- 『Tomorrow never knows』Hamao
- 『最高のセックスのつくり方』桃雲
- 『お静かにお願いします』オクモト悠太
- 『20:30』スミヤ
- 『Touch Me!!』柚十扇
- 『どきどき相性checking!』どえむたん
- 『あんあんあんま』いつつせ
- 『花咲かムスメ』mogg
- 『ラブポーションNo.A』雛原えみ
- 『手紙』いだ天ふにすけ
- 『調子コかせてリオ先輩』ヤギコム
- 『Stay with you』さくま司
- 『路地裏の占い師さん』梅田ノーチラス
- 『シングル×シングル』トウ
最近エロ漫画感想が長くなってる気がする。キモくないか不安になるが、そもそも普段からキモいと思うのでオッケーだよ。
kitaku2kitaku.hatenablog.com
『Tomorrow never knows』Hamao
前作『オールド・ファッションド』まさかの前日譚。男の趣味に影響を受けまくっちゃうヒロインの話だったこともあり、その都度ビジュアルが大きく変わるので、表紙の時点では結びついてなかったです。1ページ目の喫煙アピールでピンときた。見比べてみたら1ページ目、コマ割りまで揃えてるのですごい。英語とカタカナで違いはあるものの、それぞれ過去と未来を指す単語を入れて対比させてるのもオシャレ……。
増築的に足された前日譚ではなく、『オールド・ファッションド』の時点で二部作構成になることは想定して作られたのでしょうね。そのくらい緻密に両作が絡み合ってる。『オールド・ファッションド』で私服として出てくる衣装が信じがたいほど可愛くて、おっぱいポロンのコマのど迫力と相まって印象に残ってるんですが、そのファッションのルーツが『Tomorrow never knows』のラストで語られるのですごい。殺し屋みたいなオジサンに感謝である……。
前日譚という仕掛けもすごいし、読み比べるだけで何重にも面白くなるんですが、本作単体でもかなり語り口が特徴的。友人たちとの宅飲み中に行うノロケ話としてセックスシーンが差し込まれる。あくまでも竿役(当時の彼氏)は間接的に登場する形。あくまでも彼女の「思い出話」という形式なので、竿役のセリフはない、セックスの絵にヒロインの語りが被せられる。それを聞いてる友人たちが、最初は呆れてるようなリアクションだったのが徐々にエロの迫力に飲み込まれて固唾を飲んで聞き入ってて、そのリアクション込みですごく良い。『オールド・ファッションド』は竿役の語りで進行する作品だったんですが、それとの対比にもなってますね。ある意味でどちらも一夜のセックスを思い出す話。どちらもその作品における「現在」との間に距離があるというか、1枚フィルターがかかってるような作品。その重層的な作品が2つ鏡合わせに……。
2作で竿役は違うので、必然的に本作『Tomorrow never knows』の彼氏とは破局することになる、というか『オールド・ファッションド』の時間軸で破局が発生する。おそらくだけど、男の趣味に合わせすぎる姿勢が相手(殺し屋みたいな竿役)に引かれてしまったとかじゃないかなぁ。断定的な描写はないですが。
んで、『オールド・ファッションド』のラストではセックスの後2人は付き合うわけではなさそう……という着地を見せる。煙草で示すのがオシャレだったわけですが、付き合わないのは男視点ではちょっと悲劇ですが、おそらくだけどヒロインが男の趣味に合わせるのをやめて、歴代彼氏の影響の中から自分の趣味を確立させた、みたいな成長を感じさせるラストでもあったんじゃないですかね。2作通して読むと、取捨選択をするところに彼女の大きな一歩を感じる。『オールド・ファッションド』を単体で読んだときとはラストの印象が大きく変わってしまうので驚き。
『最高のセックスのつくり方』桃雲
受験のために半年間セックスを我慢してたが、志望校に合格できたのでついに。ただセックスできるだけで最高ですが、ヒロイン(後輩で受験はまだ先)は合格後のセックスに向けて万全の準備をしていて……となる。発想自体は普通に分かるし、何ならよくありそうなシチュエーションなんですが、そこでのヒロインのアイディアと実行力が度を超してる。やりすぎ感にちょっと笑うと同時に、あまりに畳みかけられる彼女の努力の数々にエロ的な説得力がグングン上がっていく。もちろん感謝と愛おしさもマシマシ。
最初の精力剤はちょっとファンタジーみありますけど、それ以外は一応リアリティのある努力になってるのが良いですよね。似たようなことを真似することはできる。もちろんあそこまで極端な結果が出るかは分かりませんが。コスプレやエロ下着は定番ですが、膣トレのくだりがかなり好き。膣トレ自体は普通にあることだし、やってる人も多少はいるでしょうが、あそこまで「成長」として描いてるのが漫画の嘘って感じで最高。やり方が完全にバトル漫画における強さの説得力。
