北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

COMIC快楽天 2023年3月号の感想

 今号の表紙めちゃくちゃ良い。立体感のような迫力に引き込まれるし、上部だけ見たら健全素敵イラストなんだけど、下部で一気にドスケベになる。
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『派遣のナカノさんは元AV女優』スミヤ

 タイトルと設定が素敵すぎる。それこそ、こういう設定のAVとかちょっとありそう。そして私がそれ好きそう。
 AVと現実の対比(ギャップ)が重要な作品なこともあり、そう簡単にエロには至らない。元AV女優の部下と出張になっても同じ部屋になんてならない。ならないが、その日常を崩すのが主人公の中に芽生えてしまった『派遣のナカノさんは元AV女優』という知識。それによる動揺と、抑えきれなかった好奇心。元AV女優であるこヒロインの方が弱い立場になりそうなもんなんですが、本作ではその冷静を保てなかったことを知られてしまった主人公の方が弱くなる。元AV女優という設定ならヒロインにリードされたい、となるのが一般的かと思うんですが(偏見)、ちゃんとそう至るように、それでいて違和感のないドラマが組み立てられてるのが最高。主人公側の弱みが露呈する話ではあるけど、ちゃんと男性としての誠意はある程度示せた体裁もあるので(示したかったが詰めが甘い)、後ろめたさもなく、気づけば「出張先で部下と……」という定番AVシチュエーションを実行することになってる矛盾が成立する。2人の交流が描かれることでエロシーンがより盛り上がるってのもあるし、単純にキャラクター的な魅力もあって好き。
 正直もうこの2人がエロに至った時点で大満足だったんですが、本作の真価はその先にあって、本番中に彼女の作品を鑑賞する。事前のお膳立ても見事なので、最初読んだとき「その手があったかぁー!!」と盛り上がってしまったw AVの中ではかなりハードめにヒロインが責められるんだけど、それを観ながら行う現実では対等な関係性での正常位。ビデオを撮影しながら、観ながらのプレイってどうしてもヒロインの被虐感を高めるイメージだったけど、本作はあくまでもギャップを楽しむものになってるのが良い。さらには、主人公がAVを観てヒロインに対する弱みを握ることになるけど、それは絡みの場面ではなく日常パートの下手な芝居。それによってヒロインがエロではない恥じらいを見せるのが可愛いし、主人公がスケベになりすぎないバランスも適切だったと思います。なりすぎるとどうしても加虐のニュアンスが強くなってしまうので。
 漫画演出的に素晴らしかったのはセックス中に2人の会話が少なくなるんだけど、代わりにAVの中のセリフが重なり、現実の2人を代弁してるようになる場面。AVの内容を再現することに主眼を置いたプレイではないんだけど、セリフが重なってしまう、というオモシロであり、ギャップが際立つ魅力。そして、フィニッシュの直前に2人が最小限の会話を再開し、そこで初めてAVから独立したセックスに至っていく、というクライマックスに向けた盛り上がりも最高でした。

『さむくならないように』肉棒魔羅ノ進

 回想から始まり、一気に現代へジャンプする冒頭の演出がオシャレなんですが、ちゃんとその冒頭の回想シーンが物語的に超重要で、クライマックスのドラマが一番盛り上がるところで再び生きてくる。厳密には回想ではなくヒロインが長年見る悪夢だったのかもしれない、という感じですかね。
 ドラマによってエモを積み重ねていくにも良かったし、異性の認識が少ない友達を女性と意識するようになる変化、ギャップの魅力も最高。その象徴として大きく変化した胸が出てくるんですが、その胸描写として二段階の「脱ぎ」があったのも超助かる。あの脱いだ瞬間の解放される感じ、めちゃくちゃ良いよね……。
 当然のようにその胸を堪能するようなプレイ内容になるんですが、おっぱいを触って満足するのはエロパートの前半。後半は主人公が触るのが胸ではなく相手の手になって……とここで再びドラマが描かれエモが爆発する。ヒロイン側の感動もあるけど、主人公の後悔とそれを払拭するかのような気持ちの発露がドラマとして良いし、その盛り上がり感がやはりエロい。

