北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

COMIC快楽天 2020年12月号の感想

快楽天 2020年 12月号
快楽天 2020年 12月号

 「無表情」「撮影」が妙に多い号だったと思います。もちろん偶然だけど、雑誌として読んでると面白いよね。
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『look like』Hamao

 無表情ヒロインものというのが1つのジャンルとして存在すると思うんですが、そういうのって基本「無表情なあの子がセックスの快感によって表情が崩れる」もしくは「無表情なのも好き(と言われてヒロイン赤面)」みたいなものが主流というか、王道だと思います。そんな中、本作はそこから一歩踏み込んでるからすごい。まず1ページ目から男主人公が “クールで素敵じゃないか!” 。ゴールではなくスタート地点。そして、肝心のヒロインがただ無表情なのではなく、あくまでも感情表現が苦手。内弁慶、緊張しい、表情硬い。セリフでも説明がありますが、本来彼女が抱いてる感情を吹き出しの中にデフォルメ絵で示してるのが最高ですよね。実に漫画的な表現であると同時に、感情の起伏が少ないのではなく感情表現が少ないだけ、と一発で分かる。こんだけ感想書いたけど、漫画だとこれでまだ2ページw テーマの掘り下げとその語り口がマジ天才的だと思いました。圧巻というか、もう既に面白い。この2人のエロ漫画というだけでワクワク。そこからさらに彼氏の「クールな子が好き」に対してヒロインが期待に応えなきゃとプレッシャーに感じてる、とまで進む。コミュニケーション論としても面白いし、無表情ヒロインのエロ漫画では定番の「セックスで表情が崩れる」という結末に感情の解放というドラマチックな要素が加わる。もう完全に面白いですよね。ここでやっと3ページなんですが、もう勝ち確。彼女の悩みを端的に示す “そもそもクールな表情って何?” という指摘も笑いつつ、逃げ道のない彼女の危機としてとても面白かったです。
 んで、エロパート。当然のようにヒロインの表情がどう崩れるのか、どのような表情を見せるのかが肝になると思うんですが、その表情をなかなか見せない。コマ枠の外に顔が見切れる、背中からのアングル、手で隠す、とあの手この手で隠してくるw もちろん全隠しで見える場面が1コマもないわけではないんですが、明らかに「隠す」コマが多い。隠されてると意識するからこそ見えたときの感動が増す寸法ですね。
 そんな見せない描写の極北としてはラストシーン。それまでの悩みを乗り越え、2人がより深く理解し合った後、 “今度はちゃんと顔見せてよ!” からのラストシーン。満面のデレ顔を……見せないんかい!! 爆笑しつつニヤニヤしましたw

『陶酔~gravity~』えーすけ

 職場の後輩に求愛され続ける。1ページ目にあるヒロインの “おいで♪” が性癖にグサァァァと刺さったんですが、そこはメインではないw 逆転的な話だとは思うんですが、一般的な逆転ものほど暴力性はない。ないが、たぶんこれは作家性だと思うんですが、エロの説得力が強すぎるのでセックスが一方的になると暴力的なまでの迫力が生じる。「寝取らせ」だった『DOLLS』にも近い雰囲気すらあったと思います。実際は普通に合意があると見ていいと思うんですが。
 逆転にも思えて、そこで使われる手法がまぁ一種の夢オチ的な転換なんですが、これがホント鮮やかでしたね。漫画がうまい。エロ漫画がうまい。実際には行われなかった男に対する前戯(フェラ)が “ってなるハズだったんだけど!?” の幻想の場面で描かれるのもエロ描写的においしいですよね。そして、幻想の中で “私も最低3回はイきたいから” と今思うとフリとしか思えないセリフを言ってるのもナイス。実際のプレイで彼女は何回イッたでしょうか、と数えたくなりますw
 「求愛」がテーマになってるんですが、それがセックスに反映される。端的に言うと、「合意」もしくは「確認」ですね。ここがかなり丁寧に描かれるんですが、それが文句なく成立してるのにも関わらず男が支配的になってるから面白い。ものすごい特徴的な場面として、挿入と射精の場面があって、そのどちらもとにかく確認が強調される。一種の言葉責めとしての確認。いつものノリで求愛しながらずるずると挿入していく場面もめちゃくちゃエロいですし、それがあるからこその射精の瞬間、絶頂を迎えると思ったら、チンコを抜くw あそこまで精細なコントロールできるとかAV男優かよ!! などと思ってしまうんですが、ヒロインが求愛に陥落する話としてこれ以上の場面はなかったと思います。
 逆転みたいな印象もある話なんですが、男側の言い分は最初から最後まで1ミリもブレてないんですよね。彼は有言実行してるだけで、その実行のレベルがどうかしてただけ。ここがとにかく面白かったです。

