北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

COMIC快楽天 2021年8月号の感想

快楽天 2021年 8月号
快楽天 2021年 8月号

 毎度思うのですが、これだけ遅くなった感想の意味とは一体。まぁ、私が書いて満足ってのが一番でかいです。
kitaku2kitaku.hatenablog.com

『Allegro moderato』Hamao

 アレグロモデラート、速度記号の一種で「ほどよく速く」。良いタイトル、というか良い用語持ってきたなぁ。いろいろ勘ぐってしまう。2人の関係の進展についてなのか、腰の速度なのか(無粋)。
 初体験の翌日の話。あくまでもセックスは回想で、時間軸が交互する構成の作品って最近増えてる印象にあるんですが、本作はそこに初体験といいう特別な要素が加わる。初体験ってやってるときのドキドキも重要だけど、やったあとの余裕、「もう童貞(処女)じゃない」という自信、さらには「当然またやれるのだろう」という期待とかいろいろな心理が湧くじゃないですか。実感が湧かない感じとか。そんな初体験の初々しさもしっかり描きつつ、その初体験後の心理の変化ってのが丁寧に現れてたと思います。一度やったからこそ2人で道を歩いてるだけでめっちゃエロい気持ちになってしまう感じとか生々しい。
 そんな回想、記憶の中に存在する初体験を象徴するアイテム……厳密には未遂なので実際には存在しないものとして、写真。ヒロインはとにかく写真に撮って何度も見返したい。初体験の際も彼女は撮影を希望するも主人公が拒否(まぁハメ撮りほどではないと思う)。それ以外にも通りすがりで撮った花の写真、そして部屋に飾られた2人の写真ですよ。思い出の中にある美しいもの、というのが本作のテーマそのものなんだと思います。主人公の方は写真を撮らないんですが、初体験の最中にそれまでの彼女との思い出を回想する場面があって、それが初体験の「ついに……」という感慨を倍増してくれる。よく考えたら回想の中で回想してるので、ややこしい話とも言えるんですが、とにかく思い出すという行為が重要なのでしょう。思い出の中にこそある完璧に美しい世界、みたいな。
 回想描写で面白かったのは、体育祭の回想のコマで、友人が主人公の方にカメラを向けてるんですよね。そしてニヤついてる。2人は体育祭を機に接近して交際に至るので、この時点では付き合ってない。けど友人はその2人を見てニヤついて写真を撮ってる。この「お熱いですなぁ」的な視点がダイジェスト的に描かれる回想の場面にものすごい奥行きを生んでたと思います。ここでも写真というのが気が利いてますね。

『あいのことば』ホムンクルス

 水泳部のエースには実は彼氏がいる。冒頭で日焼け女子が大量に登場したので3ページ目の笹森くん登場で「色白っ!!」てなりましたw 漫画だから当然色(トーン)がないってだけなんだけど、2人のギャップ、2人の住む世界の違いを象徴しているようで印象的。
 彼氏がいることを秘密にしてる弊害として、チャラい男子から(本人はアプローチだと思っている)セクハラを受ける。それ自体も迷惑だし、それを彼氏に見られてより最悪。からのそのことについて両者からの謝罪があって、という感情の盛り上がり。秘密の交際という設定からのこの広がりは見事だったと思います。甘酸っぱさのブースト効果すごいですよね。もしかしたら、あの一件がなかったら2人の初体験はもう少し後になってたかもしれない。そう思うとあのチャラ男は逆に自らの首を絞めてたとも言えるわけで、ざまぁw
 1回目は彼氏の方がやや暴走気味で、ヒロインはひたすら振り回される。その混乱しかないリアクションが可愛いんですが、2回戦突入というときにヒロインが勇気を振り絞って誘う。けど恥ずかしいから枕に顔をうずめて……という背中から捉えたショットがマジ芸術的だったと思います。ここで顔を見せないのもすごい演出だし、何より水着による日焼け跡の背中側というのが新鮮でした。日焼け跡って定番のジャンルだと思ってたけど、「背中があったか!」という感動。水着のデザインによりますが、たしかに独特な日焼け跡になりますよね。ちなみに本編1ページ目ではヒロインの水着状態でのやや後ろから撮った構図で描かれてるので、「あれがこうなるか!」みたいな感動、感慨が生まれる展開だったと思います。

