9月の暑さナメてました。去年もナメて後悔した気がする。もう毎年こうなんでしょうね。悲しい。
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「表紙」平丸あきら
平丸先生のカラー嬉しい。しかもピンク髪とは驚きでした。てか、今週インタビューあったけど、これは新作もあるパターンですかね。楽しみ……。
『限界なのでえっちなマッサージにいかせていただきます!』いまざなう
新人ながら限界OL、えっちなマッサージに行く。事前の説明はすべて1ページ目で済ませる手際が好き。リモートで友人と飲んでる際に友人にマッサージをすすめられるんですが、スーツ姿のまま飲んでることで彼女の限界感を出しつつ、OLという属性を絵一発で示してるのが強い。そして次ページからマッサージ店内で脱いだあと。
全部説明する系のタイトルですが、タイトルの「えっちな」の部分が重要ですよね。エロ漫画とかAVでマッサージが題材だとどうしても「実はエロマッサージ」みたいな話が多いと思うんですが、本作は最初からそういうのが目的。法的にクリーンな店(?)なのかは怪しいですが、少なくとも当人間では合意の至ってクリーンな関係。主人公は求めたものを理想の形で提供されるだけの話。ただし、その内容があまりにも理想的なので驚くことにはなる。裏の裏は表みたいな設定であまりにシンプルなんだけど、「全然これでいいじゃん!」と少し目から鱗でした。今までのマッサージ屋はなぜわざわざ騙す行程を挟んでいたのか疑問に思えてくるレベル。まぁ、物語的に捻りがあった方が面白くなりやすそう、というのは何となく想像できますが。
エロマッサージのサービス内容の描写が細かく、事前説明の段階で各部位を触られることを想像してエロい気持ちになってしまう場面とか最高。こんな経験ないですけど、私でも絶対なる自信がある。てか、施術師もそうなるように意図的なんじゃないですかね。指先確認とかちょっと大げさだと思うので、そこから既に彼の前戯は始まってる、みたいな。
通常のマッサージもしてくれて気持ちいいのだが、そこから何の確認もなくするするとエロへと移行する。最初からそういう話だから当たり前なんですが、それでも「こんな急に!?」と驚いてしまう主人公と私はあまりにチョロい。やはり最初から合意のパターン、めちゃくちゃ面白いですね。
女性用ということで、施術師が勃起してることをチラ見してしまう場面があるのも良い。黙々とサービスを続けるので無機質な印象も少しありましたが、急に人間味が出てくるし、当然「それを使ったら」的な想像もさせられる。この時点で主人公が “まさかあれ挿れてもらえたりとかは…しないよね……” と当たり前に挿入を期待してるのも良い。最初からエロが目的にしてることの独自性。いや、普通に当たり前の話をしてるだけで意外なことは全然発生してないんですが、それでも新鮮に感じられちゃうのが面白い。
いざ挿入。施術師から提案してくるんですが、チンコをヒロインの眼前に持ち出す定番の演出がされてるのも良い。ある意味エロ漫画らしくない話だと思ったんですが、決めとなる場面ではしっかりエロ漫画らしい。あと、この場面、ゴム着用済みで提案してるのも独特ですよね。「断られたらゴム無駄になっちゃうよ!」とか思ったんですが、おそらく「ゴム着けるので安心してください」的な説明を省いたんだと思います。ここらへんもシステマチックなムーブでプロらしさを感じる。システマチックなんだけど、挿入中に抱きしめながら頭撫でてくれたり、人間味が感じられるセックスになるのも良い。挿入を境に施術師との関係が少し深くなった感じがありますが、おそらくこれも快感を増やすためのテクニックというか、何ならマニュアルなんだと思う。頭を撫でる直前にタオルで手を拭くコマが差し込まれるのも良いですよね。オイルマッサージしてたから当然っちゃ当然なんだけど、カップルのイチャイチャだったら絶対にない描写で、やはりここもプロらしさ。主人公は快感に必死でおそらく気づいてなさそうなくらい自然に済ませてるのが良い。