コスプレも絵の雰囲気がガラッと変わって眼福だったんですが、そこでヒロインが精神的なスパイスを持ち込んだ「寝取られ」の予感。これはナイスアイディアすぎるでしょ。再現性が高すぎる。告白されたのは事実かもしれないが、深刻そうに伝えるのがある種の嘘なので、マジでイチャイチャカップルが行う軽いプレイとして素晴らしいアイディアすぎる。まぁ、人によってはセックス中にそんなこと言われたら落ち込んでしぼんでしまうかもしれないw たぶん私も、仮に嘘だと気づいても想像してへたるかもしれない……。「なぜそんな子が自分なんかを?」みたいな落ち込みをするかもしれない(めんどくさ)。ただ、あそこで逆ギレ的にヒートアップできる彼氏だったらマジで最高のプレイだよな。ひょっとしたら本作で一番「羨ましい」と感じた部分はここかもしれない。超簡単にできるのに(あそこで燃える人にとっては)盛り上がりが強すぎる。ポップな勢いとイチャイチャ感があるのに、ファンタジーな勢いとリアリティを感じさせるアイディアに詰まってて本当にすごい作品。
あと、例の寝取られ疑惑の場面でちょっとだけ出てきた制服姿も可愛かったです。かなり大人しめな雰囲気なのが寝取られ疑惑との相性が良すぎるw
『お静かにお願いします』オクモト悠太
図書室にて、堅物図書委員にチャラ男が迫る。付き合ってるとはいえ、可哀想の匂いが漂っててオクモト先生にしては珍しい……と思ったらラスト1ページで特大ハッピーエンドに急転直下するので思わずニコニコに。竜之介、男だぜ……。
図書室で一方的(笑)にやられてしまう緊張感と背徳感が魅力なんですが、その味わいを支えるモブの女子3人も良い。ガールズトークの間にエロが差し込まれる構成は今号だと奇しくも『Tomorrow never knows』と似てるんですが、オクモト作品特有のカラッと明るい雰囲気でだべってた女の子たちが徐々に「まさか本当に……?」とマジになっていく変遷がめちゃくちゃ良い。誤解したまま終わるのが笑えるし、余裕たっぷりに無責任な話してたはずが最後に余裕なくしてしまう感じとかも超可愛い。メインのカップルの背景は直接語らず、この勝手な女子会の方で語られるんですが、それがミスリードで……という仕掛けが楽しい。エロ読切なので、いきなりセックスが始まってしまうのは仕方ないんですが、それを逆手に取った仕掛けですね。
エロパート。信頼と実績の巨乳ぶりが本作でも素晴らしいんですが、あくまでも図書室でこっそりと行うので、服は着たままだし、立ちをベースにした体位になってて見応えがある。服から胸だけ出した絵面があまりに強いんですが、それが立ちの姿勢でより強調されてたと思います。背筋伸ばす感じはヒロインのキャラクターにも合ってて魅力的なんですが、そのヒロインの凛々しさが竜之介によって蹂躙される(笑)。
てか、オチを知った上で読み返すと「必死に言葉責めしてくれるじゃん……」と優しさに感動もしてしまいますね。
『20:30』スミヤ
20:30、用具室でとある約束。1ページ目から不穏な雰囲気でヒロインが襲われるんですが、一応冒頭の場面で約束してるスマホ画面が映されるので合意なのは予想が付く。これは「レイプは勘弁してくれ~」という読者に向けた配慮だと思うんですが、その割には襲われるヒロインのリアクションがガチなのが面白い。要するに「ごっこ」だが、いざ本当にやると怖くなってしまった、という話。リアルであると同時にめちゃくちゃ可愛いな。何その女の子の心理。良すぎる。彼氏側から泣かれたらたまったもんじゃないんですが、その可愛さを目の当たりにしたら愛おしさ爆上げかつ、準備万端なのが伝わってきて徐々にその気が盛り上がって……という優しさがベースにありながらエロにもかなり積極的、という絶妙なバランス。直前の『お静かにお願いします』では彼女の要望が100%で行われたプレイですが、本作はプレイ内容は彼女出発であるものの、そこに「やってみる?」と色気を出したのは彼氏の方。対等と言っていいかは難しいですが、どちらにも下心がある双方向の関係であり、それ故に結ばれた合意のプレイなのが良い。
一応校内とはいえ、誰かに見られたら通報されてもおかしくないレベルなので、最初は自室でやった方がいいんじゃないかな? とビビリの私は思ってしまうんですが、それだけガチな状況が整ってるからこその興奮も間違いなくありそう。ガチすぎて泣いてしまったわけですし。そして、野球部員と小柄マネージャーという関係なので、体格差がすごくてですね、ごっこなのは分かるけど絵面がなかなかハードで誤解を招くw 彼氏側に加虐の趣味が芽生えてしまった気配はないんですが、彼女は癖になってもしょうがないよな……という説得力がすごい。ただでさえ体格差に惹かれてるところはあっただろうに、それを十二分に味わえるプレイを知ってしまって、もうしばらく抜け出せないのではないか。ヒロインが全身持ち上げられてしまう場面とか「合意なのは分かるけど……」と少しハラハラしてしまいました。
