北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

COMIC快楽天 2024年6月号の感想

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 ツイッターにてホメラレをいただいたのですが、そのせいか感想がちょくちょく盛り上がりすぎて気持ち悪いことになってる……気がする。
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『となりですよ!』もじゃりん

 派手なお隣さんがよく部屋を間違えてくる。冒頭の「扉を開けたら杏奈さん」と連続する場面がまず最高。夜の仕事なのが察せられる派手な格好が代わる代わる出てきて眼福かと思ったら、バニーちゃんにロングコートという非日常極まったような格好も出てくるので熱い。正直これメインで一本やっても全然いいレベルなんですが、たぶんテーマとして強すぎるので今回は違って正解だったように思います。バニーだったらもうそれは「バニーの作品」になっちゃう。
 初めて彼女を部屋に上げたら急接近。酔った勢いももちろんあるんでしょうが、彼女側には確固たる意志が感じられるような表情、視線、攻め姿勢なのが良い。超良い。だらしない人だと思ってたのにグッと大人の距離感にシフトしてきて一瞬で主人公との優劣が逆転しちゃう感じ、好き……。
 その後、ヒロイン主導で進むんですが、とにかく明るく楽しいテンション進むのが良い。込み入った話とか全然ないままサクサク進むんですが、過去の積み重ねで漠然とした信頼関係が互いにある、という独特の関係性が本作最大の魅力ではないでしょうか。今までは玄関先でしか話したことがないけど、互いに良い人なのは分かってて、深くは知らないけどフラッとエロに飛び越えてしまう感じ。行きずりの関係みたいな良さも少しあるんですが、行きずりというほど他人ではない。この「お隣さん」感。ロマン。
 挿入まではヒロインがほぼ一方的に攻めるんだけど、挿入後は緩やかに逆転という感じか。いや、逆転というよりはヒロインがとにかく快感にふけってるような雰囲気。最後まで底抜けに楽しそうだし、それは信頼と好意に裏付けられてそう……裏付けられてるといいな、というニュアンスが絶品。
 からのエピローグ。全身が見れないのが残念ですが、おそらく今までの派手さとは一線を画す私服感、もしくは部屋着感ってことなんじゃないですかね。酒もきっと入ってない。ちゃんと自分の家に帰ったあとで、荷物を置いたりしてからやってきた感。同じ訪問でも今までとは意味がまったく違う、と一目で分かるのが最高だし、2人の今後が気になってしまうエンディング。

