- 『雲を見つめる』ほしとラッキー
- 『Bitter&Honey』Reco
- 『うさちゃん先輩はおちんちんに弱い』楝蛙
- 『コネクト』Hamao
- 『でも好き。』多紋サカキ
- 『集合住宅のジュリエット』スミヤ
- 『マン願成就の狐巫女』馬鈴薯
- 『ぼくらの秘めごと願いごと』橙織ゆぶね
- 『夏いきれ』背中が尻
- 『スーベニアガール』アサオミ志群
- 『何でも計測する理系女子葉苅さん』八樹ひより
- 『知らないカタチ』南文夏
- 『深夜1時、幽霊と。』雛原えみ
- 『テスト直前に優等生からヌキを頼まれた件』かるま龍狼
- 「次号予告」
もう少しだけ、あとちょっとだけ気温下がってくれると嬉しいです……。
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『雲を見つめる』ほしとラッキー
フルカラーで4ページ。ページ数を確認せずに読み始めたんですが、1ページ目が雰囲気たっぷりで、エロ的にはめちゃくちゃスロースターターな予感。「カラーだからショートなはずだよな!?」とそわそわしながら2ページ目に向かうと早速始まってるので安心しました(?)。情感たっぷりの健全な淡いドギマギからの一気にそういう関係になってしまったことの落差が良い。主人公の中でも気持ちの整理がつかないままそういう関係に至ってる雰囲気が出ててとても良かったです。ラストに冒頭のバスケのシーンと呼応されるのもすごい。ショートなのに頑張りすぎである。バスケは上を向くスポーツであり、『雲を見つめる』というタイトル、そしてヒロインが語るシュートを入れるコツ。エロに対して割り切れてない主人公と、割り切れてるように見えるヒロインの差を示すものとしてシュートの可否が象徴的で素晴らしかった。タイトルの「雲」の話がまったく出てこないまま終わり、最後の最後に1コマだけ、少しだけ描写されるバランスもすごく好きです。
『Bitter&Honey』Reco
憧れてる三宅さんには変な噂が立ってる。ヤらせてくれる噂から始まる話ってちょくちょく見ますが、主人公はそこに興味がないという捻りが面白かった。そのことが2人のすれ違いとなってあれこれなるんですが、まさか2度もセックスがキャンセルすることになるとは。一度目は童貞あるあるという感じで微笑ましかったんですが、その後もすれ違いが進む……が心の交流は不器用ながら着実に進んでる感じがあって、いよいよ3回目。セックスシーンが始まる前の緊張感と高揚感が好きなのでそれが3度もあって個人的には大好物でした。いや、2度目の場面はのんきに楽しむというよりはドラマ的に掘り下げられる良い場面。未遂も含めてとにかくセックスによって2人の物語を描く、という意味でエロ漫画ならではのストーリーだったと思います。早い段階から裸は出るが、いざ本番が始まるまでの助走は長いので、焦らしに焦らされて……といういよいよのエロシーンが熱い。互いのことをしっかりと知って、秘密を打ち明けて、心の底から向き合って初めてセックスが成立する、というのがドラマとして感動的でもあるし、正しい人間関係のあり方、進め方を示唆してるような味わいもありました。
ドラマも良かったんですが、個人的に冒頭の場面のヒロインがちょっと可愛すぎてヤバい。めちゃくちゃガール度高くてたじろぐレベルなんですが、それなのに男に媚びるような印象は意外と少ないんですよね。むしろ彼女が構築した可愛いの鎧みたいな印象で、何なら強さも感じる。噂通りに話が進むんですが、その際のホテルへの誘い方も妙にスマートというか、良い女的な雰囲気があって好き。からの軽く叱られただけでチンコが使い物にならなくなる主人公の童貞感がリアルすぎて笑えるんですが、一度目のキャンセルはむしろ彼女からの好感度が上がったみたいな雰囲気もあるのが面白い。しかし、たまに影のある表情も見せるのが気になる……。
2度目。一旦カフェでの待ち合わせをするんですが、ここで彼女の自信家な面が明かされるのも良い。衣装もかなりシンプルめになってて彼女のオシャレの両極端が見れた感覚。とにかく彼女のいろんな顔を知っていくことによって、徐々に心の距離が近づき、最終的にセックスに至る話ですね。そんな2度目の失敗の場面では、彼女の自信家の裏返しというか、彼女のが努力で獲得してきた可愛さによって生まれた悲劇が語られる。奥深いキャラクターで最高なんですが、この次の大学ですれ違う場面ではいかにも闇堕ちしたような格好になってるのがまた最高。場面転換が多い分、衣装のバリエーションが多くて眼福です。
