北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

WEEKLY快楽天 2024 No.36の感想

 2週連続の三連休でブログ本館の更新リズムがぶっ壊れました。明日から直さないと。
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『白銀院鏡華の秘密』オル巣

 幼馴染のお嬢様がなぜか執事に調教されてる。まともな幼馴染ラブコメの部分が短いながらめちゃくちゃ良く出来てるというか、その後に陥るダークな雰囲気をまったく予感させないほどにポップで可愛いのが前フリとして良い。それでいて冒頭1ページ目でエロは見せてるのでジャンル詐欺にはならない。ここまでの振れ幅を描けるならジャンル詐欺的な構成もちょっと見たくなってしまうかも(怖いもの見たさ)。
 ということでエロパート。突如として、マジで突然執事に誘われて調教の現場を見学することになる。ヒロインが目隠し状態で入室したので主人公がいることを彼女は知らず、いつも通りの調教が始まる。純度100の寝取られみたいなシチュエーションが素晴らしいんですが、驚いたことにこの目隠しを結構早めの段階で外す。ヒロインが固定されるソファーのすぐ後ろに主人公はいるんですが、まったく気づかれないまま調教が続行されるので面白い。さすがにバレそうな気もするんですが、姿勢が固定されてるのと、執事の調教が下の方に目線が行くように巧みに誘導しているようにも見えますね。
  “じゃないとこーいちに嫌われちゃう!♡” と調教の目的の断片が見れたあたりで、主人公が名乗り出る形でバレ。イキまくった直後の休憩というか、ちょっと余韻に浸るパートでバレたが良いですね。絶頂の直前でバレて絶望感に浸りながら絶頂するのも、ハードな調教を突き詰める意味ではありそうだけど、本作はそこにもう少し物語的な捻りが加わることになる。のでヒロインに比較的余裕のある、隙間の時間にじっくりと会話を重ね、そこで主人公が大きな一線を越える形で次のステージへ向かう。もちろんエロ的にはヒロインが堕ちる話なんですが、事態が決定的に変化するという意味では主人公が堕ちることの方が物語的にはメインだったと言えそうですね。この「調教を見せられる」というシチュエーションだったら絶対にハード系の寝取られになると思ってたんですが、まさかの純愛エンド。主人公はインモラルな世界に堕ちることになるけど、ヒロインとの長年の関係の答えとして恋愛関係(?)へと発展する。初読時あまりの驚きで「えっ ハッピーエンドなの……?」と少し戸惑ってしまった。よくみんな堕ちた人の認識ではハッピーエンド、みたいな論理(さすがに冗談だと思いますが)がありますが、本作の場合はマジでちゃんとしたハッピーエンドになってるのでぶったまげる。執事が有能すぎて怖い……ってことなのかしら。
 純愛ハッピーエンドでありながら、プラトニックのまま物語が終わったのもすごい。安易にセックスするかと思ったら、まさか調教を徹底する形で終わるとは。コンセプトの完遂がすごい。まぁたしかに、執事に見守られながらの初体験もイヤですねw てか、この2人の初めてはどのような形で迎えられるのだろうか。しばらくは挿入しないまま調教する関係が続くと思うんですが、いつまでもそのままというのも難しいだろうし。主人公の恋愛感情が高まりすぎて普通にセックスしたくなってもヒロインは変わらず被虐欲が強いのですれ違い、みたいな健全ラブコメみたいな後日譚も妄想してしまいます(健全ではない)。

『雛が口を開けるのは』加速

 まさかのハッピーエンドを迎えたと思ったら今度はどこまでも容赦ない作品が来るのであった。作品の流れすごい。本作における最もインモラルな要素は父と娘の関係だと思うんですが、実際にエロシーンとして描かれるのはそこではなく、主人公は第三者の先生というのも良い。インモラル系に突き詰めるならもっとエグい話はあり得ると思うんですが、本作はあくまでも教師と生徒の関係という(エロ漫画では)定番の2人を描きつつ、その背景にどこまでもインモラルな情報が付きまとってくる。もちろん生徒に手を出しただけで十分アウトなんですが、本作に感じるアウトさはそれどころの話じゃないですよね。
 親子関係を示しつつ、子供が要求する側になる瞬間というのを端的に表現したタイトルが秀逸ですね。自分の子供でない雛に要求される話。主人公を奈落に引きずり落とす、最初のプレイがオーラルセックスだったのも「口」だし、主人公が完堕ちした瞬間にキスをし、最後にヒロインからの愛を拒絶するかのように口を塞いでフィニッシュ。作品全体が口の話になって本当に見事ですね。エロ漫画でそんな語りが可能だったのか、と感心してしまいました。エロ漫画は奥が深い。
 主人公がずるずると引きずり込まれるように堕ちていく流れ、心理の機微が最高なんですが、主人公の理性が捨てられる場面として、主人公のメガネが外される。メガネを理性のメタファーとする演出だけでも個人的に大好物なんですが、本作はその前段として主人公がヒロインに対して「あの子」を重ねている点も大きい。前の職場で “生徒との関係を疑われて転勤した” らしく、その際の子のことだと思うんですが、ここでメガネを奪われ視力が落ち、物事を見る輪郭がぼやけることでいよいよあの子との区別が付かなくなる。多くの場面が暗がりの中なのがある種の抽象性を生んでるというか、主人公のインナートリップみたいな印象にも繋がってるんですが、主人公の認識能力、判断能力が徐々に低下していく、落下の始まりとしてのメガネ外し。あまりにもおいしい。

『恥を知れメロス』ぱてくらー

 不純撲滅運動を止めるため、メロスが走り出す。相変わらず全開のスタートダッシュを見せてくれるギャグ全振りぱてくらー作品は最高である。特に今週のweeklyは特濃ダークネスに浸った直後なのでギャップがすごすぎる。もはやくだらないギャグに癒しの効果が発生してしまう。
 出オチ的に『メロス』ネタがあるのかと思いきや、全編通じて『メロス』なので笑うと同時にちょっと感心。読んだのがかなり昔なので「こんなのあったねw」と思い出しながら笑ってしまう不思議な感覚。寝過ごすくだりとかあまりに迂闊で笑うんだけど、元のメロスも寝過ごしてるので仕方ない。からの “南無三ッ” で爆笑してしまった。ただ、本作において初めて主人公が走り出す瞬間でもあるので、ドラマチックでちょっと気持ちがアガってしまうのも確かなんだよな。感情をもてあそばれてる気分……。


 終わり。weeklyの何でもアリ感が現れた良い号でしたな。普通の作品がない。
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