北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

COMIC快楽天 2023年2月号の感想

 あけ、おめこ、とよろ。
kitaku2kitaku.hatenablog.com

『にわとり恋模様』玉ぼん

 年末の特別号の巻頭が玉ぼん先生! これは熱い。たしかに勢いがすごいのは感じる。特に前回のはすごかった。好き……。
 ギャルとオタクという定番のジャンルではあるんですが、オタク側のキャラクターが微妙に定番からずれてて、そこが独自性。ラノベ好きでオタクという側面もあるんだろうけど、基本的にはクラスのさえない低身長メガネくん、という感じ。さらにはヒロインのギャルに日常的に絡まれてて、それがクラスの中でお馴染みになってる。最初からオタクくんに悪い要素は一つもないし、2人の仲良しぶりも微笑ましさしかない。そして、周囲からそういう風に見られてるのを2人(特にヒロイン)は自覚してるので、それを内面化してるフシもある。だからこそ周囲の目から隔離されたシチュエーションになると途端に普段の顔が保てなくなって……という展開が良い。ギャルがツンデレで甘々な話になるって部分だけ見ると定番なんだけど、クラスの雰囲気込みでのキャラクターの魅力が本作を特別なものにしている。ギャルの友達が妙にキャラ立ってて良いんですよね。粗雑でギャルバイブスあるんだけど、一応応援はしてくれてるらしい、という距離感。 “あたしはゴリラじゃない…!!” のくだりはマジで笑った。最初意味不明なんだけど、理由が分かるとヒロインの本音が露わになって可愛いし、ギャル友の言い分が酷すぎるのでやっぱり笑う。
 冒頭の着衣のシーンからヒロインの丸みのあるシルエットが超可愛かったんですが、脱いだらまたすごいのでビックリしちゃった。男性側が小柄なのでそれとの対比ってのもあるだろうけど、とにかく肉感がすげぇ。服を前開きにして脱いでることもあって飛び出してくるような迫力。胸、脚、お尻、とそれぞれにフォーカスするようなコマもあって大充実でしたね。あとは主人公が掴むお腹の描写も良かったです。たまに魅力的な作品に出会うと思い出すんですが、お腹、好きなんだよなぁ……。
 ヒロインが主人公のことを好きになった経緯が回想で明かされるんだけど、それと同時にキスシーンを描く演出も最高でした。主人公は何も分からないけど、ヒロインはあの思い出を胸に今キスしてるし、セックスしてる、というエモーションが高まりまくる。

『Beautiful girl』ホムンクルス

 そ、そんな直球なタイトルあるのか……と最初ビックリしたんですが、読んでみたらマジでそういう話なのでまたビックリしましたw 絵として「顔が良い!」という説得力があるのはもちろんなんですが、美人すぎることによる苦労がドラマとして描かれる。直前の『にわとり恋模様』でもギャルであることによる偏見が悲劇として描かれてたけど、本作はよりメインテーマにした感じ。しかも自らなるギャルと違って、単に美少女だっただけというのがより悲劇的ですね。
 社会性に乏しいヒロインが、ネクラでクラスに居場所がなかった主人公と腐れ縁になり……という土台となる回想のくだりがもう既に良い。ここだけ抽出して読切にしてもらっても全然かまわないレベル。本来なら関わることのない2人がひょんなことから……というドラマとしてめちゃくちゃ魅力的。
 そんな腐れ縁感のあるやりとりを現在でも続けながら、徐々に近づいていく助走パートも激アツ。ヒロインが一方的に思いを募らせて行動してるのかと思いきや、主人公側も思いが決壊するかのように前のめりになるのがドラマチック。二度目の回想シーンを挟むと、それまでは完全に受けだった主人公が上になってて挿入直前、という飛躍も最高でした。いきなり全裸になってるのも良いし、主人公のメガネが消失してるのも彼の雰囲気が一変してて良い。
 エピローグでも長年の付き合いを感じさせるやり取りが微笑ましいんですが、ここでヒロインが好きであることを恥ずかしげもなく表現してくる感じも最高でしたね。最初に抱いてたクールな印象からのギャップがすごい。

