の方では今回が初めてという感慨。なぜ後ろを使ってたのかも説明された上での前。よく知ってる体のはずなのに初めての新鮮さがあって、何が今までと違うのかをじっくり堪能するような味わいになっててえっち……。初めてだけど初めてじゃないので変態チックなプレイができるのも良い。あんだけドラマチックな関係の果ての初めてで、あんな挿入中のクリ責めとか本来なら「手慣れすぎでは!?」ってなっちゃうw けど、それが本作では主人公の優しさとして説得力を感じてしまう。
 初めての緊張感が醸される正常位も良いけど、やはりルゥルゥのでっかい感じが堪能できる騎乗位も最高。騎乗位のまま徐々に体勢を変えていってフィニッシュからの密着というのも事後感として熱い。言葉を交わす余裕もなく余韻に浸ったままキスしてフェードアウト、良いよね……。

『樫井さんは食べさせたい!』雛原えみ

 体格差&年の差カップル。今号で体格差というとヒロインの方が大きい作品が多いですが、本作は逆。とはいえ、でっかい男に組み伏せられるという感じではない。それどころか精神的には(年齢的にも)ヒロインの方が上で、基本的にはどう考えてもヒロインがリードする関係。結局は好きで繋がってる2人というのが伝わってきて素敵。
 雛原作品は割といつもだと思うんですが、衣装が魅力的ですよね。単にオシャレというのもあるけど、それがしっかりキャラクター表現になってて。彼氏の方にベタ惚れな感じだけど、根底としては精神的にも自立した女性というのが伝わってくる。むしろそこが魅力なわけで。彼女の欲求に答えてくれる彼氏というので、惚れた弱みみたいな話になってもおかしくないんだけど、本作は全然違って自分の好みを完全に理解した女性が自分を喜ばせるための理想の男性を見つけて自ら声をかける、みたいな感じ。直接何かを命令するわけじゃないけど、精神的に彼女がリードしてる関係と自然と伝わってくる。衣装の話でいうと、事後に服を着る場面があるのも珍しくて嬉しかったです。
 ヒロインが自立して、自分の欲求を理解してるからこそ彼氏の方は疎外感に陥る瞬間もあって、一応今彼を上げる話ではあるもののフェラしながら元彼の話をした際に、小さくムッとし、シックスナインを始める場面とか最高に微笑ましい。でかいナリしてるのに……といういじらしさ。体格差なのでシックスナインがものすごくしづらそうで、その無理してる感じが可愛い。さらには、このクンニという性的な行為は「食べる」を直接セックスに置き換えたようなプレイになってるのも良い。当然ヒロインはそれが大好きというわけで。
 その後の本番に至っても「食べる」の話は出てきて面白いんですが、マジ秀逸だったのはエピローグ。奢られるだけだとママ活みたいでイヤだと彼氏としてホテル代を支払った彼氏にヒロインが “ごちそうさま♡” 。ラストページにこのセリフはうますぎるでしょ。しかも彼女の方から。捻れというか2人の中で円が成立するような関係性が良すぎる。

『チェンジイン!』ミャモ

 異世界に転生したら勇者とサキュバスになる。この手の転生モノに疎いので説得力皆無なんですが、この基本設定がものすごく新鮮。勇者とサキュバスが組んで雑魚狩りしてるとことかやってることのしょうもなさと2人の必死さが妙にリアルでめっちゃ好き。からの片方がサキュバス化したことで互いに発生する心理の変化が丁寧に描かれてて、「サキュバスなのに大味じゃない……!」と驚いてしまう。サキュバス化して体やビジュアルが変化する面白さもあるし、いざとなった際にサキュバスならではの魔法(?)を使ってエロを加速させてく感じも最高。
 サキュバスの衣装も好き。全体的に丸っこくて可愛い印象はあるんだけど、当然サキュバスらしいセクシーさもあって。個人的に超良かったのは名前の分からない謎の袖のみの部分(アームカバーになるのか?)。ファンタジーとかでたまに見るけど、あれがシースルーになってるのセクシーで良かったなぁ。そんな見た目とキャラクターが釣り合ってないギャップも可愛い。
 2回戦突入のくだり、奥手な子がサキュバスとしての本能に飲み込まれて……のようにも見えるけど、基本的に本作はヒロインのキャラクターは維持したままワガママを通したくなったときにサキュバスの能力を使うという感じに収まってて好き。彼女が彼女のまま、ある意味理性的に相手を求めてる感じが逆にエロいというか、この静かな暴走が派手な暴走展開よりも迫力を生んでた。もちろんイチャイチャ感としても最高。まぁ、イチャイチャ感なかったら、強制的に勃起される男の方、かなりつらいですねw

