- 『おともだち』雲呑めお
- 『純愛ストラテジー』ホムンクルス
- 『沼る女』亜美寿真
- 『虹が咲かなくても』玉ぼん
- 『いっぱいあそんで』柚十扇
- 『まだ恋は知らない』鬼ヶ島えりゅ
- 『なぞの霧山さん』オクモト悠太
- 『夏草のむこうがわ』小野未練
- 『屈強なギャルが僕にメロメロなのは一体なぜだろうか?』飢々餓
- 『おとしもの』mogg
- 『Hungry Terriory』さわたしゆん
- 『王子様ご乱心』ゆりしましろ
- 『いじめてほしいから』を図さとる
- 『どすけべコンセプト』いつつせ
毎月のことだけど「9月号」という数値に驚いてしまう。
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『おともだち』雲呑めお
クラスの男子に告白したら断られ、事情を説明するために彼の家に行ったら彼の幼馴染兼セフレ。ジャンルシフトがすごいというか、冒頭2ページ、主人公たる乃々佳の真剣な表情が素晴らしくて引き込まれるんですが、そこで想像したのと全然違う話へと続いていくw 幼馴染でセフレの亞子が当然のようにめちゃくちゃ強くて、彼女に翻弄される形でずるずると3人でのセックスが始まっていく。場を支配するのは明確に亞子で、彼女の小悪魔性に全面降伏したくなってしまうほど魅力的なんですが、個人的に本作で一番面白かったのは乃々佳が最後まで折れない。折れないというか、最後まで雰囲気に飲まれない。扉で亞子が出た瞬間に「この子に負けて3人でセフレだが恋人だか分からない関係になる話だ……」と想像したんですが、乃々佳が諦めないのが意外であり、彼女の強さ、キャラクター的な魅力の強さが最後まで感じられて良かった。逆に言うと、最後まで乃々佳は正気を保ってるので「セフレいたの!?」というある種の寝取られ的なショックを全編にわたって100%の状態で受け続ける。亞子の登場でもっと享楽的な作品になると思ったんですが、乃々佳のドラマが徹底されてて暗い……は言い過ぎだけど堕ちきらない魅力が確かにある。男女女の3Pだと過去の『プライベート・ビーッチ♡』も連想したんですが、あんな脳天気な作品ではなかったw(タイトル超好き)
乃々佳が正気を保つのでいくらでもまともな話になる可能性はあったはずなんですが、困ったことに(面白いことに)竿役である伏見くんが完全に堕ちた先の人。彼がまともだったら良かったんですけどねw 彼は(おそらく年季の入った)セフレ生活によって常識が崩れてしまってる。ただ、完全に堕ちきってるのではなく、半分くらいまともな社会性を保ってる(から乃々佳はホレたのでしょう)のが最高。彼が適度にどうかしてるのが本作の救いのなさであり、そここそが間違いなく本作の面白さ。亞子が強すぎて残りの2人が流されるのではなく、伏見くんは伏見くんで亞子の考えに割と賛成なんですよね。賛成までは行かなくても亞子寄り、少なくとも亞子を捨てる気はサラサラない。適度に悩むけど亞子の誘いを断れない、けど目の前の乃々佳が軽蔑してるのが分かる程度の社会性も有してる。2人のヒロインが両極端で面白いんですが、間の伏見くんはちょうど 50:50 って感じの存在で絶妙でしたね。ずるずるとセックスを始めてしまう頼りなさが好きw
エロパート。乃々佳は最後まで正気を保つので、まともな感性として対抗意識を持つ。全員が堕ちていって相乗効果でエロが盛り上がるのではなく、勝つために頑張る。が、経験の差もあって当然敵うはずもなく……。乃々佳としてはもっと初々しいイチャラブがしたいはずなのに、挿入した直後にクリ責めを始める伏見くんが適度にぶっ壊れてて最高。挿入前の手マンの続きなんですが、あの手慣れた、効率的な動きを感じさせる手マンめっちゃ良いですね。初々しさとはかけ離れているw
亞子のターン。乃々佳は放心状態で見てるしかないのですが、その乃々佳に向かってバックで突かれる亞子の体が向いてるのも完璧な位置関係。乃々佳は正常位だったところを後ろから亞子が参戦する形だったんですが、それぞれの3人の位置、向きが対照的。そして、伏見くんと亞子のツーカーぶりを見せつけられる、皆まで言う必要もない中出しの合意。完全に「負けた」という感じなんですが、だからこそ奮起して事後のフェラに参加するし、その後もう一度挿入、そして中出しを申し出る。乃々佳の完堕ちを感じさせるラストだったんですが、エピローグでまだ正気が残ってた、となるので熱い。乃々佳と伏見くんがサシで話す場面ではしっかり雰囲気がエモくなるのが良いですよね。それをもう1人がぶち壊してしまうのですがw