『つまみぐい』えーすけ

 彼女持ちの後輩と寝てしまった。一夜の過ちとはいえ、快感を忘れられずにずるずると行ってしまう話なんですが、後輩のクズっぷりがちょっと想像以上。すべてを分かった上で二度目の誘いを入れてくる感じとか怖いし手強いしで最高。徹底的なまでのクズなんだけど、独りよがりなセックスをするわけではなく、むしろプレイ内容は奉仕的とすら言える。相手を快感で堕とすことを目的化してるというか、そうすれば上位に立てるし、それが何かと役に立つともくろんでる。超怖いし、超イヤな奴なんだけど、なのに……という面白さ。相手を気持ちよくさせるセックスと、自分が気持ちよくなることだけを考えるセックスが両方あるんですよね。そのスイッチをヒロインが明確に気づくという機微も良いし、男が独りよがりになると “ちょっとうれしい…” となるのが捻れてて面白い。
 正直勝てる気が1ミリもしないんですが、ヒロインの方もなかなか頑張るので、エロシーン全体がちょっとした対決の様相。まぁ、全面的にヒロインは負けるんだけど、竿が彼女と電話してるときに主導権を握る。そのターンだけは勝ったと言えるんだけど、同時に彼女が積極的に相手を求めてるとも言える。
 最後にナマでやるんですが、ここで少しだけ竿視点が入る。終始彼が支配する話ではあるんだけど、あまりの相性の良さに彼の方も実はちょっと必死になる瞬間があった、と分かるのが良い。彼の人間性に触れるような場面でもあるんだけど、やってることは勝手にナマで中出しなのでクズ中のクズw

『アマイアイマイ アフター』ごさいじ

 単行本発売記念の後日談。プールでの水着デート。メインで着るのはエロ水着だし、エピローグでは普通の水着で超可愛いし、冒頭の場面では主人公の妄想でさらに3種類の水着と盛り沢山すぎる。「2人のその後が見れればもう満足だから……」とか思ってたら予想外のボリュームに驚きました。8ページとはいえがっつりエロシーンが充実してるし、2人のキャラは立ちつつも苦難を乗り越えたあとの穏やかさも感じられ、さらには本作の象徴とも言える、ヒロインが(一見)無表情のままこちらを見つめてくるショットもしっかりあって大満足。
 あとは、ヒロインの女友達の緩すぎるデフォルメがまた別の可愛さですごい好き。メインの2人のデフォルメも可愛いんだけど、盛り上がりすぎてるあの友人たちのノリが最高なのよ。デートやんけ!!

『魅悪ちる先生の暴走』雲呑めお

 地雷系ファッションのエロ漫画家とイケメン編集。2人のキャラクターが超良い。地雷系の危うさも感じなくはないんだけど、そういう心配を用がする圧倒的な可愛らしさ。以前のメイドの作品のときにも絵柄との異様な親和性を感じましたが、今回は似たガーリーさ全開ではあるものの、一捻り入ったキャラクターになっててまた最高。地雷系だけど、ちゃんと意志を感じるというか、しっかりした印象もあるんですよね。そもそもちゃんとしたスキルを持った仕事してますし。ただ、すきぴへのアプローチが強引というか極端w
 そんなすきぴの南編集。単に顔が良いだけのイケメンではなく、真面目で誠実な人で、だからこそヒロインは惹かれたと分かる。冒頭の場面がファミレスでエロ漫画の打ち合わせをしてて衝撃だったんですが、エピローグまで読むとそもそもファミレスで打ち合わせをしようとする南さん優しくて素敵、となってしまうw ヒロインの奔放なキャラクターを引き立てる存在でもあるので、彼自体が主張しすぎるタイプの竿役ではないんだけど、めちゃくちゃ良いキャラだったなぁ。今号のベスト竿ですわ。というかベストカップルか。めちゃくちゃ甘い作品ではあるんだけど、それぞれが互いのことを「どうせやり慣れてるんでしょ」と失礼な偏見持ってたというのも一瞬の不和というか、順風満帆に行くだけじゃないスパイスのような場面になってて好き。
 あと、どうしても書いておきたかったのは、ヘビマガジンという名前もおかしいし、そのマスコットキャラ可愛すぎでしょ。ワニマガジンのワニを模してるのは分かるんですが、それにしても可愛すぎる……。