『好きなら…』スミヤ

 ヒゲフェチ。ただ、極端に変態的なレベルのフェチではないのかな。性に直結する描写がないまま終わったのが本作の良さなのかもしれません。ヒゲをさわさわするのが好き、というヒロイン。あまり考えたことなかったけど、絶対こういう女性いるよなぁと納得してしまいました。彼女が出来た直後にヒゲを伸ばすようになった男性がいたら、それは彼女の趣味かもしれないw
 ヒゲが好きな彼女と、小柄な彼女を抱きしめるのが好きな彼氏。この等価交換なんですが、試しにヒゲを剃ったことで物語が動き出す。ケンカというほど大事ではない、という機微が良いですね。そっから軽い冷戦状態に入り、彼氏が反省してヒゲを再開し、2人が仲良くなってエロ突入という話なんですが、要するにヒゲをさわさわするのが2人のコミュニケーションのキッカケというか、「ヒゲ触るの好きだから」というのを言い訳にしてヒロインはエロに発展するのを受け入れてたわけですよね。単にヒゲに性的興奮をしてそのままセックスに突入する話ではない。だからヒゲを失うと「黙って抱かれるのは癪だし」と断るしかない。ヒゲフェチのくだりはギャグっぽくもあるんですが、カップルの日常が変化した際の「なんか違うんだよなぁ」という感じがすごいリアルで最高でした。それでいてエロ漫画的に考えると2人がやってることは禁欲からの解禁ですよね。そりゃエロいに決まってる、という盛り上がり。
 ヒゲあてクンニはなかったんですが、クライマックスの挿入中、後ろから抱きしめながらのキスの場面でヒゲがヒロインの方にジョリジョリ当たってる描写があるのが面白かったです。これは彼女は気持ちいいに決まってる、という説得力。
 というか、ヒゲあてクンニって痛くないのだろうか。気になってきましたw

『こたえあわせ』楝蛙

 タイトルが激エモで最高ですわ。間違いなく今号のベストタイトル。最初は意味が分からないんですが、本編を読み進めるうちに「あーそういう意味……」と分かり始める。その瞬間のエモがヤバいw 2人の間には秘密があり、それが明らかになるんですが、秘密はそれだけではなく、ヒロイン単体にも秘密がある。 “みんな気持ちいいって言ってくれるんですよ…” のくだりとかマジで心が抉られるような衝撃がありました。楝蛙先生の作品には「実はものすごい経験を持った猛者だった」みたいな展開がたまにあって、そのインパクトがヤバい。闇も感じるんですが、その経験は間違いなくエロの説得力に繋がってる、というアンビバレントな感覚。よく「処女なのにこんなテクあるかよ」みたいなツッコミありますけど、その真逆を行く文句のつけようがない説得力。
 2人の関係について、当然劇中の2人は知ってるし、最初から意識してたと思うんですが、読者にその情報が明かされる順番が捻ってあるのが良いですよね。そこでタイトルの『こたえあわせ』ですよ。もう百点でしょ。比較というニュアンスが加わることで今行われるエロの気持ちよさについて自然と意識させられますよね。漫画として描かれるのは一晩のセックスなんですが、その背景に無数のセックスが潜んでいる。
 そしてラスト。『こたえあわせ』を意識させる質問がされるんですが、ここでは “やっぱ内緒でお願いします” 。最後は『こたえあわせ』をしない、という意外性であり、だからこその余韻。彼女の方から別れの挨拶をしてくる感じとか切ねぇんだよぁぁぁぁ。