『Touch Me!!』柚十扇
刺激を求めたカップルが「アレ」に至る。まさかの合意インモラルプレイ3連続。最高かよ。それぞれ作者の持ち味が出てて、似たテーマなんですが、全然違う味わいの作品になってて素晴らしいですね。
比較が多くなって申し訳ないですが、前2作との最大の違いは成人カップルな点ではないでしょうか。プレイなのに泣き出してしまったり、前2作は幼さがあって可愛かったですが、本作は意思つよつよのヒロインと、それに呆れながらも付き合っちゃう彼氏の関係性がすごく魅力的。そして、プレイの計画性がかなり入念で、準備にもいろいろお金がかかってそうなのが成人カップルの戯れって感じで素晴らしい。
ということで、ご所望のプレイは痴漢。一旦ラブホで予行練習(彼氏は本番だと思ってる)するのが大人の余裕って感じで良い。そして、それが実際は焦らしにもなってて……といざ本番。まさかの現地での実践。エロ漫画で痴漢モノとか普通にあるので本来ならそこに特別何かを感じることは少ないんですが、本作は電車の場面に至るまでは極めて現実的な戯れというバランスで描かれてたので、それが良いフリになってたと思います。「おいおい これはダメだろ!」とか反射的に思ってしまうレベル。うまいことリアリティラインを揺さぶられてしまったw
よく考えたらチンコ出すことを除けば、電車内の痴漢だったらバレても一旦駅員に突き出されるので、そこで事情を説明すればブチギレられるくらいで済む話ですよね。前2作は校内なのでバレの対象が知り合いなのでリスクはむしろ高い。なのに本作の方が「いやいやマズいって!」というハラハラ感がある。冒頭のサイゼリヤの場面からしてリアリティがすごかっただけに、エロファンタジーへの飛躍に振り回されてしまう。
あと、比較としては、『20:30』がタイトルになるほど重要だった約束を意味する時間が、本作ではしょうもないエロもじりになってるのも落差があって好きです。通勤ラッシュでめちゃくちゃありそうな時間w
電車内にていざ本番(プレイが)。本作最大の衝撃にして一番刺さった場面が、そこで待ってたヒロインの格好。まさかの制服。単純に絵面として可愛すぎるってのもあるんですが、「いい年してコスプレ」というのが一目見て分かるのがすごいですね。私は絵の知識が全然ないのでなぜそうなったのか分からず、マジで魔法にかけられたような感覚なんですが、明らかに成人女性が、コスプレとして、制服を着てると伝わってくる。ここでの制服は、100%エロを楽しむための衣装。良すぎる。単なる学生設定よりも絶対こっちのがエロいでしょ……と打ちのめされました。
電車内で盛り上がったまま挿入……までは行かない。この現実的な線引きも好き。というか、彼氏側の「そこまでは付き合いきれん」という最後の意地があったのかもしれませんね。本作はエロが3つの場所に分かれてるんですが、最後のパートでは「痴漢プレイ」という体裁が失われ、むしろ彼氏の逆襲という趣。ただ、声出すとバレてしまうという煽りがあるので、彼女の趣味にも完璧に答えてあげてるので、もはや優しいとも言えるのかもしれないw いくらエロファンタジーとはいえ、電車内だとできる体位に制限があるので、最後の場面では激しさと躍動感がマシマシになってて読んでて迫力がすごかったです。てか、読み返すと冒頭のラブホでの「ごっこ」のくだりがあまりにぬるくて微笑ましい。いや、ノリノリの彼女に翻弄される感じがあってあの場面はあの場面でかなり好きなんですが。
『どきどき相性checking!』どえむたん
マッチングアプリで女性と会ってみたら、なぜか女女男の3人組が現れる。マッチングした女性と、その友人の女性、そして友人の彼氏であるチャラ男のたっくん。仲良しすぎて彼氏をシェアしてるので、今回体の相性を確かめるために2人揃ってやってきた、という話。たっくんはその件とは別に、ただの趣味。たっくん、あまりにキャラが強すぎる……。
大人しそうな主人公が変態たちに翻弄される話かと思ったら、主人公がまさかのポテンシャルを発揮。生まれ持ってのつよつよチンポで大逆転みたいな話はエロ漫画だとありがちですが、本作だとテニス目的で入ったヤリサーで仕込まれた、という設定。努力と経験とスキルの結晶なのが独特ですね。主人公が圧倒的に強かったという展開も楽しいですし、主人公が向こう3人に負けないほど変人だった、というバランスも好き。4人それぞれが変人というか、常識がすっ飛んでるので、いわゆる「可哀想」が1人もいないw どうかしてる話なんだけど、全員ハッピーで、ピースフルな作品にまとまってるのがスゲェ……。
