北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

COMIC快楽天 2023年8月号の感想

 夏バテの被害が例年よりも酷い。熱中症の足音が聞こえる。
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『オモイ×オモワレ』ホムンクルス

 フルカラー8ページと、おまけが1ページ。そんで表紙。ビッチな姉と純情っぽい妹の双子。主人公は姉のことが好きだが振られ、妹は主人公のことが好き。最終的に妹に気持ちが動く話になると思ったんですが、主人公が最後まで姉への思いを貫いたのが意外で面白い。これがあるから三竦みみたいな関係が最後まで保たれるんですよね。最終的に妹もビッチ化するんですが、それによって主人公が振り回される要素が増して落ちるのもギャグっぽくてすごい好き。
 同じ顔だけど表情によって別人と分かる、というのが実に漫画らしい楽しさですよね。髪型の違いはあるけど、それがなくても一目で見分けがつくし、それによって2人のキャラクターが鮮明に感じられる。短いページだからこその双子設定の強みが際立つというか。純情な妹を見た直後に同じ顔の姉がビッチムーブしてるのとかギャップがありすぎて二重にエロい。妹のキス顔と姉のフェラ顔が対比されてるのとか最高の場面だったと思います。
 青のパーカーと赤い髪留め(あと制服の赤いネクタイ)というそれぞれのイメージカラーになってるのもカラー漫画らしい仕掛けで良かったし、表紙イラストではその色の水着なのも嬉しい。

『おあずけ』楝蛙

 ギャルな幼馴染に勉強を教える。楝蛙作品のギャルが破壊力抜群でのっけから掴まれました。以前にもおねショタでギャル描いてて最高傑作だと思いますけど、本作も最高。「ギャル可愛い!」といきなりテンションマックスにさせられるオープニングが良いんですよね。アバンでヒロインを見せずに、男子たちの会話でその存在が明かされ、扉でドン。最高のオープニングだったのではないか。
 ギャルだが真面目に勉強。いわゆる毒親問題を抱えてるんだけど、毒親だからギャルになったのか、ギャルだから親とこじれたのかは分からない。どちらにせよ親への反発とかの心理は多少なりとも関わっているのではないか。健全な関係を続け、主人公の受験本番となったらヒロインが家出、受験用に泊まってるホテルへとやってくる。ギャルの家出とかエロ漫画的には定番なんですが、事前の毒親要素があるのでめちゃくちゃ不安になってしまうw 案の定親がクソだったんですが、それによって2人が保ってた受験勉強という建前が崩壊。主人公の胸で泣いてたヒロインが至近距離の上目遣いで “好き” と言ってくる場面の破壊力すごかったですね。受験前でセックスどころじゃないんだけど、そうも言ってられないw 2人とも受験という世間的に正しいことを捨ててその場の感情に任せて体をぶつけ合う、というのが非常に熱い。ついに結ばれるドラマと相まって最高の盛り上がり。主人公自身の問題もあるし、彼女の問題も大きすぎるんだけど、それはさておき……とエロに没頭しちゃう心理が良いスパイス。
 エピローグ。何かバレてたというのもリアルだし、何か許されたのもリアル。親からしたら喧嘩別れして家から出てった娘の行き先が前から知ってる人の元だったらある程度安心もするだろうし、助けられた恩もある。そして以前からの関係を知った上でホテルで2人きりになってしまったら……と察しがついちゃうんだろうなw

