北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

COMIC X-EROS(コミックゼロス)#96 の感想

 100号は来年の頭ですね。何となく今年中だと思ってたけど、数えてみたら違った。

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『ついでのビッチちゃん』ぐじら

 電車の中でおっちゃんとビッチちゃん。最初はちょっとしたサービスみたいなつもりでパンツ見せてたらそれが次第に……。タイトルにもある「ついでに」が彼女のキャラクターの土台にあって、あらゆる場面で「ついでに」の選択をする。長期的な思考ではなく短期的、を通り越して目の前の一瞬にのみを注目するかのような刹那的な思考。そんなギャルのキャラクターがよく描かれてて、それが「ついでに」という一言で示されてるのが良い。エロ漫画としては、めちゃくちゃエロいビッチちゃんが思いつきでエロいことをする、というシンプルの極みみたいな話なんだけど、そこに「ついでに」に象徴されるキャラクターが乗っかってくる。その「ついでに」思考がおっちゃんの方にも伝播していって……という物語展開も面白いし、エロが加速度的に盛り上がっていく。
 人がいないとはいえ電車の中で最後まで行っちゃうので驚く。そこまで徹底されてるからこそ、最後、下車するところで作品が終わるのもキレイでしたね。とにかく車内。電車の超横長の椅子を交えたエロがあれやこれやと展開されていくのがめちゃくちゃ面白かった。ヒロインも激しいけど、徐々に欲望を剥き出しにしていくおっちゃんも相当なんですよね。段差を利用したやたら激しく描かれてるのとか最高。ソファに近いんだけど、ソファだったらあり得ないような長さがあり、ベッドではあり得ない狭さが感じられて超特殊シチュエーションならではの魅力。

『インプレッション』さんじゅうろう

 非モテ男性はよく「なんで軽薄なヤリチンばかりモテるんだ」とか考えがちだと思うんですが、本作はその軽薄ヤリチン(噂)になぜ女性が惹かれてしまうのか、という心理をめちゃくちゃ丁寧に描いてるので感動した。プライドの高い女性がムラムラを募らせついには我慢できなくなる……という過程がマジ最高。互いに様子見の恋愛攻防戦みたいなのも好きですけど、本作は完全にヒロインの独り相撲みたいなところがあって、その精度がヤバい。最終的に男の方に対して「なんだ良い奴じゃないか」みたいな着地に至るんですが、そんな真相をふまえて最初から読み直しても面白い。彼の心理に寄り添ったバージョンにも興味が湧くし、最後に “やだかわいいむかつく” となった今後の2人の関係性とかも余韻としてめちゃくちゃ良い。本作は、ヒロインが年上なのに情けない、みたいになるのが魅力だったんですが、今後はもう少し年上らしい顔を見せることになるんですかね。
 komifloのコメント欄見て気づかされたんですが、序盤の独りでいるときと、後半のエロパートではヒロインの陰毛の濃さが違う、つまり期待して処理をした、という表現になってるのとか芸が細かすぎて感動しました。すごいな、そこまでやるか。エロ漫画でしかあり得ないような演出ですね。エロ漫画、奥が深いわ……。

『すうぃーと・ばーじん』どえむたん

 直前の『インプレッション』はチャラ男ヤリチンかと思ったら実は……という優しい世界だったんですが、本作はチャラ男ヤリチンが容赦ないクズとして出てくるので面白すぎる。ギャップがありすぎるのよ。ヤリチンが好き勝手にやる、というだけではなく、その毒牙を別の女性にも伸ばすことになるのがクズ感あって最高でしたね。寝取られではないんだけど、読み味としてはかなり寝取られに近い。そこに取られた上に自分もやられてしまう、という寝取られ作品にはないクズ展開へと続くのが素晴らしい。憧れの同性先輩が……という設定ならではのクズっぷり。ヤリチンの彼がねぇ、悪い顔を全然しないんですよね。言動は最低なんだけど、そのヘラヘラと最悪なことをやり続ける感じが最高でした。
 女2男1の構成なので、クライマックスは3Pかな? とか予想もしたんですが、3Pには至らない。ただ、個別にやることによる地獄みみたいなものが間違いなくあって、「必ずしも全員同時参加が正しいとは限らない」と思い知りました。物語の視点となるヒロインが無垢な存在なので、彼女に感情移入すると同時に彼女に対する庇護目線みたいなものが生じて、それが「ああ……」と目の前で崩れていく。その読み味が最高。
 本作の竿、大嫌いですけど、キャラクター的な意味では本号のベスト竿役かもしれない。とにかくすごいキャラだ。