んで、3度目。とにかく会って、思ってることをすべて伝える、という正攻法が最適解だった、という感じで彼女の心をほぐしていく。何気に主人公のそうするようアドバイスした友達がナイスですね。冒頭の場面でも主人公の背中を押す役割なんですが、達観しすぎてほとんど神様みたいなありがたい存在になりつつある(場面少ないからそこまで目立たないけど)。そして、とにかく会って伝える、そのことから逃げない、というめちゃくちゃ全うなコミュニケーションの形に至ることでいざセックス。良い話。
いよいよ本番。最初はやり慣れたヒロインと童貞だったので明らかにパワーバランスが彼女の方に傾いてましたが、物語としてはセックスすることによって彼女の心が救われる話でもあるので攻守逆転みたいな雰囲気。とはいえ、あくまでも交流の形としてセックスが描かれてるのが良い。2人のキャラクターがプレイ内容や姿勢に現れてるし、その最中で徐々にヒロインに変化が生じ、それが成長というか問題解決となる。恥ずかしいくらいロマンチックな表現をするならば、王子様が囚われのお姫様を救うような話でしたね。それが2度のセックス失敗というエロ漫画らしいイベントによって語られるのが最高。
『うさちゃん先輩はおちんちんに弱い』楝蛙
「そんな直球タイトルある!?」と驚いたんですが、実際にそんな話だったので二度驚く。いや、開き直るような話ではなくちゃんとキレイな話だったのでまた驚きますね。すごいバランス。
シゴデキ美人のうさちゃん先輩にバカな後輩がアタックする。実際におちんちん自慢で、それを試す形でセックスに至るんですが、前段として完璧タイプの美人にはバカな男だけが寄ってくる(客観性のある男は事前に諦めちゃう)、とあるのが良い。当然本作の竿役である後輩くんも一連のバカの1人であることは間違いないんですが、客観視はできてる点においてひと味違う。てか、アレですね。2作続いて、男運の悪かった圧倒的美人に竿役が猪突猛進してその愚直さにヒロインがほだされ、ハッピーエンドに至る話と言えそうですね。
タイトルがすごいので、圧倒的に男が強い話かと思ったんですが、タイトルからは信じられないほどにホテルに行く直前の、okを出す場面がじっくりねっとり丁寧に積み重ねられてて正直もうエロい。あくまでも後輩が自分を売り込み、ヒロインがそれを受ける構図なのが良い。ヒロインの方が立場は上。まだ。
エロパート。タイトルから受ける印象とは全然違うというか、厳密に言うと「うさちゃん先輩はキスに弱い」って感じでしたよね。ホテル入った初手のキスの段階で魅了されちゃってるのが可愛い……し、後輩がそのことに気づいてなかったのが良い。相性の良さというのもあるかもしれませんが、今までの女性はみんなチンコの存在感に圧倒されてチンコしか覚えてない(ほめてない)。クライマックス、バックで突かれてるのにもかかわらず、多少無理のある体勢になってでもキスを求めるくだりとか最高にエロかったです。ヒロイン完落ちの瞬間。あくまでも “見せてみな” という関係性のセックスだったはずなのに、ここで初めてヒロインが自ら能動的に相手のことを求める。完落ちし、主体性が爆上がりしたヒロインが攻勢に出る、というのを左から右へと移動してくる体の動きで示したのとか素晴らしかったです。ただ、再びキスされ負けて、左に倒れ、そのままフィニッシュ。エピローグでもシゴデキ完璧超人として周囲に見られてるが、密かにエロを求めていて、となるんですがここでもキスなんですよね。もちろんその後のセックスも欲しいのを我慢してるキスなんでしょうが、作品全体を通じて、おちんちんよりもキスにハマってしまった、堕ちてしまったというような印象。シゴデキという外面を象徴するのが2人のスーツだと思うんですが、完全着衣のままセックスの一部を実行できるのがキス、と言えそう。影に入れば即実行し、即中止できるセックスとしてのキス。
というか、超シンプルな感想になりますが、個人的に歴代楝蛙作品の中でもトップクラスにヒロインのビジュアルが良かったというか、刺さりました。冒頭のシゴデキスーツ姿でもう最高だったんですが、そこから彼女が徐々に劣勢に陥り最終的に完落ちする変遷もマジで良かった。エピローグで再びシゴデキモードに入るが、端から見ても様子がおかしい、物欲しそうな視線が良い……。
『コネクト』Hamao