『瀬名さんは満たされたい』雲呑めお

 『ちる先生』シリーズに出てきた編集長のスピンオフ。ビッチとしての日常みたいな内容になるのかと思いきや、高校時代の後輩と出会って……というドラマ濃いめになったのが予想外で、これがめちゃくちゃ良かった。シリーズ展開としてはスピンオフなんだけど、本作の視点はほとんど後輩くんの方で、今も素敵な憧れの先輩(実はハプバー通い)という角度で編集長を描く。手練れの大人という意味では前に出てきたときと同じ印象なんだけど、そこに真面目な後輩くんのキャラクターが加わって一気にエモくなる。
 エロに至る前の緊張感のある駆け引きも良い。後輩くんが何となく好意を伝えると、大人の対応でいなされる……と思ったら即ホテルへ誘われる。ここらへんの話の早さが「さすが編集長!」という感じなんだけど、後輩くんの学生時代の思い出と比較されながら話が進むので、いろんな感情が喚起されるし、そのことを編集長は承知していて……という2人のテンションのギャップも良い。大人な女性に優しくも、それにしてはサクサクとエロに誘われていく感じとか最高なんですが、そこから後輩くんが真っ直ぐな気持ちのみである種の逆転を果たす展開もドラマチック。大人(のビッチ)として常に壁を作りながら冷静さを保ってた編集長が初めて揺らぎ、そこでようやく本番という流れもエロ漫画が描くドラマとして最高。挿入後は完全に後輩くんが主体となって進行し、編集長は受け身に回る、というのも彼女の心理の変化が感じられる。ただ、中で出したあと、まだまだ満足できない編集長が再び攻めに回って……と本編では描かれない2回戦以降があったんだろうなぁ、とフェードアウト気味に描かれるのも好き。気持ちが通じたあとに改めて攻めに回る編集長の姿ももっと見たかった……(ページが足りない)。

『元カノ』八尋ぽち

 彼氏が浮気して別れたが、再び言い寄ってくる。表面的に見れば彼氏が相当クズですよね。友人とかにこの話を聞いたら「大丈夫?」と心配になってしまう話だと思うんですが、実際に読んでると不思議とそこまでクズな印象はしない。ヒロイン視点の語りで、その心理がかなり乙女で、かつ彼氏(元カレ)への純情というのが丁寧に描かれてるのでその気持ちに肩入れというか応援するような気持ちに自然となってしまう。元カレの方がひょんなことからエロに勝機を見出してその方向でばかり攻めるようになるので、ちょっと快楽堕ちみたいな話なんですが、この事故的に気づくくだりが妙にリアルなんですよね。ヒロインの方は別れてからずっと我慢してたのに加え、長年の思い出がフラッシュバックして普段以上に感じてしまうし、元カレの方はこれで振り向かせようと必死なのでこれまた激しくなる。そこでまた事故的に寸止めプレイになる展開も最高(ひょっとしたら確信的かもしれないw)。ヒロインの心理としてはかなりドラマチックでめちゃくちゃ可愛らしいのに、実際に行われるのはハードで執拗な焦らしプレイというッギャップ。てか、この話をこんだけ微笑ましいバランスになったのはすごいですね。漫画のチカラを感じる。

『見た目がスベテ』スミヤ

 見た目がコンプレックスだったら姉の友人に見た目を好かれる。道行く人が振り返るレベルの美人というヒロインの説得力も見事だったんですが、何気に主人公のキャラデザも秀逸。世間的な美とは違うのは明らかだが、漫画的に愛嬌のあるようにも見えるし、普段から姉にブサイクと言われ続けて落ちまくった自尊心の現れのようにも見える。それでいてエロ漫画として竿役の顔がクドすぎないというか、それほど前面に出て主張するタイプでもない。マジで絶妙なバランスでは。そして、それがエロゲー好きのヒロインにとってはオークに見えて惹かれる、となった際のイメージの収まりの良さw 冷静に考えたらコンプレックスの人にオークとか言うの酷すぎるんですが、このヒロインの悪い面が「まさかこんな美人に言い寄られるなんて」という都合の良いドラマに説得力を持たせてるとも思う。これがただ単に「顔がタイプ」とかだったら「んなワケあるかい」となってもおかしくない。
 エロパート。童貞なのにオークとしてのケダモノセックスを要求されるとかハードル高すぎるんですが、プレイを進めるに従って主人公の中でハマっていく感覚があり、それが同時に自信の獲得でもあってドラマとして感動的でもある。ただ、やっぱオーク扱いは酷い話だし、歪んだ形での童貞喪失なことも自覚してるような冷静さも少しだけ感じる。セックス中に2人が特に対話しないのが良いんですよね。互いにモノローグはあるんだけど、どちらも相手に伝えない。歪んだ関係だけど、2人のデコとボコが合致したような関係でセックスがこの上なく盛り上がり……という面白さ。クライマックスとかヒロインが勝手に満足してる感じが良いんだよなぁ。