『つづきから』楝蛙

 今号はツイッターで前日譚もしくは後日譚漫画が公開される企画があって、本作もその対応作品。本作は前日譚。本編で語られた付き合ってた頃の話なんですが、思ってたより若い、幼い。エロとは無縁っぽい雰囲気で、そこからの本編での再会ってのが熱い。
 田舎のコンビニで懐かしの再会。と思ったら2人はどうやら昔付き合っていたようで……という話。すげぇどうでもいい部分なんですが、個人的に1ページ目1コマ目にある「この先コンビニありません」の看板にちょっと感動してしまった。田舎表現としてこの文言を切り取るのすごくない? 地の果て感だし、こんだけ田舎だったら店に2人きりになることの説得力にも繋がるし、帰省した主人公にとっての「来るとこまで来ちゃったな」みたいな感慨にもなってたように思います。
 読者的には「付き合ってたのか」という驚きもありつつ、かつては駄菓子屋だったのが(個人経営の)コンビニになってしまった、という切なさも。古き良き雰囲気の残る世界が時代の流れで変容してしまってからの再会、という意味では楝蛙先生の2つ前の作品『湯気のゆくえ』と対になっているように思います。あれは銭湯で、別れることになった2人がエピローグで再会するんですが、本作は再会したあとがメイン。意外な事実に読者としては振り回されるような感覚もありつつ、2人の中で感情が再燃するというドラマがエモい。若干の緊張感、探り探りの距離感とかが良いですよねぇ。そっから大人になったからこその酒のチカラで壁がなくなっていく感じとか最高。牽制とジャブと繰り返した果ての店内でのお泊まり決定。酒は外で飲んでたので、店内(さすがにバックヤード)に移動したらそのままの勢いで激しくキスが始まってるのが最高。ただ、キスはしたことあるんだろうな、程度の関係なので、その先の展開に関しては初々しさが生まれたり、東京に行った主人公への嫉妬とかが出てくるのも可愛い。セックスを通じて探り探りのコミュニケーションを重ねて互いに理解を深めていく。この行程がものすごく丁寧に描かれててリアル。恋人だけ恋人じゃない、という微妙な距離感の2人の再会ってのがもう絶品でした。単なる同窓会ものとは違った良さだなぁ。そこに田舎のコンビニってロケーションがまた良いんだよなぁ。変わってしまったものの象徴としてのコンビニの中で、変わらなかった2人が、というドラマ。


 ツイッターでの前日譚。思ってたより若いし、今回のツイッター連動企画の中では唯一の非エロ。そして独自タイトル付き。作品性高くて好きです。

『シルエット3』えーすけ

 3作目。1作目は主人公の片思いで終わった初恋の幻影が土台にあったのでかなり物語的な要素が大きかったんですよね。それとエロに没頭していく心理の流れがリアルでとにかくエロかった。歴史的傑作とすら思うレベル。んで、2作目。まさかの新キャラ登場。1作目にあった物語要素は消失し(終わったから当たり前ですね)、今度は享楽的な方向へ全振り。これまたすごい作品でした。そして今回の3作目。今度はキャラは増えず、前作の2人と旅行へ行く話。当然前作のような享楽全開の話になると思うじゃないですか。そしたら、まさかの1作目のヒロインであるしーちゃん大フィーチャーの内容なので歓喜。男1女2の3Pものってヒロイン2人をいかにバランス良く描くかが味噌だと思い込んでて、そのバランスの良さが作品の良さに直結すると思ってたんですが、本作は意図的としか思えないレベルで偏る。普通にめちゃくちゃエロいので忘れそうになるんですが、ゆっきー、本作で乳首を1コマも見せてないんですよね。思い切ったバランス。代わりにゆっきーは補佐的な役割に回ることが多く、とにかくしーちゃん。単にエロ行為をしーちゃんメインで描くのではなく、その土台として、しーちゃんがデレたのか? という示唆が描かれる。その件について何か結論が出るわけではないんですが、それを踏まえて見るとすべてが可愛いし、エロい。てか、冒頭の夏祭りの場面がもう、これはそういう意味なのか!? とか勝手に期待しまう感じありますよね。笑顔が眩しい……。
 エロとは別なんですが、初読時に心底たまげたのが、冒頭の場面。2人と旅行に行くことになる経緯が回想で描かれるんですが、この回想が4コマ漫画。ストーリー漫画の間に突如として挟まれる4コマ漫画。これが意外なほど自然に読めるのですよ。他の場面とレイヤーが違うことがはっきりと分かり、そのまま場面転換にもなる。何なら読みやすい、理解しやすい。漫画にこんな手法あったのか……と感心しきりです。