『星乃エリはギリギリ』雲呑めお

 初表紙!! めでたい!! 初表紙はいつも勝手なファンの立場ながらテンション上がってしまうんですが、雲呑先生の場合は比較的初期の頃からファンでいて、それがついに……ということで勝手にドラマを感じてしまう。正直初表紙はちる先生になると思ったんですが、新作がこれまた素晴らしかったです。初表紙ということで気合いも感じるデザイン。制服のデザインが凝ってるので、それが堪能できるカラーが嬉しいですね。本編でのエロは私服なので(物語上しゃあない)。あと、制服デザインで印象的な帽子のYUG先生の再解釈もキレキレで笑いました。猫w
 本編。お嬢様校に通う平民。クラスには平民カミングアウトしてる男子もいて、彼には心配もされるが、お嬢様生活を演じ続けるのに必死で……。2人の会話シーンで2人の立場、秘密を共有してるが故の距離の近さが伝わってきて良いですね。あとやっぱり制服姿が堪能できるのでありがたい。が、口論になって最悪の別れ方をしてしまう。軽いパパ活のつもりがヤバい予感がするが、そこに彼が登場。普通だったら「尾けてたの?」とか怪しむ感じになってもおかしくないんですが、あの口論の内容と別れ方があると、心配で尾けてしまうのも分かる。
 あと、制服制服言っといてアレですが、私服もめっちゃ可愛いので最高でした(チョロい)。何なら2種類見れてむしろ嬉しい。それと全体に言えることですが、健全な漫画的な可愛らしさと、精緻を極めるエロ漫画的な可愛さが絶妙なバランスで共存してるからこそ、話がエロに振れ始める場面のドキドキ感と、ついに始まった際の高揚感が絶品。常に可愛いが強めに存在するのは間違いないんだけど、 “もう入れたいんだけど…” の場面とか、エロ漫画的な決め絵がまた最高なんですよね。アングル、コマ割り含めてもはや超かっこいい。ヒロインの体を横断巨大チンコ、それを挟むヒロインの顔と性器。良すぎる。
 からの挿入。全体的にイチャイチャ感強めで、すぐに密着した体位になるんだけど、慎重に進めてるが故の様子見&一時休止の際に体を離し、手を繋いで……と正常位でヒロインを見下ろす構図になるのも熱い。エロ漫画的に決めとなる場面なんですが、その際にヒロインの心情的にも大きく動いてるのが良いですよね。絵と話の盛り上がりが一致。
 からの二回戦、ヒロインが少し頑張って攻めの姿勢を見せるんですが、結っていた髪を解くのがまた熱い。まだその変身が残っていたか。ここでの騎乗位も素晴らしかった……と思ったらそのまま対面座位になるわ、バックにもなるわと盛り沢山。さすが34ページ。
 端から見ればずっと(それこそ冒頭の場面から)イチャイチャしてる2人なんですが、エロの最中にも細かい心の動きというか、関係性もしくは姿勢の変化があって、それがプレイ内容に反映されてる感。竿役が優しくて慎重な良い子なんだけど、ちょくちょくスケベな欲が出てくるのが微笑ましい。ゴムはしてるんだけど、最後の射精の寸前に抜いてゴム外して彼女のお尻にかける。AVの観すぎみたいなムーブなんですが、その少し失礼な態度に完落ち寸前のヒロインが一瞬正気に戻る、みたいな感じがあって良い。もちろんあのまま甘々に落ち切った果ての姿も見てみたいですが、普段の2人の関係が土台にあるのが感じられるのが非常にハオ。

『つま先は夕景』背中が尻

 憧れの先生の転勤が決まり、意を決して告白、一度だけの約束でセックスを果たす…… “あれから一年” 。ここまでがアバン。先生と再会する話だと思ってたんですが、別の男子に告白されたことをきっかけに彼女の中である考えが浮かぶ。「そんなことある!?」とマジでひっくり返ってしまった。まさかの竿役変更。30ページと長めではあるものの、冒頭からすぐにエロシーンで、ずっとエロにまみれてるんだけど、あまりにこじれたヒロインの心理のドラマとして濃密。非エロのドラマパートが長くてついにエロに至る展開みたいな作品も大好物なんですが、本作はエロシーン率めっちゃ高いのに、エロの中でしか先生との思い出を再生できないというドラマが丁寧に、それでいて激動の展開で描かれる。エロ読切にまだこんな戦い方があったとは。
 背中が尻先生は過去作でも、ひたすら可愛いビジュアルなのに、ヒロインの闇に染まりつつある心理に迫る話があって面白かったんですが、本作はまた特別面白い。闇と言いたくなるような心理の話なんだけど、暴力的だったりそういう暗さはないのが特色ですよね。エロ描写だけ見れば脳天気に超楽しめるタイプの作品でもあったと思います。こんな心理になってしまって可哀想ではあるけど、表面的には全然「可哀想」要素がないエロシーンになってるのがすごい。
 厳密に言えば、どう考えても(本編の)竿役、溝口くんが可哀想な話ではある。彼はセックス中に何度も「真島」とヒロインを呼びかけるのが健気で可愛くもあるんですが、逆にヒロインは全然呼ばない。例外は溝口くんに要求(先生の再現)をするときのみ。悲しい……。全力で「溝口くんだけは幸せになってくれよ!!」と願わずにはいられない作品なんですが、よくよく読むと彼は彼でアナルを要求してたり、最終的には “真島 おまえ エロくて最高” と言うようになってしまうので、ちょっとだけ不穏。もちろんヒロインとの関係を続けた影響なんでしょうが、彼の方もちょっと歪んできてる。まぁ愛しの彼女とセックスしてたら向こうが「先生」呼びしてくるんだからそりゃ何かしら狂うわな……。ヒロインは薄れゆく記憶をブーストするために痛みに執着することになるんですが、おそらく最初はもっとイチャイチャしたセックスがしたかったであろう溝口くんがハードな責めが当たり前になってしまったわけで、今後の性生活でも歪みが出てきそうで不安だ……。
 セックス中に全然目を合わせないのがまた虚しいんですが、さすがにキスするときくらいは少なくとも顔を合わせることになる……が、キスするときは確実にヒロインが先生のことを考えてる描写が入るので救いがないw まぁ、彼はそのことを知らないのがせめてもの救いですかね。