『露けーしょん』森シンリスク

 幼馴染がアイドル。そして特殊な露出狂。冒頭の場面、写真や回想でヒロインが出てくるものの、劇として登場するのは男3人。それが3ページ。結構大胆な構成だと思います。このまま少年誌的な内容で物語が進行してもおかしくない感。その雰囲気をヒロインのド変態性がブチ壊す、という面白さですね。割と本作の魅力の根幹なのではないかと思います。
 それと、個人的に最も驚いたのが、コマ割り。めちゃくちゃ割るじゃないですか。それも大きなコマに小さなコマが差し込むように割って入ってくる。もちろんこれ自体が漫画史における発明と言うつもりはないですが、エロ漫画で、しかもこの手数で行うのがかなり特徴的だったと思います。映画で、とにかくカットを割ってその独特のリズム感で観客を魅了するタイプの作品があるように、本作も漫画的な快楽に満ちてたと思います。漫画を漫画たらしめる最も純粋な要素が面白い。個人的に特に圧巻だったのはフェラシーン。フェラ、半ページで終わってしまうんですよ。なんだけど、始まりから終わりまでの一連の流れが問題なく描かれててすごい。1ページの密度がすごいというか、読書カロリーがすごいw 1ページにおける情報の密度が濃いって話ですので、いち読者的にはとても贅沢な話だと思います。そんなアバンギャルドなコマ割りなんですが、ちゃんと非エロパートではコマ割りが大人しいんですよね。普通に直角のコマが常識的な数で割られる。つまり、エロの興奮によって脳味噌が高速回転してる状態、このせわしない感覚としてものすごいリアルだったと思います。

『捨てたくないモノ』鬱ノ宮うかつ

 鬱ノ宮先生、ビーストでのデビュー作がすごい迫力で、「描き文字多すぎぃぃ!!」と度肝抜かれたんですが、本作でも終盤出てきましたね。一応ビーストでの作品は「音」がテーマになってるので描き文字の密度にちゃんと物語的な意味があったんですが、本作にもちゃんと “こんな時間にそんな大きな声であえいだら…” “旦那さん不在を知る近所の人にあやしまれますよ…” というセリフがある。圧巻の描き文字がすべて音となってあの部屋の中に鳴り響いてる、という迫力ですね。
 作画密度として描き文字より先に出てくるのが、汚部屋。エロい人妻とお近づきになれて喜んでたら「やべっ……」と血の気が引く瞬間で、その主人公の感覚に説得力を持たせる汚部屋描写だったと思います。マジ圧巻でした。
 そんな汚部屋を掃除してるとエログッズが発掘される。混沌とした部屋の中から彼女の本質に関わるアイテムが現れる、というのはまさに「部屋の中=脳内」ですね。汚部屋のショックに引いてた主人公がそれでもエロの誘惑には勝てないとスイッチが変わる瞬間がまさにこのエログッズの場面でした。演出として見事です。もちろん端から見れば部屋にあがった時点で彼は詰んでるんですが、彼が自らの意思で(誘惑されたとはいえ)一歩踏み出す瞬間というのはあのエログッズ出土の瞬間だったと思います。
 汚部屋の衝撃が忘れられなくてその話ばかりしてしまうんですが、大学生がバイト先の人妻と結ばれるという話において「人妻の部屋にあがる」という部分にテーマを絞ったのは的確ですよね。彼女の家に呼ばれる、というイベント自体がものすごくエロくて、そこにこそ2人の交流の本質はある。だからこそ誘惑に抗えなかった主人公が堕ちていくドラマを描く上であの汚部屋というのが効果的だったと思います。汚部屋を否定する立場だったはずが、気づけば汚部屋と一体化してしまうような話。その魔窟感、魔性感が人妻モノの作品としてめちゃくちゃふさわしい。