『なぎさ先生』亜美寿真

 大人のすべてが苛つく反抗期の主人公の本へやってきた家庭教師の渚先生。場面が変わる度に衣装が替わるのが非常に眼福なんですが、個人的には一番最初、初の来訪ということで最もフォーマルな格好で来たと思われる姿がグッと来ました。スーツで、それもパンツルックなんですよね。エロ漫画だとそりゃ見る機会が少ないのは仕方ないんですが、パンツルックでバシッと決めた姿、3ページ目の大コマがとにかく最高でぶっ刺さりました。ありがとうございます……。それ単体で素晴らしいってのもあるし、最初はパンツルックだったのが次第にスカートになり、ノンスリーブになり……と徐々に露出が増える良さもあるし、ついにエロパート突入の際はスカートのたくし上げですよ。最初はパンツルックだったのに。その変遷の良さ。
 あとはやはりキャラクター描写の精細さがえげつないレベル。ヒロインも最高なんですが、男主人公側の精神的&知的に幼い感じが明確に出てて、その点で渚先生にまったく勝つことができない。そもそも反抗期ってのは常に感情表現してるようなもんで、ある意味心がもろ出しですよね。一方、渚先生は常に冷静で、それでいてどこか何考えてるか分からない。その底知れなさが実は強キャラたる所以だった、と2人のパワーバランスが決定的になる瞬間が本作を傑作たらしめてる。ヒロインの誘惑に負けて主人公の理性のタガが外れ、そのままガバッと襲いかかる、ってエロ漫画だとよくある展開ですが、そのままプレイとしてはガバッと襲った側が主体的になるじゃないですか。当たり前ですけど。ところが本作はそこで “本当に授業のつもりでした…?” と根底からひっくり返る返答をされる。主人公は天然の誘惑されてるつもりだったけど、彼女としてはとっくのとうに一線を越えたつもりで、意図的な誘惑、いや誘惑ですらなく事を始めてるつもりでいた。この決定的な差ですよ。正直「やめて恥ずかしい!」となるような場面なんですが、その完全に彼女が優位に立っていた、と分かる感覚が非常にエロい。天然とか無知系のキャラクターなのかと思ったら、普通に経験豊富な強キャラであった、という印象としての逆転。もうこれがエロすぎてですね。漫画としての面白さと、キャラクターの良さがとにかく強い。

『メイドのスキマ』mogg

 クラスのマドンナ的なクール美少女が家のメイドとしてやってきて親父に犯される。寝取られ的であるし、主人公がただ見てるだけ、自らチンコをしごくだけという構図は寝取られ作品として王道的なんだけど、それだけで終わらない。ヒロインも主人公に見られることで初めて平静が崩れ、最も感じるようになってしまうので、見られることで興奮する的な話になるのかと思いきや……ですよ。エピローグの爽やかラブコメ感が完全なる不意打ちで魅力的。表情を崩さなかった彼女が、見られることで崩れることになるんですが、最後のあの笑顔は外的な要因ではなく、彼女の意志による笑顔であって……というのが最高。あんな歪んだ、特殊な関わり方をしたことがキッカケで2人の距離があんなにも近くなる、という良さ。果たして彼女の真意はどこにあるのか、みたいな想像を掻き立てられる。ただ、親父に気に入られたのも確かっぽいのであの仕事はまだまだ続きそうなんだよな……みたいなことを考えるとバッドエンド的でもありますね。このどっちなんだ感が最高。
 ラストカットもそうですが、冒頭の場面におけるバカな男友達の存在も健全ラブコメ作品っぽさとして結構大事だったと思います。あの至って平和な日常風景が、家に帰ると途端に狂った異様な世界へと一変する。そして、そっからのラストの爽やか。このジャンルを飛び越えるような感覚、振り回されるような感覚が本作の醍醐味だったように思います。