『ワンコなセフレ』ピリオドÖ

 おねショタ!! やはりおねショタはあると嬉しい。雑誌で読んでると事故的な出会いになるので喜びもひとしおである。ありがとう……。
 裏アカでデカチンを募集したらしょーたくんだった。話としては、すっかりハマってしまったあとの2人の日常を描くんですが、1ページ目の情報制限によって「あのデカチンがこの子!?」という2人の出会いの驚きを再現してくれる。2人のキャラクターと関係性を端的に紹介するオープニングとしてめっちゃうまい。セフレが子犬系(男)という意味かと思ったら……という反転も面白かったです。
 おねショタとしてはいわゆる逆転済みの関係なんですが、この逆転の度合いが極端じゃなくて絶妙。チンコを出せば当然しょーたくんが勝つことになるんですが、その後の彼の言動にはまだオドオドしたり動揺したりする幼さが残ってるので、ヒロインがリードする関係性も残ってる。なのにチンコを使い出したらヒロインが即負けてしまって、という逆転展開が新鮮に感じられる。
 さらには、プレイが進むにつれ、しょーたくんのスイッチが入っていって俺様的な側面がチラホラしてくる。これが完全に豹変とか暴走というほど極端なバランスじゃなかったのが個人的にめっちゃ良かった。彼もまだ自分自身のことを把握できてないような感じで、ヒロインは快感が大きくなりすぎてお姉さんとして振る舞う余裕がなくなっていく。終盤になるとしょーたくんが目隠れ演出になるのも効果的でしたよね。目まで見えると彼の感情が見えすぎるというか、可愛い印象が強くなりすぎてしまう。ただ、激しくして目隠れで少し闇っぽい雰囲気は出てるけど、それでも彼の必死さとか夢中になってる感じが漏れ出ていて、それがまた可愛い。

『飴ちゃんみたいに甘くねえぞ!!』オクモト悠太

 男勝りな年上幼馴染に柔道部主将がお願いする。竿役のナイスガイぶりがちょっと度を超してて魅力的だったんですが、やはりヒロインの魅力も素晴らしい。オクモト作品のこういうヒロイン超好き……。当たりは強いけど相手への信頼や尊敬もあるので何だかんだ言って優しかったり甘やかす形になっちゃうのとかマジで良い。相手のあまりの強さに即堕ちというか即負けすることになるんですが、そこらへんのラブコメっぽい味わいも最高なんですよね。初めての関係ならではの驚きや動揺、敗北感とそれをごまかす感じも微笑ましいんだけど、そこから未知の快感に徐々に染まっていく過程も魅力的。それほどデレるわけではないけどツンデレ系統の魅力も感じる。エロはがっつりあるんだけど、どことなく健全ラブコメみたいな良さが残ってる作風、強い。
 2人のやりとりが全然噛み合わず、竿役が半ば独りよがり的に攻めて終わるんだけど、不思議とイチャイチャ感はあったような気もする。本作のラブコメ感ならではのバランスだと思いますし、おそらくこれもヒロインの度量なんでしょうね。負け続けてはいるんだけど、受け入れてる余地も少し感じるというか、可哀想にはならない。

