北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

COMIC快楽天 2021年6月号の感想

快楽天 2021年 6月号
快楽天 2021年 6月号

 先月はモンハンやって時間を無駄にしました。反省してます。ぶっちゃけ今月もまだ無駄にしてます。
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『つまおと!』亜美寿真

 亜美先生、4文字タイトルシリーズがあると思うけど、「!」が加わるとよりポップになるというか、今までと一線を画してる感がすごい。序盤のくだりとかエロ漫画であることを忘れそうなキラキラ感。
 そっから場面が変わるといきなりチンコ出してるのが良い……良いんだけど、チンコ出して30分は笑うわ。童貞と処女の心理の機微がリアルすぎてヤバい。エロ漫画(いわゆる男性向け)読んでると「童貞あるある」みたいな展開はよくあると思うけど、それが連続した物語の中にキレイに組み込まれてる感、その精度が圧倒的だと思う。特にヒロインが勇気を出してチンコさわったら爪で亀頭を触ってしまって彼氏がビビるくだりの生々しさがどうかしてる。そこからビビる彼氏を見ることで精神的な余裕が生まれ、そのまま優位に立つようになる流れとかもうリアルすぎる。本人から体験談を聞いてるかのような迫力。童貞と処女の心理の迫力。
 ある種逆転的にヒロインが優位に立つんだけど、こっちはこっちで初々しいので極端に女性上位という感じにまではならない。相手を気持ちよくすることで余裕が生まれる心理、「これでいいんだ」と安心する心理がホント生々しいです。ヒロインがクンニされて、頭の中が彼の指の感触でいっぱいになる、という描写を文字通り「頭の中が彼の指」という絵で見せたのも最高。演出意図的にも分かりやすいし、ヒロインの顔とクンニの詳細の両方が同時に見れてエロ漫画的においしい。
 いやしかし、カップルの初々しさを追求するという意味である種極北のような作品だったと思います。すごかった。

『白い菫』Reco

 スミレと読むらしい。知らなかったでござる……。
 とにかくフリフリで、リボン、ハートが大量に施された冒頭の場面でのヒロインの格好が印象的。とにかくガーリー。何かしらヒロインの主張を感じるし、それと同時に幼い印象も強いので、この子に手を出しちゃダメだ感も少なからずあるのかな。あの格好だけでヒロインのことが最低限理解できちゃうような勢い。当たり前だけど、物語、キャラクターを描くにあたって衣装って大事なのですね。
 次の場面では部屋着(寝間着?)になって、大人たちの酒の席を覗く。 “いいなあ 大人たちだけでお酒飲んでるんだ” というこの状況、ヒロインとの格差がものすごく象徴的で良い。年下のヒロインに猛烈アプローチされる話は定番だけど、この年の差感の表現の精度が高い。
 そして、初めて屋外の場面でまた衣装チェンジ。外ということもあって、今までに比べるとかなり大人っぽい印象……にもなるが巨大リボンは欠かせない、というところに彼女の矜持を感じるw この衣装の違いに彼女の心境の変化というか、大人への背伸び感が現れててすげぇ良かったと思います。背伸びって行為が既に子供っぽいんですが、その積極性が可愛い。
 最後、エピローグでは制服姿。いろんな格好が見れてマジ眼福なんですが、ここではリボンなし。彼女にとって一番大事なのはむしろカチューシャだったのかもしれません。そんなカチューシャも、よく見ると各場面でデザインが違っていて、芸が細かすぎる。最後のカチューシャは以前のに比べると大人しめなんですが、これは学校用だからなのか、今回の出来事を経て彼女の中に変化が生じたのか、とか考えるのも楽しい。

『匿名のふたり』ごさいじ

 11年前の匿名掲示板の話。掲示板が全盛期というか、独特の文化が形成されてる感がある……というか、それが懐古の対象となってる事実におそれおののく。いやまぁ、時代考えたら当たり前なんだけど、そうか、そんな昔なのか……。キリよく10年前にしなかったのは震災の年を避けたかったからなのでは、などとメタな部分の想像。
 本作自体も素晴らしいんだけど、komifloのコメント欄が完全にタイムスリップしてて爆笑してしまった。作品とセットで1つの芸術になってる感がすごい。ごさいじ先生が初期にコメントを残してて、それがキッカケになってるような気もします。
 とにかく時代考証が面白すぎてエロとは無関係なところで楽しくなっちゃうんですが、当然エロも良くて、そっからのハッピーエンド感極まったエピローグも最高。この後も2人の幸せな日常が続いていく、みたいな余韻で終わるのは『卒業reward』でも同じなんですが、本作だとそこに匿名掲示板というギミックが加わってくるから本当に見事。回想(本作における主軸)がネカフェの場面で終わり、そこで掲示板をチェックしてると場面が11年後に飛んで現在、という場面転換も鮮やかすぎました。