『わんダフルチェンジ♡』あるるも

 整形手術で異種化が可能になった世界。「最初からケモミミのある設定で良くない?」とか一瞬思ったんですが、イヌミミとシッポを付けたことによる予期せぬ変化が心身共に現れて……という展開がめちゃくちゃ面白かった。快感や心にも作用してくるのがこの設定ならではの魅力だったし、最終的には「本当に犬になってしまったとしたら……」と急に怖い話みたいになるのでマジでビビりましたw 実際は「なんちゃって」というプレイだったわけだけど、快楽堕ちでヒロインの理性が失われる展開とかエロ漫画では定番なので普通に受け止めてたけど、「さっきからワンしか言ってない……?」と気づくくだりとかマジで怖すぎるんだよな。彼氏くんあれで勃起不全になってもおかしくないレベルw
 個人的にはミミも良いが、シッポがめちゃくちゃ良かった。顔とは別に感情が表に出ちゃってる感じとか本当に愛おしいし、ヒロインはまだこの体に不慣れというのもあってよりその感情の露呈という特徴がより際立ってたと思います。エロとは別にシッポをひたすら触らせてほしいな……。実際の犬だとシッポってまず無理なので、人間の理性を持ってすれば……
(煩悩)。

『元カレとは絶対しません!』もじゃりん

 元カレに都合良く体を利用される。本号だと『元カノ』も「クズ男じゃん」となり得る話だったんですが、本作は突き抜けてるというか、同情の余地が1ミリも用意されず、「そんな元カレに良いようにされちゃうヒロイン可愛いよね」の一点に特化してくる。『元カノ』があの設定でうまいことドラマチックに仕立て上げてたんですが、そういうのをかなぐり捨ててる本作の特化ぶりにも感動してしまう。
 男性向けエロ漫画としてエロいプレイをこれでもかと詰め込んだら自然と男性優位で支配的な関係になっちゃうと思うんですが、そこにドラマとかの理屈を用意せず、「元カレに快楽堕ちさせられてる」という設定のみで成立させてるのが見事だし、だからこそのエロプレイのあれやこれやの詰め込みぶりがすごい。劇中でもそうですが、完全に男の欲望を満たすことだけに特化してる。
 ただ、ドラマはないけどヒロインのキャラクターはしっかり感じられる。このおかげで漫画としての魅力がバッチリ。快楽堕ちする過程を示すモノローグもそうなんですが、表情がマジ絶品ですよね。最初は不服そうにしてるんだけど、すぐに快感に流されてしまってドエロな顔になってしまう。次々と変態プレイを要求されるので、その度に冷静になるというか、驚きのリアクションが挟まれて、一旦素に戻るのもヒロインの表情(感情)の上げ下げが堪能できて最高だったと思います。