『優しく奪って』ちょりもっき

 兼田パイセン!! 直接セックスに関わらない第三者がやけにキャラ立ってるなぁ、と思ったら『側にいさせて』で同様に(いや本作以上かもw)キャラの立ってた兼田!! 『側にいさせて』における恋のキューピット&ツッコミぶりには目を見張るものがありましたが、まさかバイト先でも同様のことをしていたとは……。相変わらずkomifloコメ欄に兼田ファンが集まってて笑いました。異例の人気キャラぶりだw 単行本の表紙が兼田パイセンになっても不思議はない……(たぶん誰かに怒られる)
 兼田パイセンに気を取られすぎて忘れそうになるんですが、『側にいさせて』もメインとなる男女のキャラはかなり味付け濃いめだったんですよね。あれは鈍感とか大人しい方向へのデフォルメだったんですが、本作だとギャルとクズ男なので漫画としての印象が大きく違う。というか、こういうキャラクターのカップルを描くエロ漫画自体めちゃくちゃ珍しい気がします。クズ男が出てきて彼に酷いことされるみたいな感じならありますけど、本作は決して彼が悪役なわけではないですからね。最終的には驚くほどに甘い結論に至る。ただ、彼が改心したとかそういうバランスでもない。めちゃくちゃとも言える話なんだけど、それが成立するのはツッコミ役として兼田パイセンがいるからなのでは……。


 そして後日談。初めてを終えた2人の新たな日常が本編とは違ったエロさで魅力的なんですが、バイトに遅刻しそうなシチュエーションなので、どうしても兼田パイセンのことが脳裏によぎるw

『黒井さんは超かしこい』八樹ひより

 続編。調べてみたら前作はビーストか。騎乗位状態でのタバコぷかーっ!が大好きだったのをよく覚えてます。今回もタバコの使い方がキャラクター表現としてハマってて魅力的だったと思います。イライラして箱をトントンし出すのとかタバコ慣れしてて最高。そして、事後のフリとして喫煙するのも可愛かったですね。これは前作でのタバコ描写を踏まえてみるとより良さがある。
 マンネリを感じた黒井さんが留学生のジョージくんを利用した一計を案じる。しょうもない誤解が読者にはすぐにバラして、劇中では明かされず作戦は大成功するが、成功しすぎて暴走気味。ヒロインの感情と行動が極端すぎるのが可愛いんですが、この嫉妬を煽る作戦に関しては彼の方も極端になってしまう。まぁ、彼が思いを内に秘めてるのがすべての発端とも言えるので、そういう意味では2人のセラピーとして大成功だったと言えるのかもしれません。まぁ、すべてが極端なんですが……その極端さが可愛い。最終的にめちゃくちゃ甘い話へと決着するのも良かったし、エピローグでギャグになるので最高。利用されるだけのジョージくんが最後の場面で楽しそうなので何よりですw

『籠鳥雲を恋う』こめざわ

 ヒロインが不倫に目覚める話。最初はヤリサーと化してるバドミントンクラブの闇に触れる話で、受け身の話かつ悲劇だと思ったんですが、そっから覚醒していくので、ちょっとした成長譚みたいな印象もあるんですよね。思わぬ才能を開花させる話とも見えるし。何より旦那がクズ中のクズなので、タイトルの通りその籠から(少なくとも精神的には)解放される話になっているのが特徴だと思います。ダークな話だし、社会的には過ちを犯してハマっていく悲劇なんだけど、ラストとか完全に「やってやったぜ」的な痛快さもあるんですよね。旦那の言葉にビクついていた主人公が最後には巧妙な形で言い返すようになる。そして、その真意を旦那は知らないまま終わる。このザマァ感。
 内気で大人しい印象のヒロインが覚醒していく変化が本作の醍醐味なんですが、極端にそのキャラクターが変わるわけではないんですよね。バドミントンクラブの中では女王様的になっていく、とかではない。おそらく最後まで庇護欲を掻き立てる、もしくはチョロそうだと思わせる、弱い存在という釣り針で男たちをコントロールしてるんだと思います。彼女のキャラクターを象徴するような下がった困り眉がめちゃくちゃ良いんですよね。受け身っぽく振る舞ってるけど実は彼女こそが主体的であって……というのが奥にある不気味さ、底知れなさが良い。