前編。誌面上には前編という情報がなく、最終ページに「完」とすら載ってたんですが、作者の告知などでは前編と明記されてて、komifloではいつの間にか前編と強調されるように修正されてた。間違えたのを修正したのか、「みんな騒いでるから正解発表」みたいなノリなのか。どちらにせよフランクに改訂が入るのは電子ならではの強みですね。今の時間軸から回想でヒロインとのエロが描かれるが本番はナシ、という内容なので結果を知った状態で見れば「そりゃ前編に決まっとるがな」という感じではある。まぁこれで終わったらたまったもんじゃないのも分かりますw
しばらく家で預かることになった親戚の女の子とは昔仲が良くて……という話。初読時は「過去がメインなのか」という感じでのめり込むのですが、2周目だと現在パートのヒロインのいじらしさが可愛すぎてヤバいですね。好感度マックスで久々の再会にウキウキしながらも静かに “おかえり” と伝えたら、まったく気づいてもらえなくて、浮かれてた自分に怒りがこみ上げてくる感じ、素晴らしすぎる。ラストの過去と現在のヒロインが背中合わせになってるショットも良かったなぁ。違いは大きいけど、明確に同じ子だと感じさせるデザインになってるのとか本当に見事だったと思います。どちらも単体として魅力的なデザインなんですが、そこに変化というフィルターが加わることでよりうまみが増す。
過去のエロパート。めちゃくちゃ懐いてる女の子、というビジュアルがとにかく強い。上目遣いが多いのとか最高ですね。ギリギリで本番には至らずに終わってしまうんですが、彼女が落ちきらず、普段の明るいキャラクターも感じさせる状態のまま思い出の中へ消えていくのも良かった。まぁ、続きがあると確信した余裕あっての感想かもしれませんがw 現在パートの姿から想像以上にメロメロだったことが分かるんですが、それを思うと過去パートも単なる好奇心で身近な男性を誘ったわけではないと分かるので良いですね。この回想という構成、そしてギリ本番未遂という前編ならではの仕掛けが良かったなぁ。めちゃくちゃ良かった。
ヒロインに魅了されすぎて気づくのがめちゃくちゃ遅くなりましたが、そもそも主人公の家に転がり込むことになった事情も気になりますね。親子揃ってなのがどう考えてもまともじゃないというか、良い話ではないのは間違いなさそう。親が離婚したのは4年前だと思うんですが、だとすると離婚が原因ではないわけで。まぁ、ここは気になったところで後編で掘り下げられるかは分からないポイントですね。多少言及はされるかも、くらい。
『でも好き。』多紋サカキ
weeklyからの本誌登場でめでたい。weekly読者としては毎回「おらが村の人気者が上京した」みたいな勝手な気持ち悪い気持ちになってしまいます。
幼馴染が数年後に再会。過去からの現在という流れがちょっとだけ直前の『コネクト』と似てますね。ただし、本作は主人公(男)が年下。つまりおねショタ。大勝利。元おねショタ大好きです。
てか、冒頭の過去パート、コマ枠が白抜きになってるの珍しいですね。初めて見たかも。淡くモヤの先にあるようだが同時に光り輝いて消せない記憶、みたいなエモさがある。
再会。めちゃくちゃデカいので驚いてしまった。過去パートは角度などで胸が見えづらいのだが、単純に急成長したという方がありそうかな。セーラー服であの大きさだと変に目立ちすぎるというか、エモい思い出感よりももうちょっと下心が出ちゃうというか。
再会しても好き。というか再燃してしまった。が、あの頃と違って今は性欲もあって……という自己嫌悪ぷりが最高。自ら素敵な思い出を汚してしまってる感。そう思うと、昔も大きかったが主人公が意識してなかったので気づかなかっただけ、という可能性もあるかな。それはそれで良さそう。
意味のない見栄を張って恋人がいると嘘ついてしまうことから新たな関係がスタート。ヒロインの素敵大人女性(社会的には分からんけど)ぶりを考えると、初手の段階で嘘を見抜いて、その上で翻弄するようにカマかけ続けてたとも取れるんじゃないですかね。逆に、今なら本気の関係にならないので気軽に襲える、みたいなパターンもあるかも。どっちも「悪い大人」って感じがあって、その一枚上手感が素敵。というか今になっても主人公は幼稚性をさらし続ける話になるので少し可哀想ではある。が、読者としてはそこが最高においしい。
情けない形で嘘を白状してからは主人公が「好き」と伝えようとするのだがヒロインに阻止される。キスで阻止されるのが定番で良かったってのもあるんですが、ヒロインが止めに入るタイミングがかなり早くて、そのお見通し感が良い。そして、そういう距離を全力で取ろうとする感じが悲しくもある。しかも、そのキス、おそらくファーストキスなんですが、フェラで一発出した後なんですよね。ファーストキスは精子のflavorがした。