『おーだー・メイド!』玉ぼん

 双子メイドと生意気坊ちゃま。おねショタでメイド、しかも双子!! 約束された勝利。世界平和。坊ちゃまの明るく生意気な感じとか、漫画っぽくてめちゃくちゃ良いんだけど、ヒロインの双子がクールを通り越して冷徹なのがギャップでまた良い。無垢な坊ちゃまが残酷な大人の世界に放り込まれる話とも言えそうで、坊ちゃまのキャラ自体はラブコメとかになってもおかしくない明るさなんだけど、なのに……という良さ。
 ヒロインが徹底してクールでつよつよ。ほぼバトル漫画の住人になってる場面には笑ったと同時に非力な坊ちゃまを守るつよつよメイド双子良すぎる……。そして、本作の特徴はこの2人がしっかり悪い大人として描かれてる点ですよね。坊ちゃまとのラブコメとかそういう要素は皆無。手を出したのは興が乗ったから、そしてその理由はいけない煙。大人が2人がかりで坊ちゃまに手を出すのをヤバいこととして描いてるのはむしろ誠実だと思うんですが、そこに別のダーティな要素が加わってくるので余計にドキドキしてしまいましたね。一種のキメセク……。
 精通のくだりも良かったし、キスは双子同士でやるだけ、というのも徹底してて素晴らしかった。多少認めるような部分はあったと思いますが、最も信頼してて、キスを求めてしまうような相手は坊ちゃまではなく姉であり妹。ある意味で坊ちゃまは部外者、というバランスが良いのよ。

『アリサの思い通り』ゆりしましろ

 交際相手は箱入り娘。相手をお嬢様だと過剰に思って壁を作るというか無意識的に一歩引いてしまっていた、と分かる展開が超良い。プロットだけ見たら「お嬢様だと思ったらエロエロ」みたいな話なんですが、それだけではない機微がある。主人公とヒロインのキャラクターが派手すぎないけど、丁寧な描写の積み重ねで、本編以前までのドラマや関係性まで想像してしまうような良さ。
 実はヒロインが求めてくる話なんだけど、逆転というほど極端な話ではなく、ヒロインのお嬢様らしさは保ちつつ、それでも新たな一面が見えるという感覚。積極性とプレイの過激さのバランスがめちゃくちゃちょうどいい。ヒロインが求める形で今回のセックスは始まるけど、進むにつれ一方的ではなくなる。中で一発出したあとの、2回戦に向けてヒロインがゴムに手を伸ばす場面とか最高でしたね。静かにこっそり、それでいて射精の直後に手を伸ばしてるのが彼女の心理の現れとしてめちゃくちゃ良い。直後には着用してすぐに始まってるんですが、彼女の方からゴムを渡す様子も妄想してしまう。

『秘密基地』ほしとラッキー

 橋の下で仲良くなった子と再会する。年の差のある2人の秘密の関係という感じだったのが年月を経てついに、という良さ。「永いおあずけ」というアオリがうまいというか、もうこれがタイトルでも良かった気もしてくるレベル。
 過去の2人の交流も微笑ましく(主人公が若干失礼w)、そことのギャップとしての現在パートがエロいと同時にエモい。互いにこの思い出は大切なものだったし、ずっと覚えてたんだけど、恋心というのはヒロイン側に偏ってるのかな、みたいな部分が口数の多くない2人のやりとりから透けて見える感じが良い。挿入後に初めてのキスを迎えるイビツさも2人の関係性の不器用さとして魅力的だったし、その際のヒロインの “それだけだと…” “思いますか…?” のセリフが良すぎるんだよな。主人公側のすっとぼけかつ脳天気さがちょっと強いので、それに勝手に翻弄されつつも気持ちを積み重ねてきたのであろうヒロインのドラマを感じる。
 バックでしようと一度抜いたが、目の前にチンコがあって思わずくわえるくだりも超良かった。全然セリフはないし、一見すると何考えてるか分からないタイプのヒロインなんだけど、本作全体を通じて気持ちのデカさはしっかりと伝わってくる。

『妹地獄』mogg

 妹に依存される。話としてはよくあるラブコメって感じなんですが、妹の妹像がリアルというか、思ってた妹らしさと全然違うので笑った。想像を遙かに越えるほど幼い。見た目は普通なのに、というギャップというか捻れ。ツンデレ妹とは違って、ガチで幼稚なのでコミュニケート不能なのもエロ漫画らしい強引さ。
 妹のキャラクターも強烈なんですが、それに振り回される兄も良い。振り回されて「地獄」と言いながらも彼女を世話することに生き甲斐を感じてるようにも見えるんですよね。兄の方がむしろツンデレで王道なキャラクターと言えるのかもしれない。ラストの初料理のくだりとか完全にギャグに振り切れてるんだけど、ツッコミを入れるのではなく妹の頑張りに感動してしまうのとか、兄貴がチョロいw