『双子はお兄ちゃんがお好き』層積

 お兄ちゃんがモテ出したので困った。学生設定ってだけで結構珍しいのに、そこに妹で双子と要素モリモリでびっくり。と思ったら後編に続く(確定と見ていいと思う)。予期せぬ焦らしですが、こんだけ魅力的にキャラ立てられたら1本で終わられても逆に困る。何なら前中後編でもいいのよ……(次が姉で最後が3人)。
 お兄ちゃん大好きな妹で、しかも双子とか過去の層積作品を考えると驚くほどに漫画チックなデフォルメ強めのキャラクターなんですが、それと比例するようにワチャワチャしてる非エロパートの楽しさ、可愛さがヤバい。漫画キャラクターとしての魅力がこれでもかと詰め込まれてて、そのテンションを維持したままエロパート突入……かと思ったら一旦中断が入って、そこから妹とのサシで本番。どちらかと言うとダウナーな妹が最初の相手ということもあり、ここでのエロシーンが急にしっとりとした雰囲気になっててそのギャップに引き込まれる。事前に「妹は経験済み」と説明されることで兄貴以上の手練れというのが確定してるのも、どうやっても勝てない実感に繋がってて最高。
 お兄ちゃんの方。双子のキャラがあまりに強いので大人しめの味付けに思えるけど、要所要所で良いお兄ちゃんとしての説得力が感じられ、「こんなお兄ちゃんそらホレるわな」となる。 “でないと俺” “良いお兄ちゃんじゃ… なくなっちまう” と葛藤しながらギンギンに勃起してるのマジで名場面だったと思います。ここで妹が “私たちにとっては” と言ってて、抜け駆けではあるけど、双子セットで襲う計画を完全に捨てたわけじゃないと分かるのも好き。優しい世界。
 モテないと思ってたけど塩顔需要のせいでモテ出した、というキャラデザの説得力も良かったです。ただ、今回個人的に一番好きだった描写は、クライマックスの断面図における、伸びたゴムの精子溜まりがピストンに振り回されてる描写。ゴムありセックス描写としてこういう新しいアプローチがあったのかと驚きましたし、単純に膣内のチンコの動き(と感触)がリアルに想像させられてものすごくエロい。
 あと、エピローグにおける妹の横からのショットも美しくて最高です。胸をまじまじと堪能する感じではないけど、横から見た曲線の美しさにはちょっと感動すらしてしまうレベル。

『春に芽吹く』背中が尻

 2号連続掲載とか頑張りすぎじゃない? とか思ったらまさかの続編。『きっと知らない』より時系列的に後ろの話ではあるけど、前作の2人の話ではなく、前作主人公の彼女(つまり知らぬうちに寝取られる側)の続き。本作では傷心中のところを以前から仲の良い隣人に慰めてもらう話。本作では「振られた」「別れた」「浮気された」としか語られないけど、全然普通の浮気とはかけ離れた実状なので心中お察しする……。いや、別れられてむしろ良かったとすら思えてしまう。そのくらい前作のあの子はヤバさの塊だから……。
 ヒロインは自分の派手な見た目が好きだけど、清純っぽい地味な女に取られたことが余計にショック。そんな見た目と内面のギャップがファッションと下着のギャップとして描かれるとか超良かったです。デザインがそのまま彼女のキャラクターの説明になってる。そして、その揺れる心理にこそ彼女の魅力。あとは、前作と対照的に至って順調にイチャイチャして終わる作品なのが2作品、それも2号連続の連作のギャップになってて良いですね。振り幅がデカすぎるのよ。
 自信喪失してるのか元々こじらせてるところがあるのかは分かりませんが、挿入時に頑なに顔を見るのを恥ずかしがってるのも可愛い。それに対して主人公が誠意を持って近づいて、そのまま対面。主人公の良い奴感、2人のイチャイチャ感、そしてヒロインに対するメンタルのケアというのが現れた名場面。
 エピローグ。ヒロインの瞬発的な軽蔑顔がめっちゃリアルなので笑った。さっきまで散々イチャイチャしてたし、今も別に嫌いになったわけではないのにw まぁ、あんだけ素直に感情表現できるようになったくらい回復したということですね。