『たまさか!~玉麿市(性)産業改革学園~』海の吸盤 軽部ぐり

 作者はそれぞれ原作と作画。短期集中連載ということで、毎号載せる予定なのだろうか。最近のゼロスは原作作画のコラボを積極的に推進するかのような方針なんですかね。雑誌らしい役割なのかもしれない。
 特殊学園モノなんですが、1ページ目1コマ目の地形の描写が素晴らしすぎる。エロとか抜きにもうある程度の満足感というか「良いもん読んだわ」みたいな感動を得てしまった。男性器と女性器を示すあれこれが細かく描かれてて、見れば見るほど面白いw
 何も知らずに入学した主人公が学校の特殊な常識に翻弄される話っぽいんですが、冒頭にボーイミーツガールがあって、それが物語全体の主軸になりそうな予感。それと、主人公が童貞で、初回は無事童貞をキープしたまま終わったので(逃走シーン好きw)、いつ、誰と、どのように初めてを迎えるのかというのも楽しみなあたり。ここらへんはやっぱ連載の良さですよねぇ。基本的に読切大好きですけど、読切にはできない魅力が連載にはあって、本作からもそれを感じる。
 主人公のセックスはないけど、その代わりにモブたちがすごい量出てきてセックスしてる。システムとしてやってる割にはどれも楽しそうな雰囲気あるのが良いですね。みんな主体的というか、この学校の特殊すぎる常識を受け入れ、満喫してる感が素敵。みんなが受け入れてるからこそ主人公の困惑ぶりがより面白くもなる。

『姪のメイ』近江訓

 実家暮らしの主人公と、たまに実家に帰ってくる姉の娘。姉は離婚してるっぽくて、家庭環境も決して良いとは言えなそうな雰囲気、からのあまりに純真で良い子すぎる姪……と既に関係を持ってしまっている。このオープニングの流れが絶品。手を出す話ではない。既に手を出してて、その関係が日常化してる2人の様子を描く。関係的に主人公が悪いのは間違いないんですが、主人公もそこまで積極的じゃないというか、彼としても後ろ暗い気持ちは大いに感じてるっぽい雰囲気。それが言葉による説明ではなく、雰囲気やちょっとした表情、仕草によって描かれる。
 その享楽一辺倒ではない主人公の気持ちが最後の最後、姪と別れた直後に初めて言葉として出てくる。一言それが出ると同時に劇終、というのがめちゃくちゃ良かった。オシャレってのもそうだし、主人公の抱える複雑な心境、それが賢者タイムとして襲ってくる感じのリアリティがすごい。ヒロインの笑顔が眩しく、その笑顔によって余計つらくなってしまう、という説得力がすごい。