『失恋ララバイ』おから

 従兄妹に恋してたが彼氏ができたらしい、と思ったらその妹が代わりになると言い出してくる。一応冒頭の場面は男性主人公視点で進むんですが、それでもヒロイン(従兄妹の妹の方)がグイグイ物語を動かしてる印象。エピローグでもヒロインによる「計画通り!」というオチがついて、本作全体が彼女の手の上だったと明らかになるんですが、そうだとするとタイトルの『失恋ララバイ』というのが意味深で、失恋した男性主人公のことかと思いきや、長年失恋していたヒロインを指していたのではないかと思えてくる。姉が協力してたのではなく、姉も含めて騙していた、というヒロインのしたたかさが良いですよね。3人の中ではおそらく最も年下で、だからこそ疎外感を抱いていた彼女の復讐……と言うと物騒だけど、それくらいの決意を伴った行動だったわけで。初読時はからかい好きな子の暴走みたいな印象もあったけど、実際はその内に秘める気持ちはもっと大きかった……と非常にドラマチック。計画通り手玉に取るけど、その過程ではかなり危なっかしいというか、年下らしい弱さがちょくちょく出ちゃってるところとかめちゃくちゃ可愛かったです。
 物語的背景で、実際に描かれるのは思い出の中の1コマだけだったヒロインの姉。キャラデザがめっちゃしっかりしてるというか、キッズの憧れる理想的年上お姉さんという感じでこれまた最高でした。あんな微笑みされたらガキンチョはイチコロですわ。ヒロインが嫉妬するのもやむなしですね。

『プチエッチ・トライアル』かづき

 彼女に「ちょっとえっちなバイトしてた」と告げられる。もうこの設定で良すぎでしょ。「ちょっとえっち」がどれだけなのか気になってしまうし、「してた」と過去形なことで少し距離があるのも独特の良さを生む。その後、どんなことをやってたか、と再現するプレイになるんですが、「彼女がプロの技を披露してくれるんですか?」というワクワク感もあって、順調にエロくなってくると嬉しいんだけど、エロくなりすぎると「こんなことまでやってたの?」とか心配にもなってくる。何よりこの即物的にエロを享受してる状況なのに彼女に対してミステリアスな魅力が生まれてしまうこの構図自体が最高。彼女が明るく楽しそうにノリノリな感じとかも安心するし、だとすると一緒にプレイに参加する喜びもあるし、ともう良さのスパイラル。
 かづき先生は以前にもお店の話を何度か描かれてて、個人的にめちゃくちゃ好きなんですが、本作はその系譜にありながら変則的なアプローチになってるのが魅力。お店での危なげだったりイリーガルな雰囲気ではなく、恋人同士のイチャイチャ感でコーティングした話なんだけど、「お店でここまでやってたの?」という謎が生まれることで急激に奥行きが出てくる。基本はリフレらしいが、今この状況(端的に言ってセックス)は恋人との再現プレイが盛り上がっちゃっただけなのか、当時を忠実に再現してるだけなのか……とエロくなればなるほどエロい喜びと違う感情が湧き上がる。
 彼女の方は再現という役が一つ乗っかることでいつもよりもエロくなっちゃってるような良さがあるんだけど、彼女が役を徹底するほど真実が分かりづらくなってくるというか、どこまでプレイなのかの境が曖昧になっていくようで面白い。結局のところ、真実はどこまでなのか、というのがハッキリとは分からないのがまた良い。最初に読んだときは膝枕授乳手コキまでがお店でやってたことだと思ったけど、今はもっと手前の、ただの膝枕止まりだったのかも……という気もしてる。読者が居酒屋に集まったら激論できるで。