『シスター×レクチャー』八尋ぽち

 カラーイラストがとにかく最高だったので万が一見逃した人は見てください。カラーイラストの段階では妖艶な印象もあったんですが、本編読むとめちゃくちゃ切ない恋愛しててそのギャップに魅了されました。いや、荒唐無稽な設定なんですよ。学園の女王の姉のために、姉の彼氏候補にクンニの練習をさせる妹、という男の願望を面白おかしく昇華したような設定なんですが、そこから急にヒロインの恋が描かれ、その恋の相手がクンニ練習の相手として現れる。ここでのヒロインの死んだ目。絶望感が漫画としてマジ最高でした。トータルで言えば本作めちゃくちゃ甘い作品なんですが、あの場面における絶望感は下手なレイプ作品にも勝ってたと思います。この感情が振り回される感じ、ホント最高ですね。このために漫画をフィクションに触れてると言っても過言ではないというか。
 相思相愛と判明してからのクンニ練習。平たく言っちゃうと無表情ヒロインの表情が崩れる系の話なんですが、この崩れる理由が本作の特徴で。テクニックとかチンコのでかさ、媚薬とかフェチなどではなく、好きな人に触られるのが一番気持ちいいに決まってる、という至極明快な理由。ものすごいベタな話にもなりかねないんですが、そこに荒唐無稽な設定が合わさることで独特の魅力が生まれてました。好きな人だから気持ちいいの説得力がハンパないし、ピュアな恋なのにやってるこプレイはものすごい変態チックという矛盾した状況が成立してしまう。
 悲恋的なシチュエーションだからこその感情の爆発。からの唐突なハッピーエンドというのもエロ読切特有の良さだと思います。第27代彼氏グッジョブw

『先輩、かわE!!!』ICHIGAIN

 ICHIGAIN先生によるセルフパロディなんじゃないかってくらいICHIGAIN印のヒロイン&ノリ&物語で最高でした。決め球の最新アップグレード版とでも言いましょうか。
 ヒロインに対する怒濤の求愛という部分においては今号の『陶酔』と被るんですが……と書いてて笑ってしまうくらい被らないw 出発点は同じなのにそれぞれ全然違う作品になってて、それが各作者の色が遺憾なく発揮された形ですね。『陶酔』があらすじからは考えられないようなダークな印象になったのは間違いなくえーすけ先生の作家性だと思うし、本作がカラッとした圧倒的に陽な印象になったのもICHIGAIN先生の作家性と思います。あのラブコメ全開かつ漫才的な掛け合いによって発生するエロというのが良いんだよなぁ。やはりICHIGAIN作品はいいぞ、と改めて感じ入った次第。作品の感想が作家の感想と直結する、と言っても問題ないのではないかってくらいの作品だったと思います。