『おとなり』楝蛙

 おねショタ。しかもギャル。これは良い。楝蛙作品のギャル、良さの極みだ。世界平和。
 とにかく優しい話なんだけど、ギャル度はかなり高くて、その描写の精度が高い。ショタのファーストキス(たぶん)が舌ピとかなかなか衝撃的なんですが、ヒロインの尻のアップの場面で見えるパンツの派手さとかもめちゃくちゃエロかったです。ギャル、良い。
 ギャル感も最高だし、優しいお姉さん感もめちゃくちゃ良い。そしてショタも良い。一緒にゲームする場面、最初は正座してたのとか可愛いですよね。そして『スマブラ』は小ジャンプが重要w
 そんな社会的属性の違う2人で出会うきっかけがスイッチのローカル通信。お隣さんとローカル通信。夢がありすぎるでしょ。『匿名のふたり』の舞台設定も最高だったけど、これまた最高。みんな発明的すぎる。私も『モンハンライズ』野良マルチじゃなくてローカル繋いでみるか……(何もないぞ)。
 エロパート。当然ヒロインが主導なんですが、一方的な中にも彼女の優しさ、そしてそれを受けるショタの素直さが見れてもう良さが極まってる。ちょっとこれは優勝ですわ。

『そういう日も…』うるぴな

 完全にヒロインの主観、ヒロインの語りによって進行するんですが、これがとにかく面白い。だらしない大学生が高校時代の制服(ノーブラ)着て出かけることになるんですが、正体バレるバレないのハラハラからのエロの展開が楽しい。ヒロインが底抜けに明るいんだけど、エロが始まると意外なほどハードというか、男がかなり支配的で、暴力的ですらある雰囲気。作品がぐっとダークになるかと思ったら最終的にはコメディ特有の強引なハッピーエンド感に落ち着くので笑う。ナメてた男に逆転されるような話だったんですが、最後の最後に彼のバカさが際立つので2人のパワーバランスがちょうどいいところに収まるというか。あのエロパートで暗くならなかったのすごいw ヒロインが快楽堕ちみたいに感じにならない(ように見える)のも特徴的で、視点が常にツッコミ的な雰囲気なんですよね。キャラクターの魅力って大事だわ。

『足をピンと!』Beなんとか

 Beなんとか作品なのに男が普通だ……と思ったら脱いだらムキムキなので安心しました。安心とは。
 よく変なオナニーしてるといざセックスするときに苦労するって話聞くんですが、そういうのって大体男側じゃないですか(私の情報が偏ってるだけかも)。本作は女性側のオナニーが問題。股を閉じて足ピン状態をキープなので物理的に男が挿入するのが困難。強すぎる刺激とか感覚が麻痺してしまう話ではなく、体位に問題があるとした設定が秀逸だったと思います。要するにカップルが共通の困難を乗り越えてく話なんですが、それが絵として一発で分かって、セックス時の絵の個性に直結する。このワンテーマで最初から最後まで楽しめるから見事っすわ。エロ漫画として、読切としてとても良い。
 ヒロイン側に問題がある話なんですが、カップルとしての関係性としてはお姉さん的でむしろヒロインの方が優位に立ってるような印象。この優しく受け止めてくれる感じが可愛かったです。そして、最後に実は彼氏の方にも問題はあって、とオチがつくのも秀逸。2人の関係がより深くなったと感じられるし、今後もセックスを続けていくと想像させられるような余韻。