『魔女の訪問販売』大伴ヤキ

 魔女を自称する子が訪問販売してくる。突飛な設定で、主人公も「痛い子来ちゃったな」と思ってたくらいなんですが、そんな2人が仲良くなるようになり、今ではすっかり入り浸り、という関係性がめちゃくちゃ魅力的。そこに極端に多くの尺が割かれてるわけではないんだけど、2人の関係の変遷にエモさを感じてしまう。キャラが良いってことなんでしょうね。
 栄養ドリンクが効いたので追加購入、増産を希望したら作り方が特殊で……というエロへの入り。魔女に対する認識の違いによるすれ違いであり、それでもヒロインが作っちゃうのは好意の現れでもあって……ラブコメ的な話にも見えるんだけど、2人のキャラ及び心理がしっかり描かれてるから話に引き込まれてしまう。特にヒロインの幼稚に見えたり、主人公への確固たる思いに関してはしっかりした印象でもあり、エロに関しては体のド迫力で圧倒されるし、と多彩な顔を見せてくれるのが本当に魅力的。最後とか完全に爆発オチで勢い重視のギャグっぽい印象もある作品なんだけど、2人のドラマに関してはふざけたノリだけではない良さを感じてしまう。

『喫煙は恋のリスクを高めます』ねとろもりこん

 友人の結婚式の喫煙所で思わぬ出会い。最近は喫煙者の肩身が狭くなってきてるとは思うんですが、だからこそ喫煙所での交流は濃いものになっているのかも……という設定が良い。まぁ、私は非喫煙者なので幻想込みなんですが。
 大人な2人の健全な出会い、という生々しさが魅力的。そっから「実は狙ってた」と単にキレイなだけじゃない大人のしたたかさが見えてくるのもめっちゃ良い。ギャグもちょこちょこ差し込まれて(みつをw)、当人たちもダジャレ的なくだらないことを言うのが大人の余裕というか、そこまでチカラ入ってない感じで良いんだよなぁ。普通にロマンティックな話ではあるんだけど、ずっこけるような瞬間も適度にあってそのバランスが絶品。
 個人的にめっちゃ好きなのは挿入直前の “新郎新婦も” “今頃セックスしてるかな” というセリフ。2人の出会いを思い起こさせるという意味ではオシャレなんだけど、内容がゲスくもあり、それでいて今この場のエロをより加速させるような展開にも繋がってて本当に好き。

『ドタバカギャル』森シンリスク

 タイトルが良すぎる。元気いっぱいでコミカルなノリが魅力的な作品だったんですが、それに対する「ドタバカ」。言い得て妙とはこのこと。そんなラブコメ感のある作品にふさわしいヒロインが本当に可愛くてですね。特にデフォルメのコマが多くて、それがマジで好き。2ページ目の「ヒョコ」とコマ枠に手をかけるとことか正直たまらんものがある。コミカルな可愛さが優先しすぎるとエロパートとの間に違和感が生じてもおかしくないんですが、どっちに転んでも違和感のない、1人のキャラクターとしてまったくブレを感じさせない、感情や行動原理が地続き。漫画的な可愛さとエロ漫画的な可愛さには大きな違いがあると思うんですが、本作はその境がない。エロパートに入ってもドタバタでバカな可愛さがしっかり感じられるんですよね。竿役の極端な言動も2人のバランスという意味で絶妙だったのかもしれません。どう考えてもヒロインの方が強いのに、竿役のエロに実直すぎる言動に振り回される形になるのが良いんですよね。からの最後のオチも元気いっぱいで笑ったし、相変わらずヒロインが可愛くて好き。「タダマン」とかいう物騒なワードが平然と飛び出るのも良すぎる。

