北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

WEEKLY快楽天 2022 No.38の感想

 苦手なものは季節の変わり目です。体温と気温の折り合いの付け方がヘタクソ。
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『すずのおんがえし』もち米せいかつ

 会社でいじめられてるが、1人だけ優しい……と思ったら優しくない。あのメガネくんの名前が鶴井なので、タイトルから「実は恩返ししてるのは彼の方?」とか甘いことも考えたんですが、そんなことはなかったw 徹底してヒロイン視点の物語なので、あのメガネが何を考えてるのか分からないのが本作の味噌ですね。「優しくされてる? いやいやクソじゃん」となるんだけど、完全に騙されてるヒロインの心理に沿って進むので「まさかひょっとして……?」と淡い期待も抱いてしまう。が、そんなことはなかった。ただ、共依存とかそういう解釈の余地は残ってる……かも。最終的に社内で恋人であることをオープンにしたのが重要で、本命は別にいるのにヒロインは都合のいい女止まりというわけではなかった。男の方が折れたとまでは言わないけど、彼の中でも多少の葛藤や、心の変化はあったような気がする……が、これはヒロインに感化されてるだけかもしれないw
 ヒロインは釣り目のクール系の美人(それ故にいじめられたらしい)。この時点で個人的にはサムズアップなんですが、そんな彼女が……という意外性。いわゆる薄幸美人とか、不幸を呼び込んでしまうようなタイプのキャラクターから想像するビジュアルではなくて、そこがすごく良かった。強そうに見えるからコミュニティで孤立してしまう、というの意外とリアリティありそう(嫌な話ですねw)。そんな見た目のヒロインが完全に薄幸ムーブするし、負のスパイラル入ってるし、心が折れてしまうのではなく心の底から染められてしまう。クライマックスで夜景が見える演出も、一見ロマンティックで彼女は酔いしれてるんだけど、読者としては「いやいやダメだよ!」と届かぬ叫びをあげてしまう。絵としての美しさと話としての暗さ、このギャップが素晴らしかったです。こういうの大好き。

『学園ふふぶ!! after』すずのもく

 6ページの後日譚。とすな先輩マジで好きなのでこれは嬉しい。すずのもく先生の作品の中で一番好きかもしれない。変身前も変身後も良いし、ダウナーな日常モードからの変貌ぶりが最高。
 人間とそうではない とすな先輩という立場の違う2人の話なので、クライマックスで主人公が好きだと告白することの意味が深い。本人は割と楽観視してるし、本作のノリだったら案外ホントに実現しそうな気にもなってくるんですが、直前の『すずのおんがえし』では「好き」がある種の呪いの言葉として出てきたので、そちらとの振り幅がすごい。甘々ですやん。

エロマンガアカデミー」

 26時限目。ガッツ師範先生による「描き文字の表現技法」。ガッツ師範先生といったらぷに○んだと思ってたので、これは意外なテーマ。そして、ガッツ師範先生の描き文字へのこだわり、思いがめちゃくちゃ強いので驚きつつも感動してしまった。テーマへの掘り下げっぷりがオタク的というか、もはや研究者とかそういうレベル。
 テキストのみの追加インタビューのパートだと、普段はメインテーマからそれた一般的な作家インタビューみたいになることも多いじゃないですか。それなのに今回ずっと、ひたすら描き文字の話をしてる。いくらでも話せそうな圧を感じる。


 終わり。今回のエロマンガアカデミーは「こんな人だったのか……」という発見があってめちゃくちゃ面白かったです。ここまで一点特化で語れる作家も珍しいと思うけど、今後もますます楽しみになりました。
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