ただし、享楽的にセックスはする。二度目のときに “向き合ってすんの好き?” とわざわざ「好き」の言葉を別の意味で投げてくるのがずるい大人って感じで最高ですね。セックスが盛り上がるとまた告白してこようとするからそれを別の「好き」の話を持ち出して牽制する。その後同じようにキスをするのも相手の言葉を塞ぐ行為のニュアンスがあって最高。そもそも二度目を始める際にも、主人公が言葉を詰まらせてるうちにヒロインがどんどんと話をセックスの方向に進めててずるいですね。セックスがしたいから誘導してるという意味もあるんでしょうが、告白させないように告白への道筋を潰す意図も感じちゃう。ずるいし、悪い女感すらあるんですが、タイトルの通り『でも好き。』だし、何ならそのずるさとか悪さも新たな魅力として教え込まれちゃった感。
『集合住宅のジュリエット』スミヤ
アパート? 団地? で片親同士が付き合い始め未来の義兄妹として出会った2人が、親たちの破局によって引き離される。タイトルの通り『ロミオとジュリエット』モチーフなのですが、家族ぐるみの付き合い及びしがらみを集合住宅で示したのが見事ですね。超有名なバルコニーのシーンが逆に裕福さは感じさせないシチュエーションで再現されるのとか読んでて感嘆してしまいました。そして、たかだか2階のベランダだったらフィジカルで強引に乗り越えられる、というのも面白い。ひょっとしたらこれは同じ『ロミオとジュリエット』派生作品としての『ウエストサイドストーリー』っぽさなのかもしれない。ロマンチック極まりない場面で、その点においては今号で優勝間違いなしなんですが、根本的な問題は何も解決していない、という虚しさ込みで良い。あくまでも子供の駄々であり、現実逃避にすぎない、のが良い。めちゃくちゃロマンチックだけど決してこれ自体がハッピーエンドなわけではない。現実の問題から目をそらすかのように2人だけの世界へと閉じこもっていく感じが若さ故の輝きですし、そこにエロが絡むのが「いけないこと」感ですよね。ふけるようにエロに入り込み、気持ちが爆発するように盛り上がっていくんですが、盛り上がれば盛り上がるほど終わりに近づいてるのも感じられて、その切なさがまた良い。ずっとこのままでいたいけど……という気持ちの現れとしての「もう1回」演出も最高でした。個人的な好みとしては一度目の着衣が絵面としては好きなんですが、2人のドラマを考えるとエロにふけった2人が裸になるのが象徴的で良かったと思います。社会性を一旦忘れるというか、無垢の象徴みたいな雰囲気があって素晴らしい。
挿入時のフラッシュバック演出とかマジで最高だったんですが、その後エピローグでエロとは無縁の見開き演出があるのにもブチアガりました。エピローグに多めのページを割く作品はそこまで珍しくないですが、物語的な情報はむしろ少なめで、象徴的な絵一発で2人のハッピーエンド感を示すのが本当に良かった。
『マン願成就の狐巫女』馬鈴薯
本誌の直前にweeklyの方で本作のスピンオフ『こんこん今夜のお勤めは』が発表されてまして、そことの関係を説明しようとすると少し複雑。あちらは神の使いである巫女の姉弟(姉妹?)がセックスするだけの話だったんですが、本作ではその姉の方が主にメインとして登場する……のか? という構成。まぁ見た目が違うのは変身ができるから不思議ではない……のか? と違和感を抱いていたら、最後にすごいオチが待っていた。まったくの別人。どちらかだけ単独作として読むなら間違いなく本作なんですが、本作だけを読んだら「お狐様でもっとエロが見たい」となるのは必至なので、そのリクエストに答えるのがweeklyでのスピンオフなのでしょうね。ちなみに前日譚とか後日譚とかの区切りはなく表裏の関係にある……と思ったんですが、komifloコメ欄の有志によると「草ぼうぼう」の描写が本作との前後関係のヒントになるそうです。見逃してた……。
んで、話としては、何でも願いを叶えてくれる、筆おろしまで頼めると噂の神社に受験生の童貞が赴く。そこにケモミミの生えた、ミニスカ巫女が現れて……となるんですが、この巫女衣装が妙に安っぽいのも仕掛けだったのですね。いや、これはこれで可愛いから目が曇ってしまったんですがw ちなみに、本物の方はシッポの周辺などの陰毛描写が凝ってるんですが、偽物の方はシッポの生え際を見せるとバレるので着衣のまま最後まで行きます。やはりこれはこれで魅力的だ……(着衣好き)。