あまりに気持ちよくて当初想定してたよりも深く落ちてしまう、という話なんですが、その最後の「落ち」の部分をチンコによる一方的なサービスではなく、主人公の中断の合図(のキャンセル)によって示してるのも良い。徹底してプロとしての仕事を提供されるだけで終わる。恥ずかしいので顔を隠したままお願いするんですが、中断の合図である左手で相手の手を握っているところに感情が強く現れてて演出として最高ですね。マジで超シンプルな話なんだけど、細かく丁寧な描写が積み重ねられることで普通に情報量が多く味わい深い作品になってたと思います。
エピローグ。ヒロインの「堕ち」を感じさせる延長のお願い……をキャンセルされる。ずっこけるような話なんですが、ここもプロらしさが徹底してて良いなぁ。「このあと別の女を抱くってこと!?」みたいな感情にはならずに、新しい趣味(推し)見つけちゃったみたいなポジティブな感じで終わっていくのも当初の目的を100%達成してて好き。
『淫魔さまがゴチです!』ノノギ
8ページと短めですが、1ページ目からエロが始まるので安心。挿入が早い。一応最低限の説明的なこともしますが、すべてセックス中の会話して済まされる。
淫魔らしくほぼ全裸なんですが、それでも淫魔らしい衣装はある。冒頭から挿入直前なのでおそらくセックスに向けて服を脱いだ状態だとは思うんですが、それでも完全に全裸ではない衣装デザインが素晴らしい。特に胸の隠し方がマジ謎が最高でした。淫魔独特の文化を感じる。それに後半でタカが外れた竿役による逆転になるんですが、そこで例の胸部の服を脱がして乳首がコンニチハする展開も熱い。「脱がす」の最小単位。
竿役、結構キャラが濃いと思うんですが、徹底してセリフがないまま終わるのも面白かった。短い作品ならではのコンセプトを感じる。拘束を筋力で破壊して逆転する場面とか感情に溢れてるし、ストップを要求するヒロインをキスで黙らせる場面とか明らかに人格があるし、2人のコミュニケーションになってるんですが、それでもセリフはない。意図的にセリフが排されてる、みたいな悪目立ちもないのも見事でしたね。おそらくヒロインのキャラクターとしての魅力が強いおかげでしょうか。独りで喋り続けるだけで成立してしまう。ここらへんもショート作品独自の魅力って感じで好きです。
「エロマンガアカデミー」
#75。平丸あきら先生による「対比と高低差の衝撃力」。
インタビューの中に「感覚」「意識」という言葉が前提のように出てきて意外なんですが、とはいえ、インタビューの内容は抽象的ではなくしっかり具体的に、理知的に語られてるのが面白い。意識という抽象的亜ものが理論的に整理されてるって感じでしょうか。
感覚とか意識の件とも通じますが、個人的にも(インタビュワーと同じく)平丸作品といえばモノローグが印象的なんですが、回答が意図してなかったと始まるので驚く。マジかよ。ほとんど作風とか作家性とかの域だと思ってたのですが。
コマ割りなどの漫画演出についての話でも、あまり漫画家のインタビューで聞いたことのない角度の表現で語られてて超面白い。本当にずっと意識の話をしている。感覚派の人(軽率に天才と言いたくなってしまいますが)の話ってつまらなくなることも多いというか、単純に何言ってるか分からなくなることも多いと思うんですが、今回のインタビューは意識と感覚の話が理論的に語られてるのですごい。面白い人……。
インスピレーション元として音楽が出てくるのもすごい。私は映画好きってこともあって「面白い漫画を描く人は映画をたくさん観てる」みたいな偏見があるんですが、全然違うので最高。あくまでも感覚だから音楽から漫画の置き換えが容易にできるってことなのでしょうね。かと思ったらホラー映画に興味があるらしく(あくまでも漫画の勉強として)、ホラー映画を取り込んだ平丸先生の作品、めちゃくちゃ面白そうですね。てか、本能に働きかけるジャンルだからホラー、という目の付け所が鋭すぎる。こんな面白い人を今までインタビューしてこなかったなんて担当さんの落ち度じゃろ……とか勝手すぎることを思ってしまったほど今回マジで驚異的に面白い。
終わり。面白い新人のデビュー作2つに超面白いインタビューとweeklyの醍醐味に溢れた週だったと思います。
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