北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

WEEKLY快楽天 2023 No.33の感想

 この雨で気温も下がるはず……(頼む)。
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クラッキング』オル巣

 女性用風俗。最近何かと話題になる題材でいいね! とか思ったらめちゃくちゃハードなSMのお店だったのでびっくりしてしまった。女性用風俗の一般論的な話ではまったくない。ただ、女性用風俗としての一線はキッチリ守ってるのが本作の白眉なのも確か。とんでもなくハードなプレイに発展し、その描写もダークな雰囲気になってるんですが、あくまでも「客の要望に応えてるだけ」なんですよね。マッサージ店に行ったら快楽責めされてそのまま本番、みたいな作品は一線を画す。
 女性用なので、セックスのピークが射精になってない……けど男性用エロ漫画なのでクライマックスに射精はする、という矛盾を抱えたコンセプトながらそれを文句なしの形で成立させてるので感動とか感心、「プロだ……」という畏敬の念がラストには湧く。「イクの禁止」というのがSMプレイの土台としてあり、それを破ったことに対する罰としてプレイがどんどん過激化していく構成なんですが、普通のSM作品(SM店)と一線を隠すのはラストに罰が終わった後のワンプレイが描かれる点。涙を拭い、なでなでからの許可された絶頂。対面座位で抱きしめながらのフィニッシュ。正直な話ここまでハードなSMは怖くて無理なんですが、ラストの急すぎるデレ(奴隷扱いは続くがw)をされたらカタルシスやばいだろうな……という説得力は尋常じゃなく感じる。からのエピローグでフランクな会話に戻るのも「プロすぎる……!」という感じで好き。逆に言うと、最後のあのデレパートはサービスの終了から日常(店外)に向けたソフトランディングのような役割もあったのかもしれませんね。
 クライマックスとは逆にサービスの始まりの部分でもプロの技が感じられる。あまりに普通の会話で始まり、主人公が “予約の尾仕方間違えたのかな……” となるほどなんですが、そこでの会話を踏まえた上で主人公の尊厳をバキバキに折りに来る。ちゃんと会話には意味があったというか、プレイのために必要な情報を引き出してたというのが分かる。そこからの「始まる……!」という瞬間の怖さとその向こうにあるワクワク感とか超リアルでしたね。本当に「店」という設定をここまで丁寧に描いた作品はちょっと珍しいのかもしれないと思えてしまうほどの作品でした。

『おもかげ』ミナギリ

 公園での立ちんぼ女性と、時事系の動画配信者。これまたタイムリーな題材なんですが、そこにしっかりとドラマが乗っかっててめちゃくちゃ良いな。まさかと思えるほどにエモい読み味。「実は店に所属してる嬢なんですよ」とかゲス系週刊誌とかで特集されてそうな情報が盛り込まれてるのに、そこからドラマへの飛距離がえぐい。
 立ちんぼという話題性のあるテーマをそのまま描くのではなく、彼女たちが男性からあまりに身勝手な好奇心も向けられてるグロテスクさを含めて描いてるのが本作の設定の妙。金も払わずインタビュー的な映像を盗撮する配信者(それもチームの下っ端)、という捻った主人公の設定が良すぎるのよ。明らかに立ちんぼに対してバカにしてるが、本人も人のことを言えるような立場ではないし、その引け目は嫌と言うほど自覚してる感じがめちゃくちゃリアル。ヒロインとの交流を重ねれば重ねるほど、彼女は彼女なりに強い意志を持ってるのが窺い知れてくるので「あっちの方が立場上じゃね?」という気持ちになってくる。ヒロインの死んだ目にも思えるダウナーなまま固定された表情の中から徐々に彼女のキャラクターが垣間見えてくる変遷とか大好物でした。
 1ミリも表情を動かさずに “アハハ うける” と言うくだりが好き。これはドラマとか関係なく単純に好きな描写なんですが、そこにもしっかりドラマ的に意味のある描写(髪を触る癖)が盛り込まれてて次の展開へと繋がっていく。 “中卒でーす 馬鹿なんで” で確信を持つくだりとかも見事だったし、「店の人」に肩を掴まれるコマでの、手だけで分かる怖い人というのも漫画として情報量あって好き。ヒロイン関係ない描写なのでそこに尺割いてもしょうがないんだけど話をサクサク進めるためにも気の利いた描写がしっかりなされてる。
 ホテルに移動してエロパート。金は払って取材をすりゃいいんだけど、ヒロインの方から半ば一方的にプレイを始められてしまって、という後ろめたさと受け身性も良い。プレイを始められることで彼女に壁を作られてるような印象もありますね。そこからずるずると本番が始まってしまう欺瞞溢れるロジックも「プロの日常」って感じだったし、そこに照れてしまう主人公を見てヒロインがかつてのことを思い出す、という回想も最高。先ほどの髪を触る癖と対になる描写というのも気が利きすぎ。そこから「まだ続くの?」と思ってしまうほどエロが終わらない構成も特大ボリュームで好きだし、徐々に金の関係ではなくなってるのも感じられる。
 エピローグ。それまででは明らかにならなかったヒロインの中の変わらないものというのがセリフではなく示されて終わるのが最高。 “あの頃話しかけてたら” “なにか” “違ったのかも” を踏まえたラストになってるのが良すぎる。違った未来へと続いてくれ~。

エロマンガアカデミー」

 #48、おさとう先生による「ダメ人間の漫画との向き合い方」。一般での連載が好評の……という部分が明け透けに語られてるの珍しい。別にその話がメインになるわけはなく(エロの話もそれほどメインではない)、単純にインタビューという形でワニマガ凱旋という感じ。エロ漫画の新作は無理だけどインタビューなら凱旋可能、というのは結構今後の可能性が広がる一手なのではないか。一般連載中の先生は他にもいるし、出てきてくれないかな。
 内容としては、「人間関係めっちゃ大事」という話。最初ダメ人間の登場する漫画の話かと思ったんですが、「ダメ人間=作者」という話であった。エロとは関係なく漫画の一般論、どころか人生の一般論みたいな話にも思えて、本コーナー史上最も射程に広いテーマだったと言えるかもしれない。 “言葉を尽くすのをサボらない” はマジで金言。


 終わり。恥ずかしながら『ヤニねこ』の制作体制について知らなかったので「おさとう先生だったの!?」と今更すぎる驚きがありました……。
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