まぁそんな仕掛けの部分に気をやらなくても、バカだがウブで可愛くもある少年に対して圧倒的に上の立場から優しくしてくれるお狐様、というのが素敵すぎる。オチまで読むと上の存在だと思ってたヒロインが実はダメ人間だったと分かるのでギャップが面白い。ある意味、ダメな自分を「お狐様」というコスプレをすることで現実逃避してたわけですね。ノリノリなのが可愛いし、ズルをするためなら労は惜しまない感じが「その労力とスキルあったら普通に働けるのでは?」となって微笑ましい。
そんなオチ。人間の方が姉妹だったので、やはり本物の方も基本は姉妹という設定なのかもしれませんね。weeklyのときに「おねショタじゃん!!」と歓喜してたんですが、本作を読むとどちらも女性がベースのように思える。
童貞の暴走にヒロインが劣勢になる展開も筆おろしモノの王道って感じで魅力的だったんですが、よく考えたら、この展開も偽物であることを示唆するものだったのですね。童貞くんが後ろから強く抱きしめながら腰を振り、それに負けてしまうヒロインが可愛かったのですが、本物だったらあそこからでも華麗に再逆転できたんだと思います。何なら童貞くんの処女もいただけるレベルw エロシーンだけ見たら可愛らしくめちゃくちゃ魅力的な作品なんですが、その周囲及びweeklyでの作品とあわせるととても複雑に背景である世界が拡張されていって面白いです。weeklyの番外編を先に読んでからの順番も含め、新鮮で面白い読書体験をすることができました。
『ぼくらの秘めごと願いごと』橙織ゆぶね
予告にはなかったゆぶね先生が本誌デビュー。めでたい。weeklyの屋台骨的な存在感のある先生なだけに本誌デビューに驚きはないんですが、不意のデビューで結局驚いてしまった。何にせよ、めでたい。
水泳の授業で男子の視線を釘付けにする子と付き合っている。場面が変わると即セックスなんですが、プールの場面でヒロインからの視線が意味ありげに描かれるので納得もありますね。ただ、初読時は単に彼氏のことを見てウットリしてるだけかと思ったんですが、実はそれだけではなく……。胸が大きいので男子からエロい目で見られるのは悲劇だが、それとは別に彼氏ができ、そういう経験をすることでエロい視線の先にあるものが具体的に理解できるようになってしまい……というヒロイン側の心理(フェチにも近い)の機微が描かれる。厳密には違うけど、ざっくり言うと水着が好きという話なんですが、ヒロイン側が好きってのが珍しくて良いですね。スク水というとどうしても男子が女子のことを、と考えがちですが、そういう一方的な視線によって女子の中にも発芽してしまった。エロの視点というか主体の逆転って感じでめちゃくちゃ面白い。それでいてヒロインが一方的に自分の欲望を発露する話になるのではなく、その前段として彼氏の方もパイズリを要求していて、その見返りとしてヒロインの欲望を実現する流れ。それがパイズリってのがまた良いですよね。水着を着たままだと(普通は)できないプレイ。2人の隠し持つ性欲が良い感じに対照的。
何より圧巻だったのはそのヒロインの要求。水着を互いに着て、という時点でこだわりが感じられて最高なんですが、その後唐突に “私たちは授業を抜け出して更衣室に来てるんだよ” と、シチュエーションを指定。自宅なのに。ここで一気に背景が更衣室に変容するのが漫画的な演出として最高でした。バトル漫画だったら領域展開とかそういう類のブチアガリ感。あくまでも想像を使ってですが、場所と状況を含んだ「悪いこと」を演じる。前段でただのパイズリを要求してた彼氏の欲望が即物的すぎるというか、ちょっと幼稚に思えてくるレベル。
ヒロインが秘めたる欲望を発露する話なんですが、それでいてヒロインが一方的なままでは終わらないのも良い。ちゃんと彼氏の欲望であるおっぱいを踏まえた折衷案のような形でクライマックスを迎える。2人の対等性が出ててめちゃくちゃ良いですよね。2人とも剥き出しの欲望をぶつけ合ってドロドロの変態プレイをしてる……んだけど、よく考えたら自室でイチャイチャしてセックスしてるだけなので同時に健全な爽やかさもある、という見事なバランス。いや、ビビってる彼氏を押し切ってナマを強行してるので完全に健全というわけでもなく、悪さもあるか。
最高だったんですが、ここまで欲望を実現してしまったら今後の水泳の授業が心配になってくる。いや、女子は内心で悶々とするだけだからいいんですが、男子は肉体的な変化があるわけで。ただ、それを知ったヒロインは余計に喜んでくれるのかもしれない。
『夏いきれ』背中が尻