『カラダリサーチ』層積

 ゆるふわかつしごデキの先輩に婚活アプリのアドバイスを求められる。まず「ゆるふわかつしごデキ」がそのまま具現化したみたいなヒロインのビジュアルが最高すぎる。大満足してたら突然(ほぼ無意味に)メガネかけるシーンが出てくるので笑いながらもガッツポーズ。いやマジでほとんど意味がなかった気がするんですが、突然の決めポーズ&照明もあって、漫画的な楽しさに満ちた場面でした。
 完全にヤリモクというわけではなく、「とりあえずワンナイト」が彼女の希望なのだが、社会情勢の変化で利害が合致する男性が会員が全然見つからない……らしい。そっちの業界全然知らんのですが、妙にリアリティのあるロジックで好き。またヒロインのセックス観もありそうでなかったバランスですごく良かったです。漫画だと極端にヤリモクな方向に振れるキャラが多くなりがちだと思いますが、特別長くもない読切でこの絶妙なキャラクターを無理なく説明しきる。例の決めポーズの場面のおかげですかね。
 ……と、普通にヒロインの説明を面白く読んでいたら、主人公はその裏の意図を読み取ることになるのですごい。すごいと同時に「私がこの状況だったら普通に悶々としながらシコって終わってたな……」と少し落ち込むw とはいえ、この2人の心理戦、大人!!って感じですごく良かった。甘々な作品ではないけど、ものすごくロマンチックにも思える。
 エロパート。当然ヒロインが主導で進むんですが、決して一方的ではない……がすべて「彼女のお眼鏡にかなうか」というテーマが存在し続けるのが超良い。主人公が普通に本気なので2人の関係は不均等。別にプレイ自体はイチャイチャの類でもおかしくない雰囲気なんですが。
 最近の層積作品のゴム描写がすごく好きなので今回もあって嬉しかったんですが(射精後でまだ装着中のゴム描写がえっち)、本作のメインはやはりヒロインの肉感でしょうか。本編では2種類の衣装があって、セックス時に全裸になるんですが、この2つの衣装パートの全身ショットが良いんですよね。体型が出すぎず隠れすぎず、いやけど胸はめちゃくちゃデカいな……という感じ。そして期待が膨らんでからの全裸で「思ってたよりデカい」。イチャイチャな作品ではないんですが、密着の多いプレイ内容なのもヒロインの考えが反映されてるようですごく良かったです……けどあんなんガチ恋不可避なので男側は苦労も多そうだな、とか。

『ナイショのお勉強』日吉ヒナ

 順調だが最後の一線がなかなか越えられないカップル、彼氏所蔵のエロコンテンツがバレてしまって……。ヒロインの不器用ながら健気な「勉強」が可愛すぎて主人公と同様に内心でシャウトしてしまう。
 ひたすら彼女が可愛い関係ではあるんだけど、なまじ非エロの交際期間(順調)が長いため、軽口みたいなものがめちゃくちゃ多く、それが結構乱暴というか仲良いの前提がなかったら「喧嘩じゃない?」という雰囲気に何度もなる。この感じに2人の関係の長さ、深さが感じられてめちゃくちゃ良かったです。エロの進行によって急に言葉数が少なくなって、主人公のモノローグが多くなったりして。かと思えば、彼女が多少慣れてきたのか、もしくは冷静さを保つための照れ隠しとしてなのか、彼女の言葉数が増えていく。初めての緊張感として黙ってしまうのも良いけど、普段通りのノリで会話をしながらセックスしてるのが、2人のキャラクターが対話をしてる感じがあってめちゃくちゃ好き。キラーワードとして “バカ!” が出てくるのも最高なんですが、これも2人の関係性として象徴的ですよね。それに対する反論がしっかりあるのも良いし、そのままキスして一気にフィニッシュという流れも熱い。対話による感情の高まりがそのままセックスの盛り上がりとして画面に現れてる感。
 からのエピローグで笑いました。エロに関しては基本的に彼氏が軽く優位に立った関係性だったけど、彼女の「勉強」によってそれが崩れるかもしれない……という余韻。エロコンテンツの趣味がそのまま現実での性癖に合致するとは限らない、という問題。ただ、彼氏にも多少は期待の気持ちもある気がするw