『オブラート』八尋ぽち

 肉体的に接触すると悪いことを起きるカップルの話。なのでキスはいつもマスク越し。このマスク越しキスが冒頭に描かれて衝撃だったんですが、そのキス描写がさらに掘り下げられるので驚きました。不気味さ、異様さ込みで感じたことのないエロさがある。
 この設定を聞くとたぶん多くの人がコンドームを使うアイディアを考えると思います。私も完全着衣で互いに性器だけ出してゴムありで最後までやる、みたいな特殊プレイの方向になると思ったんですが、全然ならないw ゴムという発想が一切出てこないのが清々しかったと思います。というか、たぶんだけど服越しの愛撫でじわじわを性感を積み重ねすぎた結果、理性が吹き飛んで我慢ができなくなるレベルのとこまで行っちゃったんですよね。もうちょっと計画的にゴム使うことを考えてればよかったと思うんだけど、徐々に「まだ大丈夫……」と繰り返してた結果もう取り返しのつかないとこまで行ってしまった感。布越しの描写もめちゃくちゃエロかったし、そこからの我慢の限界ぶりも生々しくて素晴らしかったです。特殊な設定があるからこそ、挿入後に互いに全裸になって抱きしめ合う場面の感動みたいなものも大きいですよね。対面座位で抱き合うのって恋人のイチャイチャ感としては定番ですが、本作だとそれだけではない迫力がありました。
 からの根本的な問題どうするの、というオチで笑った。めちゃくちゃ乱暴。強引なんだけど、愛の大きさということなんでしょう。それが最後に抱き合うというエロパートで印象的だった場面へと戻るのが見事でした。ビフォーアフターの変化が大きすぎるw

『夢のような最高のセックス…?』京のごはん

 マッチングアプリで出会ったイケメンがクズで、別の男性に助けられたと思ったら。すべてが周到な計画で、1ページ目の時点で詰んでる。2人に酷いことされるんですが、被害に気づかないまま終わる。快楽堕ちはハッピーエンドみたいな解釈ありますけど(ネタですよ)、本作もまさにその系統になるんじゃないですかね。主人公の意識としては誠実な男性と出会ってそのまま別れた、それだけ。何ならちょっと素敵な体験をした、程度のもの。ところが実際は、という落差こそが本作の醍醐味。薬のせいもあって夢だと誤解したままエロいことになる。厳密に言えばしっかり意識あるんですよね。ぼーっとしてるものの、簡単な会話は普通に交わす。それなのにこのレイプに関しては記憶が残らず、残るのは良い面の記憶だけ……という完全犯罪感。彼女は何も知らない、という100%思いのままになってしまう部分が本作の良さでしょう。催眠とかでこの手の話をやってもいいけど、それだとどうしてもファンタジー感が強くなってしまうので、もうちょっとリアルというか、完全犯罪の周到さにフォーカスしたような印象です。まぁ、もちろん本作にも薬の件とかファンタジー要素はあるんですが。


 ツイッターでの後日談。これは本編に組み込まないのはもったいないと思えるほどのエピソードだったように思います。大事な部分の記憶が抜け落ちてるが、体にはその余波が残っていて……というのが本作のエピローグとしてかなり重要な話だったと思います。後日談でセックスは描かず、コメディ的な雰囲気で統一してるのも含め、後日談企画としてかなりハイレベルだったという印象です。
 あと、この後日談に出てくる友人の名前が「れれ」なんですが、れれといえば、京のごはん先生の前作『わからせられたいオトシゴロ』のヒロインが劇中で呼ばれてたのが「れれ」だったと思います。あれが本名かは分からないし、この後日談漫画ではまともな絵がないのでハッキリとは分からないんですが、同じ人……でいいのかな?