『プライドプラウド』Hamao

 営業成績でライバル関係の同期と。表紙イラストの巨乳っぷりも衝撃的なんですが、それ以前にキャラクターがめちゃくちゃ良い。ヒロイン単体としてもいろんな表情や感情を見せて可愛いし、主人公との関係性としても魅力的。その良さの盛り上がりのピークとしてエロがあるので超盛り上がる。さらには、一夜を共にした後のエピローグで2人が再びライバル関係に戻ったのも好き。恋人になったからもう競わない、ではなく。そもそも対抗心を持って接してくれたのが主人公の善人性でもあるので、仲良くなって競うのやめました、だとちょっと違いますよね。
 私は女性のスーツ姿好きなので、そういう意味でも大好物だったんですが、シャツを開いて胸が「ばるんっ」の場面の迫力とかすごかったですね。でかすぎて外向きに広がっちゃう感じとか。まず胸だけ脱いで胸を愛撫、そしたら一旦落ち着いて2人が黙々と服を脱いで……という行程も良かった。我慢できずに始めちゃう勢いも欲しいが、セックスを確信した状態で期待しつつ冷静さを取り繕いつつ服を脱ぐ感じもリアルで超エロい。それぞれが1人で脱いでるのがこの場合は最高なんですよね。脱がす良さもあるけど、互いが目の前にいる状態でそれぞれ脱ぐ緊張感と期待感。


 衝撃的だったのが、ツイッターで追加シーンが公開されてた点。完璧主義なのかサービス精神なのか分かりませんが、働きすぎでは……。ありがてぇ……。

『間違って送ってしまいました。』石見やそや

 ゼロスのめちゃシコ作家が快楽天本誌デビュー。こないだのゼロスではまさかのスチームパンクやってて驚いたんですが、今回は同じマンション内でのエロ自撮りAirDropを介した交流。めちゃくちゃ面白い設定でのっけから引き込まれる。壁ドンとか、ゲームの無線通信とかで隣人との交流が始まる作品は読んだことありましたが、まさかAirDropとは……。顔(どころか裸)が割れてるのに匿名性があり、同じ建物の中からお宝を見つけだすみたいなワクワク感があって最高の設定では。出会えた際の高揚感がすごいのよ。ただ、その前に “完全にやってることストーカーじゃねぇかッ” と我に返る瞬間があるのも超リアルで好き。綿密な計画を立ててちょっと悦に浸りながら実行するんだけど、待ち時間が長くて冷静になっちゃう感じ、超あるあるでしょw
 エロ自撮りの様は明かされてるのに、「おどおど系地味ビッチ女」が出てきた際の意外性と、予想外の方向の魅力。漫画的には正直「これはこれで超可愛い」ってバランスじゃないですか。ここも絶妙だったし、表情や言動も含めて彼女のキャラクターが一気に生々しくなっていって最高でした。
 出会うまでは細かい展開や作戦があるんですが、出会ってからは怒濤の勢いでエロに突き進む。動物的とも言える雰囲気にガラッと変わって迫力あるんですが、その間になぜ主人公は気に入られたのか、なぜ2人の交流は始まったのか、の部分が説明されて、そのロジックがまた素晴らしい。オモシロ設定と怒濤の勢いで進む作品かと思ったら「あれ伏線だったのかよ!」という驚きがあるし、最終的にはタイトルの意味に気づいてぶったまげる。読み終わったら即座に1ページ目を見返してしまいました。そもそもタイトルの出方も良かったんだよなぁ。隙がない……。