『やくそくおねえちゃん』狼亮輔

 離島のおねショタ。知り合いが島から離れて寂しがってるショタを癒すヒロイン。優しいおねえちゃん最高かよ……とか脳味噌とろけそうになってたらショタが想像以上にこじらせてるので笑った。冒頭からネガティブマインド入っちゃってる描写はあったけど、セックスを通じて自信がつき成長する、というのがエロ漫画的な定石だと勝手に思い込んでいたw セックスに至るまでのめんどくさい感じもめちゃくちゃ可愛かったんだけど、セックス後の “寝取られがよりリアルになっちゃったあぁ………” が卑屈すぎるので笑った。ショタのネガティブさがこちらの想像をはるかに越えてきた。ショタじゃなかったらとてもじゃないが「可愛げ」として受け取れなかったであろうレベルのめんどくささで最高。ここまでこじらせてるとかマジ予想外だったんですが、それを見たヒロインが「ほっとけない」となるのも分かるし、信頼の証拠(担保)としてヒロインがナマを提案する展開に繋がるのも良い。優しいおねえちゃんという姿に魅了されるんですが、それが同時にエロの加速にもなっている。
 あそこまでこじらせてたショタだけど、最終的には甘い雰囲気になるし、エピローグではヒロインの手の上で踊らされる感じもあって二重に可愛い。ここでようやく2人がラブコメっぽい雰囲気になるのめちゃくちゃ良いですよね。安心感って事情もあると思うw
 ショタのこじれっぷりがとにかく印象的でしたが、エロのクライマックスでは逆にヒロインの方から “どっか行って島のこと忘れちゃ…やだよ……? 約束ね” と言われるのとかマジ最高でしたね。本当はヒロインの方も知り合いが島から離れていくことの悲しみを抱いていた、というのが分かるし、「どうせ島から出てって」という疑心暗鬼を主人公に対しても向けていた、という彼女のある種の闇(本音)が見える。優しいおねえちゃん、というおねショタだとヒロインがどうしてもショタに対して無条件の愛を注ぎ続ける存在になりがちだと思うんですが、本作のヒロインは完全無欠な存在ではない、とクライマックスの場面でのみ示される。2人は同じ悩みを抱えていた、というナイスカップル感でもあるし、ショタの悩みが独りよがりなものだったと知ることは彼にとっての成長だったのでしょうね。こじらせすぎてギャグみたいな印象も少しあったんですが、めちゃくちゃ良い話だったじゃないか……。

『しみゅれーしょん』fu-ta

 『こたえあわせ』の続編。メインの2人も魅力的ですが、冒頭のガールズトークのくだりも良いですよね。だるそうに話してるのがリアルだし、それがエロパートへのフリのようにも機能してる。
 続編なので当然初めてではないんだけど、その事実を忘れそうになるくらい初々しいというか、緊張感たっぷり。たしかに初めてとは別に2度目以降ならではの緊張というのもありますよね。その機微が良い。さすがにやるかやらないかの部分に疑問はないんだけど、いざやるとなったら急にドキドキしてきちゃう感じ。計画的にセックスをするためにホテルに来たんだけど、セックスすると確定してるからこそ変に意識してしまう。部屋に置いてあった電マに目を奪われちゃうくだりとかも最高でした。もちろんそれが使用された際についても。
 せっかく計画的にホテルに来たというのに、着衣のままプレイが始まってしまい、ビショビショになり、気持ちが止められなくなりそのまま本番まで至る。初めてじゃない緊張感もあるんだけど、だからといって不測の事態に陥ってしまうハプニング性、盛り上がりもバッチリ。ヒロインのどこまで脱ぐか、の線引きもめちゃくちゃ好みで、もはや芸術的とかそういうレベル。やっぱただ全裸になるのとは別の魅力があるよなぁ。ベッドの上で靴すら脱がずに、という暴走っぷりが最高でした。

『Awakening! 隣のメスガキちゃん』変熊

 変熊先生でこのタイトルって時点でヤバそうな雰囲気がすごいんですが、実際に読んでみたら思ってたよりエキセントリックな話になってて笑った。近所のお兄さんをナメまくってるヒロインかと思ったらそのメスガキキャラはお兄さんが仕込んだもので……と驚愕のツイストで話が始まる。引っ込み思案で悩んでたけどメスガキになることで友達がたくさんできました、とか「まだギャルとかなら分かるけども……」という設定が面白すぎる。
 メスガキにしたのはお兄さんの方なので、主従関係としては捻れてるけど男が上……かと思ったらヒロインにメスガキの資質がありすぎて、それが開花。ついにはお兄さんの手に負えなくなって……とどんどん暴走していく盛り上がりがヤバい。当初はエロに至ることまでは想定してなかったけど、すっかりコントロールが利かなくなり、ヒロインにされるがまま。ただメスガキにされるのではなく、下に見ていた存在に下克上されるという良さが加わる。ヒロインが天才すぎて、パンドラの箱を開けてしまった感もあり、そこに男側の自業自得感もあるのが面白い。自業自得なんだけど、メスガキが好きなのは事実であるのでこれはこれで幸せなのでは……(とはいえメスガキっぷりが強烈すぎるw)。