『純愛ストラテジー』ホムンクルス
彼女にフラれた矢先、しごでき同僚にめっちゃ好かれる。冒頭、2人のなれそめを丁寧に描くんですが、酔った主人公に寄り添うのでヒロインの顔が見えない。そのまま3ページ。強すぎでしょ。4ページ目でヒロインの顔がようやくどん! 扉でもある5ページ目ではいきなり事後(直後)のヒロインどん! 表紙で見せてるとはいえ、エロ漫画で冒頭3ページも引っ張るとか王者の風格でかっこよすぎる。顔出しの直前、主人公の腕でヒロインの顔を「わざわざ隠す」ショットがあるのも見事ですよね。ここで明確に彼女の顔へと意識が向いて、次ページでどん。はい可愛い。強い……。
仕事モードの衣装も超素敵で個人的な好みだったんですが、話としては自宅デートを繰り返すことになるので私服というかラフなほぼ部屋着。公と私のギャップとしてインパクト充分だし、切り替えの際の “じゃあ ちょっと着替えちゃいます” と勝手に言い出す感じも良いですよね。文字通りグイグイ踏み込んでくる姿勢が素敵。
とにかくガンガンいこうぜなヒロインに惹かれるわけですが、さすがに主人公も我慢できなくなってエロ開始……なのですが、主人公が逆転っぽく、かっこいいことを言うのにヒロインが “…思ってないですよ” “何もされないなんて…” “…最初から” 。すべてが手の上、良すぎる。徹底して強いキャラクターなのが良いですね。完全に仕事ができるのと恋愛の攻めっぷりが一致。とか思ってたら巻末のカラー後日談(komifloだと表紙の並び)でまさに仕事観と恋愛観が一致してることが明かされる。しかも、主人公がなれそめだと思ってたであろう冒頭の場面が既に彼女の計画通りだったと分かる。初めから詰んでるw
プレイ内容もそんなヒロインの魅力全開で、エロく乱れる感じはないんだけど、あくまでも彼女が主導的というか、すべてが彼女に導かれるように、それでいてSMみたいな感じにはならないバランスで行われている。当たり前に騎乗位で挿入するし、当たり前にフェラしてくれるのがオチを知った状態で読むとまた愛おしい。意外とエロかった、ではなくめっちゃ計画的に頑張ってくれていた、というのが良いですよね。
『沼る女』亜美寿真
弱ってる女をナンパしたら巨乳で大当たり。竿役視点の話なんですが、あまりに軽薄なので笑った。ただ、最初は「こんなんクズすぎるでしょ」と思ってたはずなのに、中盤、終盤になるともう可愛くて思えてくるし、何なら少し可哀想ですらある。この竿役のことを好きにさせられたのが我ながらビックリでして、物語のチカラすげぇ。待望のLIME(LINE)が来た瞬間の晴れやかな顔が素直すぎてちょっと可愛く思えてくるんですよね……。
要するにチョロいと思った女性がとんでもなく底の知れない人で、惚れさせて都合良く遊ぶつもりだったのがいつの間にか惚れてる(本人ほぼ無自覚)。ヒロインの方が圧倒的に強い存在だったというのは直前の『純愛ストラテジー』と同じですが、あちらは計画性と強靱な意志のチカラですが、本作は最後まで本心がまったく分からない魔性のチカラ。最初はちょっと意志薄弱にも思え、だからこそすぐ主人公に「沼る」と思ったですが、要所要所で彼女が動じてないのが分かる不気味さ、超良い……。普段から優位に立ってるわけでもない相手に言われる “いいよ 付き合おっか” 、ちょっと新ジャンルみたいな良さがありました。
不気味な存在だけど、まったく本心を見せないのではなく、おそらくではあるものの彼女は常に何も隠してない。だからこそプレゼントをもらったときに表情が華やぐのもまったくの本心で、だからこそ不意打ちで死ねる。体ではなく心が落ち始めるという意味ではこの場面が「沼」の始まりだったのかもしれませんね。てか、タイトルの「沼る」、自動詞だと思ったんですが、他動詞で「俺が沼る女」という意味だったのですね。こっわ。