『おおきい後輩×ちいさい先輩』あらと安里

 でかい後輩(幼馴染)がからかってくる。こういうラブコメって割とすぐにヒロインがデレるイメージあったんですが、本作はからかい設定がかなりハードというか、容赦ない。先輩の方がマゾ的に描かれなくて、むしろ可哀想的な方向に近い。最後の最後になってようやくデレた……デレたと言えるのか? というバランス。徹底してて良かったです。
 全編を通じてヒロインが強いので、完全無欠の存在なのかと思いきや、彼女の感情が揺らぐ瞬間がいくつか用意されていて、そこが物語の転換点になってますね。主に先輩が勢いに任せて失言するんですが、そこでヒロインの優位性が崩れることはないものの、彼女の心の内がちょっとだけ露呈する。このことで彼女が血の通ったキャラクターになったと思います。互いにムキになって加速していくような話なんですが、彼女にも感情の揺らぎがあることでキャラクター的な魅力が、奥行きがぐっと増したのではないでしょうか。

『セーラーマント3』mogg

 3話目。『2』と『3』で前後編になってるんですが、作品としての毛色はかなり異なってくるので普通にそれぞれ単独の作品のようにも思える。要するに、新キャラ。あの話の続きで新キャラが来るとはまったくの予想外でした。そして、ギャル。mogg作品のギャル、とても良いです。そして謎に充実していくバトル描写。このシリーズの中でも屈指のバトル描写で、通常のバトル漫画的な高揚感も十二分に味わえたので驚きです。完全にスーパーサイヤ人展開してて笑ったんですが、それがビジュアルの変化、そしてエロ漫画的な盛り上がりと相まってめちゃくちゃ楽しい。変身シーンがマジで、「エロ漫画にしては」とかそういうの抜きでかっこいいので笑ってしまいました。予想外に、予想以上にかっこいいと人は笑うらしい。それこそデウスエクスマキナ的に強引に物語が解決していくんですが、荒唐無稽にどんどん飛躍していく様が面白すぎる。
 それでいて、ゆるふわな百合的な魅力も同時にあるから不思議な作品でしたね。今までの2作も充分面白かったんですが、本作で一気に見る目変わったというか、より好きになってしまった……。

『授業をサボって』ほしとラッキー

 体育の授業をサボって教室で。読んでて驚いたんですが、キャラクターの背景、物語の前後みたいなものがほとんどない。ただ、空きの教室で起きていること、その事実だけをものすごく丁寧に描いてる。心の声もないから分かりやすい物語性とか、何がどうだった何がどうなる、みたいな要素が一切ない、分からないままなんですよね。2人のことも他の普通の作品に比べるとよく分からないままなんだけど、2人の言動に感情が多分に漏れ出てるので読んでてめちゃくちゃ味わい深いし、エロい。
 さらに言うと、最後、エピローグでヒロインの女友達が “莉沙ってさー 嘘つくの下手だよね” というセリフを吐いて終わる。要するに、それまでの主人公とのやりとりの中にも嘘があったのでは……みたいな想像の余地が爆発的に膨らむ。もしくは、彼女の下手な嘘に簡単に引っかかってしまう主人公だからこそ生まれた一時の関係性だったのかもしれない、とか余韻が良い。コメディみたいに明るくはなく、悲劇のように暗くもない、主人公と同じで状況が飲み込めないまま、事態を把握できないまま関係が終わる……いや、終わってないのかも? みたいな余地もありますね。何なら恋の成就というドラマチックな内容だったと読むこともできる……かも。嘘と明かさなかった嘘がどこにあったとしたら、と考えるだけでいろんな見え方がしてくる作品だったと思います。ただ、即答だったので “もしかして俺の事…” の答えがNOだったのは真実な気がします。気がした、私は。