『@ほ~むビデオ』翁賀馬乃助

 夫婦でハメ撮り。ハメ撮りとか撮影が出てくるエロ漫画って多いですけど、どれも暴力性もしくは変態性が前面に出る印象だったんですが、本作は驚くほどにピースフルでハッピーな物語展開でハメ撮りに至る。このアバン3ページの土台作りが最高でした。夫婦として幸せで、愛し合ってるからこそその証拠として、 “忘れてほしくないんです” としてハメ撮りに至る。うりゅうりゅ瞳で上目遣い!! 強い!! そんなアバンの3ページ、ギャグっぽい印象もあるんですが、ちゃんと夫婦2人(と嫁姉)のキャラクターの説明にもなってて無駄なく効果的ですよね。ヒロインのおっとりしたキャラクターがとにかく可愛いんですが、ツッコミ的な役割を担う夫も結構おっとりしてますよね。流されやすいというか。夫が主張の強いキャラだったりすると、それこそハメ撮りに変態性だったり暴力性のニュアンスが足されてしまうので、そこをセーブしたのが本作の特色であり勝因だったと思います。最終的にヒロインの方が変態性に目覚めてしまうようなオチになるんですが、夫はあくまでも付き合わされる立場。ヒロインだけでなく、竿役のキャラクター造形もしっかり計算されてこその本作の魅力だったのではないでしょうか。
 ハメ撮り。作品にするという意識が働くので、普段だったら見過ごしてたフェラに対して細かい注文を付けてみる、みたいな心理の変化が面白い。ハメ撮りだからエロい、という単純な話ではなく、ハメ撮りすることになった2人の心理の変化が細かく作用した結果、今回特別なエロさに到達する。
 撮影描写のバリエーションもちょっとどうかしてるくらいに豊富。最初は夫の視点とカメラがほぼ同一。次にヒロインがカメラを持って自撮り。ここでモニターを回転することで自分の痴態を見ながらエロにふける、という新たな要素が生まれる。あとここで漫画的にめちゃくちゃ面白かったんですが、モニターって横長じゃないですか。それを漫画のコマのように縦に並べることでヒロインの頭から腰までをひと繋ぎに映し出す。実際にカメラワーク的には上から下に向けてゆっくり舐めるように動かしたんだと思いますが、それを漫画的に配置されることで「どの部位もエロい!」という印象が強調されてたと思います。ハメ撮りに向けて張り切っちゃった心理の現れとしてヒロインがものすごいエロ下着を用意してくるのも本作の魅力なんですが、それも含めて細かい部位を丁寧に舐める(鑑賞の意味)のは効果的ですよね。
 撮影の話に戻すと、次に出てくるのがカメラをテレビに直結。4K映像を目の前にしながらのバック。よく鏡越しのセックスってありますけど、あれのカメラ版ですよね。撮られる、見られる、自らも見る、という要素が合わさった迫力の場面だったと思います。あと、漫画的には扉の場面で印象的だったビックカメラ(風)の紙袋がこの展開の前フリになってたのも見事でした。あの中に入ってたのはカメラだけではない。
 これで終わるかと思ったら、さらにもう一つギミック的な演出が加わるのも最高。テレビに映しながら、テレビ台に置かれたカメラに向かってやってたんですが、カメラが2人の手を放れることで、2人がセックスに夢中になると示す。カメラのことを忘れて耽っていると、その衝撃でカメラが落ちる。落ちるほど激しいという表現なんですが、その落ちたカメラによる文字通りの定点カメラ演出。「そう来たかぁぁ!!!」と初読時マジで声が出ましたw 翁賀先生は過去に『元カノ失格』で絶頂の衝撃でかけてたメガネが落ちる演出をやってたし、同作で定点カメラ演出を1コマの中で同時に映し出すという変則的な演出をしてたんですが、その2つをハメ撮りならでのアイディアに落とし込んで再び行った、という感じじゃないですかね。エロ描写とかキャラもいいけど、ある種ギミック的な演出もキレッキレだったと思います。

『ソルト&すいーと』さくま司

 随分前の『中村、結婚するってよ』のタイトルが全然違うのであらすじを読むまでピンとこなかったけど、覚えてる……覚えてるぞ……。
 まぁ、タイトルの感じも全然違うので前作知らなくても全然楽しめる仕様なんだとは思います。ただ、貧乳、ノーブラ、胸チラみたいな展開が最初にあるのは前作との共通点。
 シリーズ展開として面白いのは視点の変更。前回はヒロイン視点で、勘違い故に暴走してしまう様が可愛らしい作品だったんですが、今度は逆。竿から見たヒロインの姿で魅せる。要するに「危なかっしい」の視点。そこに浴衣で夏祭りという定番シチュエーションが加わってとても魅力的でした。巻頭のカラーでもその魅力はすごいんですが、浴衣で、それが脱げて見える決して巨乳ではない胸のエロさが凄まじい。前述の危なっかしさでもあるし、ストレートなエロさでもある。
 ノーブラで浴衣だから事故的に胸チラなんですが、そこでの男のリアクションが割とマジで心配しつつ怒るみたいな感じで、そこが本作の特色なんだと思います。すごい誠実。誠実すぎて「ウソだろ?」と驚いてしまったのが、挿入してからのセックス中止。ヒロインのリアクションがあまりに激しいので心配になってやめてしまう。エロ漫画でこの誠実さ! ちょっと感動しましたね。それでいて、リアリティも感じる。ちょうど本号だと『陶酔』でも射精直前にチンコ抜く場面があったんですが、あれは完全に男からの支配的な意味じゃないですかw それとは真逆。エロ漫画っていろいろあって面白いですね。そして、チンコを抜いてから丁寧に準備するためにクンニ。挿入してから中止してクンニに移る。この構成もすごい。勢いで始めちゃったけど、途中でそのことを反省してじっくりクンニするというカップルのあり方に感動しました。
 そして再び挿入してからのフィニッシュ。序盤でも言及のあった下着ネタなんですが、ここでは急に変態チックな話になるので面白い。いや、中出しを避ける意図があったんだと思いますが、結果的にものすごいフェティッシュなプレイになってて最高でした。よく考えたらそもそも衝動的にセックスを始めるきっかけになったのがあの下着だったんですよねw