バッカスのくちづけ』40010試作型

 1年前の年末号に載った『くちなわのリング』の続編。今回も52ページの特大ボリューム。ただ、ヒロイン交代で、作品の味わいも大きく変わっている。前作は姪の友達が放つ圧倒的な魔性に主人公が惑わされる話で、それがじっくりとしたペースで描かれることの迫力がすごかったんですが、本作でその子は回想で2ページのみの登場。今回は姪がヒロインで、これがかなり王道のツンデレ。たしかに前作からその気はあったけど、前作の段階だとあくまでも前振りとしての存在だったので、主役として出てくるとめちゃくちゃストレートな良さ。ツンデレ姪とのラブコメ劇としてとても丁寧で、長尺のストーリーテリングがまた魅力的に機能してる。エロはさておき、姪との気の置けない関係性に主人公が魅力を感じ、惹かれていることを自覚してからの、いよいよエロ開始。 “こっちはこんなに悩んでるのに脳天気に笑いやがって” からの、主人公も似たように笑っていた、の場面とか見事でしたね。だからこそエロが始まってしまう背徳感も増すし、それでいてそのキッカケが事故的な飲酒というラブコメ感あるイベントだったのも好き。何から何まで前作とは大違いな内容になってて素晴らしい。
 エロパートにおける内容も大違いで、本作はとにかくイチャイチャしてる。キスが多いし、確認も多い。そして何よりがセリフが多い。2人の交流という側面が出まくってる魅力。終わったあとのピロートークも長めで、冷静になったのにそこでまたイチャイチャし出しちゃう感じとか本当に仲良いのが伝わってきて最高でしたね。

『ミナちゃんとクリーム』桃月すず

 新刊が出たということで3ページのショート。その新刊がすごくて、桃月先生の超初期作(というかデビュー作らしい)が収録されている。その後日談が今回のショート。企画がすごい……。
 フリフリの衣装がめちゃくちゃ可愛いんですが、最終ページで彼女を後ろから映すショットになるとキャラクターや衣装の可愛い印象からガラッとエロがむき出しになったような印象に変貌するのでド迫力。そっこからもう一度激甘に戻ってそのままフェードアウト、という感じも良い。いやしかし、やっぱ企画がすごいよ……。前回の作品では、これまた昔の作品のヒロインが実は登場していた、という仕掛けがあってたまげたんですが、過去の作品が作者に愛されてるのを見るとファンとしては嬉しくなってしまいますね。

『ふたり夜歩き』楝蛙

 やや紅潮した彼女が駅で待っててくれる、というオープニングが可愛すぎてヤバいんですが、よく見なくても彼女の格好が怪しい……。いきなり引き込まれるんですが、それに気づく男性側が思いの外冷静。コートを脱がせてからの “…なんだ” “下着は付けてたんだ” の場面とか最高ですね。ついに御開帳という絵的なアゲ感と、このセリフによって2人のキャラクター、関係性が一気に見えてくる。ヒロインの方がただのド変態なのではなく、変態の入り口に立ってる状態。あのロングコートのオープニングからこんな可愛らしいキャラクターは思いも寄らなかったし、それに対する男性キャラの受け(というか攻め)も良かった。変態カップルで男性が主導的なんだけど、今回の件はそれに感化されたヒロインの自主的な一歩、という複雑な設定が味わい深い。こんだけの変態プレイをする話なのに、ヒロインのキャラクターと感情の表現が緻密で最高。説明的な場面は全然ないのに、読み進めるうちに自然と2人の背景が見えてくるし、何よりどんどんハマっていくヒロインの快感というのが真に迫ってて超エロい。変態だからエロい、だけではない良さが詰まってたと思います。可愛かったなぁ。