相性バッチリのSとMが出会う話も好物ですが、本作はSMというほど極端な関係ではないものの、主従、優劣の意味において決定的な格差があって、要所要所でそれが確定していく場面が最高。先ほどの告白の返事もそうだけど、静かにマウントを取られるというか、「いつの間にか相手が上にいる……?」と気づかされるような場面が丁寧に細かく積み重ねられていくんですよね。M心的な意味で魅力的に感じるのもあるんですが、同時にちょっとずつ「これはヤバいのでは……」と不安になる感じがあってたまらない。
精神的にマウント関係にあるのは明確なんですが、そのことに気づき始めたからこそ主人公はセックスで頑張る。やってることは最初から変わらないんだけど、最後は完全に「振り向かせてやる」という健気な腰振りになってるのが微笑ましい。ただし、順調に行くはずもなく、具体的なプレイ内容ではなく、不意打ち的な中出しの要請で完全に負ける。敗北の証、手の上で操られてる証としての中出し、名場面。主人公にとって射精が完全にコントロール不能なものになる。この瞬間、ヒロインが主人公のことを一切触れていないのも良い。彼女は受け身なはずなのに言葉だけで射精を操るんですよね。あんだけキレイに堕ちるのは気持ちいいだろうな。彼女がファムファタールすぎるのでいろいろ今後は心配になるものの。
『虹が咲かなくても』玉ぼん
大学生活に失敗し引きこもってるが後輩がやけにかまってくれる。正直家に面倒見に来てくれる冒頭の時点で「こんな良い子めったにいないから大事にしろよ!!」って泣きそうになるくらいなんですが、主人公が良い熟成具合のこじらせなのでそれでも無気力だし、照れ隠しで失礼なことも言ってしまう。陰キャのダメなところが露骨に出てるんですが、メンタルやられちゃった陰キャのなれの果てという感じでめちゃくちゃリアルではある。心配にもなるし、だからこそヒロインはあそこまでしてくれるのでしょうね。泣ける……。
そんな照れ隠しで言ってしまったビッチ疑惑。そこから一気にエロの予感が漂い始め、ヒロインがその疑惑を利用して誘う。陰キャ同士のこじれた恋という感じだったのですが、ここで急にビッチ疑惑という思わぬ要素が加わって、その疑念を抱いたままセックスに至るのが面白い。いや、端から見て、冷静に考えれば「こんな甲斐甲斐しい子がビッチなわけあるかい!」と説教かましたくなるレベルなんですが、それに翻弄される主人公の心理がリアルで引き込まれるし、オチを知ったあとだとヒロインの背伸びでまた愛おしくなる。主人公の失敗の原因は陰キャのくせに陽キャに憧れてしまった点にあると思うんですが、ここでのビッチ(疑惑)を自称するヒロインも不相応な背伸びという意味では同じですよね。似た者同士というよりは、主人公と同じ道を辿ることで主人公を救おうとする、みたいな感慨でしょうか。良い子すぎる……。
主人公はヒロインのビッチという事実(疑惑)にショックを受けるんですが、同時にビッチに手ほどきしてもらうという立場にちょっと甘えてる節もあるんですよね。甘えてるというか、ビッチだからとちょっとヤケになってタガが外れた感じ。もっと初々しいイチャイチャした感じの初体験だったらもっと慎重に、丁寧に、優しくできたと思うんですが、この特殊なシチュエーション、キャラクター、とその関係性によって生まれる機微がとにかくおいしい。優勢になり始めてからの主人公がちょっと調子に乗って攻め出す感じとか、元童貞の暴走って感じで超良かったw 下の名前を連呼するのも、最初はちょっと試しで言ってみたらめちゃくちゃリアクションが大きかったので調子に乗り、そこにこもる本音の割合も大きくなっていく……みたいな。徹頭徹尾主人公が甘やかされてるんですが、まぁ冒頭の落ちっぷりを考えたらここまでしないとキレイに救われることはなかったのだろうな、と納得もできちゃう。大学行けなくなる理由が、分かりやすい大失敗をしたみたいなのじゃないのが本当にリアルで、だからこそラストの号泣が魂の浄化って雰囲気あって感動的でした。ゲスな表現にありますけど、精液出すのも涙を出すのも同じというか、浄化の儀式として必要な行程だったのでしょうね。そんな流れ出る体液が雨と重ねられ、最後に雨が止む。
『いっぱいあそんで』柚十扇