『エロアクションリプレイ!!』おりひか

 この世界はゲームで、ゲームなので改造を介したウラ技が存在する。よく「人生はゲーム」みたいな言説は聞くけど、そこから「それならウラ技もあるはず」となる発想がすごい。……ちなみに、タイトルの元ネタは知りませんでした。komifloのコメント欄が盛り上がってるのを見て知りました。
 主人公の平凡な日常が突然 “力がほしいのか?” おじさんのウラ技によって一変する。登場から常に全裸の中年男性なので笑う。クライマックスでエロが盛り上がってくると「おじさんポイント」とかいうミニコラムで顔を出してくるのとかずるいんだよな。ギャグは面白いがエロはしっかりエロいのかと思ったらエロの最中でも挟んでくる。やめてw(最後の最後ではさすがに自重してくれるので優しい)
 以前からそうですけど、おりひか作品のヒロインの見た目めっちゃ好きなんですよね。ギャグにもエロにも違和感なくフィットする感じの可愛さでものすごく刺さる。ギャグのない純エロ作品でも、エロのない純ギャグ作品でもどっちでも成立しそうな良さがある。これは絵柄以外においてもそうだけど。物語の関係上、ヒロインがどういうキャラクターか詳細に描かれるわけではないんだけど、女性陣がそれぞれ魅力的でめっちゃ良かったです。
 オチ。SF的転換が最後にぶっ込まれて驚いたんですが、「なぜ主人公が選ばれたのか」の点にキレイに理屈が通るのでちょっと感心してしまった。ショートSFとしてめちゃくちゃ良いオチだったのではないだろうか。突然「おじさんとの別れ」とかしんみりした雰囲気になり、そっからさらに本作らしい方法で都合の良いハッピーエンドを迎えるのとか面白すぎるんですよね。ラスト1ページの怒濤の展開好きw

『秋コンプリート!』森シンリスク

 「○○の秋」をコンプリートする部活。勢い重視な設定なんですが、元気いっぱいかつちょっとだけバカなヒロインの猪突猛進ぶりが可愛い。この超陽性で、ほとんど健全ラブコメみたいな雰囲気すら漂うのは森シンリスク作品の魅力だと思う。本作だと、性欲の秋に至る前の無数の秋シリーズをどっかの健全雑誌で連載してて不思議じゃない。他の作品の感想でも書きましたが、健全ラブコメの雰囲気のある導入からの本格エロのギャップ大好きなんですよね……。マジでたまらんものがある。本作における、おっぱいどん、ブラどん! というページで一気に空気がエロ漫画のそれへと変貌した感じがあって、この気づいたらもう戻れない一線を踏み越えていたみたいな感覚が最高。
 「○○の秋」の探求という体裁があるせいで、単にセックスするようになるだけでなく、いろいろ試してみるという飛躍が容易に行われるのも良い。普通のカップルだったらどちらかが恥ずかしがってしまいそうなものだけど、本作の場合はそもそも2人は「部活のため」という体裁で自分の恥ずかしさをごまかしてるので、その体裁を守るためにどんどんエロのバリエーションが豊かになっていき、当然エロさが激しくなっていく。普通に超仲良しだし、イチャイチャしてるのでもう体裁とか必要ない関係だと思うんですが、おそらく互いに分かった上で体裁を続けようとする感じがまた良かったです。エピローグとかまさにその魅力が詰まってて素敵なエンディング。

『秘密にしてね』こやま滋

 牧くんとの秘密の関係。ヒロインに幼げな雰囲気がありつつ、同時に蠱惑的というか怪しげで危うげな雰囲気。奈落に引き込まれるような感覚で魅力的な作品なんですが、本作はすべて、完全にすべて彼女の語りによって進行する。描写として主観視点の構図に限定されるわけではないけど、それと似た味わいを生むための演出ですね……とか思ってたらラストでとんでもない事実が明かされるのでビビった。こやま先生の快楽天での前作も本作と同じようにラストページで竿役の正体が明かされてそれまでの印象が根底からひっくり返る仕掛けだったんですが、本作はその正体によって浮かび上がる2人の関係の闇が深すぎるのよ……。関係自体はエロ漫画の世界ではよく扱われるテーマだけど、そこに「普通に考えて超ヤバいし何なら頭おかしい」というマジレスを突きつけてくるというか、自然とそのように気づかされる。ヒロインにロリっぽい雰囲気があったのもそうだけど、何より序盤の会話で明かされた “マジメだと思ってた牧くんから告られたから” という点、オチを知った上だと牧くんマジでヤバい人すぎるw ヒロインが煽るけど、それに反撃されて大満足、というエロ漫画ではよく見る関係だけど、あのオチを踏まえると牧くんマジでちょっとどうかしてると思えてしまう。せめて大人しめのラブラブカップルでいてくれよ……。
 初読時、普通に読んでる限りはよほど勘の良い人でないと気づけないと思う(物的な証拠はどこにもないと思うので根拠なく勘ぐるしかない)けど、オチを知った上での2周目以降だとセリフに出てくる細かい情報の印象が一変するので超面白い。オチでビックリさせて終わりではない。先ほどの「牧くんから告白した」の件もそうですが、授業をサボってセックスしてるというのも、誤解してた関係だったら若気の至りとしてまぁ許容できるけど、牧くんがあの立場にいるんだとしたらマジでどうかしてるw あとは、 “この前のテストどうだった?” も秀逸ですよね。ここでの「テスト(の成績)」は牧くんのものを聞いてると思うじゃないですか。それがオチが分かった後だと彼女自身のものを牧くんに確認してると意味が変わる。あと、これは私の勘ぐりすぎかもしれないけど、牧くんの腕時計のデザインが言われてみれば学生にしては不自然なのかも……。