『肌を』ICHIGAIN

 「はじめて」を遂げたカップルのその後。本号でこのテーマといえば、『Allegro moderato』があってあれも面白いアプローチの作品だったんですが、あれは思い出の中のセックスがメインとして描かれる。一方本作は「はじめて」は事後の描写のみで、メインで描かれるのは同日行われる「もう1回」。同じテーマでもこうも違う話になるのか、と無限の可能性を感じました。マジでめちゃくちゃ面白かったです。初体験なんてドラマチックなものになるに決まってるのに、そこは描かないという英断。見事だったと思います。
 タイトルにある通り肌の質感というか肉感が魅力的。ぼっちゃりというほどではないんだけど、むっちりしてるというか、お肉の感触がたしかにありそうな感じが冒頭の事後の場面からビシビシと伝わってくる。ただ、最初の場面はでは見るだけだったのが、メインのエロパートではかなりがっつり抱きしめる描写もあるし、お尻とか腰を力強く掴む描写もある。見たいものが見れた、という感動ですね。事後から始まる構成の作品ならではの良さだったと思います。着衣状態だとそれほど特徴的という感じではなかったと思うので。決して太いわけではないんですよね。
 甘酸っぱくて可愛らしい2人なんですが、最後の最後に冷酷な現実が描かれるので笑った。バッドエンドやないかw そもそも “「はじめて」をバレずに早く帰る計画” だったんですが、若い2人の気持ちが高まったらそんな理性的に行動できるはずもなく……みたいな話ですかね。

『3人でする?』明石六露

 初めて彼氏の家に遊びに行ったら彼氏が妹とやってた。インパクトありすぎて出オチ感すら漂う冒頭の場面が最高。一応寝取られと言えるのかもしれない。てか、なんでよりによって玄関でやってしまったんだw
 狂った登場人物が2人いるので、多数決で主人公は劣勢に追い込まれる。中でも彼氏の妹が曲者というか強キャラで、兄貴と主人公はこの妹に振り回されることになる。兄は完全にチンコ要員という感じでよそもの感すらあるんですよね。妹が主人公のことを気に入り、兄よりもそっちの方に集中するようになる。なのでちょっとした百合的な雰囲気になるんですよね。あの出オチ的なオープニングからしっとりとしたドキドキするような絵面が飛び出るのでギャップに驚きます。
 一応3Pで、3Pらしいことも行われるんですが、コミュニケーションとして成立してるのはやはり妹と主人公だと思います。2人のセックスに兄貴のチンコが都合良く利用される、みたいな。百合に目覚めてく主人公の心理描写も魅力的だし、百合に利用される兄貴の立場でおいしい思いをする、みたいな読み方をするのも楽しかったと思います。百合を見てキュンキュンする、という視点は劇中だと兄貴が一番近いわけですし。

『バイトの時間』藍夜

 彼氏とのデート資金のためバイトに来た女の子を迎える店長の話。他者からの視点でヒロインが描かれるので、何も知らないウブな状態の姿が非常に可愛らしく、そこからの落差がより強烈。
 んで、この店長のやり口がめちゃくちゃ雑というか、欲望と悪意に忠実すぎる。最短距離でセクハラするから驚き。逃げられたら逃げられたで別にいいや、というスタンス。その後はひたすら待ちに徹するんですよね。だから彼女がそれでも店に来た時点で勝ちが確定してるというか、彼女からしたら既に詰んでる。蟻地獄に入っちゃってる状態。この大人のずるさ、大人の悪意が静かににじみ出てる感じが絶品だったと思います。幼い印象もあるヒロインとの対比がバッチリ。おさげが似合ってて可愛いんだよなぁ。可愛いけど、だからダメだったんだろうなぁ、という無情。