『性ゾン』エロ井ロエ

 ゾンビパンデミックの中、2人で車に籠城。車内の場面のみで構成されてるアイディアとかB級映画っぽくて面白いし、「エロ漫画なんだからセックスだけすりゃええやろ」という割り切りのようにも思える。セックスだけの話なんだけど、そうならざるを得ないためにゾンビ設定があって、そのおかげでキャラクターの心理描写は意外なほど迫力があって引き込まれるものがある。直接ゾンビがたくさん出てくる場面があるわけでもないのに、ゾンビという設定がしっかり機能してる。
 絶品なのはヒロインのキャラクターであり、彼女の中で高まった感情とその発露。「セックスしたら死ぬフラグ」という男性の言い分にキレるくだりとかラブコメ的で可愛い場面なんだけど、2人がセックスに踏み切る決定的な瞬間でもあって、それはドラマ的に熱かったりもする。このバランスが絶妙。
 狭いし、空間のほとんどを椅子が占めてるし、ゾンビに囲まれて声も出せないし、と不自由の多いシチュエーションなんだけど、だからこその密着感とか濃い気持ちが逃げ場もなくぶつかっていく感じがあって熱い。体位もめちゃくちゃ窮屈そうなんだけど、絵的にはとても独自性のあるものになってて見応えがある。個人的なハイライトとしてはヒロインが自ら服を脱ぐ場面ですかね。溜まりに溜まった感情が溢れ出てる感じとしか迫力があったし、ブラが可愛いし、衣服から解き放たれたおっぱいのプルッ感が良い。
 あと、どうでもいい話にはなるんですが、序盤の回想の中で先輩が言ってた “あの映画の続編観るだろ!? 古代マヤって書かれると絶対みないといけない気がするよな” の映画はたぶん『海底47m 古代マヤの死の迷宮』だと思う……。

異世界転生で同人エロゲの女主人公に!?』ものののふ

 図書室で良い雰囲気の男子と異世界転生モノについて教わってると、実際に転生してしまう……が、ただの異世界ではなく同人エロゲの世界。異世界とはファンタジーよりゲームの世界に近い、というセリフがあったんですが、良いフリになってましたね。ゲームっぽいファンタジー世界に転生するのではなく、ゲームの世界に転生してしまう。
 同人エロゲに詳しくないので、本作に対して細かく「あるある」と楽しむことはできないんですが、たぶん多少雑な展開があっても「そういうエロまっしぐらなゲームだから」と成立する、ということなんだと思う。たぶん。ゲームキャラクターからしたら、プレイヤーという神に操作されるのは不条理でしかない、という切り口がめちゃくちゃ面白いし、その不条理がすべて(雑な展開で)エロに直結していくのが面白い。
 クライマックスはスラム街で無数の男たちに襲われることになるんですが、もう絵面がゾンビ映画ですよね。直前の『性ゾン』ではそれほどゾンビ出てこなかったのに! と不思議な感覚になってしまった。驚異的なまでに絵の密度が上がっていくので否応がなしに盛り上がりを感じました。一旦引きの絵になる絶望感も良かったし、そこからゲームの地の文が表示される演出も決まってたと思います。