『大上さんちの日未子さん』Hamao

 結構前にホットミルクに掲載された作品の続編らしい。ロングスパンだ。さすがに本作単独で読んでも問題ないですけどね。
 旅行帰り。旅行とか旅館ってのはよくあるシチュエーションですけど、その逆転の発想のようでめちゃくちゃ面白かった。旅行はもちろん楽しいけど、それと同じくらい家に帰ったときの心の動きにも特別なものがありますよね。安堵感、疲労感、旅行が終わってしまった寂しさ、日常が再び始まる憂鬱。旅行の高揚感をやや引きずったままだと我が家がいつもと違うように見えたりして。疲れてるのに荷物の整理しなくちゃいけないめんどくささ。もうこの着眼点だけで勝ちですわ。めちゃくちゃ面白い。
 カップルのイチャイチャ感としても絶品で、ちょっとふざけながらもイチャつき始める感じとか破壊力がすごいw そして、白眉はお風呂。エロ漫画だと旅館での温泉って定番のシチュエーションだと思うんですが、本作はあえて自宅でのお風呂。この情感だけで最高だし、そこに濡れた髪のヒロインがめちゃくちゃ可愛いのでたまらん。もちろん最初から可愛いんだけど、お風呂の場面でガラッと雰囲気が変わったのでぶっ刺さりました。
 その後も、ここまで純度の高いイチャイチャ感は逆に珍しいというか、分かりやすくドラマチックな要素は全然ないのが2人の日常感としてめちゃくちゃ良い。ものすごくミニマムな話なんだけど、だからこそ2人の関係性の魅力がシンプルに詰まっててヤバい。あとやっぱヒロインの裸体、キャラクター、イチャイチャ、すべてががもう素晴らしすぎてですね……。

『初体験』八尋ぽち

 初めてを迎えるカップルがなぜか変態プレイに行き着いてしまう、という意味では前作の『彼女結び』と同じなんですが、そのプレイ内容が意外。
 ローションプレイで、これ自体はまぁ割と普通というか、初めての挿入を補助するアイテムとしてかなり全うというか、普通にリアルでも有効なアイディアだと思うんですが、そこからの飛躍にぶったまげました。ビジュアルのインパクトがすごいw マジレスすると、チンコをシコるのではなく女性の中に入れる目的だとそれ用のローションを用意しないといけないので、エロ漫画で見たからと安易に真似するのにはリスクがあります。気をつけましょうね(真似しねぇよw)。「正しい知識でセックスしましょう」。
 荒唐無稽なプレイなんだけど、これはめちゃくちゃ気持ちいい奴なのではないか……? と想像をかき立てられる。この魅力がヤバいですね。若干女性をモノ扱いしてるような感じもあって、下手すれば暴力的な雰囲気になりかねないプレイなんですが、それを初々しいヒロインの暴走という形で描いたバランス感覚も見事だと思います。初々しいカップルの微笑ましい初体験エピソードとして堪能できる……が特殊すぎるw 挿入できるか不安、とうい出発点はめちゃくちゃリアルというか、実際にそこらじゅうにある悩みだと思うんですが、そこからのジャンプが大きすぎるw

『あいつがうちにくる理由』うぱ西

 巻頭のカラーイラストがめちゃくちゃ良かった。シンプルながら要素が盛り盛りで最高。制服の下にメイドビキニ、という絵面が本編にはなかったので、そういう意味でも特別感あったと思います。最高。
 話としては、幼馴染がメイドさんビキニ。過去のうぱ西。作品と比べてもむっちりめの体型をしていて、それがメイドビキニで強調されていて非常に良い。というか、1ページ目の着衣状態から既に良い。あと、1ページ目2コマ目の “ふーん” の顔めっちゃ好きです。超可愛い。
 唐突なメイドビキニなので大味な感じなのかと思ったら、 “ちゃんと私のこと意識してくれてたんじゃん” の場面で一気にエモくなるから最高。ここまでキュンキュンさせられる作品とは思ってなかったので不意打ち食らった感。友達だった2人が一線を越えるドラマが丁寧に描かれててとても良かったです。メイドビキニなのに、というギャップがまた魅力を生んでたと思います。コスプレでこの温度の作品って珍しいのでは。