男2女2の構成で、主人公が圧倒的に強すぎるとバランスが悪いはずなんですが、そこで奇跡的にバランスを保つのが、もう1人の男である たっくん。あくまでもこの4人はそれぞれ彼氏彼女という関係だが、たっくんは寝取られ趣味をこじらせすぎた結果、喜んで彼女を差し出す。最低すぎて笑ったんですが、女性陣も勝手なことやってるので結果オーライという不思議なバランス。主人公は、チンコは強いが基本的に大人しくて優しい性格なので求められたプレイしか行わないんですが、つよつよチンポを活かした言葉責めを……たっくんに求められて実行。たっくんが良すぎるw キャラクターがぶっ飛びすぎて楽しいというのもあるんですが、本作をエロ漫画として都合良く盛り上げる役割としてたっくんの仕事ぶりが素晴らしい。
クライマックスでは、制服(コスプレではないらしい)を持ち出しての着衣プレイ。主人公はヒロイン2人を同時に相手したりもするんですが、基本的には彼氏彼女のカップルが2組存在するので、最終的にはたっくんも後ろの方でセックスすることになる。なるが、まったく彼女を満足させられずになじられる(満足)。後ろにいるはずなのに、やけに印象に残る存在であった……。
『あんあんあんま』いつつせ
いかがわしいマッサージ店の噂を聞いたミサちゃんが突撃。当然(?)エロいことは行われないのだが、ミサちゃんはエロいことを期待してるので逆ギレ。ヒロインの極端すぎるキャラクターに乗って読み進めてしまうので、一瞬「思わせぶりなだけかよ!」とか思ってしまうが、よく考えたら按摩師からしたら不条理劇ですね。むしろ台をおしっこで汚されて不運ですらある。
ということで逆転(?)によってエロパート突入。いつつせヒロインにふさわしいミサちゃんのワードセンスが光るんですが、どう見ても彼女が一方的に迫ってるのに彼女はあくまでも受けであって、相手に攻めを要求してるんですよね。パワーバランスとやってることがややこしい。そして彼女のワードセンスが難解w
ミサちゃんの暴走ぶりが楽しく、読み進めるうちに知性が溶けてなくなるような感覚が最高なんですが、彼女の煽りに乗って按摩師が攻めに転じるきっかけが “あん摩師を馬鹿にするのは許せません…ッ!” なのが良かった。あらゆるエロコンテンツでネタにされる按摩師が正論でキレてくる。「リンパ」のくだりとか完全にエロマッサージあるあるという感じで、思わず「だよね~」とミサちゃんに同調してしまったw ので、それにちゃんとした按摩師がキレるのは仕方ないというか、今までごめんよ……。
話の知性と画力が反比例しまくってるのがいつも通り楽しいんですが、今回も驚いてしまうようなアングルの絵が当たり前のように連発するので眼福ですよね。絵も漫画もあまりにうまくて毎回新鮮に驚いてしまう。そのスキルが最終的にたどり着いた作風が……という事実が面白すぎます。ヒロインの独り相撲な話ということもあって、竿役の描写がかなり少なく、とにかくヒロインの絵が連発するんですが、単調だったり飽きる余地が1ミリも存在しない。
『花咲かムスメ』mogg
ホームセンターで何気なく買った花を育てたら人型の何か。話だけ見たらどう考えてもホラーなんですが、天真爛漫な表情を見せるヒロイン(花)の有無を言わせぬ可愛さなんですよね。植物で喋れないのですが、非言語的な感情表現がマジで可愛い。小動物みたいな魅力が詰まっている……のだが植物なのでややこしい。
最初は「植物だから」と理性が働いてた主人公が、ヒロインの魅力に徐々に屈していって……というグラデーションも良い。揺れに揺れてた主人公だが、事故が起こり、そこでヒロインがイタズラ的に最後の一押し。絶対に越えちゃいけない一線だと分かっているのに越えてしまうドラマとして見応えがあるし、これってエロ漫画のドラマパートの醍醐味ですよね。我慢してたらついに……という感情の曲線。その主人公が落ちるまでのカウントダウンを、大きくなっていくヒロインのサイズ感で表現したのも素晴らしかった。ついに同じ大きさになってしまったという場面のドキドキ感が本当に最高。そして、大きさに至る最後の一滴が精液だったのも象徴的。異種間で性交する話として意外なほど丁寧に作られてて、話の内容のバランスをちょっとだけ変えたらすぐにでも本格SFホラー短編とかになりそう。