『ひびきあい』トウ

 友人の妹の勉強を見てやってたら隣の部屋から友人の音が聞こえてくる。友人がクソ野郎すぎて笑ったんですが(知らなかったらしいのでセーフ?)、結局のところ主人公も妹に手を出してしまうから人のこと言えないよなぁ……みたいな後ろめたさ、ある種の共犯関係みたいなものが良かったです。まさにタイトルにあるように、あっちもやって、こっちもやる。エロ漫画として具体的に描かれるのは主人公だけなんですが、スパイスとして隣の部屋のセックスにも意味がある。
 声を出せない野外プレイみたいな緊張感もそうだし、何より隣の音によってヒロインが「当てられてしまう」という点ですよね。一線に越えることになる際のヒロインの頭に血が上ったようなポーッとしたような状態でも誘惑がめちゃくちゃエロかったです。年下ヒロインらしい魅力。
 下の名前で呼ばれたがる、というのもベタなシチュエーションながら「静かにしてなきゃ行けないのに」という状況による魅力が生まれてたと思います。内緒の関係でなきゃいけないので、そもそも何かあったことが疑われる名前の呼び方ってのはリスクが大きいと思うんですが、それでも求めてしまう、というエモですね。
 エピローグ、焦った直後に脅してくるヒロイン兄の調子の良さにちょっと笑いました。まぁ、彼としては自宅で恋人とセックスしてただけなので悪いことをしてたわけではないんだけど、主人公サイドからしたら「どれだけ気まずかったか」という話でもありますよね。
 そんなエピローグ。素直に付き合うようになる、のではない結論が意外でした。最初から好意はあるので「はよ付き合っちゃえ!」としか思えないんですが、順序が狂ったからこその言い出しづらさみたいなのが妙に生々しかったです。

『ムコ入りファンタジーあじ

 ファンタジー。そして人外。それもエルフとかではなくリザードマン。快楽天の中でどこまで行けるかチキンレースしてるようでちょっと面白かったです。イヌネコキツネみたいなモフモフ要素がないのは大きな違いですよね。シッポの形状とかかなり特徴的で気になってたんですが、いざ始まるとちゃんとそのシッポを使ったプレイが出てくるので嬉しかったです。ただ、圧力が強すぎて死ぬ、というギャグも笑いました。加減ができないのは怖いw ただ、その互いに手探りで試行錯誤してる感は初々しいカップル感として可愛らしくもありますね。チンコが使い物にならなくなるのは困りますが、多少の失敗程度なら微笑ましい。
 からの完全に合意で仕切り直し。男の方も裸になって双方向的なセックスに変化する、という展開が熱い。からのヒロインの無知属性の魅力になるのも可愛いですね。全体的にギャグのノリがあるのも明るくて良かったです。初挿入で痛いくだりもおかしくもあり、可愛くもあるんだけど、その解決方法が回復魔法ってのも「回復ってそういうものなの?」みたいな勢い重視でおかしかったです。ただ、無知で、初体験なのに気持ちいい、みたいなエロ漫画特有のお約束にはせず、そこにワンロジック挟む姿勢が個人的に好きです。この2人だからこそ初めてのセックスでも快感に浸ることができた、というのが良い。