『レスポンス ~after~』トウ

 単行本発売記念で代表作の後日談ショート。コミュニケーション不全でセックスレスだった夫婦が(夫の独断で)ポリネシアンセックスに至る、のが『レスポンス』本編。元々夫婦で、問題も解決してしまったのでイチャイチャな日常を描くのかと思ったら、ちゃんと『レスポンス』らしいコミュニケーション不全が描かれてる。ディスコミュニケーションなんだけど、暴力的ではない(たぶん)、というバランスが相変わらず絶妙でした。何をするかと言うと子作りなんですが、これがポリネシアンセックス以上に「勝手に始めんなよ」感があって、それでいて仲良くなった今だからこそ成立する話でもあって最高。続編らしいパワーアップ感もたしかにあるんだけど、元の作品のテーマ性みたいなものはブレない。目的は子作りなので、夫はすべて中出しに向かって動いているのに対し、ヒロインはイキまくってるのに追撃が止まらないサスペンスみたいなものになっててエロの盛り上がりがすごいし、それこそが『レスポンス』らしい。最終的に超可愛いオチがつくし、微笑ましいんだけど、同時に「ちゃんと話せよ」とツッコみたくなるw

『わたくし☆大暴走』オクモト悠太

 お嬢様が暴走する話。コミカルで元気いっぱいなキャラクターがオクモト作品にめちゃくちゃハマってて本当に可愛い。お嬢様キャラに向いてる作家とそうでない作家って違いありそうですね。本作は最高にハマってる。独り相撲的に勝手に舞い上がってる様子とか魅力的だし、感情が全方向に極端なので表情がコロコロ変わってて動物的な可愛さもある。それでいてエロ趣味の持ち主なのですべての行動がエロに向かって一直線で話が早いw 主人公の人畜無害な振り回されってぷりがヒロインのキャラクターを引き立てて、それも素晴らしかったですね。あと、回想のコマで前作ヒロインがいるのもファン的に嬉しいポイント。
 お上品さとドスケベ性という矛盾を抱えたキャラクターなんだけど、それが奇跡的なバランスで成立してたのも好き。本物のおちんぽ様とご対面した際の大ゴマの触り方とかめちゃくちゃ積極的なんだけど、どこか慎ましくもあって独特の魅力が生まれてるんですよね。あと、普通に優しくて良い人なのも育ちの良さが感じられるところだったのかな。エロすぎて言動はおかしいんだけど、2人のコミュニケーションは意外とスムーズというか、ヒロインの一方的な攻めなんだけど、攻撃性みたいな印象はあまりない。これはプレイ内容とか体位による印象も大きいのかしら。

『ばいぶれーしょん』もず

 カラーイラストも1枚あって、ビフォーアフターが描かれてるんですが、服装の大きめのシルエットと、その中の凹凸のありすぎる裸体のギャップが強烈でした。漫画らしい可愛らしさと、エロ漫画らしい生々しい迫力。
 飲み会で泥酔した後輩を送るはずが、おしっこがヤバいので自宅に招く。まぁ、エロ漫画なのでね、「おしっこ」という話題が出た時点で「まさか……?」とは思うんですよ。予感であり期待。実際そうなったんですが、その場面の描写であり流れの盛り上がりが最高。それまではコミカルな雰囲気が強めだったんですが、この決壊の場面で一気にその場の空気がエロへと変わる。あと、男性が電マを当てて女性がおしっこを漏らすって場面、どう考えても男性の攻撃性が表に出ると思うんですが、本作だと彼は自分のベッドの上で感情に流されてやっちゃってるので自業自得感も同じくらい強いというか、ベッドの被害がすごいw 分かれたあと、家で独りでいる時の虚無感とか後悔すごそう。いや、この状況を思い出してエロい気持ちが勝るのか?
 コミカルな雰囲気とのギャップが本作の魅力だと思うんですが、それは挿入の場面でもそう。おしっこからの挿入の間の流れ、この場面が本作の中で最も2人が冷静になって本音で語り合ってるんですよね。あんだけ元気いっぱいで楽しい雰囲気だったのに、ここで急に静かになって黙々とセックスの準備をしてるのがめちゃくちゃエロい。普段からこういうことをしてるカップルの日常みたいな落ち着きと滑らかさ。
 そこから一発目までは静かにイチャイチャしてるんですが、その後再び元気にふざけ合うような関係に戻ってもう一回。ここでまた電マが出てきて、つまり……とカウントダウンが始まるので笑った。エロ的にめちゃくちゃ盛り上がる良い場面なんだけど、 “俺もろとも自爆する気か…!?” の言い回しが面白すぎるw 完全にギャグっぽいんだけど、比喩とかではなくマジでそのまんまの意味なのが最高。