新刊の販促漫画、そして後に電子版に追加収録される番外編……なんじゃないかしら(もったいなさすぎるので)。要するに番外編なんですが、収録作のヒロイン総出で謎のお店のコスプレイベントに出てくるのですごい。本編との整合性はガン無視で短編のためのエロに特化した話でサービス過剰。統一衣装ではなく、それぞれ凝ったコスプレ(エロ)衣装になってるのも贅沢。さすがに1人ずつやるのは尺的に無理という事情だと思うんですが、ヒロインがジャンル(属性)ごとに括られてサービスすることになるのも面白かったです。 “ギャルバニーが3人も…” ってありましたけど、ギャル作品が3本もあるってことですよね。その後、大人お姉さんコンビになって、最後は表紙抜擢のラスボス登場、という展開が熱い。
そんな表紙担当の『シークレットテリトリー』は収録作の中でも抜き出た傑作だと思うので表紙起用で嬉しかったです。キャラやビジュアルで好きなのは他にもたくさんありますけど、トータルだと1本選ぶのに悩まない、みたいな。
整合性無視で読者の夢だけを叶える話……だと思ったらホントに夢オチなので笑いました。紙版単行本を買った人は枕の下に入れて寝るのがオススメです。
『まだ恋は知らない』鬼ヶ島えりゅ
サラリーマンが夜の街で出会った若い子を分からせる。なんですが、本作の2人は最終的にちょっと仲良し的な雰囲気に至るので面白い。そこが良い。明確に険悪な感じでセックスに至るんだけど、それが良好なコミュニケーションを築けたみたいな雰囲気になって終わる。すごいバランス。
基本的に2人はすれ違いというか、それぞれタイミングが悪くて互いにキレる関係で始まってしまった、という感じ。もっと順調に仲良くなる可能性もあったよね? という余地、キャラクター的な多面性がしっかり感じられるのが魅力。そもそもヒロインは最初の出会いの場面で普通に謝ろうとしてたのに、そこに主人公が感じ悪い捨て台詞を吐くのでキレる。セックスに至るすれ違いもどちらかが極端に悪いわけではないんだけど、ちょっとしたボタンの掛け違いでキレ合う話になってしまうw 主人公の “こんなことしてたらお前の親だって心配するだろ?” が相手の地雷だったのが悲劇(?)ですね。ヒロインの背景が具体的に語られることはないんですが、この場面で親とのトラブルだと察せられる。情報の盛り込み方がスマート。
エロパート。キレる主人公がノリノリすぎるので「ちょっと冷静になればそこまでキレる話じゃないと分かるだろう」と心配にもなってしまうんですが、同時にヒロイン側に素質があると主人公が分かってしまうので、どんどんヒートアップしていく。処女なのに素質あるとかすごいんですが、よく考えたら彼女の夜遊びに自傷行為的なニュアンスがあるのだとするとMの素質にも納得できるかもしれない。実はMがSをリードしてる、というかMがSの素質を引っ張り出してる話にも思えてくるというか、男の方は冷静だったはずが煽られてどんどん大人げなくなっていく、という感じ。そんな大人げない大人の姿にヒロインはちょっと好印象を抱き、というエピローグも素敵……というかやっぱどんなつらい事情があるのか少し心配にもなってしまう(最後が楽しそうなので何より)。
『なぞの霧山さん』オクモト悠太
デカいのに影が薄くて何考えてるか分からない霧山さん。気づいたら後ろにいるデカい女、というのがホラー的演出にもなりそうなのに結果的に「可愛い」になるから面白い。距離感の調整がうまく行かない2人の微笑ましさってことですかね。完全な事故もありますが、基本は互いに興味があるからこその「気づけば近くに」なんだと思います。
この「もういる」という急接近ぶりがそのままエロのイベントとして機能するのがエロ漫画の中のラブコメって感じで最高。分かり合って近づくのではなく、不意に近づいてしまいエロに至り、エロを通じて分かり合っていくという流れ。初めて霧山さんが喋るのがエロの最後の一押しだった、というのが熱いですね。いやさすがに、漫画上初めて喋るのが、だとは思いますが。声が小さいし、直接的なエロワードを喋るわけじゃないんですが、やっと霧山さんの本音(正体)を知れた、という喜び、高揚感がそのままセックスへと繋がってく。ラブコメ特有の感情の高鳴り、流れがエロの盛り上がりへと直結するのがやっぱエロ漫画の魅力ですね。話としてはめちゃくちゃ可愛らしいラブコメなのに、2人の中で発する感情はデカくて、それと比例してエロが盛り上がり、激しくなる。
海イベントらしくシャワー室でエロが完結するんですが、この縦長の閉所で密着しながら、というのが霧山さんというキャラクターの魅力を最大限引き出すシチュエーションだったと思います。彼女の大きさと距離感、そしてここまで近づくことでようやく聞こえる彼女の声。