夏休みに帰省すると幼馴染に会える。主人公は帰省してきたので当然私服ですが、ヒロインはセーラー服で迎えてくれるので眩しい。学校があったりしたのだろうか。日焼けした肌とセーラー服の健全感というか、健康的な魅力に冒頭から圧倒されました。男性視点の話で、無垢で一途なヒロインを描いてるのも良いですよね。期間限定で会えるというのもあり、とにかくヒロインの存在が眩しい。
そんな健康的かつ健全感もあるヒロインだったんですが、実は1年前に既に……とエロの物語が加速していく。それが明らかになる直前に主人公が一大決心して告白しようとするのをヒロインが止める場面があり、どこまでも甘酸っぱい印象があったんですが、そっからの既にヤッてるという事実。うまい。
男性主人公の告白をヒロインが阻止する最高の展開、今号は『でも好き。』にもありましたね。同じ幼馴染ですが、あちらはヒロインが圧倒的に格上の存在で、それ故の大人のずるさが感じられたんですが、本作は爽やかかつ甘酸っぱい青春の匂いに全振り。本作のヒロインはかなり無垢な印象が強いので、何なら精神的には主人公の方が上みたいな印象もあったんですが、告白キャンセルでヒロインが一気に主導権を握る、という逆転展開(激甘)が熱い。
とはいえ、エロ的な関係においては完全に主人公が上。もちろん支配的という感じではなく、ヒロインが敏感すぎるという感じ。ただし、それでも一方的な関係になるのではなく、ある種の逆転としてヒロインからナマの希望。エロでやり合うと主人公がどうしても強いので逆転の材料としてヒロインが持ってきた、みたいな感じありますね。そこに繰り返される告白の阻止が絡んでくる。エロだとヒロインがどうしても弱くなっちゃうんですが、ナマとか不意のキスなどでヒロインが必死に主導権を譲らないようにしてるのが可愛い。告白をキスで阻止する最高の展開は『でも好き。』にもあったんですが、本作は最終的に “ちゅ…して” となってしまうので可愛すぎる。相手の話を遮るように強引にするキスってのは結構定番だと思いましたが、受け身の立場でするパターンもあったのですね。良すぎる。
『スーベニアガール』アサオミ志群
沖縄の海岸を当てもなく歩いていたら民宿の子に誘われる。夏感の強い作品が続きましたが、南国独り旅という夏感、別格に良いですね。そこでの事故的な出会い、全人類の夢では。そんな子と観光デートまでするんですよ。一生の思い出だと思う……が思い出で終わらせたくない、と話が続いていく。
そんなリゾート感を強調する要素として本格的すぎる方言が出てくる。うちなーぐち。漫画なのでセリフのルビとかの効果もあってギリ理解できる……と思ったらヒロインのお父さんが遠慮のない全開でまったく分からん。そんな難しすぎる言葉が物語のキーになってくるので驚きました。主人公はいわゆるリゾラバ的な一時的なもので終わらせたくなく、「自分探しの旅」の結論として彼女を見出してるレベルなんですが、逆に彼女は一夏の思い出、お土産としてキレイなまま終わらせたい。男性主人公が告白しようとするのを中断するヒロイン、というのが今号やたら多くて最高なんですが、そのドラマ要素に全振りしたのが本作ですね。全振りというか、ヒロインによる中断を乗り越えて何とか告白を完遂しようとする話。ほとんど攻防みたいな構図で、謎解きによる「勝利」を目指す物語になってるのが面白い。その謎というのが、彼女の名前で、そのヒントが先ほどの父親の難しすぎる言葉にある。ただ、それだけでは答えられず、そこに彼女との思い出の数々と照らし合わせることで初めて正解にたどり着くから感動的。セックスによって2人の物語を描くエロ漫画ってほとんどが相手のことを知るコミュニケーションの話になると思うんですが、本作はまさにその「相手を知る」の部分を大仕掛けとして用意した作品。名前を知ることで相手のことを獲得する、というのは神秘的というかもはや神話っぽい格式も感じてしまうレベル。
それまでは素敵お姉さんムーブが続いてたヒロインですが、名前を知られてからは一気に攻守が逆転。名前を呼ぶことで相手の心に響く、というのがセックスの説得力として描かれてて超良かった……。それだけでは終わらず、それまで主人公のことを「にーにー」と呼んでいたヒロインが最後の最後についに名前で呼び返してくれて、という感動。告白の返事演出として最高でしたね。
それまでヒロインは自分のことを土産物屋で買うちょっとした謎のお土産(スーベニア)くらいの軽い思い出になれればいいと思っていたわけですが、最終的にヒロインが連絡先というお土産をくれるようになるオチも素晴らしい。それもメールアドレスじゃなくて、LINEなどのメッセージアプリだから連絡先がIDという「名前」になってるのが最高ですね。「どこに飾ろう」から「何て送ろう」に変化してるのも含めて良すぎる。着地が美しすぎる。ただ、超身勝手な欲望なのは分かってるんですが、たまには「にーにー」呼びもしてほしい……。