『あまりん』おから

 剣道。コスプレの題材として決してメインストリームではないものの、良いよね。とても好き。試合で始まり全裸でのピロートークで終わる作品なので、作品全体で重装備である剣道コスを脱がしていく話でもあって、そこの魅力も強い。いきなり全裸じゃなくて段階がかなり細かいんですよね。話の進行と共に徐々に、1つずつ脱いでいく構成。ヒロインは道場の跡取りで実力も最強なんですが、そんな剣道モードの彼女が胴着を脱いでいく過程と共に彼氏に対してあまあまな姿へと変貌していく、という話。それが衣装の脱ぎと相まって効果的でしたね。面の下の手ぬぐいとか胸のサラシとかまでしっかりあるのでこだわりを感じました。ただ、サラシは外すけど上衣は脱がない描写があったりするので、厳密にリアルを追求するのではなく、ロマン重視の場面もあるバランス。全裸もいいけど(このあとなる)、脱ぎきらないのもエロい、けどおっぱいは出したい、というロマン。分かる。あの場面めっちゃ好き……。

『家庭内恋文』明石六露

 無表情かつ撮影。今号の快楽天のトレンド(偶然です)を2つも押さえててすごい。しかも無表情どころか無口と、さらにキャラが濃い。さすがに行為中にスマホで会話は無理だろう、という話なんですが、彼女の吹き出しをLINE風にするという漫画的なギミックで乗り越えてるのも面白い。このため、彼女が発言するコマでは彼女の両手を映せない(もしくはスマホを持たせる)という制約が生まれてるのも面白いです。つい探しちゃいましたw 逆に言うと、両手で顔を覆い隠す場面は喋る余裕もなくなった、という本作独自の意味が発生してますね。
 無口かつ無表情だが、スマホを通じては饒舌。感情表現も豊かで、あくまでもギミック的な設定という感じですね。そして、当然エロ漫画なので気持ちよくて顔に出ちゃう、言葉が出ちゃう、というクライマックスになり熱い。スマホ越しの発言や、その内容が完全にギャグだったんですが、そんな冗談を言う余裕もなくなる、というの良いよね。
 ヒロインが快楽に負けるんですが、そこから兄貴に一矢報いるオチがつくのも笑いました。笑ったけど、この手の撮影をテーマにしたエロ漫画だとつい撮られるのは女性だと思い込みがちですが、「別にお前のことも撮れるんやぞ」という発想の反転にはハッとさせられました。行為の最中は当然ヒロインの描写がほとんどになるんですが、そのとき竿はどんな顔をしてるのか、というのは本作に限らず忘れがちなポイントだと思いますw

『未練コンティニュー』小中えみ

 飲み会で元カノと最接近。これだとただの甘酸っぱい話になりますが、彼女がビッチというか、貞操観念低めな感じで、別れた原因は彼女の部長と浮気。気合い入ったオシャレしてる感じでもなく、ラフな格好してたのも印象的で、ギャル系のビッチとかオタサーの姫とかそういう感じではないんですよね。ガツガツはしてないけど、セックスまでのハードルが異常に低いというか。この感じがめちゃくちゃ生々しかったです。大学にいる一番エロい人、性的に奔放な人って案外こういうタイプなんだろうな……と勝手に納得してしまう説得力。
 そんな彼女に対して、気まずさ、怒り、嫌悪感を抱きつつもずるずると彼女の沼に落ちていく男側の心理というのも良かったです。彼女の他人に対する距離感のなさに翻弄され、気づけば家にあげちゃってるし、気づけばキスしてる。再会してメロメロになる、という単純な話ではなく、「ふざけやって」と怒りながらセックスを続けてしまうし、その感情によってセックスが激しくなる。この盛り上がりが最高。ただ、怒りにまかせて激しくすると、そのプレイによって彼女に気に入られる、という捻れたオチも良い。翌朝、彼女がマイペースに家を出て行くんですが、その際の彼の表情がまた良いんですよね。寝て起きたら怒りが消えていて、ここでようやくハッキリと未練が露呈する感じ。大学に向かいながら “友達の家に泊まっててさ~” と電話してるのも味わい深かったと思います。