『性欲がすごい。』ななもと

 純真そうに見える子の性欲がすごい。最初と最後に平和な大学の友人関係が描けれ、そこでのモブ男が完全に失恋するんですよね。微笑ましいノリなんだけど、ラストの知りたくなり真実を目の前に突きつけられる感じとか結構しんどいw 作品のテイストが違うだけで、もっと寝取られ(BSS)的な話になっててもおかしくないレベル。
 そんな日常パートからの変貌ぶりがとにかく魅力的。彼氏の手にも負えないレベルの圧倒的強者ぶりがめちゃくちゃエロいんだけど、基本的には可愛いの権化みたいな子なので……という二面性がどちらも楽しめる。
 ヒロインのワンサイドゲームとなる前半も超良かったんですが、彼氏が気合い入れて逆転する後半も良い。逆転という表現にはなるけど、結局のところはめっちゃ仲良しのカップルが全力でぶつかり合ってる、という多幸感。最終的には驚くほどイチャイチャな着地に至る。性をむさぼるような盛り上がりもありつつ、2人の甘い関係性も堪能できる……からの最後はモブの失恋視点で作品が終わる。あんなおっとり系の可愛い子が朝帰り登校でキスマーク大量にこさえてきたら泣いちゃうw

『森の魔女と行き倒れのおじさん』おそまつ

 森の中の館に住む魔女が人間の男を助ける。魔女なのでヒロインが強いのかと思ったら思いの外良い話に……なったと思ったら男がクズだったと明らかになる。そもそも森で行き倒れてたのは、という理由が語られるのも面白い。
 魔女なので魔法を使えば簡単に殺せるはずなのに、男の圧倒的な悪意の前では為す術もない、という絶望感が素晴らしい。人を信じたばっかりに、という後悔の念にかられるのも最高ですね。ただクズに襲われる話では味わえない闇の深さ。あまりに闇が深いのでヒロインも……とラストにもう一捻りあるのもめちゃくちゃ面白かった。さらなる逆転でザマァ的な味わいもありつつ、ヒロインが闇堕ちしてしまった後味の悪さもある。あるけど、最後の魔女として覚醒したヒロインの顔がめちゃくちゃ魅力的なので「これでもう1本読みたいんですけど……」みたいな余韻にも浸れる。冒頭の場面の光モードもめちゃくちゃ可愛いし、衣装とか最高だったんですけどね。最後の黒に染まった姿も最高。ちょっと開放感じゃないけど、痛快さみたいなものもあったかもしれない。

『バリキャリ妻が連れてきた部下が元カノだった件 ~turn静江~』終焉

 後編。あれに続きあったんかい! という衝撃がまずある。結構キレイなオチがついたと思ったんですよね。
 前作は男目線で、妻のいる状況で元カノに手を出される話だったんですが、本作はその妻目線。前作の時点では違和感を抱きつつも確信はない感じで終わったんですが、今回はいよいよ……という感じ。元カノという圧倒的強者に振り回される2人をそれぞれの視点で描くのが面白い。そして本作はよりストレートな寝取られの話にもなるので満を持して感もありますね。続編自体は予想外だったんですが、いざ読んでみると貫禄のようなものすら感じるレベル。
 そんな寝取られの話で終わると思ったら中盤から衝撃の展開。精神的なダメージを負うだけでは終わらず、めちゃくちゃ物理的な危機にあってるのでぶったまげた。目隠し拘束の状態で旦那とご対面。旦那としては秘密を守りたいので声を出すことができず……とものすごい特殊な状況での緊張状態のままエロが始まる面白さ。特殊すぎて、これは一体何てジャンルなんだ、とか混乱するレベル。続編の存在が予想外だったんですが、続編でここまで大化けするというか、続編なのにマジで見たことないタイプの物語になってて超面白かったです。
 その後、目隠しを外され、すべての秘密がオープンになり、そのままクライマックス。メインとなるエロパートでは元カノが直接の参加はしない、というのも意外でしたね。場を支配してるのは間違いなく元カノで、2人を手の上で転がしてるんだけど、そのレベルが高まりすぎてもはや自分は参加しない、という領域にまで達しちゃってる。すごい作品だったな……。この後編のための作品だったと思えてしまう。