『苦いならいくらでも』いだ天ふにすけ

 不妊に悩む夫婦の話。かなりポップな場面もあるんだけど、内に秘めたる闇、みたいなものの描写が最高でした。妻はいつもニコニコしてるようなキャラクターなんだけど、何があってもニコニコで固定だからこそ彼女の真意がなかなか読めない、という底知れなさが良い。極端に不仲な夫婦というわけではないんだけど、大事な部分でのコミュニケーションが足りてない。そんなコミュニケーションが成功する、というのが本作のエロパートで、暗い雰囲気もありつつかなりハッピーエンドというか、2人なりに前向きになれた話だったんじゃないですかね。
 バックで挿入しながら耳元で “じゃあちゃんとどうして欲しいか言ってよ” という場面が2人の問題とその解決として象徴的だったと思います。そして、そのやりとりの果てにおそらく本作の中で最もヒロインの本音が直接出たセリフと思われる “ぜったい赤ちゃんができるくらい…” “なかだししてほしい…” 。いつもニコニコして内面が読めない彼女が、このセリフを言うときはベッドに顔を埋めて顔が見えない、というのが素晴らしかったです。バックからのこのセリフ、という展開が完璧。そして、そのセリフを受けた旦那が彼女の体を起こして正常位。2人が向かい合うようになる、というシンプルながらめちゃくちゃ感動的なアクションだったと思います。プレイ内容が物語的に重要になってくる(と思われる)、というのはエロ漫画ならではの手法で、醍醐味ですねぇ。
 あと、序盤、同僚の会話の中にチラッと『業務』の2人が出てきたのが非常に嬉しい。他作関連だと、快楽天だと前作になる『ただのうまい話』と本作が対になってるような構成もマジ見事だったと思います。鏡合わせになってるタイトルが秀逸すぎるのよ。だとすると『ただのうまい話』で行われる寝取らせも実は不妊が発端になってるのか……? とか考えたくなってきますね(確定的な描写はないと思いますが、だからこその良さ)。

『サマーラブセイバー』アシオミマサト

 ライフセイバーがショタを捕まえる。ライフセイバーとか監視員を扱った作品って男のイメージあったけど、男女逆転で、標的がショタなのが良い。職業倫理どこ行った……という話なんだけど、本作は意外とちゃんと仕事するところから始まるので面白い。レスキューがショタとの出会いになってるんですよね。決して気に入ったショタにちょっかい出したわけではない。人助けなので健全な出会いかつ、ショタ的には命を助けられるほど濃密な繋がりを得たわけで、その上目覚めたらお姉さんの膝の上という良さの連打。健全でちょっとドキドキする感じが良いんだけど、やっぱヒロイン側には内に秘めたる下心があるので、2人の交流が進むにつれて当然……。ショタ的には仲良くなって心開く感じだけど、ヒロインからしたら「もうレスキューは完了したので後は個人的に」という感じですね。このすれ違いが良い。ショタは真面目にドキドキしてるけど、ヒロインはその様を見てニヤニヤしてる。このすれ違い、パワーバランスの不均衡が良いのよ。やっぱおねショタですよ。
 2人の交流が進むにつれて徐々にエロくなっていくんですが、それが服の変化によって描かれてるのが面白い。ショタを暖めるためにヒロインが脱いで、それをショタに与えて、そして抱きつく。暖めるためだから、という大人のずるい言い訳感が妙にリアルだと思います。そして抱きつくと当然体格差があるので……と別のエロに連鎖していくのが見事ですよねぇ。やっぱおねショタなんだよなぁ。

『せきせん』九十九弐級

 サバサバ系ヒロインのことをイカせることが出来なくてスローセックスに至る話。なんだけど、冒頭の、気にする男と「気にすんな」と返すヒロにのくだりが既にめちゃくちゃ良いんですよね。このままの関係ですげぇ魅力的だし、ここがメインのエロでも全然楽しめた気がします。
 んで、スローセックス開始。スローセックスとしては当たり前なのかもしれないけど、初手が “愛してます” なので驚きました。なんかエロ漫画ってセックスを経てクライマックスに愛の言葉を交わすようになる話が基本というか主流な気がしてたので。
 スローセックス開始後の2人のリアクションの違いも良い。主人公は相手を気持ちよくさせようと冷静にいろいろ考えてる。必死だけど冷静みたいな状態で、一方ヒロインはいつもと違う快感に気持ちが盛り上がってとっとと挿入したがるw スローセックス作戦が功を奏して彼女がイキまくる話だけではないんですよね。もちろんそういう感じもあるけど、主人公が完全にリードするわけではない。彼女が超乗り気になってしまったので、どっちが攻めとかそういう一義的な感じではない。スローセックスによる逆転だと、欲しがるヒロイン相手に「おあずけ」する展開とかも思いつきましたが、そういう支配的な感じにはならない。あくまでもスローセックスを通じて2人が対等な関係としてセックスできるようになる、というバランスを保ってるのがめちゃくちゃ良かったです。スローセックスの成功例として、2人のキャラクター、関係性がとても丁寧でリアル、かつ理想的。最終的にはやっぱ彼女強い、というオチがつくのもリアルですよね。そう簡単に逆転はできない。けど、大成功だったのも間違いない、というバランス。