『何でも計測する理系女子葉苅さん』八樹ひより
大学の先輩にいろいろ計測される話なんですが、とにかくヒロインがでかい。そして竿役が小さい。計測すべきはヒロインの体だと思うのですが……ただ、あのヒロインだったらもう既に計ってても不思議ではない。
とにかく計測が好きなのかと思いきや、計測を通じた育成計画だったという展開になるんですが、安易に我慢させすぎて竿役が暴走し逆転、となるわけではない。その側面もありますが、暴走状態に陥った主人公に対してヒロインは基本的に大満足なんですよね。計画以上のリターンがあって驚きはするものの。逆転かと思ったら再逆転みたいな展開が続き、ほとんどバトル漫画。絵面がもう「プロレスですか?」という感じになっていくクライマックスとか最高でした。序盤から示されてた2人の体格差がこれ以上ない形でぶつかり合うことになる。相手の体に埋もれながらガン攻めする主人公と、それをアクロバティックに組み伏せて再逆転するヒロイン。ヒロインが上から密着すると誌面上に映る主人公の姿がほとんど消えてしまう、というクライマックスとか象徴的で好き。イチャイチャではなく、あくまでもヒロインの一方的な支配なのでヒロインが勝つと主人公の姿が絵としてはどんどん消えていく。
1ページ目から肉感全振りみたいなデザインが圧巻なんですが、同時に漫画らししデフォルメの可愛らしさもあるんですよね。主人公が可愛くなるのはまぁ分かりやすいんですが、ヒロインもちゃんと可愛い一面が見れてドキッとするし、何なら主人公が思いの外ショタショタしてないバランスになってて漫画の絵がめちゃくちゃうまい、という印象。ショタすぎると本作の話だと少し可哀想に見えちゃうと思うのでかなり絶妙なバランスだったと思います(十分可愛いという見方もありますが)。
『知らないカタチ』南文夏
大学生になっても恋人ができず、独り悶々と性欲を発散してるヒロインがグループ課題でチャラい下田と出会う。竿役の話が多くて申し訳ないですが、本作は今号の中でも屈指の名竿役作品だったと思います。最初は好印象ゼロで、何なら「こいつが竿役なの……?」という感じだったんですが、最後まで読み進めると徐々に彼の印象が変わっていき、最終的には彼が大好きに……となるほど単純な話ではなく、軽薄なクズだけど味わい深いキャラクターなので漫画として圧倒的に面白い。22ページの読切で、それもヒロインを魅力的に描くことが第一となる作品でここまで多面的な魅力が描かれる竿役が出てくるとは。読み返したら1ページ目の1コマ目にひっそり登場してるので「下田いるじゃん!」と嬉しくなってしまいました。
そんな下田。軽薄な野郎で、それは最後まで一貫してるんですが、ものすごく絶妙なバランスが保たれてるというか、本当に最悪な最後の一線はギリギリで越えない。そもそも陰キャのヒロインに対して積極的に交流しようとしてきてるし、課題もサボろうとしないのでマシに思える面も多い。人によっては最初から「絶対無理!」と拒絶のライン超えちゃう読者もいると思うんですが、そのくらいギリギリを攻めた設計になってると思うし、私はギリギリのところで許容できたので、最終的には下田視点の続編を待ちわびるようになってしまった……(続きがあるのは確定)。そもそも、2人の間で初めてエロの空気が漂うことになる写真の事件はヒロインに落ち度があるんですよね。こういう大事なところが本作は丁寧に作られてると思う。軽薄な竿役が強引にエロを持ち込むためだけの存在になってない。ただ、挿入のくだりではやっぱり最低なので……と好感度が底辺スレスレをずっと漂い続ける。ただし底辺にはギリギリ接地しない。そして、ヒロインの思わぬ変態ぶりに実は気圧されてて……と心理的な優劣が逆転して本作は劇終。ヒロインの背景にキラキラオーラを見るようになってしまった下田、ひょっとして可愛いのでは……。
いくら何でも竿役の感想が多すぎるんですが、ヒロインも最高。超可愛いです。南先生、2作連続でヒロインにメガネさせてるので嬉しい。前作のメガネは脱陰キャと共に外されるんですが、本作はまだメガネをしてて、まだ陰キャのままという感じですね。ただ、そんな彼女が最終的にセックスを経験することによって自信を獲得し、精神的に大人になっていく……というラストが感動的なんですが、「いくら何でも自信つけすぎじゃない?」という極端さが可愛い。自信の持てない地味な子、という感じでしたが、前半から負の感情を容赦なく表に出す感じが新鮮で、個人的にものすごく好きでした。オタク特有の性格の悪さとかではなく、怒るべきところでしっかり怒ってるという感じで、怒りを示しつつも相手と最低限の付き合いを続ける感じとかすごくちゃんとしてる。もしくはリアリティがある。普通に魅力的な人なので普通に友達もたくさんできそうだし、その中から恋人ができても不思議ではない。おそらく班のメンバーが相性悪すぎたってのが大きそうですね。ただ、下田は根っからのクズではないから見捨てないでやってくれ……(突然の下田擁護)。