『絶滅危機回避ファイル フラワーテールの場合』エロ井ロエ

 めっちゃシリーズモノっぽい感じだけど、続くと期待していいのかしら。亜人の多い世界で、人間は貴重、そして人間は他種族と交配すると相手の種族の子供ができる……とめちゃくちゃしっかりした設定が組まれてるのが良い。設定の細かさでワクワクするってのもあるけど、要するに種付けおじさん(仕事)ということですね。見事ですわ。コミフロのコメント欄にも書かれてたけど……というか私が書いたんですが、メタモンみたいな設定ですよね。メタモンの派遣される職人版。
 お相手はフラワーテール。そんな亜人あるんだ~、知らなかったなぁ~と思いましたが、どうやらオリジナルっぽい。すごすぎでは。ついにオリジナル亜人。エロ井先生といえばマンドレイクの作品が印象的なんですが、同じ植物系でここまで登り詰めたとは……と謎の感慨。
 植物系だからなのか、基本的に水中に住んでるからなのか、喋らない。ここがものすごく重要ですね。前作の『ひとりでシないで』は人間のヒロインでしたが、竿役(幽霊)のことが見れないのでヒロインがほとんど喋らなかったんですが、本作はさらに突き詰めて(おそらく)喋れない。そもそも喋るという選択肢がないから別の感情表現がものすごく豊かで、そこがものすごく愛おしくて、そのすべてがエロに向かってる。動物感もあるけど、知性も感じるので異文化コミュニケーションみたいな良さもあって素敵。喋らないだけでものすごく感情を伝えてくるんですよね。種族特有の習性も可愛いけど、もっとシンプルに目で訴えてくる場面とか本当に可愛い。上目遣いでこちらを愛おしそうに見つめてくる場面とかマジでたまらんものがありました。
 あと忘れちゃいけないのが、保護センターの係の人。メガネで瞳が隠れてるのでモロにモブという感じなんですが、にしてはちょっと可愛すぎる。正直ビジュアルだけで大好きなんですが、主人公の仕事ぶりを横で見て驚いたりのリアクションを取ってるのがまた最高に可愛い。彼女とエロに発展する話じゃないのはさすがに分かるんですが……惜しいぜ……と思ったら最後に服装の乱れという思わせぶりな描写があったのが嬉しい。シリーズ展開していくんだったら、毎回同じ保護センターが舞台で彼女の再登場があったらいいなぁ、と淡い期待。