『秘め事』まきん

 大学の寮母さんは寮生から美人で評判だが実は……。事の始まりは家賃の滞納でその代わりという感じなんですが、重要なのはヒロインが “私ね 湊くんみたいな可愛い男の子大好きなの” と選り好みしてる点。好みじゃない男子が滞納してたらそのまま追い出すんでしょうね。滞納という弱みを握ったことでエロの世界へ引きずり込むんですが、エピローグでは家賃(現金)の受け取りを拒否してる始末。体裁がなくても大丈夫なくらい湊くんのことを堕としたという話なんですが、同時にヒロインにとっては家賃以上の価値があるということも意味している。今回湊くんを誘った際、手慣れてたので過去にも似たようなことをしてるんだと思うんですが、今回の彼は特別お気に入りだったということなんですかね。もしくは同じようにストックしてる寮生が同時に複数存在する可能性も怪しくなってくる。だとしたら余計怖いw
 相手が童貞だと喜んでたり、積極的にアブノーマルなプレイを始めて性癖を歪めることを目的化してるっぽいので、単に欲求不満で都合のいいチンコを求めてたってわけじゃなさそうなのもヒロインの魔性としての魅力。支配するサディズムってのもそうですが、自分好みに(もしくは自分に依存するように)育成する意図もあったんじゃないかと疑ってしまう。彼女としては滞納する子が現れるのを待つだけなので、あの寮そのものがシステムとして機能してるというか、遠回りな蟻地獄みたいな印象もある。本作を読み終わると「寮母室」という舞台が特別な意味を持つようになるのも良いですよね。寮母室に行くことということはつまり……とイコールで結ばれてしまう。ラストシーンには都市伝説みたいな不気味さがある。
 冒頭のモブ寮生が言ってたヒロインの左手の指輪について話してたんですが、今回のエロシーンの中では彼女の人妻性については特に言及されない。さすがに嘘の指輪ってことはないと思うので、あんな彼女にも普通の妻としての一面がある、ということなんでしょうね。エロ漫画の定番で考えれば旦那との関係が冷め切ってて……という感じですが、直接それが説明されたらちょっと陳腐にもなりかねないので、謎が残るくらいでちょうどよかったんだと思います。余白が想像を誘うし、その底知れなさが彼女の魅力というか、彼女の強さであり恐ろしさって感じ。

「読者コーナー」

 真空ジェシカ ガクのコラムが今回かなりの傑作。会話が苦手な人間の思考を詳細に描写してて超リアル。私もそういうタイプなのでめっちゃあるあるですし、あまりに同じ思考に陥ってるので「みんな同じようにテンパってるんだね」とちょっと安心もするw マジで「好きな映画なに?」って聞かれると考えが無限に巡ってフリーズしちゃうんですよ。こっちから「映画好きなんだよねぇ」とか言ったら好きな映画を聞かれるのは当たり前だと分かってるんですが……。いや、素直に好きな映画答えりゃいいのかもしれないけど、タイトルだけ伝えたら絶対こっちの言いたいことは伝わらないし、変な誤解をされるよな、と明確に分かるから変な気が回って「何を言えばいいんだ!?」となってしまう。どうせピンとこないだろうから、それなら簡単な説明がしやすい別の作品を挙げた方が……とか延々と。そもそも、今回のコラムも別に好きな映画は一例に過ぎないんですが、それに反応してウダウダと考え事してしまうからいけない。
forms.gle
 終わり。今号はやたら過去作の続き、それも思わぬ形の続編が多かったですね。作品世界の広げ方として、バリエーションを感じる。
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