『でぃすこみゅ』おから

 生徒指導室や保健室で生徒と。真面目先生と奔放ヒロインのギャップのある関係性が魅力なんですが、ヒロインのキャラデザの圧倒的王道感。キャラデザ的に尖った個性があるわけではないが、逆に良さしかない、みたいなストレート。あとはやっぱ、おから作品におけるヒロインの悪戯っぽい笑み、めちゃくちゃ良いよね……。本作のヒロインは小悪魔というよりマジで悪魔的に煽ってきたりもして、だからこそ主人公がマジギレするんですが、それでも魅了されてしまう顔であり、表情の良さ。最終的にただの悪魔ではなくて……と一捻り入れてくるのも可愛い。いや、可愛いが、先生的にはどんどんヤバい方に転がり落ちてるのは事実なので恐ろしくもある。そんな、どっちとも取れる(どっちでもある)エピローグもすごく良かったです。「なーんだ 先生大好きじゃん」とか安心もするんだけど、ヤバい子なのは変わらないw
 学校での秘密の関係ということもあって、着衣でのプレイが多くて個人的にありがたいんですが、フェラだけから始まって、保健室での本番と盛り上がるに連れて脱ぎの度合いが徐々に変化してるのもすごい見応えありました。ボタンを一つも外さないまま、パンツだけ脱がして挿入に至るのとか最高でしたよね。そっから盛り上がるにつれて脱ぐことになるんだけど、スカートとリボンだけは残してるのも良かったし、体位でもそれを強調してるようで素晴らしかったです。

『ハニ~・プロセス』層積

 働いてる喫茶店のマスターの孫が可愛い。めっちゃ良かった。優勝。層積先生の女性視点モノは過去にあったのも好きだったんですが、今回は年の差であり、元おねショタという要素が加わってより大好物。ケイちゃんの可愛さにヒロインが悶えてる様子もコミカルで魅力的だし、そっからすぐに冷静になって、結局理性が決壊するのも情緒が忙しくて最高。セックスが始まる場面の緊張感と、じっくりだけど確実に距離が詰まってく感じとかマジで絶品だったんですが、ヒロインの感情表現が極端すぎるくだりも可愛いんですよね。エロパートの彼女の盛り上がりも素晴らしかったし、エピローグで賢者モードのように大人しくなっちゃうのも愛おしい。あれだけのことやっておいて、あんなにしっとりしちゃうギャップが良い。
 そんなヒロインを狂わせたという意味でも重要だった竿役のケイちゃん。彼の優等生的な可愛さ表現も押しつけがましくないけど、めっちゃ的確で良かった。各登場シーンの元気いっぱいな感じが、アラサー女オタクにとって眩しく見える、という感覚の説得力がすごいw なのに、2人きりになるとドキドキモジモジする感じも可愛いし、その攻めきれない感じが逆にヒロインの理性をぶっ壊す引き金になるw 2回出したのにヒロインのおっぱいを見て即勃起しちゃう感じがおかしくもあり、エロい場面でした。彼に求められてるという事実がヒロインを暴走させてしまう、という構図が良い。おっぱい露出の場面の、重なった服を一気に脱いで勢いでおっぱい出ちゃう感じもリアルで迫力あったと思います。あの服の多層性の表現とか結構珍しいんじゃないですかね。