『297日』平丸あきら

 彼女ができてからの297日。自己主張が弱めで可愛らしい、無垢な印象もあった彼女が徐々に……という変遷がすごい。いや、彼女が変わるというよりは主人公が明確な意図を持って変えていくという感じか。主人公の語りで進行するんですが、彼はその内心を相手に全然伝えない。行為として直接的に出てるんですが、彼が独りで語ってるだけで話がどんどん進んでいく感じが、プレイは激しいんだけど全体的に冷めた雰囲気に包まれてて独特の味わい。冷めた雰囲気だからこその着実に進んでる感がちょっと不気味で良いですよね。平丸作品はこういう一方的な語りの作品が多いんですが、その作風がどんどん洗練されてるような印象。クズ彼氏による一方的な調教……だけで済ませていいのか微妙に分からなくなるようなバランスになってるのが本当に良い。あと主人公は、彼女のことを責めて最終的に調教してしまうことに後ろめたさを感じていて、何なら自己嫌悪の念すら湧いてるレベル。その自己嫌悪を彼は “呆れた” と表現してて、ここが超良かった。我慢できずに始めてしまい、気付いたときには彼女の方から求められてるのが明確に分かるようになってしまった……という自分でも止められなくなってる感じがものすごく生々しい。彼女に心からの気持ちを直接伝える場面は全然ないと言って問題ないと思うんですが、だからこそ、ラストで彼女が失神した際に漏れる “…ごめんね” と言葉に出すのが超良い場面。
 主人公視点越しではあるものの、ヒロインの心理もしっかり描かれてて、それが顔に現れる。キーとなる場面でいちいち顔の話になるのがめっちゃうまい構成。ヒロインの顔にイエスと現れる(と主人公が確信する)。クライマックスのお風呂の場面で、彼女の顔を鏡で彼女自身に見せるのとか構図としてもかっこいいし、物語的に象徴的で、おそらく最初のキスのときを除けば最大の越境と言える瞬間だったのでしょうね。そして、エピローグの場面ではついに彼女の顔を見るまでもないプレイに至っているのが素晴らしい。
 エロではないんですが、個人的に4ページ目のヒロインの全身の立ち絵(歩き絵)が超可愛くて好きです……。あの立ち絵が1ページを縦断し、1日のデートをダイジェスト的に網羅してるのが漫画的に良い場面。

『11月22日』西沢みずき

 日付、日数系タイトルが連続w いや、どちらもタイトルの数字が物語的に重要な意味を持つことになるので良い仕掛けだったと思います。
 結婚するまでセックスしないという条件で付き合い始めて1年半、11月22日についに入籍、つまりセックス解禁。交際期間がまるっと焦らしプレイみたいになってて、その説明が冒頭の1ページで済まされるのでエロの開始がとにかく早い。さすが西沢先生だぜ!! とか思ったんですが、中盤の挿入開始直前に1ページだけ回想が挟まれ、そこで2人の背景が初めて明かされる。1年半で11月22日ということは、1年半前は3月22日、世間では卒業式シーズンですね……ということでまさかの先生と生徒。そんな話だったのかよ!! 見事すぎる仕掛け。マジで1ページしか回想がないんですが、その1ページによって2人の物語が読者の頭の中に爆発的に広がり、そのまま場面が現代に戻って挿入。エロ密度を高めながら物語的なオモシロも描くという仕掛けとして理想的なものだったと言えるのではないでしょうか。エロとしては享楽的な雰囲気もある作品だけど、実は超ドラマチック。2人の関係が決定的に変化する2つのイベントとして婚姻届と卒業証書という紙(証明書)を対比させたのもうますぎる……。主人公が使う「美羽さん」という呼称も、元は教師としてフラットに接するための「フルネーム&さん」の名残だった、と分かるのも味わい深い。逆にヒロインの方は「先生」呼びから変化しててこれまたエモ。
 セックスの前半がヒロイン視点で、回想を挟んでからの挿入パートは主人公視点の語りで進行するのも巧妙に情報が隠されてて見事だったんですが、逆に言うとヒロインの方は現在の段階で「先生だから」みたいなことを考えてないってことですよね。主人公はその引け目を現在でも持ってるけど、ヒロインは一切ない。それが語りのスイッチによって描かれるのも良いし、何と言ってもそんな複雑な話をほぼずっとセックスしてる作品で成立させてることに驚きます。