ということで、続きます。それも次号。ありがて~。ひたすらキャラクターが魅力的な作品だったので、どんな話になろうと続きがあるというだけでワクワクしてしまいます。
『深夜1時、幽霊と。』雛原えみ
深夜の廃校で自称幽霊と出会う。主人公が最初から幽霊だと信じてないのが面白くて、「てことは裏の裏ので本当に幽霊か?」とか勘ぐりながら読み進めてしまう。最終的に裏の裏の裏で普通に幽霊じゃなかったオチになるんですが、そのエピローグでようやく彼女の底の部分が知れた、となる構成が最高なんですよね。ヒロインの正体をエロ後に知ることになるのは雛原先生の前作もそうでしたが、ヒロインの正体を知るというテーマだと今号は『スーベニアガール』もそうですね。改めて2人の物語が始まる、というエンディングが感動的……ではあるんですが、本作の場合はそこまでウェットではないw 最後まで主人公の手に負えない奔放な子、というのが魅力的でした。その奔放さが人間くささですね。バカな、それでいて性欲にかられて深夜の廃校にやってくる、という部分が実は主人公と似ていて、2人のお似合い感にも繋がってくる。それと、オチを知ったあとに読み返すと、彼女がゴムを用意してたという事実にはちょっと心躍ってしまいますね。毎週廃校で会う関係で、彼女がゴムを持っていたということは……。それを “幽霊のふしぎパワーで取り寄せました〰” とごまかしてるのが可愛い。
初読時はやはり「ひょっとした本当に幽霊かもしれない」と思いながら読み進めることになるんですが、そのバイアスがあると彼女が語ることがいちいち意味深に思えてしまうんですよね。たまに憂いを帯びた表情を見せたりして、「つらい過去があって死を迎えてしまったのでは……」とか勘ぐってしまう。まぁ憂いの感情自体はマジで、色恋にまみれた田舎社会にうんざりしてたってことなんでしょうが、そこに過剰に意味を勘ぐってしまう、勘ぐらされてしまう。
大オチ。小さいコマなんですが、ヒロインが敵視してた子(廃校で元々セックスしてた子)、が周囲の生徒に写真を撮られることになってるのがオチとしてめちゃくちゃキレイ。主人公はいろんな考えを抱えて、ヒロインのことを写真に撮らないことを選択したこととキレイな対比。
『テスト直前に優等生からヌキを頼まれた件』かるま龍狼
テスト前、優等生の杉山くんが体調悪そうなので声をかけたら勃起が止まらないのでヌキを頼まれる。良い子そうだし、実際に良い子の杉山くんが真っ直ぐな目でおかしな頼みごとをしてくるのが最高。彼は決して変人なのではなく、この世界が現実から少しだけ変わってる。
いかれた展開でエロに突入するんですが、2人は良い子同士で、何なら真面目ってのが最高ですね。設定が飛び道具的に面白いってのもありますが、この設定でしか味わえない魅力が確かに感じられる。良い子で真面目な2人がヌキの関係を続け、次第に少しだけ「悪いこと」にも手を出して交流を深めていく感じが魅力的。ほのぼのとした可愛らしい話なのに、なぜかヌキとセックスをしてる。狂った日常から最後、再び平和な日常へと戻っていくエピローグも素敵でした。2人の今後を見守りたくなってしまうんですが、ひょっとしたらテスト期間が終わったら普通にセックスを頼む関係になるのかもしれないw それがこの世界では変なことではなく、テスト明けならむしろ健全なことだから頭がこんがらがってくる……。
「次号予告」
次号もweekly組の本誌進出があって嬉しくなってたんですが、それとは別に「初表紙!」「3号連続掲載!」という何かのお祭りみたいな景気の良い企画があって驚きました。おめでとうございます。楽しみです。
x.gd
終わり。9月は日曜が5回あり、そういう月はweeklyが1週休みになるんですが、その休みの間に快楽天本誌の感想を終わらせることができた……。偉すぎる。が、単にそれを過ぎたら大遅刻になる(ブログ本館の都合)ってだけです。
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