『夏草のむこうがわ』小野未練
ゼロスで新進気鋭感ある小野先生が早くも快楽天。メガネなのが嬉しいです。風呂場で鏡に映った自分を見て自己嫌悪、という場面で唯一メガネを外すんですが、鎧としてのメガネを外すことで精神的に脆くなってしまった、みたいなニュアンスがあってメガネのオンオフ演出としても大好物でした。子供の頃とメガネのデザインが違うのもおいしいし、レンズの度で輪郭が凹むのも熱い。今号では唯一のメガネ(ヒロイン)でしたが、大充実。
一つ下の幼馴染からの好意に気づきながら目を背け続けてきたヒロインの自己嫌悪とそれをついに打ち破るイベントとしてのセックス、からの自信を獲得して精神的な成長。久しぶりに年上お姉さんとして振る舞い出すラストの場面が素敵というか若干おねショタの波動があってアガりました。いや一つしか違わないんですが、子供の頃の1歳ってかなり大きな差だし、おそらく竿役の蛍くんはお姉さんとしての桔梗ちゃんに憧れてたんじゃないですかね。ラストの子犬イメージもそうですし。
weeklyでのインタビューでフェンスに絡んだ夏草が積み重なった年月、こんがらかった気持ち、心の壁を象徴してるとあり、本作を読む上で完璧な補助線だったわけですが、それを意識して読むと冒頭から草と壁が多くて面白い。アパートのベランダの壁が「近いけど境がある」2人の関係性そのものでエモかったですし、そこで告白することで次の場面ではフェンスのこちら側を2人で並んで歩く場面へと繋がる。しかしヒロインはまだ踏ん切りがつかないので風呂場で鏡という壁と見つめ合い悩む場面があるのも最高。ドラマ的に超大事な場面なんだけど、初めてヒロインの裸体が見えるというエロ漫画的な見せ場にもなってるのが面白いですね。「この体で?」というヒロインの悩みが現れてるし、局部のアップまであるのが完全にエロ漫画の話法。
あと、「草」ですごい好きだったのが「草葉の陰」のイメージ。 “…いや死んでないでしょ” というギャグとしてはかなり定番だと思うんですが、本作だとその草に囲まれながら死んでる桔梗ちゃんのイメージが意味深。
エロパート。相手に求められることで徐々に自信を取り戻していく話をセックスで描いてるんだと思いますが、ヒロインが決定的に年上お姉さんとしての自覚を取り戻す象徴的なキッカケとして、自分も初めてだと相手の耳元で囁くことで誤爆を誘ってしまう。射精のコントロールを奪うことで2人のパワーバランスが決定的に傾く、という意味は今号だと『沼る女』と同じなんですが、ドラマとしての味わいが全然違うw 感情の爆発とエロとしての爆発が一致してるのがエロ漫画の魅力だと思います。あと、この場面があるおかげで蛍くんが「こじらせ女子に優しい幼馴染くん」という都合の良い存在じゃなくなるという意味でも好きです。彼に救われる話でもあるが、彼も救われてる。ヒロインの体を貪ることになるけど、それは彼の性欲でもあり、同時に彼女のコンプレックスを揉みほぐす作業にもなるのとか本当に見事でしたね。
あとはキスして酸欠のくだりも超良かった……。多幸感に耐えられなくなって相手の口を塞いだのに、酸欠でゴチャゴチャしたことを考えられなくなるという結果オーライ感が素敵だし、酸欠になりながら全身の接地面と口内の感触に意識が集中していく感覚がめちゃくちゃリアル……。
『屈強なギャルが僕にメロメロなのは一体なぜだろうか?』飢々餓
「屈強なギャル」という文字列にときめいてしまった。発明だと思う。ギャルジャンルにまだこんな伸びしろが隠されていたとは……。
話としては、ギャルに囲まれ、チンポを見られてから屈強なギャルに迫られる。囲まれてチンポ出させられるとかハードなイジメでビビるんですが、チンポを見たギャル集団のリアクション、そして屈強なギャルがチンポ以外考えられなくなるという上の空表現がギャグとして絶品すぎるのでバランスが良い。文字通り脳味噌がチンポになるコマとかマジで発明だと思う。2度も発明していいのか。何かしらの賞が贈られるべきでは。