『翻弄! サイキっくす♡』ゆりしましろ

 事故を境に超能力に目覚めるも、治安維持委員が現れる。もっとお気楽な超能力エロコメディかと思ったら、思いの外超能力モノとして本格的というか、ハードな、そしてバトルモノみたいな話になっていくのでワクワクしました。ただし、エロパートはやっぱりお気楽な超能力エロコメディみたいな内容。「なんでだよ」と言いたくなるくらいギャップがあるんですが、すべて主人公の洗脳能力で辻褄が合うのですごい。物語においてはこの洗脳が最も重要になるんですが、この使い方がめちゃくちゃうまいというか、普通の超能力モノとして引き込まれてしまった。とはいえ、実際のクラスは主人公と良い雰囲気の女子も優しい友人もいない、という真実はマジでショックですね。つらすぎる……ので主人公が洗脳で自己暗示に陥るのもちょっと分かってしまうw
 洗脳でヒロインを手駒にする話だとどうしても暗い雰囲気にならざるを得ないと思うんですが、本作はバカであまりに都合の良い洗脳に主人公自身もかかってしまってるので、クズ男的な描写が画面上に存在しない。すごいアイディアだ……。しかも彼が無意識的な能力で描き上げたエロは「主人公のことが大好きなヒロインに翻弄される」という内容なので、自己催眠状態の主人公が受け身の立場にいるのが面白い。襲うんじゃなくて強引に誘惑されて困惑しつつ流されたい、というのは陰キャの妄想としてちょっとリアリティありすぎますね。ちょっと悲しくなってきた……。
 ヒロインも少し超能力が使えるので、完全には落ちず、思考だけはまともであり続ける(途中までは)。なのでエロエロな子を「演じさせられる」という屈辱が新たに生まれる。これも見事でしたね。超能力バトル的な雰囲気もあるし、思考も徐々にエロに落ちていってしまい……という変遷もドラマチック。実際にセックスとして行っているのは、念動力とか透明化の使い道がしょうもなくておかしいんですが(クリいじり好きw)、キャラクターの思惑は複雑で、まさに暴走状態で誰も止められなくなってるような状況が熱い。熱いが、「だから委員会による管理が必要なんだな……」とも強く感じるw
 それと、本作のヒロインめちゃくちゃ可愛かったです(クソシンプル感想)。何なら今号の快楽天で一番好きだったかもしれない。エロパートでパンツを脱ぐだけで服装死守だったのもめちゃくちゃ嬉しいし、デカく躍動するおっぱいの上で常に存在感のある巨大リボンも好き。ただ、忘れがちだけど、本来の彼女はダウナーというかクール系なんですよね。エロパートの顔が違いすぎるのでエピローグで「こんな子だったっけ?」と驚いてしまったw

『カノジョにおねがい!』おおおおありくい

 つき合って一ヶ月、風邪を引いた主人公の看病のため彼女が家に来てくれる。内気で自己主張の弱いタイプの彼女に対して主人公がやや強引に願いを押し通す話なので、ちょうど今号の『297日』とかなり似た関係性だと思うんですが、話としては全然違う。それこそ対極なくらい違う。そして、本作は地味系な(世間的な評価はそうだと思われる)ヒロインと、イケメンの類と思われる彼氏なので、その基本的な格差みたいなものがスパイスとして利いていたとも思います。もっとヒロインが自分を卑下する感じになってもおかしくなさそうなんだけど、2人はずっとストレートにイチャイチャしてるのが最高ですよね。彼氏は軽薄なイケメンっぽい雰囲気もあるし、実際の言動もそんな感じなんですが、だからといって彼女に対して上から接するような感じはない(あくまでも看病してくれる相手にワガママ言ってる感じ)。このギャップもありそうな2人がフラットな関係を築いている前提がめちゃくちゃ良い……。
 エロパートにおける、ヒロインの優しくされてはいるがどうしても流される感じが出ちゃうところもすごく良かった。可愛い。流されてるのと同時に、彼氏の幼稚なリクエストを優しく受け入れてあげてる、みたいなニュアンスもありますかね。暴力的にならずにイチャイチャ感を保ってるのが本当に良い。沁みるぜ……。主人公の欲望を受け入れてくれてるヒロインの姿に主人公が激ボレしてる感じが常にあるのも良いですよね。ほとんど言いくるめてるのに等しいんですが、すごく不思議なバランスを保ってる作品。最後の中に出した精子を時間差で用意したティッシュにひねり出すくだりも、ヒロインのキャラクター的にまったく似合わないプレイなんだけど、なぜか成立している、という魅力。