『おとなのじかん』川島よしお

 第14回。開幕の「メイドばぁや物語」が好きすぎる。謎の巨人設定だけでも面白いんですが、「ばぁや」なのが良い。よくロリババアとか言われるジャンルはあって、本作とそれと近いノリはあるんだけど、「ばぁや」なんですよね。さすがにこれに萌えを感じるのは無理だろ……という圧倒的「ばぁや」感。
 「竹屋竿役」。全8コマなんだけど、どう考えても2コマ目で落ちてるw あとはひたすらその衝撃のオチの余韻が続くだけ、という構成が最高でした。どんなに引っ張ってもオモシロが継続するインパクト。
 「がんばれ!! 童貞先生」。その人のキャラクターによって童貞という事実は強みにもなるし、ただキモいだけにもなる。冷酷だがちょっと納得してしまう事実を突きつけられるようで笑った。8コマ目で年齢のせいだけではない、と攻撃のレンジを広げたのも良かったw
 先パイの生ギター配信。こちらも「オッサンに用はねぇんだよ」と突き放すようなネタで同じように笑ってしまった。アリナシを判定するのがこっちでは男子に代わってるのも良い。男女共に都合の良いことを言いがち。
 「正しい性教育」。虎が女性器に見えてくるというマジック。騙し絵のような快感というか、「虎はエロいのか……?」という錯乱状態に追い込まれるような感覚。

『鬼イかせ珍宝帖』こやま滋

 エロい鬼が村の男を食ってしまう(性的)。それを退治すべく立ち上がる僧侶の話。鬼がめちゃくちゃ可愛いので、変な話ヒロインの魅力を見せるだけの話でも個人的には大満足だったんですが、あの手この手で鬼を圧倒していく僧侶の活躍がほとんどバトル漫画になってて面白かった。アイディアに富みすぎたアイテムの連打とか最高。最後に出てくるアイテムが冒頭の場面から首に下げてたもので……というちょっとした伏線回収みたいなものまで行われてるのも好き。ほとんどギャグみたいな話なのにちゃんとしてる。
 ヒロイン的には被虐の話なんですが、意外なほど可哀想なノリは感じられないのも好みのバランス。めちゃくちゃにされるし、負け続けるんだけど、作品のノリが明るいのもあって、どこか楽しそうな雰囲気すら感じる(錯覚もあるw)。からのエピローグでの堕ちきったヒロインのもじもじっとか超可愛くてずるいんだよなぁ。僧侶がちょっとツンデレみたいにも見えてくるので、急にラブコメみたいなラスト。

『佐藤夫妻は寝取られたい』石見やそや

 komifoのコメント欄が集団芸と化してるので笑った。ラストのたった一言で読者の印象をジャックしてしまったのかw
 話としては、タイトルの通りで旦那の寝取られ願望を実現すべく主人公であるヒロインが一歩踏み出す。なんですが、冒頭の数ページ、明らかに作品のノリ、雰囲気が軽いんですよね。寝取られだけどポップなノリになるのかと思ったら、いざエロが始まると一気に作品の色が豹変する。この変貌ぶりがとにかく楽しいし、初読時のインパクト、「そういう作品だったのか!」となる感覚が最高。話としてはあえて意外性はないんだけど、読み味としてはめっちゃ意外、という奥深さ。
 ヒロインは割と舐めた態度で臨んでるんで、最初の方は困惑しつつも軽いノリが少なからず継続してるんですが、どんどんエスカレートしていくプレイ内容に彼女が堕ちていく。そのグラデーションが丁寧で素晴らしかったです。彼女のモノローグが多用されるんですが、その内容の変遷で彼女の堕ちっぷりの度合いが明確に分かる。エロが盛り上がって、一方的にやられてる最中はモノローグを差し込む余裕がない、という演出も効果的だったと思います。合間合間の一呼吸入れるところでモノローグが差し込まれる適切さ。こういう非常時、緊急時の心理としてリアルですよね。