『酔いどれ』大箕すず

 元カノかは分からないけど、『未練コンティニュー』の直後に掲載した意図を感じる。ヒロインが奔放で、主人公は彼女に思いを寄せるも裏切られるかのような形で実らない。本作だとヒロインが結婚してるというのがさらに地獄ですね。『未練コンティニュー』よりも苦みがマシマシw
 逆に興味深い共通点としては、ラストシーン。家から出て行くヒロインを見送る、という主人公の視点で物語は終わる。手に入れたいが届かない、頑張れば届くのか?? みたいな迷いの場面ですね。2作も続いてつらい……(褒めてる)。
 本作だと主人公も彼女持ちなので彼自身も罪を背負うことになるのがまた良いですね。逆に言うと、彼女と同じ罪を背負う共犯関係になるので『未練コンティニュー』よりもヒロインと近づけたとも取れる。ラストシーンもそんな感じですね。主人公側がベタボレというか、本気で彼女のことを求めるし、好意も示すので、甘さも間違いなくある。あるが、だからこそ苦さもあるw この機微が最高でした。風呂場での最後の体位、ヒロインが浴槽から半身飛び出した状態でのバックなんですが、これが彼女のことを追い求める主人公の心理の現れとしてとても象徴的だったと思います。

『垂涎Take-Out』肋骨

 かっこいいと憧れてた女上司が実は。酔って家で2人きりになったら明らかになる本性がギャップで可愛いんですが、おねショタ作品以外でここまで竿のことを溺愛するヒロインというのも珍しい気がするw ヒロインからのレイプとなってもおかしくない感じなんですが、勝手に溺愛ぶりはあくまでも小動物にするようなレベルに留まり、男女の関係になるにはちゃんと男側からの承諾を得る。ここらへんのバランスが絶妙でした。ほとんどギャグ的な勢いでスタートダッシュするんですが、要所要所で一方的ではない。甘口な匙加減をキープしてるのが見事だったと思います。おねショタではないので、男の方がしっかり大人として対応してるというか、やられるだけで終わらないってのが大事だったのかな。ちゃんと男から攻める展開にもなるけど、逆転というほど極端ではなく、あくまでも対等(に近づく)という感じだったと思います。
 ヒロインをバックで攻めることで彼女に撫でられるのを回避するんですが、いざ射精のタイミングが近づいたら顔が見たくて正常位に戻る。2人の関係性として象徴的でしたね。どの体位で2人のキャラクターを物語るか、というのはエロ漫画ならではの手法なので楽しみなので好きです。

『青春リビドー山』位置原光Z

 第21回「レッツ催眠」。先月号だったかな真空ジェシカ、ガクのコラムでも催眠がテーマだったんですが、一筋縄ではいかない本作も催眠論として秀逸。かかったフリする系の催眠作品もよくありますが、そこに謎の心理戦要素が加わったような逆転展開が笑えるし、チョロいヒロインが可愛い。いや、催眠は実際にかかった上でアレ、という解釈の余地もあるのかな。今回は2ページと短めだったんですが、このあとこの2人がどこまで加速していくのか気になる……。

「読者コーナー」


 ツイッターでのアンケート企画。前に男性優位より女性優位のが人気という結果が出たんですが、今回は女性優位からの逆転が人気。なんでや……。言ってることが真逆じゃないか。回答者の意図が気になる。
 こっちはこないだのアンケート。

forms.gle

 終わりです。次号は表紙が初登場の方なので話題になってると思います。
 総括代わりにアンケート。面白かった作品3つとしては『陶酔』『こたえあわせ』『@ほ~むビデオ』かな。あーけどあの作品も良かった……(キリない)。
 漫画としての面白さがエロ漫画としての魅力(エロさ)を支えてる、と感じることが多い号でした。
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