常に「大丈夫なの?」と心配になる要素がつきまとう作品だったんですが、エピローグでそういう理性による心配を放り投げるかのような驚愕のオチを迎えるので笑った。一線を越えたことを心配してたのに、それどころかバレの問題も同時に持ってくるので笑う。わざわざモブの子供が目撃する描写を入れてるのも最高でしたね。ダメなことがすべてあるんだけど、謎のほのぼのハッピーエンド感。
『ラブポーションNo.A』雛原えみ
浮気調査のために探偵が夜の街に潜入。ハードボイルドでもおかしくないような主人公像なんですが、その夜の街というのがいわゆるトー横的な最近の空気も漂ってるのが面白い。探偵と夜の街なんて鉄板の組み合わせのはずなのに、トー横となると途端に世界観がブレイクしてしまうというか、現実がフィクションを通り越してしまった感。ただ、本作はその違和感をうまく利用したような仕掛けになってて見事でしたね。最後にヒロインの意外な素性が分かる構成なんですが、「意外とまともだった」安心感と、「やることやってんじゃねぇか」という呆れが入り交じる。慈善活動的な側面もあるのかと思ったけど、結局は夜の街のいかがわしさが性に合ってただけで、自分はめちゃくちゃ楽しくサバイブしてる、みたいな。そういうたくましさと、したたかさも感じられたオチの部分でより一層ヒロインのことが好きになってしまいました。何なら彼女の日常業務とかも見てみたいレベル。てか、「それっぽい白衣&ダテメガネ」があまりに、あまりにも良すぎませんか……?
そんなヒロインのことを「小娘」と認識する探偵のキャラクターも良い。小娘にしてやられた探偵が手錠(おもちゃ)で縛られてる場面とかかなり好きです。女スパイとかでよくある展開だと思ってたので「逆も全然良いじゃん……」と目から鱗でした。いい年した竿役はもっと罠にはめられてほしい。
探偵が大人の意地を見せる部分もあって、例の手錠もその気になれば簡単に壊せる。ただ、その壊すタイミングというのが、エロ的に落ちてからだったのが良いですよね。逃げるためではなく、自由に動いてセックスを堪能したい(彼女を負かしたい)。手錠壊せるなら浮気調査だとゲロる前に壊せばいいんだけど、「ゲロったら奥まで入れさせてもらえる」という欲望に負けちゃうのが可愛い。
『手紙』いだ天ふにすけ
一緒に暮らしてる大学生兄妹が既にセックスでズブズブの関係。世間的には陰と陽(兄が陽)って感じで対照的なんですが、相思相愛で、世間話しながらイチャイチャしてて最高。冒頭はかなり享楽的な雰囲気なんですが、そこにナレーション的に添えられるのが「結婚おめでとう」の手紙。そして心の声は妹。手紙は数年後からの回想形式の語りで、その現在との温度差が良い魅力を生んでるんですが、同時にハッピーエンド確約みたいな安心感もある。……あるじゃないですか。どう見ても数年後に結婚する妹が兄宛に書いた手紙じゃん? セックスのことも書いてあるから式で読み上げはしない、けどそもそも兄妹なので大々的に式を挙げたりはしないんだろうな……とか納得しちゃってたんですが、これがまさかの叙述トリックですべてがひっくり返る。どちらかと言えば陰っぽいヒロイン(明るいけどね)にめちゃくちゃ感情移入しながら読んでるはずだったのに……最終的には私が頭の中で同調してたのは「さわやかイケメンBOY」のお兄ちゃんの方だったと明らかになる。幸せになってくれぇ~!! とひたすら応援したくなるんですが、どうしようもなく不穏なエンディングを迎えるので笑った(乾いた笑い)。最後の2ページで一気に読者(てか私)の心の中で巨大化したお兄ちゃんがあのラスト。不穏。どうか、何かしらの形で心を平穏を取り戻して……。てか、冷静に考えるとイケメンで世間的にもチヤホヤされてるお兄ちゃんの方が感情が巨大で、巨大すぎてこじらせちゃってるの、めちゃくちゃおいしいですね。めんどくささも込みで愛おしく思えてくるレベル……なのにラストが不穏。
最後の最後に「すべて間違ってるぞ」とひっくり返されるので、即座にもう一周したくなる。そしたら見事にお兄ちゃんのクソデカこじらせドラマとして読めるので最高。巧妙ですね。ただ、初読時に読んでた「妹からの手紙」でも全然話は成立するというか、何なら手紙で語られる感情の部分は妹のそれだとしたもすべて真なんじゃないかと思います。初読時の印象もしっかり成立してるだけでなく、そもそも誤解でもない……気がする。2人の名前が、兄が唯、妹が翔、とそれぞれ男女らしさが逆転してる(アホらしい考えですよ)のは、2人がそれぞれ交換しても成立することを示してるように思います。公表したいけど公表できないウジウジした感情は互いにそれぞれ抱いてて、その中身はほとんどの場面において同質のものなんじゃないでしょうか。ただ数年後、その気持ちに区切りと折り合いをつけることに成功したのは妹だけで……お兄ちゃん~!!