『密着取材』桐原湧

 超良かった。個人的にはゼロス今号の優勝。おっとりだがドエロでいろいろ溜め込んでそうなヒロインもめっちゃ好きだったんですが、主人公たる男側のドラマも丁寧に描かれて、その感動というか感情の高まりがエロシーンの盛り上がりをより大きいものにしている。めちゃくちゃ長い作品ってわけでもないのに、ドラマ的な満足度が高いのがすごい。
 話としては女性作家への取材。主人公は下っ端ながらトラブルで独りで取材することになるんだけど、主人公が雑誌の隅っこで連載してる写真コラムをヒロインが好きでいてくれて……。憧れの先生に自分の仕事を評価されている、それどころかリスペクトし、多大な興味を抱いてくれてる、という充足感がやばい。年齢差もあって、立場も地位も違って、圧倒的に女性優位な関係性なんだけど彼女は主人公のことを立ててくれるというか、フラットに接してくれるというのが沁みる……。心の交流を丁寧に描いてからじっくりゆっくりとエロが始まっていく雰囲気も最高でした。やっぱドラマの魅力があるとエロの魅力も増すよなぁ。
 旅館ということで浴衣がはだけていく流れも最高なんですが、「枷を外す」というセリフに象徴されるようにクライマックスでは互いに全裸。立場の違いがあるからこそ2人が全裸になって向き合うことが象徴的にも感じられるし、それでいて最後の最後には仕事内容に関連した行為があり、そのままエンドレスで続いていくかのようにフェードアウトしていく終わり方も雰囲気あって超良かった。

『教え合い♡』UREC

 年上の彼女が小さくて幼い。カップルの日常を描く内容で、特別なことは起きないけど、ずるずると当たり前にエロいことになっていく雰囲気がエロい。そこに2人のキャラクターと関係性の魅力が加わってくる。物語的な要素が薄いからこそ2人の存在が強調される。
 年上ヒロインに対する下克上というよりは、ひっくり返った関係が日常となってる感じですよね。彼氏側のちょっと調子乗ってるとも言える一方的な攻め、2人の中でSとMの立場が確立されてる感じが良いんですよね。この2人はいつもこうなんだろう、と見てて伝わってくる安心感。
 ヒロインの方はかなり必死になるような表情が多いんですが、逆に彼氏の方は心の底ではどう思ってるのか分かりにくい。常時ヘラヘラしてるような感じ。その底知れない感じが2人のパワーバランスにそのまま反映されてて魅力的なんですが、それでも彼氏の方も好きなのは何となく伝わってくる。SとMの関係のようではあるけど、年上に甘えてるだけ、と見ることもひょっとしたら可能なのかもしれない。

『捨て銭ポルノ』hal

 続き。前回のラストでは2人のヒロインの中で勝敗が決まり、勝った方が脱出するもその先の一般社会でもポルノデビューという話だったんですが、さらなる地獄が描かれる。まだ続くのか……と続編が存在すること自体が絶望感を煽ってくるw
 13ページにわたり、ページを上下に分割し、2人のヒロインのその後を同時並列的に描く。この手法がめちゃくちゃ面白い。あっちもこっちも地獄、という迫力がすごいし、それが劇中の2人がもう片方の真実を知らないことの表現として的確。だからこそ「なんで自分だけ」とより闇に堕ちていく。前作では2人の醜い競争心が描かれたんですが、本作では相手への嫉妬心という感じでしょうか。ただし、実際は2人とも似たような地獄に陥ってるという救いのなさ。ここまで意地悪な話、意地悪な続編が作れるものなのか、ともはや感心してしまうレベル。本号のゼロスは「こういう続編もあるのかー」と驚かされる作品が多くて面白い。
 2人の地獄のフェーズがさらに1つ進む。そこで上下分割がなくなり、2人が初めて顔を合わせるんですが、互いに地獄だったことを知った2人が仲直りするのがちょっと感動的でもある。2人の中に初めてキレイな感情が芽生えたというか。なんだけど、そのキレイな感情も長くは持たず、競争関係を煽られることで再び決壊する予感……という終わり方がオシャレ。