『おふとんのせい』mogg

 冬の朝、起きれないのは布団のせいであり、布団の精のせい。タイトルである「おふとんの精」というアイディアが出た時点でもう勝ちというか、読切作品としてももう面白い。布団から出られない怠惰とか堕落の心理はエロとかなり近いから相性が良いというか、多くの部分で代替可能な気がする。誘惑に流されてしまう心理がリアルに感じられるし、それこそ読者の多くが毎朝感じてる心理そのものなのではないか。マジで起きれないですからね。布団が気持ちよすぎるのよ。
 そんな布団の精。全裸の女性が布団の中にいるだけなんですが、彼女が被ってる布団がちょうど頭巾のようにデザインされてて、雪の精ならぬ布団の精っぽい印象がちゃんとある。このデザインも素晴らしかったし、実際に彼女とエロに至る際、その布団をどう使うのか、のアイディアも豊富。一緒に布団に入るのはまぁ分かりやすいですが、クライマックスの挿入の場面、 “カモーン” のコマでの布団から下半身だけ出して誘惑してくるヒロインの絵面がとにかく新鮮。彼女のぐうたらさも良く出てるし、何より「後は入れるだけ」というお膳立て感。これには流されてしまうという説得力を感じる。

『大好き南雲くん』いだ天ふにすけ

 1ページ目から乙女感(を通り越したおとぎ話感)が炸裂してて驚きました。その後のストーリーもかなり順当に純愛で、読みながら「マジか」と声が出そうになるレベル。いだ天ふにすけ先生の作品でここまでの振り幅を見せられるとは……。実際にストーリーは最後まで純愛で、純度100%のハッピーエンド。なんですが、エロパートにおける2人の愛が深すぎて、若干のドロドロ感あって、その強すぎる気持ちが漏れなくエロに反映されてて、紛れもないエロ漫画。完璧王子様に思えた南雲くんが徐々に執着心を露わにしてて、端から見て「これはヤバいんじゃないか!?」とハラハラするんですが、ヒロインの方も良い意味でお似合いというか、彼女は彼女でちょっと危うさも感じさせるレベル。それが2人の間では何の問題もなく成立してるという関係性。再現性というか、代替性一切ない関係という意味ではまさに運命の相手と言えそう。
 エピローグが激甘なのも最高だったんですが、肝心の南雲くんが婿入りしてるのが意外であり、めちゃくちゃ良い。タイトルでもある南雲くんが南雲くんでなくなってしまうオチなんですが。彼女の中ではいつまでも南雲くんであり、それがまさにBIG LOVE……。てか、エロパートから察するに男性側がかなり支配的な雰囲気だったのに、結婚の際には婿入りするという意外性。そんなの関係ないって話でもあるし、南雲くん側の気持ちの強さも感じられる結末だったようにも思います。

『りぷれい』fu-ta

 快楽天初登場とはいえ、お馴染み感のすごいfu-ta先生。
 レンタルビデオを借りながら元カノのことを思い出してたらばったり再会。ソフトのジャケとかがぼんやりと描かれるんですが、たぶん『アダムスファミリー』ですね。最近娘のドラマを観てたので妙にタイムリーでテンション上がってしまった。前号の快楽天でもレンタルビデオ(店)を扱った作品ありましたけど、サブスク全盛の時代だからこそレンタルビデオには独特のエモみを生む効果があるんでしょうね。ノスタルジーでもあるし、古いもの、古いルーティンにしがみついてる情けない自分に自覚的、みたいな部分が本作のドラマとしてすごい好きでした。
 男性主人公は割とウジウジ考え込むタイプなんだけど、再会してからは彼女の方からサクサクと事が進む。エロ漫画として順調すぎる流れなんだけど、それをバカになって喜べない主人公のちょっと一線引いた冷静な感じが魅力的でしたし、エロが進むにつれてそんなことを考える余裕がないほどに没頭していく感じも絶品。
 カップル時代のルーティンとして映画を観てる最中に始まってしまう。ビデオを再生しながらのエロ、というのは奇しくも今号の『派遣のナカノさんは元AV女優』でもあった仕掛けですね。あちらはAVなのでエロとして分かりやすいけど、本作は『アダムスファミリー』。「それどころじゃなくなってしまう」引き立て役としての映画。それだけでも十分面白かったんですが、「もう一度映画再生していいか?」という盛り上がりにもなってくるので面白かった。そもそも元カップルの話なので古い映画を「再生する」ということにまた意味が生じていて感動的。