お兄ちゃんが好きすぎるし、本作のこと語ろうとするとお兄ちゃんに終始してしまうんですが、ドラマとか関係なくヒロインがめちゃくちゃ可愛い。正直過去イチレベルで刺さりました。ポップさもかんじさせるのに、ウジウジと悩む表情もハマって、さらにはメガネ。ありがてぇ。それと兄妹のニコイチ関係を思わせるツートンカラーの髪でツインテールにすると後頭部が白黒でギザギザになってるのも超可愛かったです。現実的なのかは分かりませんが、ああいう「結ぶとそういう配色になるのか……!」っての、ツートンカラーとかポイントカラーの魅力だと思います。
エロ。前半は激しいもののプレイとして互いに分かり合ってる感じ。それがクライマックスでは感情が爆発してブレーキが利かなくなる。隠してたはずなのに、ここでは徹底してオープンな場で行われる。しかもエロが始まる前にお兄ちゃんがビンタで見えるところに痕を作る。決意の現れと同時に逆ギレ感あって最高なんですが、最後の最後、フィニッシュは中ではなく外。あれだけ言ったのに中には出さないんだ……みたいな感じですが、オチを知ったあとだと「中に出せよ! いくじなし!!」という感じになってしまう。いや、その最後の最後で踏ん切りがつかない感じも好きだぜ……。てか、あの外出しのコマ、暗闇の中で伸びる一筋の射精がエモくもあり美しかったです。
基本的にほとんどの場面において2人の気持ちは相互に代替性があると思うんですが、それがあそこまでの悲劇になってしまった理由はひょっとしたら年齢差にあるのではないか。一旦そう納得してます。先に大学を卒業して人生の道を決めざるを得なかった事情も大きいですし、そもそも2人の出会いの順番も違いますよね。外の世界を知ってから妹に出会ったお兄ちゃんと、生まれたときからお兄ちゃんと出会い、後から外の世界を知った妹では根本的なところに違いがあるのではないか。2人に相互代替性があるので最初に読んだとき(オチを知って読み返したとき)は「双子設定じゃないのが逆に不思議」くらいのことを思ったんですが、おそらく双子だったら2人は幸せなバランスを保ってたんだろうな。大学の王子として扱われてたのも、先に大学を卒業するのも、社会的な責任が妹よりも強いことの現れだったように思います。お兄ちゃんは崩れてしまったけど、お兄ちゃんは何も悪くないんだよ。何とか幸せになってくれ……。
『調子コかせてリオ先輩』ヤギコム
ヤギコム先生久々。久々だと絵の可愛さに新鮮な驚きが生じますね。表情の機微がとにかく良いし、デフォルメが入っても可愛い。オチとか最高でしたね。笑ったんだけど、同時に可愛い。ダウナーでマイペース系の部類だと思うんですが、だからこそ表情の変化が味わい深い。
社長をやってる友人の下で働かせてもらってる主人公、社長の妹と仲が良い。鹿児島への異動を告げられ落ちていると、 “なんでも言っていいよ” と慰められる。そこでの欲望に全力で従う主人公と、テンション低いままそれに付き合わされるヒロインの関係性が魅力的。ボケとツッコミみたいな関係にもなってるし、嫌がりながらも受け止めてくれるヒロインの度量みたいなものも感じてしまう。彼女に甘えてしまう気持ちも分かるし、エロはなかっただろうが今までもこれに近い関係だったんだろうと察せられる。
とにかくヒロインが可愛い。特に顔、表情でしょうか。嫌がるし、ドン引きもするんだけど、具体的に拒絶のアクションは起こさず、無理矢理されちゃってるみたいな暴力的な雰囲気にもならない(ギリギリ)。何でも受け止めてくれる、受けてくれるヒロインの姿に主人公がタイトルのようになってしまうのも納得してしまう。しょうもないけど、うまいタイトルだと思います。
要するにツンデレ、クーデレ(古いか)的なヒロインなんですが、彼女が最後の最後、射精直前になって初めて彼女から主体的にあるアクションを起こす。それがだいしゅきホールド。憎まれ口を必死に叩きながら、というのが可愛すぎでしょ。エロ的な快感もそうだけど、ヒロインがついにデレたことに対する瞬間的に脳内麻薬が大量噴射される。展開としてはシンプルなんですが、それがキャラクターの魅力と、エロとしての盛り上がりとマッチしてて本当に最高の場面。「受け止める」でありながら攻めのニュアンスもあるのが良いですよね、だいしゅきホールド。
『Stay with you』さくま司
入った会社の歓迎会で、血の繋がらない姉と再会する。いや、どちらかというとヒロイン視点の話なので「弟と再会する」が正しいのかな。弟の複雑な(こじれた)心理がかなりの迫力を持って描かれるので弟視点のような味わいも強いのですが、基本的には姉で、たまに客観で弟の心理が強調される、という感じかな。