ということでエロに至るんですが、ヒロインが有無を言わさずに攻めるのではなく、すごチンポくんが下手に出る。下手に出られることでヒロインの理性が決壊するのがみみっちい人間の心理としてリアルですよね。強気な態度だと相手のチンポを求める言い訳が思いつかないけど、相手がチンポについての悩みを吐露してきたら “しょうがないなぁ” となって、理性が完全に決壊。話の勢い(や性欲のデカさ)としては楽しいギャグなんだけど、2人のキャラクター、パワーバランスが意外なほど丁寧でそこが本作の魅力ですよね。ちゃんと2人とも魅力的に感じられる。ヒロインは秘密を抱えたままセックスに至るんですが、不思議と2人のセックスにはイチャイチャみたいなハッピーな雰囲気が漂ってて明るく楽しい……が間違いなくハードなセックスになってて素晴らしかった。すごチンポに負ける話なので竿役が強く描かれるのは仕方ないんだけど、それでもちゃんとヒロインの屈強さは印象づけられるコマ(中出し)があって本当に良かった。屈強なギャルのだいしゅきホールド、めちゃくちゃ良い……。
『おとしもの』mogg
落とした財布を拾ってくれた人と公園で会う。財布自体は警察が渡してくれるけど、お礼などは当人同士で話し合う必要があるため知らない男性と2人きりで会う、というのが妙にリアル。確かに警察ってそういうとこあるわ。警察経由で出会う話なのに妙に不安になる、という捻れ。
普通に1割くらい渡して終わりかと思いきや、偶然が連鎖して相手の家で手料理を振る舞う……はずが。不穏だったけど男性はまともで、すれ違いや勘違いでセックスに至る話かと思ったら、男が普通にゲスだったので笑った。正体を明かすのが遅い。最初は誠実に対応するつもりだったが途中から我慢できなくなったとかそんな感じだろうか。この “いい人だと 思ったのに…” というヒロインが失望するコマがかなり良い。回りくどかっただけに。ただ被虐で可哀想なのではなく失望のニュアンスがあるのが独特ですごく好き。
エロパート。おじさんの無茶な論理とそれに流されるヒロインのパワーゲームが妙におかしいんですが、最後の最後でヒロインが「そうはならんやろ」という結論に至るので笑った。ここらへんの不思議なバランス、mogg作品って感じで良いですね。スーパー可哀想な話なのに、なぜか抜けが良いというか、妙に後に引きずらない印象にさせられる。まぁたしかに、最初「1万で欲張りすぎだろ」というのはマジで思ったので、おじさんがその点をフォローしてるのはちょっと良かったというか、あれはヒロインを言いくるめるのと同時に彼自身の心の言い訳みたいなところもあるんでしょうね。受けのヒロインは不思議なちょっと超常的な雰囲気が漂うので、そういう小物臭い心理が垣間見えるという意味ではおじさんの方が人間臭いと言えるのかもしれない。
『Hungry Terriory』さわたしゆん
友人の彼女と偶然一夜を共にすることになり……。浮気モノ! 意外でしたが、それ以上にあまりに面白いかつ「思ってた浮気モノじゃない」という意外が大きい。浮気モノだとインモラルだったり、クズ間男だったり、クズ彼氏からの逃避みたいな内容を想像してしまうんですが、本作はどれでもない。いや、どの成分も少しずつ入ってるがどれにも偏りすぎないって感じでしょうか。最終的にはすげぇ良い雰囲気に至るのでイチャイチャだったり真実の愛的な話になりそうなもんですが、そこまで極端に(都合の)良い話でもないんですよね。罪の意識はあるし、何ならそれをスパイスとして楽しんでるというか、堕ちすぎてないって感じですかね。いや、性欲の溺れるようなハードさとしつこさはあって、今号最長の34ページにふさわしい大作の風格もある。大人の生々しさがあるんですよね。いや学生なんだけど。
特に前半、2人の間に悪意がしっかり感じられたのが好き。最初は主人公(竿役)の方が若干失礼な感じでジャブを入れ、そのことにヒロインが明確に嫌悪感を示しつつ、けれど浮気については満更でもない、という駆け引きがえっちすぎる……。無謀さには若者らしさも感じますが、ちょっとマジで大人すぎるんですよね。何があったらこんな精神年齢に至れるのか。私はたぶん一生無理w(浮気の度胸とか別に駆け引きが)
互いにちょっとずつ感じ悪いのにセックスすることに関しては利害が一致、という関係性。徐々に心が打ち解けていってイチャイチャのニュアンスも増していくんですが、ハードさもしっかりあって、それでいて主従が一方的になることもない。ヒロインの方が精神的なマウントを取りたがる節があって、その立場からの煽りがめちゃくちゃ良いんですが、プレイの内容自体は攻守が交代するし、どちらも下の立場を認めない感じで、結果的に互いに貪るように……という対抗心のある対等性って感じでしょうか。なので最終的に「超お似合いじゃん」という不思議な印象に至ってしまう。