『泣き虫ジンジャーシロップ』翁賀馬乃助

 叔父さんのレンタルビデオ屋でバイトするJK。劇中でも言われてたけどレンタルビデオ屋といういつまで続くか分からないある種の場末感が良い雰囲気を醸してるし、だからこそ実家の事情で今の生活が一瞬で崩壊してしまうハラハラ感(によって引き出されるヒロインの行動)にもリアリティがある。あとは、1ページ目1コマ目で描かれる店内に置かれてる映画のタイトルを眺めてるだけでニヤニヤしちゃいますね。有名タイトルがもじられてて楽しいw
 エロシーンとは直接関わらないものの、ヒロインのギャル友の2人がめちゃくちゃ良い! キャラ立ってるし、ヒロインの恋心を多少茶化しはするものの真剣に応援してくれる感じとか最高。そもそも作品的にもこのギャル友とも会話の場面で初めて「叔父さんのこと好きだったのかよ!」となるわけで、この情報開示の順番も秀逸でしたね。その後すぐに現状の崩壊(勘違いw)が起きるんだけど、話の流れがものすごくドラマチックというか振り回される。ヒロインは感情表現がうまいタイプの子ではないと思うんだけど、そんな彼女の恋心と絶望がスムーズに伝わってくる。田舎の事情で少女が苦労する話という意味では過去の『舫い糸』なんかも連想したんですが、やはりギャル友の有無が大きな違いを生んでるような気がします。ヒロイン自身もギャル(友人ほどではないと思うが)で、それによってインモラルな雰囲気が増されてるのも魅力ですたね。ただ、ギャルでインモラルなんだけど、彼女はまだ幼い少女で……という機微が描かれてて丁寧。ヒロイン視点で始まったんですが、途中で叔父さん視点に交代するのが効果的だったと思うんですが、叔父さんから見たヒロインはどういう存在か、という描写が細かいんですよね。JKを子供として描いてるのが(当たり前なんだけど)エロ漫画的には忘れそうになる視点で新鮮。
 ハイライトとしては、最後の一押しとなるヒロインの “JKとタダでヤれるなら ヤっといたほうが得だよ?” の場面だと思うんですが、これだけ切り取るとものすごくインモラルな話に思えるが、、実際に読むと彼女に抱く印象はもっと違っていて、もっと乙女チックだったりする。このギャップが良いし、このヒロインの背伸び感というか、ある種の仮面がセックスの進行によってはがれ落ちていく、という展開が熱い。不器用そうなヒロインがコミュニケーションを成功させる話に思える。無理して騎乗位で始めたものの、素直になってその後は正常位でもう一度、という展開も良い。ネクタイをおっぱいで挟んで、その上から両腕をクロスさせてるのも超エロかったです。こうして考えると叔父さんも結構なことやってんなw

『虎穴に入らずんば虎子を得ず』ニコライの嫁

 虎子の家に行ったら虎がいる。「虎ですか!?」と初読時マジで爆笑してしまった。インパクトがありすぎる……。「乙女な黒ギャル可愛いなぁ」なんてのんきに思ってたらガチタイガーなので笑う。画力の使い道、虎でいいのか……(可愛かったです)。
 虎を飼うには明らかにスペースがおかしいし、何より虎子が虎を紹介する場面がない。それどころか彼女が虎に言及するセリフもないし、視線もやらない。なので主人公にしか見えてないイマジナリーな存在なのでは……とか考えたくもなってくる。主人公の抱える後ろめたさや自信のなさのメタファーなのでは……とか考え出してしまうんですが、虎子ちゃんが可愛くてエロいので脳味噌が混乱するw 初読時はマジで爆笑したんですが、読めば読むほど気になるというか、もはやちょっと文学的な匂いも漂ってくる(気がする)。ただ、2人がイチャイチャしてる背景に虎が小さく映り込む場面とかやっぱ笑ってしまうんだよなぁ。ずるい。あと、定点カメラで3段やったと思ったら4段目に虎が出てくるのも笑った。よく考えたら定点カメラの位置がかなり低めだったので、まさかの定点虎カメラ……。ただ、あの場面から虎が寝るというのも何か意味があるのでは……とか気になってくるんだよなぁ。
 ニコライの嫁先生の過去作でも化粧の有無描写はあったんですが、過去作だとどれも前半にヒロインがバッチリメイクをして変貌してたと思います。本作は逆で、事後、2人が別れるところでヒロインがすっぴん。眉がなくて目が細い感じとかすげぇリアルなんですが、あれだけのイチャイチャを見たあとだと、そのすっぴんが愛おしく思えてくる。最後にすっぴんが飛び出る仕掛けとして独自の効果が生まれてたと思います。てか、それを踏まえて読み返すと、1ページ目のヒロインの顔のアップとか目化粧の存在が感じ取れますね。
 個人的に好きな虎は、虎子のフェラに集中できずにいるのを厳しく見つめ、圧をかけてくる虎です。あとは、後半の主人公の攻勢(虎子に対する攻勢)に怯む虎と、挿入の瞬間を見守る虎。どちらも表情がないようで表情があるように見えるのが絶妙だったと思います。戯画化一切ナシというのが虎の存在感を強めるし、読んでて虎が気になって仕方ないw てか、挿入の瞬間は直接見せず、それを見てる虎のみを描写してるんですよね。どんなエロ漫画なんだ……。