基本的に、弟が姉を好き。一緒に暮らしてる頃から無邪気に懐いていて、憧れていて、異性として意識する瞬間もあった。2人の生い立ちがかなり複雑ながら再会した現在の場面から始まるので、序盤は2人の情報が小出しにされ、徐々にピースが埋まり全貌が見えてくるストーリーテリング面での快感も強い。下手すりゃややこしい話になっちゃうんだけど、それをサクサクとさばいていく手際に魅了される。現在で泥酔した姉を弟が家まで連れて行き、ソファーで寝る姉を見ながらかつて同じようなシチュエーションだった学生時代を回想する場面とか最高ですよね。普通にエモい話かと思ったら、実は勃起してしまっていて……(かけようとしたタオルで絶妙に隠れる)。純粋な憧れの念が自らの性欲で汚れてしまうような自己嫌悪感。そして、学ランの股間とスーツの股間がシームレスに移行する回想の終わり方とか素晴らしかったです。つまりアンビバレントな思いは今も変わってない。
今でもピュアな弟くん可愛いやないか、再会できて良かったな……みたいな気持ちにもなるんですが、現在の姉の姿に失望してる様子がちょくちょく描かれてて不穏。一緒に暮らしてた頃の姉は、思春期で父が再婚したこともあってちょっと男性嫌悪(恋愛嫌悪)的な雰囲気で、当時は姉の方が不穏。ただし、ピャアピュアな弟くんはそんなつよつよな姉の姿に惹かれてた面もあるのかな……と察せられる。姉は昔のようなトゲはすっかり抜け落ち、普通に社交的で、何なら男性に迎合していたり、ちょっと隙も多くて男に狙われたりもする。昔のままの弟はそれを見て心の中にちょっとした闇が……。要するにクソデカ感情をこじらせて、現在の姉に(勝手な)解釈違いを発生させてる状態なんだと思います。弟をあのキャラクターにして、可愛いままで終わらせないのが最高ですね。さくま作品で、この義理姉弟設定だともっと純度の高い甘々な作品になるイメージもあったんですが、本作にはハッキリと苦みがある。まぁ、苦みといっても弟くんの下がお子さますぎて過敏に苦みを感じ取ってる感じですが。
エロパート。適度に恋愛脳になった姉の姿にイライラした弟が、愛憎入り交じった巨大感情で押し倒す。ピュアな純愛なのは間違いないんだけど、弟くんのメンタルが不穏すぎるので「おいおい大丈夫か?」的な印象のままエロが盛り上がっていくので超面白い。そんな純愛過激派な弟とは対照的に、男に肌を触られれば性感を得てしまう姉。クンニされても反応が良く、一方的に挿入させられ射精(外)したあとは「つい」お掃除フェラをしてしまう。その姿に弟はやっぱり激怒……と2人の相性が最悪すぎてエロが変な形でガンガン盛り上がっていくので最高。そのまま弟の感情はどんどん爆発していくんですが、膿を出しきるかのように “初めてになりたかった…!!” と今の気持ち、そして昔から好きだったことを伝えてようやく2人の関係が落ち着く。弟はこじられたのもまずかったが、それを1人で悶々と感情を閉じこめてきたのがまずかった、という解決。かなりヤバめな雰囲気もあったんですが、最終的には激甘な着地に至るのが超良かったです。兄弟姉妹の関係で、男の方がグチャグチャにこじらせていくのは今号だと『手紙』も同じなんですが、あちらは救いのないエンディングで、本作は逆転ホームランでハッピーエンド。どちらも最高です。そして、ウジウジとこじらせてる男のめんどくささがエロに昇華されるのめちゃくちゃ良いですね。
エピローグ。姉が良い話風にまとめるが、呪いは解けたものの純愛過激派は変わらない弟が暴走して終わるので笑った。姉へのこじらせた心理は解消したけど、基本的な恋愛観がヤバめなまま。まぁそりゃ、すぐに変わるもんではないわなw
『路地裏の占い師さん』梅田ノーチラス
限界サラリーマン、胡散臭い占い師に出会う。ヒロインの占い師衣装がとにかく魅力的な作品なんですが、エロ漫画として魅力的な衣装は同時に「こんな占い師いねぇだろ」という味わいに繋がる。やたら射精をすすめてくる占い師がインチキにしか思えなくて、それがギャグっぽくて楽しい。
ヒロインの胡散臭さが楽しい作品だと思ってたんですが、いざ占いが始まり、ヒロインが強引にエロへと誘っていくと、気づけばボケとツッコミが反転してる。初読時マジで「いつ交代した!?」と困惑してしまったんですが、気づけば竿役の言動がおかしくなり、ヒロインがかなりキレイにツッコミを入れる関係に落ち着いていく。以降は完全にヒロイン視点、ツッコミ視点でエロが進行するので、本作は「変な占い師がヤバいサラリーマンと出会う」みたいな話ですね。変人同士なんだけど、ヒロインの変さは「異様にエロを求める」なので、いざエロが始まってしまえば竿役の根本的な変さが露呈していく。