『隠し事』鬱ノ宮うかつ

 誤植があって(komifloだと修正済み)、それにまつわる誤読と作者による訂正がkomifloのコメ欄で繰り広げられてて最高でした。優しい世界が広がってて最高。てか、感想ブログやってる身としては誤解釈って他人事じゃないというか、私は誌面に誤植がなくても誤読することあるから……。
 家の蔵に逃げ込んできたお姉さんとの夏の日々。鬱ノ宮作品らしく1ページ目から情報密度の濃い絵に圧倒されるんですが、本作だとそこに木漏れ日、そして室内の場面では光と影がバキッと強調されてていつも以上に絵の魅力、迫力があったと思います。日陰感ってのが本作の話にもマッチしてるようで、2人だけの社会から隠れた世界という感じで良いんだよなぁ。
 闇を感じる設定だし、先行きも決して明るくはないだろうと感じられるんですが、2人のキャラクター、2人の関係性だけに焦点を絞ればかなり明るいというか、ハッピーな感じもあってそのギャップですよね。ショタというほどは若くないけど、ヒロインの年上お姉さんがマジ絶品。彼女のことは守らないといけないんだけど、彼女の方が精神的に優位に立っていて、という関係性が良い。子供扱いに反発して攻守交代し、そっからさらに「優しいSEX」へと繋がっていく展開も最高でした。2人のキャラクターの魅力がそれぞれよく現れたエロパートが3つ。
 そして、ラストの主人公の決意の声をかき消すかのような虫の声、そして彼女の余韻だけが残ったやかましくも空虚な場面で終わっていく感じも素晴らしかったです。猫ちゃんも可愛い。その猫ちゃんは弱った生き物を守ろうとする主人公のキャラクターを示す象徴みたいなものでもありますね。

『発情タクシー』アシオミマサト

 タクシーの運ちゃん。バスガイドさんとかは定番だけど、タクシーって発想はなかった。たしかに独自の衣装あるし、夜に狭い個室に2人きりというシチュエーションが自然だからエロ漫画向きな題材ですね。目から鱗ですわ。逆に言うと、リアルの女性運転手は夜の酔っぱらい相手とか大変だろうなぁ、とか。
 そんな夜に車内という密室で2人きりという状況下での互いのエロ妄想が楽しい。大人の恋愛心理戦なんて立派なものではないw その軽いノリの交流含めて魅力的な作品だったと思います。ノリだけで意気投合して海行っちゃう感じちょっと憧れます。タクシーなので場所を自由に移動できる、というのもエロ漫画的に面白いですよね。シチュエーションの自由が大きいというか。
 本作のハイライトはやっぱりドライバー認定証を見ながら射精する場面でしょう。別に認定証そのものがエロいって話ではないんですが、やっぱタクシーの運転手ならではのネタとして良いですよね。ドライバーとしてしっかりした社会的な顔と、今目の前に広がってる個人的な女性としての顔、というギャップも素晴らしいです。あと、個人タクシーと明らかになるので、「よかった これなら問題にならない」と安心できる効果もあったと思いますw

『とうとうと、金木犀』シャモナベ

 女子バスケ部と男子バスケ部。ヒロインはメガネなんですが、最初にバスケシーンを描くことでメガネなしの状態で作品が始まるのが面白い。最初にメガネありだと「メガネ外すなよぉ」派の人がどうしても出てしまうんですが、最初がメガネなしなので安心。試合のときはメガネ外すんだけど、初めてを迎えるときはメガネ着ける。私生活すべてで着けるわけではないんだけど、というのが良い。最初はやっぱ怖いし、緊張も警戒感もあるのでメガネは必要と彼女が判断したのであろう、と伝わってくる。部屋も暗くするんだけど、それでもメガネは着ける。最高。その後、ある程度関係を重ねて慣れてきた頃には最中でもメガネ外してるんですよね。この機微よ。てか、めちゃくちゃリアルだったと思います。メガネ使いが一流。
 男子バスケ部のエースにある日突然告白されて、そのまま付き合って、という話で、2人の恋愛関係だけを考えたらかなりシンプルな物語なんですよ。すれ違いとか、困難とかも特にない。一応体格差カップルなので入るかどうか、みたいなハラハラはあるんですが、それも普通にやったら普通にうまくいく。話の外観だけを見たらものすごくシンプルで単純なんだけど、徹底したヒロイン視点で描かれる心理の機微が丁寧なのでその起伏を追っていくだけでめちゃくちゃドラマチック。さらに、ヒロインがバスケ部を辞めようとしてたのを止める、というドラマがエロパートの外に用意されてて、その描写も良かった。特にラストシーンとか絶品ですよね。こういう話ってエロ漫画だとエロに没頭するあまりエロ以外の要素を捨ててしまう、みたいな快楽堕ちみたいな話が多い印象なんですが、本作は逆にエロにはめちゃくちゃ没頭するけど、それを経て彼女が人生に対して前向きになる、という決着になるのが最高。最初から最後まで彼女はバスケのシュートを外しまくるんだけど、最後のシュートミスは驚くほどに爽やかな場面になってるからすごい。