『内緒のヒマつぶし』mogg

 無職のヒマ人が隣人の人妻と仲良くなる。心温まる話になってもおかしくない雰囲気だし、ヒロインだけ見たらマジでそんな感じなんだけど、とにかく主人公が卑屈。そこが良い。2人が一線を越えてしまう際も、主人公の心理はほとんど逆ギレみたいな勢いなんですよね。ただ、主人公が一方的に、暴力などで支配する、快楽堕ち的な話にはならないのが本作の見所。どこまで行っても2人は共犯のような関係にあって、それは冒頭と最後の印象的な語り “無職ヒマ人” にも現れてて、無職でヒマを持て余してるのはヒロインの方も同じですよね。本作の語りは男性のものだったので、普通に考えれば最終ページもそうなんですが、最後の1ページだけ切り取って見たらどちらの語りなのかハッキリとは分からないようになってる……気もする。
 そんな受けに回るんだけど、どこか相手を包み込むような優しさ、温かさが常に漂ってるヒロインのキャラクターがとても魅力的。2人の間に上下関係がそこまで決定的にならない、もしくは主人公がやってることの割にはそこまで支配できてない、という極端になりすぎないバランスが最高。そもそも浮気のリスクは当然彼女の方が大きいので、それぞれが今の関係の継続を望んでる場合、どっちが積極的と言えるのか……みたいな余韻。彼女の強さ(性への積極さ)を示すタッパーに入ったコンドームの場面とか最高でしたね。旦那とも当たり前にやってる関係なのが伝わってくるのも良い。主人公の逆ギレ的な心理に火がつくと思うw

『未だ枯枝で揺れている』舞恋花

 兄妹。脳天気に兄妹の関係を描く作品も好きですけど、「絶対にダメだよ」という前提を徹底した本作のようなアプローチも好き。1ページ目の上半分が衝撃的で、「これはアカン!」と決定的に突きつけられるようで最高。兄の方から始めてしまった関係をやめることができないまま今に至り、今では妹の方が積極的になっていて、後ろめたさを感じならそれに応えてしまう……という味わい深さ。説明的な場面やセリフは少ないのに、2人の背景となる情報は適度に伝わってくる語り口も見事だし、語りすぎないからこそ、そのトーンのまま始まり盛り上がっていくエロシーンの迫力がすごい。静かなんだけど漫画的な情報量は多い。変則的なコマ割りとかめちゃくちゃ良かったです。三連のコマが差し込まれる演出があるんですが、読んでてすごい映画の編集みたいなリズムが生まれてて、それでいてそれがコマ割りという漫画ならではの表現になってるからすごい。あとは、クライマックスで、急に引きの絵になって、ウサギのぬいぐるみが2人のことを見つめている、みたいな構図が飛び出るのも2人だけの秘密というのが強調されるし、それにより罪悪感も思い出される。
 今号の快楽天はゾンビ(誤解)に見守られたり、虎に見守られたり、ぬいぐるみに見守られたり、すごい号だ……。