『あねおとうと』江口ジョーズ

 隣人で片親同士で仲良くなった少年とお姉さん。大人になるとその親同士が結婚して……。正直冒頭の場面が極上のおねショタすぎて大興奮だったんですが、それはプロローグに過ぎなくて、タイトルが出て場面が変わると大人になった2人が同じ部屋にいる。まだ4ページの出来事なんですが、これだけでめちゃくちゃエモーションが高まるというか、2人のドラマが積み重なってるのが感じられる。ひょっとしたら「元おねショタ」にしたのはガチショタ描写を避ける意図があったのかもしれませんが、むしろ短時間でドラマが濃くなって、さらにはおねショタ時代の無垢さを想起させられるので一挙両得と言えるんじゃないですかね。今号だと『ハニ~・プロセス』も元おねショタの関係なんですが、本作はより丁寧に子供時代が描かれるのでそういうドラマが濃いし、何より子供時代の2人(特に男性主人公)の可愛さがヤバいw 怖がってる少年に背伸びさせてあげる、というヒロインの圧倒的な優しさも熱い。
 男性主人公の視点というのもあるんですが、子供時代も現代もヒロインは変わらず「お姉さん」なわけで、大きな変貌を遂げたのは主人公の方。このアンバランスさも2人のもどかしくも甘々な関係性としての魅力を引き立てる。何度も比較に出して申し訳ないんですが、『ハニ~・プロセス』だと完全にヒロイン主導だったんですが、本作では男性主人公が頑張って近づき、それをヒロインが圧巻の包容力で包み込む、という構造。子供時代の雷のエピソードが象徴的で、この関係性が大人になっても継続し、それがエロで再現するようになっている、というのが良い。ひたすらに良い。これだけ大満足なお姉さんヒロインの作品が複数あって私はもう大満足ですよ。感謝しかねぇ……。

『噂話のウソ?ホント?』ももこ

 卯年一発目の快楽天にももこ先生がいるのはもはや縁起物……と思ったら舞台がすべて学校でなかなかウサギが出てこないのでハラハラしましたw やや強引にぶっ込まれることで逆にウサギの存在感、ありがたみが増す。
 話としては、先生と教え子が秘密の関係。それ自体も最高なんですが、その秘密という要素を強調するかのように描かれる女子高生たち(非エロ)の日常パートが生々しくて、その合間に描かれる、平然とエロに至ってる2人の非日常性がめちゃくちゃエロい。快楽天での兎女チア部のシリーズでもあの女子校感(女子グループ感)の生々しさが魅力的に描かれてたけど、本作ではそれがより直接的にエロを引き立てる存在になっている。当たり前のようにちんこの話をしてるし、主人公である先生のことをナメてる(けど間違いなく親しみもある)感じとかマジ最高なんですよね。その子たちを直接どうするわけではなく、その子たちを背景に、というのが良い。よく学校でこっそりやってたら廊下に人が来てドキドキ、みたいなのあるし、本作にもあるんですが、一般生徒のリアリティがすごいからその定番シチュの魅力が爆発的に上がるし、一般生徒の駄話とエロのギャップが最高。駄話してる子よりも大人しくて真面目そうな子なのに……というヒロインの魅力もそうですね。ただイチャイチャするのではなく、お仕置きプレイ的にハードめに盛り上がっていくのにもドキドキしたんだけど、エピローグでのヒロインがあっけらかんとしてて「女子つえぇ~」と怖くなってしまう感覚も最高。これも兎女チア部シリーズであった要素だけど、それがより直接的になってますね。
 ももこ先生の作品ってエロ描写がねちっこいというか、静かだけど確実に快感を積み重ねていくような雰囲気がめちゃくちゃエロいんですが、それが本作だと秘密の関係という話にマッチしてて魅力が倍増してたと思います。合意ではあるがインモラルな雰囲気というのがまた良い。静かに始まり、静かに盛り上がっていくんだけど、「そんなとこまで行っちゃうの?」と驚かされる。徐々に明らかになっていくのが不気味でもあり、その迫力がエロさを引き立てる。