『姉の、犬』モモヤマハ

 姉が犬になる。1ページ目はコミカルに見えなくもないし、ファンタジー的な話なのかと思ったら、犬になった理由が心を壊してしまったから、と明らかになるので衝撃。
 ただ、その後のエロに飛躍していく展開が(主人公からしたら)急で、その振り回される感じはコメディっぽい印象もある。あるんだけど、ちょくちょく差し込まれる過去の描写がことごとく重いので現実に戻される。そんな暗い現実から目を逸らすかのようにエロに没頭していく心理がリアル。
 徐々に過去が明らかになっていき、姉が犬になった最大の理由が明らかになる。そこには主人公が密接に関わっていて、何なら主人公のせいでもある(と自責の念にかられるには充分)。この構成も見事だし、前半で突拍子もなくエロパートが始まったと感じたローターも実は、と驚かされるのも面白い。
 公園でやっちゃう話なので屋外でのプレイになるんですが、重要な場面になると花が印象的に画面に入ってくるんですよね。特に主人公が “俺と二人でも無理か……?” となるコマで主人公の顔に重なるように描かれてるのとかマジ最高でした。屋外だからこその描写で素晴らしかったです。

『恋愛パッショネイト』スミヤ

 幼馴染。昔からヒロインの方が男勝りで、常に彼女が優位に立ってる関係性なんだけど、本作は完全にヒロイン視点の話になっててそこが意外であり面白かった。男の方は「お嫁さん」と呼ばれるようなキャラで、男性性をヒロインに吸い取られてるようなキャラなんですが、ヒロインが彼のことをからかってるようで実はメロメロなのはどっちなんですかねぇ……と話が展開していくのが良かった。からかい系のヒロインの話ではないんですよね。むしろヒロイン視点で主従が逆転してしまうような展開になる。彼の方は子犬みたいな雰囲気なんですが、その子犬っぽい雰囲気を武器にヒロインに対して逆転する。 “こんな勢いだけでしないから 安心して” の場面とか、寸止め的でもあり、紳士のようでもあり、まさか計算? みたいな深読みもしたくなってくる。彼の内省に関しては一切描かれないので、実は策士ですべて彼の手の上で転がされていたのでは……とか怖くなってくるw(別に怖くはない)
 その関係性がエロパートでも描かれてて、ヒロインの方だけ裸になるのとか顕著でしたよね。パワーバランスがすっかり逆転しちゃってる。挿入後の体位も男性が主体的、支配的なものが多くて(もちろん愛はあるんですが)、それが冒頭の場面とチグハグに感じられてとても味わい深い。
 それと、本作、エピローグ、事後の場面が3ページと多め。2人とも寝落ちした後の話で、ここでヒロインの独り舞台になって物語が終わる……と思ったらそこに彼が介入してきて、やっぱり彼にマウントを取られるw 最後の1ページがなくて、最後から2ページ目で作品が終わってて普通に良い読後感だったと思うんですが、そこからひっくり返されるから楽しいw

『青春リビドー山』位置原光Z

 第24回「早計」。女装。女装なんだけど、女装趣味ではなくBLで、相手である男友達はノンケなので彼に振り向いてもらうための女装。終始緊張感のない会話がおかしいんですが、それは男友達(だと彼は思ってる)だからなのでしょうね。ただ、酒のせいもあってご褒美としてキスはしてるらしい。この「してるんかい!」という驚きが良いですよね。これはもうあと一歩だろ、と作中と同じように思ってしまう。ただ、そこで前のめりになりすぎたせいで、今回のタイトルである「早計」。惜しかったw いやしかし、表面上は軽薄な会話してるんだけど、実はその裏では緊張感溢れる心理戦(一方通行)が展開されてるのめちゃくちゃ面白いですね。

forms.gle

 終わり。アンケートに「読みたいジャンルやシチュエーション」の欄が新しくできた(たぶん今月から)ので、好みをぶつける手段としてはかなり建設的なのではないでしょうか。
 ただ、私が読みたいのはどんなのだろうか……と考え込んでしまう。雑誌という括りで読む生活に慣れてしまったというか、飼い慣らされてしまった。好きなジャンルでいえば、おねショタ、もしくはギャル……って完全に今号の内容に引っ張られてる。いやホントに良かったのよ。
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