『深度』背中が尻

 彼氏に浮気されたので後輩に手を出す。読者の9割は後輩の純くんに感情移入もしくは肩入れすると思うんですが、本作の語りは徹底してヒロイン。かなり饒舌に心の声で語るタイプなんだけど、彼女の心理を完全に理解するのは難しい。一方純くんの気持ちは痛いほど分かる! という作りがめちゃくちゃ面白い。ウブな後輩くんが自由で奔放な先輩にもてあそばれる、とだけ書くとシンプルなんだけど、それだけではない味わい深さが本作にはある。
 要するにヒロインは浮気されたけど、それでも好きな気持ちが揺るがないので、浮気した彼の気持ちを理解するために自分も浮気する。その相手として手頃な存在だった純くんが選ばれる。フェラで口に出させ、そのままの口でキスをするくだりとか、普段されてることの反転として見事でしたよね。まぁ、たしかに女性の口に出しといてそれを汚いと忌避するのは結構な矛盾(もしくは欺瞞)がある。痛いところを指摘されてしまった気分……。純くんはひたすら良い子なんだけど、この場面だけは結構本気で嫌がって、弱々しくもキレてるのが「男って奴は!」という話として象徴的だったと思います。
 心理はすべて開示されてるのになかなか理解しがたい存在としてヒロイン(=語り手)がいるのが特徴的なんですが、彼女の顔、表情がね、めちゃくちゃ良いんですよ。絶妙に何考えてるか分からない、腹の底が窺えないバランス。悪戯っぽい笑みとか、嬉しそうだったり、快感に浸る顔はハッキリと描かれてて、それ自体には嘘はまったくないはずなんだけど、全体と通して彼女のことが掴めたのかというと……という印象のまま作品が終わる。初読時のラストシーン、「これは純くんワンチャンあるで!」とか淡い期待を抱いてしまったのがお恥ずかしいw

『いまはボクのままで』ぼーかん

 コスプレ写真の加工を手伝ってる相手と。コスプレを題材にした作品は多いですが、写真の加工をテーマに持ってきたのはかなり珍しいというか、初めて見た気がする。コスプレモノって女性本人とコスで演じるキャラの境と差異が物語的にキーになりがちですが、本作の写真加工はまさにその架け橋を担っていると言える。「衣装の作成とかじゃねぇんだ」というリアリティに唸りました。本人とキャラの2択になりがちなところを、 “コスプレしてる時のお前の顔がすごい好きだ” となるのが最高。両得であり、たぶんだけどコスプレというテーマの核心を突いてる気がする。この場面、めっちゃ良いこと言ってたのに最終的に “ツマリ オマエ スキ” と語彙が消滅するので笑ってしまいました。限界だったかw
 物語に真面目になりすぎると「コスプレは関係なくお前が好き」になりかねないんですが、本作はその心配がなく、コスプレ状態でクライマックスを迎える。エロ漫画的に非常においしい。それでも名前を呼ぶ行為によってどっちを好きなのか明白にさせるのとか良かったですよね。めちゃくちゃ甘い場面なんだけど、「鈍感イケメンムーブ」のツッコミ好き。もちろんこれはヒロインの照れ隠しもあるんでしょうが、ワードとして鋭すぎて最高w

『勇者殿それはイケません!』かづき

 サキュバスによって滅びつつある国を救うべく勇者を召喚したが、出てきたのはどう見てもJK。異世界転移モノなんだけど、ファンタジー世界で召喚する側の視点に立ってるのが面白い。ファンタジー世界の神官と現実世界のJKなんだけど、前者の方が常識的で、後者はほとんど人間離れした存在として描かれる。それこそ勇者とも言えそうな超人性を感じるんだけど、「元の世界でどんな生活送ってんだよ」って話ですよね。サキュバスよりもエロにまみれた現実世界のJK。
 ビッチなヒロインを超人である他者として描くのが面白いんですが、それを支える主人公である神官の真面目くんっぷりもおかしい。初めて見たコンドームを理解するくだりとか笑うと同時に少し可愛くもあり、そしてヒロインがドエロい。タイトルにもなってる「勇者殿」という呼称が2人の関係性を象徴してるようで魅力的。
 セックスを通じて2人は交流を深め、主人公が本音を吐露すると、ヒロインがそれを優しく抱きしめる。「やっぱり彼女は女神だったのか!」みたいにも見える感動的な場面なんですが、たぶんヒロインとしてはもう一回勃起させるためのインターバルくらいの認識しかなさそうw そんな強いヒロインに手玉に取られてる感じがまた良い……。

「読者コーナー」

 真空ジェシカ ガクの失恋話が良い! 恋の成就までの丁寧な描写でめちゃくちゃ引き込まれるし、そこからの不条理としか思えない転落でちょっと笑う。何があったというの……。
forms.gle
 終わり。今年も細々と続けていこうと思いますので、よろしくお願いします。
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