トランスレーター』アシオミマサト

 猫語翻訳AIが人のことも翻訳するようになってしまう。心の内や性的興奮が筒抜けになることでその場にいる男女がどんどんエロい関係へと進展していく。AIがかなり中心にいる話なんだけど、それに振り回される2人がエロ漫画的には主役。今号の『派遣のナカノさんは元AV女優』は出演AVを流しながらセックスすることでAV内のセリフが心の声のように機能するんですが、これはあくまでも漫画的な演出。一方本作は劇中でAIが喋りまくるので実際に相手にバレてしまう。この恥ずかしさがおかしくも可愛いし、それによって「セックス不可避」というシチュエーションが作られ、開始語もどんどん互いの本能のままにエスカレートしてしまう面白さがある。AIが一つのキャラクターのようにも感じられて、それ自体が魅力的でもあるし、目立つけど2人のセックスを邪魔にはならない触媒として機能してる。AIのちょっと無機質な心の声の実況が独特の味わいが生んでてギャグっぽくもあり、ちゃんと正統派のエロさもあってすごい。
 すべて筒抜けなので、基本的には攻めに出た方が被害は少ない。心の声を実況されて困るのは基本的に受けの側なので。AIに背中を押された後輩くんがガンガン攻めて、ヒロインが負け、さらにはその状況をAIに実況されて二重に負けるw まぁ、男の場合はチンコが勃起したら興奮してるのはバレてしまうので、AIに実況されて困るのは女性なのかもしれませんね。こうして考えると、チンコの勃起と射精というシステムはあまりに明け透けですねw

『イリイラレ』untsuku

 ゼロスで活躍中のuntsuku先生が本誌初登場。ゼロスでの作品ではピアスとかスプリットタンを扱ってたんですが、本作はタトゥー。しかもタトゥーショップが舞台で入れる瞬間も描かれる。さらには物語的なトリックとしてタトゥーが組み込まれててめちゃくちゃ面白いですね。「タトゥー入った体って良いよね」という単純な魅力もありつつ、タトゥーありきの話になってるのが良い。必然性のあるタトゥー。
 ゼロスでの2作はどちらもざっくりと括ると「ヤバい女性に捕まる」みたいな感じなんですが、本作は毛色が違って完全にロマンス。男性主人公は超ロマンチックだし、ヒロインは驚くほどに乙女。恋愛ものとしてのストレートさ、純度としては本号の中でも屈指というか、普通にトップと言えるんじゃないかしら。タトゥーだらけで最初は「超かっこいい!」という印象だったヒロインが突然もじもじし出すギャップの破壊力とかヤバかったですね。個人的には初登場(実は違う)時のマスクを外しながらクスクス笑うコマが素敵すぎて刺さったんですが、そこからの乙女全開な展開に驚きつつ、魅了されました。かっこいい初登場を遂げたキャラがあんなに「目にハート」が似合うキャラへと振り切れるのが最高でした。
 あと、タバコの吸う姿も仕草として魅力的。単純に画として決まってるというのもあるし、過去ではタバコを吸う男性主人公に対してヒロインが水をぶっかけて別れることになる。ところが、現在では2人並んでタバコを吸うようになっていて……という火と水の対比で2人のビフォーアフターを象徴的に描いてるのとかめっちゃ劇的。オシャレ演出だったと思います。ラストカットがタバコのアップで、2人の関係が再燃した、という感じで趣深い。あとはヒロインの噛みグセというのも相手に跡を残す行為ということでタトゥーと連なりそうですね。そういう意味ではタトゥーショップこそ天職だったと言えるのかもしれない。
forms.gle
 終わり。今月はゼロス組の参加が多かったですね。前号が特大号だったので、そのしわ寄せでしょうか。ただ、ゼロスもまた特大号だったことを考えると……混乱してくる。てか、どっちにも載せてる先生とかいて大変なことになってる。
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