『花、総てはお前の中にある』モモヤマハ

 キャラクター的な背景、舞台的な背景どちらもよく分からない状態でいきなりセックスが始まる。それ故に幻想的な雰囲気が生まれてて青姦ながらロマンティックな感じが……と思ったらとんでもない事実が明らかになるのでビビった。過去のモモヤマ作品にも、こういう後半になって衝撃の真実が明かされる展開はあったけど、本作はその路線の中でも極北というか、どんでん返しが過ぎるw
 ロマンティックなんて欠片もねぇよ、とか思ってるとヒロインが主人公のことを肯定してくるのでまた衝撃。そして、この場面が本作の現在へと飛躍する場面なんですよね。透明な壁の向こうにいるヒロインがアップで描かれて迫力あるんですが、壁の向こうでちょっと理解の外感があって不気味なんだけど、ここはおそらく本作の中でもトップクラスにヒロインがストレートに色っぽく見える場面でもあって……。もちろんストックホルム症候群とかあるから、単に彼女がヤバい人だったと済ませるのは適切じゃないのかもしれないけど、ちょっとそういう風にも見えちゃうような迫力がありました。

『器巫女』昼寝

 因習ものって感じなんですかね。器として村中の男たちに犯されまくる巫女の話。初めてそれに参加する主人公の視点が徹底されてて、セリフよりもモノローグの方が多いのが特徴的。昼寝作品ですので、当然めちゃくちゃハードなことになるんですが、主人公の語りはどこか冷静というか、達観した感じなんですよね。回想ではなく、その場で起きたことに対して語るんだけど、それが妙に冷静で俯瞰的。極限状態なのに妙に冷静な考え事しちゃう感じとか、人間の心理としてリアルだと思いますし、本作の場合は、主人公が村の因習のことを疑わずに受け入れてるからこそ「まぁこういうものだから」となってるなじゃないですかね。セックスはするけどヒロインとのコミュニケーションという側面は完全に抜け落ちてるので、セリフではなく、主人公の勝手な、一方的な語りで構成されてるというのも納得というか、ハマってたと思います。

『青春リビドー山』位置原光Z

 第25回「敗軍の将」。敗戦し、その責任として何されるんだろう、というガールズトーク。緊張感ある設定から信じられないようなのんきな会話になるのが楽しい。下ネタの度合いがめちゃくちゃ低くて、乙女かよ、と思ってたらその件について最後にオチがつくのも笑った。3人に緊張感がなかった理由が明らかになったようでもありましたね。それほど困ったことにはならない、という腕っ節による自信w
 本筋とはあまり関係ないんですが、本作の眼帯&コートという様がめちゃくちゃ良かった。グッサァァと刺さりましたわ。妙なところに性癖あるもんだな、と我ながら意外。

「読者コーナー」

 グラビアアイドルが前号の作品についてコラム書いてるのでビビった。対象作品を再現したグラビア写真付きだ。そ、そんな人がいるのか……。脳が混乱するような感覚。私もあれだけの美少女だったらブログに自撮り載せてたなw(嘘ですそんな根性もありませんグラビア業界マジリスペクト)
forms.gle
 終わり。もう7月も半月経ってしまったよ。このあとゼロス感想もやるつもりなんだけど、どうしよう。ゼロスのが快楽天より多いよねw
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