駆け引きが魅力の作品なのでセリフ量はかなり多いんですが、決め絵一発で場面を象徴させるようなかっこよさ、絵的な快感もあって漫画としての満足感がすごい。一線を越える瞬間のセリフがなくなる感じとかも素晴らしかったし、そこで明確にヒロインの受け入れ体勢を示してるのも良い。合意感という意味でも魅力的だし、ただ誘惑に負けたわけではない、みたいなヒロインの強気な姿勢も感じられる。誘われたけど、同時に誘い受けの立場も示したがってるというか。ヒロインとしては、最悪バレた際に「向こうが強引に」という言い訳の一線をねらってたのかもしれない。大人……。
決め絵としては、ヒロインがナマを誘ってくる場面の下から見下してくる感じもかっこいいし、ベッドのヘッドボード(?)を掴む場面のページ全体のかっこよさがヤバい。ヒロインの劣勢とセックスのハードさを感じさせるんだけど、直後のシックスナインでは急に静かになる緩急も良い。ここで初めてかな、ようやくイチャイチャの波動が流れ出すのもエロい。ここらでようやく2人は本音で話すようになるんですが、そこから徐々にセックスが加速していき、今後はヒロインが逆転、という展開も熱い。ジェットコースターのような起伏の気持ちよさ。
風呂に入っても結局再開してしまうのも貪欲さの現れを感じるし、貪欲なのはヒロインも同じだと分かる感じも良い。そこから徐々に日常に戻りつつ、それでもやっぱり盛り返して……というダイジェストっぽいフェードアウトも好き。人生最高の一夜感。かと思ったらエピローグで一夜で終わらないのが良いですよね。セックスは終わったけど、「つまりこれってデートじゃない!?」という余韻。
『王子様ご乱心』ゆりしましろ
名門女学院に通う王子様(女子)と彼女が飼ってるジョン。要するに金持ちお嬢様とその屋敷の中での異常な日常という話なんですが、そのギャップを生む前振りとしての「王子様」がめちゃくちゃ良かった。学校でキャーキャー言ってる女子たちも平和で可愛いし、ちょっとした背景にしては魅力的すぎる。とはいえ、そっちでエロが見たいかというと少し複雑なところではある。何はともあれ、ヒロインのキャラクターめっちゃ良かった。
ということでジョンとのエロパート。要はジョンによる逆転なのですが、ジョン側にもバックボーンがあって、姉から譲り受けたペット。その姉も出てきて、妹のことを心配してる、というか少し気にかけてる。ジョン及びジョンと妹の関係に危険性を見出した姉の心配が的中する、というオチが「事情を知ってる人からしたら別に意外な話ではなかった」という冷めた距離感で独特。極端なキャラクター同士の極端な逆転の話なんだけど、劇中に「だと思った」な人物が出てくるのめっちゃ良いですね。ヒロインは優秀ではあるものの、年下として世の中(一族)のことを知らない側面も残されていて、という彼女の未熟さがジョン以外からも指摘される。学校での外面とはかけ離れてて素敵。てか、こうなるとジョンの危険性を知ってる姉がジョンを放置してた事実が気になってくるんですが、「ジョンを乗りこなしてこそ一流」みたいな感じなんですかね。もしくは調教途中でこれから本格的にペット堕ちさせるところだったが、妹に取られた、とか。だとしたらジョン側のストーリーも面白そうですね。成り上がりモノだw
ヒロインの制服姿が素敵で好きだったのですが、それを彼女の外面の象徴として脱ぎ散らかせて全裸土下座、というクライマックス突入の場面も良かった。その後、窓越しに学校の子たちと挨拶するんですが、ここで制服を来た子たちが出てくるのが全裸でガン突きされてるヒロインの落差を生む。単なる全裸ではなく、服を取り上げられた情けない姿という演出が徹底してる。
『いじめてほしいから』を図さとる
塾の先生に食われたことを機に調教することになる。単なるクズなS主人公というわけじゃないのが面白い。事の発端は100%ヒロインが悪い(一応成人同士ではあるものの酒のウザ絡みとか立場の不均衡とか)。先生と一夜を過ごすことで主人公が覚醒した、というわけでもなさそうなのがまた良い。おそらく元々彼は経験豊富で、Sとしての振る舞いに自信があるが、自制は利くので普通の浪人生として普通に生活していた……ところにカモがネギ背負ってやってきてしまった、という感じ。たぶん。