ブービーウィッチ』アシオミマサト

 魔女の不思議グッズ屋。製造のために店員から精子を採取する関係なんですが、ポンコツ魔女と有能店員という2人のキャラクターが良い。ポンコツでも魔女は魔女なのでうまく導けば成功しないはずがない、という説得力と、何より2人のデコボコで優劣が二重に入り組んでるようなパワーバランス。男店員の方がショタはさすがに言い過ぎだけど、生真面目な若手という感じで、ヒロインの悪意(ダメさ)にはまったく気づかずに真面目な店員としてエロいことになるんですが、この際のヒロインが勝手に失敗して勝手に負けていく感じが楽しいんですよね。ナイスカップルなんだけど、同時にヒロインの独り相撲感も少しある。相性はめちゃくちゃ良いはずなんだけど、クライマックスのエロシーンではヒロインが勝手に暴走しちゃってる。コミュニケーションという趣は全然なく、それでいて男性による支配的な感じでもない。あくまでもヒロインが勝手に満足して、勝手に負けてる感が良いんだよな。ポンコツヒロインの魅力。

『RAINY DROP』いちまつ

 アパートの大家の息子が家賃滞納お姉さんにギターを教わる。エモいドラマのおねショタですやん。大好き。だらしなくて立派な要素は全然ないヒロインなんだけど、ギターという交流で仲良くなり、憧れるようになってしまう……という変遷が超良い。ヒロインが悪い大人として先に手を出すのも良い。気持ちを打ち明けられるにいる少年を前に我慢できずに……という感じだったけど、手を出す罪をお姉さんが被ってくれたようにも見える。だらしない大人の象徴とも言える酒がキスした際に酒臭さとして少年へ伝わる、というのも年の差カップルとして、ヒロインのずるい大人としての側面を強く感じる名シーン。
 前戯は完全にヒロイン優位だが、挿入となるとヒロインはバックの体勢で完全に待ち。ここで少年が初めて主体的な行為に至る。ここでバックなのもヒロインが意図的に相手に近づきすぎないように、壁を作ってる(顔を見せない)感じなのも良い。そして、それを少年がひっくり返して正常位でフィニッシュ、という展開も激アツ。やっぱドラマの果てにエロがあり、エロの中にもドラマを感じさせてくれる作品は最高ですね。イチャイチャ感は強いけど、すれ違い感もあってそれが切ないんだよなぁ。

『妄想したり』かるま龍狼

 徹夜明けの期末テスト最終日、妄想が止まらない。ダウナーなヒロインが無表情のまま大胆に誘惑してくるのも魅力的なんですが、何と言っても本作はエロシーンに構成がめちゃくちゃ特徴的。ヒロインに誘惑されて思わず妄想に浸ってしまう話なんですが、実際に現実の世界ではエロが一切行われない。「これはいよいよマジになるのか……?」というところで終わるエンディングの切れ味も見事でした。
 そして、その妄想シーン(エロシーン)が現実の場面から地続きで境がない。初読時はもちろん、仕掛けが分かった状態で読んでも「ここからが妄想」とはハッキリとは言い難い。代わりに妄想から現実に戻る境界線は明確に描かれる。作品全体が虚実が曖昧でどこからどこまでが妄想か分からない……のではなく「どこから」だけが分からない。これによる「気づいたら妄想」という感覚が何度も繰り返すんですが、この夢見心地のままエロが始まるのが最高。エロ漫画特有の都合良くエロが始まる展開に対するメタ的な理屈にも思える。そもそもエロ漫画という媒体自体がすべて妄想で出来てるとも言えるので、作品(妄想)の世界に入る瞬間が一番楽しいという根源的な魅力について語った作品のようにも思えてくる。大げさですが。
 最終的には誘惑して妄想を誘発する側だったヒロインも妄想に耽ってしまい、第三者の介入によって夢から覚める体験を一緒に味わう、というオチも超キレイでしたね。大傑作だったと思います。
forms.gle
 かるま先生マジ良かったよなぁ、とか思ってたら直後に配信されるweeklyでも新作載るのでビビった。
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