北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

WEEKLY快楽天 2021 No.23の感想

 もうすぐワクチン打てる……かもしれない。
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『淫謀 強制快楽エステ』シャイン・ナビス

 中編。後編じゃなかった! 3週分の表紙と本編と連動する形になるのですね。これは面白い。
 前編の感想とも重なるんですが、主人公は聴覚を封じられてるので、施術側がめちゃくちゃ喋るんですよね。言葉責めのようでもあるんだけど、彼女には伝わってない。よって、単純な悪意の発露として読者の目に入るので不気味。施術師同士の会話のノリが妙に軽いというか、軽薄で、その対象を完全にナメ切ってる感じとかもイヤァな感じとして絶品でした。目的が分からない怖さとも通じるけど、とにかく彼女たちの底がまったく見えない。そこに不気味さの本質があるように思います。
 中編だといよいよ絶頂に導かれるんですが、そこに “望まぬタイミングで与えられる快感はお辛いですよね” という暴力的なエロ全般に当てはまるような真理を突いてくるから面白い。そこまで理論的に分かった上でやっている、という悪意ですよね。
 このままチンコ(男)が出てこないまま終わるのか、という点が気になるんですが、それが同じくらい気になるのが主人公の顔。こんだけじっくりとしたペースで描かれてるのに、彼女の顔が描かれるコマがめちゃくちゃ少ない。本話のラストでいよいよ目と耳が解放されたので、最後(たぶうん)の後編は顔出した状態でのクライマックスなのかな? という気もしますが、とはいえ顔を隠したままここまで通したのはすごいことだと思います。
 目と耳の解放の件。解放はされたんだけど、それは決して事態の終了を告げるものではなく、直接語りかけられる、という最終フェイズの恐怖に繋がってるのが最高でした。ホントもうね、本作怖いのよw ただのレイプ作品とか違う、怪談とかそういう類の怖さがある。

曲尺手さんと大縄くん2 ~大縄くんとデート編~』Ash横島

 この後の「エロマンガアカデミー」と連動した作品。そっち先読んだ方が分かりやすいかもしれませんね。キャラクターの行動原理を把握しようという話の一環として最終段階では削られるヒロイン側のモノローグを掲載したバージョンも読んでみよう、というのが今回の作品。個人的には副音声みたいなイメージがしっくりきます。komifloコメ欄だと「強化パッチ」という表現使ってる人がいて笑いました。うまいこと言うわ……。
 厳密に言うと、ただ足しただけではなく、男側のモノローグを消した上でヒロインのモノローグを追加。もちろん便宜上のもので、本来作品として発表する目的のデザインではないので、これだけ単独で読んだら文字が多くて漫画としてのバランスは悪い場面もなくはないと思うのですが、2周目のお楽しみとしてめちゃくちゃ面白い。そして、作者が作品の表面には直接描かれない部分をここまで考えているのか……と感動します。当たり前なんだけど、作者はすべてを把握してるわけで、読者が作品を通じて受け取る情報は氷山の一角に過ぎないわけですよね。そして、その氷山の一角がどういう形で、それがどういう風に見えるのかまで含めて作者は考えてるわけで、なんかホントに頭が下がる思いでいっぱいです。神だわ……(創造主という意味で)。
 あと、原作読んだときにめっちゃ気になってた「服の英語」について今回言及されたのも地味に嬉しかったです。めちゃくちゃすごい主張をしてるんですよねw あそこに心の声が漏れてたというわけで、本作のオープニングが服選びから考えても非常に興味深い、本作において象徴的なものの一つだと思います。
 視点が変わるだけで同じイベントが違って見える、という感動はデートの場面が大きかったんですが、それと同じくらい印象がガラッと変わったのが一度気絶してから起きてそのまま……という「朝ファック」の場面。快楽に興奮とは別に、寝起きということで彼女の心理が剥き出しになるんですよね。ここまでゲロ甘な描写を本来は全部カットして絵のみで描いてたってんだから驚きです。もちろんビジュアルを通じて伝わってくるものもあるし、だからこそ良いってのも分かるんですが、単純にもったいねぇなぁ、と貧乏性w

エロマンガアカデミー」

 15限目、Ash横島先生による「行動原理を把握する」。
 大体先ほどの感想と重なるんですが、2本分の手間がかかるのくだりとかマジ圧巻でした。そんだけの苦労をかけてるんだからそりゃ面白いわけだわ、という納得。それと、男女両方の心理を考えているうちに過去の思い出が幽霊のように甦ってくる話も爆笑しました。これは物語の作り手あるあるなんだろうなぁ。リアリティを描こうとすると必然的に自己の内面と向き合うことになると思うので。エロ漫画だと男女のタイマンの話になるので余計にw
 こうした実験を通じて改めて感じるのは、ヒロインを他者として見るタイプの作品、良いっすね。何考えてるか分からない、もしくは自分中心に考えすぎてしまってたのが、エロを通じて彼女の真意の一端を覗き見る、みたいな物語の感動はヤバいですわ。そして、今回は一端ではなく、すべてが見れるようになっててさらに最高。


 終わり。月刊の方の快楽天感想も終わったのでよかったら読んでね。
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