2人の関係性が面白くて単なるSM関係のカップル(セフレ?)にはない味わい。自業自得ではあるので、ヒロインが可哀想になりすぎないという意味でも良かったんですが、最後のオチを見るまでまったく気づかなかったんですが、おいしい思いをしてるはずの主人公も彼女との関係を謳歌してると痛い目に遭うわけですね。つまり二浪。もちろんバレたらヒロインは超ヤバいわけですが、その危険性を除けば、案外この関係で失うものは主人公の方が大きいのかもしれない。主従関係は当然あるんですが、それが端から見たら案外上下とは言いづらい。
ヒロイン。生粋のマゾという感じで、ひたすら楽しそう、幸せそうなのが良い。さっきも書いたけど、本作には可哀想な感じがあまりないんですよね。何ならヒロインの甘え方にはちょっとイチャイチャの雰囲気もある。年下男子に激バマリした成人女性みたいな感じですね。オチもそうですが、2人の年齢、精神的な年齢差というのがしっかり現れてて、その極端になりすぎない機微みたいな部分がめちゃくちゃ魅力的。
『どすけべコンセプト』いつつせ
犬のコンセプトカフェにて貢いでたクルミちゃんが卒業し、代わりに入ったひなちゃんにハマる。犬のコンセプトカフェという舞台、衣装がちょっとびっくりするくらい可愛いので、普通にそういう店の話でも全然楽しめそうなんですが、いつつせ作品なので静かな日常など描くはずもなく、極端なキャラクターによる極端な展開が早々から始まるw 当然のようにヒロインがどうかしてるんですが、本作で面白いのは主人公もどうかしてる。彼女を一目見ただけで加虐欲を刺激されてトリップしちゃうのとかかなりの強者ですよね。てか、犬のコンカフェにハマってた理由ってそういう趣味の現れだったのかよ。のんきに「犬コンセプト良いな……」とか思ってしまったんですが、支配と調教としての犬。
ひなちゃんが必死に誘惑してくる感じが、狂ってはいるもののちょっと健気さも感じられて可愛い。要はヤバい女に捕まる話ではあるんですが、彼女は徹底的なMなので、彼女の誘惑はあくまでも誘い受けなんですよね。主人公への誘惑にアピールのニュアンスも入ってて、健気さだったり、何なら子犬のような魅力も感じてしまう。いや、子犬があんなだったらイヤではあるけど、似た方向の何かはあると思う。
そんなひなちゃん、背景がちょっと可哀想すぎる。人気キャストの代替品としてのみ求められてきた、というのが可哀想で、現在彼女がどうかしてることの理由が分かる。そして、過去の他の男性客が通った道を主人公も通ってしまう、というのが蟻地獄に堕ちていく感覚というか、巨大なシステムに飲み込まれていくような感覚で魅惑的。
セックスがハードすぎて笑ってしまうレベルなんですが、そこで生じる感情のデカさが過去の男性客とは違って、それ故にひなちゃんを誰かの代替品ではなく彼女自身を求めるようになっていく。あれ、ひょっとしたら感動的な物語なのか……? 一種の「可哀想は可愛い」だと思うんですが、ちょっと庇護欲というか、救ってあげたいみたいな情も湧いてしまったな。まぁ、それもトータルで彼女の魔性ってことなんだと思いますが、Mの持つ強力なM性がS男性を誘惑する話からまた一歩踏み込んだような特殊な関係性になっててめちゃくちゃ面白い。
なんですが、実際に行われる内容には普通に度肝抜かれてしまった。最後の男性便器の使い方とか完全に発想の外にあるのでぶったまげました。犬モチーフでヒロインが上下逆さまになるクライマックスでいうと今号の『王子様ご乱心』があって、あれも「使用済みゴムが乳首に!?」と驚いたんですが、本作は男性便器というよりえげつないアイテム持ってきてるので強い。とんでもないアイディアなんだけど、絵的には異様に収まりが良い……。
docs.google.com
終わりです。ブログ本館のジャンプ記事、来週合併号休みということで途中だった快楽天記事を優先してしまいました。行ったり来たりするよりまとめて進めた方が楽かなぁ、なんて。なので、ブログ更新してもまた次があるという事実。気が重い。
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