ヒロインがツッコミ役に回るのがマジで驚きだったんですが、彼女のツッコミがめちゃくちゃ気持ちいいというか、センスが完全にギャグ漫画の住人なんですよね。絵としては普通にエロくてめちゃくちゃ魅力的なのに、なぜかノリがギャグ。今号だと、いつつせ先生も同じノリで、女性主導のエロというのも一致してるんですが、味わいは全然違くて、受けの竿役が完全なるボケ。ボケのテンションが低くて、ツッコミの元気が良い。異様にエロを迫るヒロインは変人なんですが、なぜか彼女の言動がまともになってしまう、という捻れが面白すぎる。そして、エロの行動原理を常に剥き出しにして、元気にツッコミを入れまくるヒロインが終始可愛いんですよね。最終的にエロとしてもあっさり負けてしまう感じも含めて、コメディ調ならではの楽しさがそのままエロに変換されたような心地よさ。
『シングル×シングル』トウ
アラサーで小学校の同窓会に行ったら周囲の結婚率に焦燥感。今は晩婚化が進んでるって話じゃなかったんですかぁ!? と読んでて妙に焦る設定でした……。いや、よく読み返したら具体的な比率は描かれてないので、あくまでも主観的な話なのだと思います。仲良かったメンツがみんな結婚してる(ので同窓会の参加者が全員既婚者に思えてくる)、みたいな。リアルだ。
そんな焦りの念に背中を押されつつ、独身の男子(の面影を感じさせる男性)を見つけて自然と意識してしまう。焦りもあって、気づけば「結婚相手としてアリかどうか」という視点で相手のことを見てしまってる感じとかめちゃくちゃリアルで良かったです。普段から男性のことああいう風に見てたら普通に感じの悪いキャラクターになっちゃうけど、焦りという土台があることで一気に彼女が人間臭く、自然と肩入れしてしまうキャラクターになっていく。
順調に良い雰囲気になるんですが、その過程で印象的だった具体的な描写は「減点がない」という感じ。積極的に好きになった果ての「彼しかいない」と、消極的な意味の「彼しかいない」が混ざり合う。繰り返しになるけど、嫌なキャラクターになりそうなところを自然と魅力的なヒロイン(関係)に見えてしまう。たしかに、よく考えたら減点方式で高スコアを叩き出して自然と良い雰囲気になる関係ってめちゃくちゃ大事というか、尊いですよね。大人の恋愛って感じで最高。始まりは「焦り」というネガティブな感情だったのが、気づけば「いや超キレイな恋愛関係じゃん」と思えるようになってるので素晴らしい。
特別さがないまま仲良くなった2人だけど、年齢と、結婚願望の話があるのでエロに至る心理的な障壁は極めて低い。ここもめちゃくちゃ大人の魅力に溢れてて好き。エロ漫画だと何となくもっと年齢低めのキャラクターが当たり前だと受け入れてたけど、アラサー設定には独自の魅力があるし、何なら結構な金脈なのでは……。初々しい若いキャラクターの話だと、セックスの内容が激しすぎて「なんでだよ」とか定番のツッコミが発生しがちですが、アラサーだと「やることやってたんだなぁ……」とニヤニヤしてしまうような魅力がありますよね。意外とねっとりとスケベな攻め方をする竿役も良いし、それに屈してがっついてしまうヒロインのスケベさも良い。互いにそれらを特に隠してない。
絶倫すぎる竿役だが、また独りの暮らしに戻りたくないヒロインの心理としてはむしろ適任で、最終的に彼女が装着済みのゴムを外してトドメの誘い。これまた大人作品の良さ……。エロ漫画だと「いやナマはダメでしょ!」となる心理をバカにして楽しむのが定番ですが、ナマであることに言い訳が不要。ヒロインの心理のドラマの果てにたどり着いたのがナマ、というエロ漫画でしかあり得ない物語的な感動。感動の場面がエロ純度100、というのが本当に素晴らしい。
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終わり。快楽天の記事は翌月の10日までに更新するのが目標なんですが、10日の深夜更新。ギリギリになって焦って急いで書き進める……が、そういうときに限って感想が白熱して長文化。ようやく書き終わってイマココです。
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