『テニサーの姫宮さん』吉田Killy

 お嬢様、テニサーに入る。テニサーの実態はやはり……という1ページ目が良すぎる。アオリまで込みで読者を騙そうとしてて最高。吉田先生の過去作的にヤリサーに捕まって酷いことされる話でもある得る……と初読時マジで思ってしまったw
 ということで実際は、つよつよお嬢様が奔放な殿方を求めてテニサーを訪れる。オープニングは、ヤリサーの噂を聞きつけた彼女の意図的なものだった、と分かる理屈が素晴らしい。まぁたしかに「テニサーといえば」みたいなところありますよね。真面目にテニサーしたい人はマジ迷惑だと思いますけど。
 んで、話としてはまさにその真面目なテニサーに勧誘されて入るが、やはり期待外れ……と思いきや逸材発見。屈強な人見知りである本作のメイン竿役である山田が良いキャラしてましたね。前面に出るタイプじゃないし、漫画としての画角もほとんど彼のチンコしかとらえないけど(ヒロインの視点がそうだから)、ヒロインに「最高峰のちんぽ」として一方的に扱われてる感じがそれだけでキャラ的においしい。最終的に逆転となるんですが、逆転というより山田の覚醒、成長みたいなものを感じてしまう。
 全編を通じて、ヒロインの強さの秘密である「セバスチャン」の存在が示唆され続け、最後の最後に正体が明らかになってずっこけるんですが、何気に彼女のキャラクターというか男性観、ちんぽ観を示す良いオチだったとも思います。山田の人間的な部分に対して1ミリも興味を示さなかったのも、彼女にとってのちんぽが「モノ」だからですよね。
 吉田作品は毎回と言っていいほどに衣装が好きなんですが、本作も良かった。それも種類が多い。ヤリサー新歓時、真面目テニサー勧誘時と来て、最後の真面目新歓(体験入部?)時のテニスウェア。エロパートに満を持してテニスらしい格好になるのが熱いんですが、エピローグも含めた3つの私服がすべてテニスウェアと同じノースリーブで統一されてるのもすごく良かった。まったく別の雰囲気になるのも好きですが、そんなに長くない読切のキャラクターなので、衣装は替わるが一貫したキャラクター性みたいなものがビジュアルから伝わってくるのが良い。しかし、大学でスカーフ首もとに巻いちゃう感じも「ガチのお嬢様」っぽくて好きです。セックスするときに服を全然脱がないのが個人的に嬉しいってのもありますが、それよりも彼女の貪欲さの現れなんでしょうね。脱ぐ間も惜しいというか、じれったい。

『エロ因習村から上京してきました!』アサオミ志群

 ダメだ、タイトルが面白すぎる。そりゃ田舎の村だから上京することもあるだろうけどさ……。
 話としては同じ因習を持つ2つの村から上京してきた大学3年と新年生。後者が前者が部長を務めるサークルをクラッシュしてしまうので因習に則り「性技決闘」を申し出る。(おそらく)エロ因習の影響を感じさせずに平和な上京生活を続けてきた主人公と、上京したてで開放感のあるヒロイン。エロ強者による大学デビューという意味では直前掲載の『テニサーの姫宮さん』と通じますね。変な人しか大学に行かない……。
 互いに性技を鍛えてきたので、2人が織りなすセックスはまさにバトルそのもの。今号は『サイキっくす♡』もバトル漫画の文法で作られたような話でしたが、本作の場合はセックスシーンがそのままバトル。三点先取なので何度も戦う(セックスする)ことになるんですが、2人が持つ性技とその特徴を説明したり、短期決戦型と長期戦を見据えた戦術の話も出てきて、さらには序盤で説明された性技(能力)の発展系が最終決戦で披露される。二回戦目で紹介された体臭の件が最終戦で再びパワーアップして出てきたのとか、マジでバトル漫画を読んでて面白いやつなんですよね。単にオモシロ設定を羅列するのではなく、終盤でその設定の応用が出てくる。
 ただ、そのバトルロジックを超越するものとして最後に出てくるのが2人の純愛堕ち。ここでも因習村の設定を踏まえた幼少期の2人の思い出が絡んできたのも見事でしたね。そして、ヒロインが乙女の顔をするのが気に入らない主人公(性技の戦いなのでw)という構図も良い。基本的に純愛堕ちしてるのはヒロインの方で、その影響で主人公も堕ちる。その優劣や関係性がセックスの攻防に反映されるクライマックスの盛り上がりが最高でした。無茶苦茶な設定なのにギャグ方向に突き抜けてもいいのに、ちゃんとドラマの盛り上がりも感じさせるエロになってて熱い。性技の戦いの決着がキスでフィニッシュを迎えるのとか本当に良かった。田舎者感が抜けてないのは主人公の方なので、純愛堕ちに対する対応が全然スマートじゃない、というエピローグも微笑ましかったです。