『パパカツ日和♡』ねろ太郎。

 パパカツという不穏ワードは出てくるものの、可愛らしい絵柄と女の子2人のポップなやりとりに騙されるw 冒頭の3ページが前フリとして最高でしたね。あれがあるからこそ、そこからの転落ぶり、しかも「既に転落していた」となる展開のインパクトがすごい。
 一線を守ったパパカツからずるずると堕ちていくくだりを説明する中盤の回想も良い。決してページが多いわけではない読切の中でものすごく起伏がある。話の構成、回想を入れるタイミングとかがマジで絶妙。「もう堕ちてた」という衝撃も味わえるし、徐々に堕ちていく転落劇としての面白さも堪能できる。
 そして、クライマックスでは最後の一線とも言えるナマに至る。ここでのパパの言い分、おそらく入念に準備してたであろう仕掛けが周到かつ悪意に満ちてるので笑った。最後の最後はあくまでもヒロインの方から提案する形になる。ヒロインの転落劇として極めつけというか、クライマックスにふさわしい展開だったと思います。冒頭の場面では全然そんな風には見えなかったのに……という感慨。同じ子である事実に驚いてしまう。二面性という意味での良さもあるんだけど、最終的には学校にすら行かなくなってしまうので表の顔に戻ることはもはやないのかもしれない……というエンディングも闇が深い。

『ていくあうと』剥元ここ

 テニサーでの飲み会。ウザ絡みされてるところを別の先輩に救われる。優しい先輩に癒され、淡い期待を抱きつつ二次会に向かうはずが、ラブホ。ウザ絡みとは別の意味で先輩に捕まっただけだったと思い知らされるw あの優しそうに見えた先輩が、というギャップがめちゃくちゃ魅力的でもあり、その落差が恐ろしくもある。めちゃくちゃ良い笑顔で怖いことを言って、迷いなく実行してくる感じがマジ最高。
 笑顔で迫ってくる件とも通じるんですが、本作で描かれるSMの度合いがまた絶妙で、拘束はされるけど、他に何か暴力的な要素があるわけではないんですよね。もちろんエロいことにはなるんだけど、拘束についても痛くならないように、跡が残らないように工夫されてた、と分かるラストも最高。手練れであったことの実感でもあり、「思ってたより優しいかも」みたいな錯覚にも陥ってしまうw 完全に一方的なSではあるんだけど、その中にも間違いなく優しさが感じられるバランスなんですよね。このSヒロインとしての本当に良かった。優しさがあるとSMとして生温く感じられてしまう恐れもあるんですが、本作だと主人公側の追い込まれる心理描写がめちゃくちゃ丁寧なので「ヤバい人に捕まった」という血の気が引く感覚にも説得力がある。もうちょっとSであることを隠してたら、せめて拘束がなかったら、優しいけどエロい先輩に筆下ろしされた、みたいな話になってましたよね。この厳しすぎず、優しすぎず、それでいて被虐の心理にも迫力があって、ととにかく絶妙なピンポイントを刺してくるような作品。大好き。

『アフターパートタイム』can玉X

 人妻がパート先の同僚に……。最終的に相当激しいことになるんだけど、冒頭の場面のヒロインの明るさが良い。ギャップとしての前フリという意味でもそうだし、年上で人妻のヒロインとしてああいうサバサバしたノリのキャラクターってのが魅力的。
 そんな彼女がエロが始まるとモノローグが増え、徐々に堕ちていき、最後まで堕ちると逆にモノローグがなくなりすべて声にして発するようになる、というグラデーション。男の方のやり口は相当乱暴で、策にはめられた感とかは薄いんですが、逆にヒロイン側の心理に寄り添うことに全ぶっぱしたような語り口が良い。前半ではまだ少し満更でもない雰囲気があるというか、まだその場をコントロールできると思ってる心の余裕みたいなものがあるんですよね。そこからの陥落するまでのギャップが素晴らしい。生での挿入を許すどころか求めてしまう場面とか象徴的だったと思うんですが、それでもまだ終わらずに、まだまだ堕ちていくので驚きました。あそこが底だと思うよなぁw
forms.gle

 終わり。本当は土曜までに終わらせたかったんですが、日曜深夜にまでもつれ込んでしまった。日曜はweekly記事やるから時間がないのよ。月曜になっちゃうと今度はジャンプだし。どんだけ漫画の感想書くんだ……。