『中指千本』夢叶羽どどどちゃん

 コスプレイヤー(エロめ)のなめるちゃんがオタクくんを捕まえる。オタクに優しいフリをして実は性格が最悪、というギャップがひたすら楽しく、読んでるうちにヒロインが悪態をつくのをどこか楽しみにしてしまう。
 とにかくオタクにチヤホヤされるのが好きなので徹底的に利用するし、自分のためにセックスもする。酷い女性という話なのは分かるんだけど、今回の竿役が真面目で良い子で、そのオタクが厄介ムーブをしない限りヒロインは酷い対応をしない(セックスしたいから)。なので、読んでると「なめるちゃん実はオタクに優しい理想のコスプレイヤーなのでは……?」みたいな気持ちにもなってくる。裏の裏は表。他人の評価が厳しすぎるが故にオタクの礼儀正しさに気づけて、その点は素直に評価してくれる感じとかめちゃくちゃ良くない? セフレ化してる信者たちとも良好な関係を築けてる風(1人除く)なのもギャグっぽい場面だったけど、彼女の「実は良い子なのでは……?」という感じで好き。オタクは礼儀正しく、そして体臭に気をつけような……と心の底から感じられる道徳的な作品なのかもしれない。
 とにもかくにも読んでる読者に「実は良い子なのでは……?」と感じさせるのが魅力の作品だったように思います。この「俺はなめるちゃんの真の魅力分かってるぜ」的な感情を喚起させるのが絶妙にうまいというか、こういうタイプが一番の沼なんだと思う。竿役と同じだけど、これからも応援させていただきます……みたいな気持ちになってしまう。「死ねなっ!!」の決めゼリフも作品世界の一般ファンは知らない(竿役だけが知ってる)というのが逆に良いんだよなぁ。性格は悪いけど、その悪さを彼女の中でちゃんとコントロールできてる感じが「それはもう性格悪いとは言わないのでは?」ってなってしまう。まぁ、こういう勝手な拡大解釈を続けてしまうのは厄介ファンの心理だと思うので気をつけます……(マジで沼りそうだと思ったw)

『モモ色鬼退治』アシオミマサト

 桃太郎モチーフですが、エロ因習的な要素も加わったって感じですかね。モモタロウの血族である主人公は鬼に対する絶対的な優位性を持つが、彼が主体的に「鬼退治」を行うのではなく、あくまでも村の定例行事としてモモタロウのフェロモンが利用される。調子乗った若者をコントロールするために定期的に懲らしめてもらう。村の年長者が村の維持(若者の管理)のためのシステムを作る、というのが妙にリアルというか、完全にファンタジー設定なのに「ちょっとありそうだな」と思えてしまう説得力がある。
 主人公のモモタロウ感あるビジュアル(髪型の現代でもありそうな感じとか秀逸)も良かったんですが、可愛いショタみたいな話にはならず、あくまでも村のシステムに利用される文字通り竿役だったのも良い。鬼ヒロインが次々とオラついて登場するが即堕ち、とひたすら連続していくのも痛快でした。ただ、ヒロインのバリエーションを見せるのが定石だと思ってたら、ヤンキーが2人も出てきてちょっと偏ってるのも好き。たしかにオラついた鬼ヒロインという意味でヤンキーはめちゃくちゃ似合いますね。堕ちたあとに乙女な表情してるのも大好物でした。エピローグのお誘いが可愛すぎる……。
docs.google.com
 アンケート内容がプチリニューアルしましたね。好きな三選は同じだけど、順位をつけるように。
 終わり。更新が遅くなると、当然ですが次号までのスパンが短くなるので「こないだ感想書いたばっかりだよ!?」ってなってしまうんだよなぁ。まぁ逆に「もう読めるの?」ともなるので良いっちゃ良いか。
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