北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

COMIC快楽天 2020年9月号の感想

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 ご冥福をお祈りします。
kitaku2kitaku.hatenablog.com

『裸の学校』mogg

 透視。カラーも1枚あるんですが、それが制服の透明化の表現としてとても良かったです。セーラー服が透けるのはまぁ分かるんだけど、上履きも透けてるのがとても新鮮でした。言われてみれば当たり前なんだけど「そこも透けるのか!」という驚き。
 透視能力を持った少年の学園生活。1ページ目からバスに乗る全裸の少女という絵のインパクトがやばいんですが、そこからの発展、飛躍、超能力の拡張、からの盛り上がり。情報の開示もそうなんですが、展開がとても良かったです。「透視で女の子の裸が見れたらなぁー!」というシンプルな設定なんですが、それを物語として組み立てる上で、地力の高さを感じる。
 最初はほのぼのエロみたいな印象で、学園でいろんな子が出てきて、いろんなポーズを透視して楽しんでたんですが、そこにヤンキーの子が主人公に絡んでくることで物語が不穏な方向に動き出す。ヤンキーなので股開いてて透視的にオイシイってのもあるんですが、彼女への反撃として第二の能力が発動される。テレキネシスというか、「触る」。よくエロ漫画だと女体を見せるために男の手だけが宙に浮いてる構図とかたまにありますけど、あれは男の体が透けてるのであって本作とは別。本作のは透明な手で触ってる。
 主人公の秘められた暴力性が露わになる展開も面白いんですが、彼が元々そういう性格なのか、あの能力を得ることで悪くなってしまったのかは少し難しいですね。見るだけならまだしも、触れるとなると悪魔が囁くよなぁ。ちょっと彼のバックボーンというか、超能力開花のエピソードも気になってしまう。
 超能力の加速、暴走。見えない手で悪さするんですが、それだけではなく、男子トイレにこもって透視能力を全開にして女子トイレを覗く。透視がパワーアップしてるのが面白い。同じ透視なので理屈は分かるんですが、性欲と共に彼の能力が肥大化していくのが面白いですね。超能力ものの物語展開として普通に面白いんだよなぁ。そのまま超能力でオナニーしてると、今度は遠隔チンコの能力に開花。これも手と理屈は同じ。飛躍なんだけど納得ができる。
 クライマックスはテスト中。テスト中なので黙ってないといけない、周囲をジロジロを見るわけにもいかない、というのが利いてますね。そして、前の席の子にチンコを突っ込んだまま、両手をそれぞれ隣の席の子に伸ばしていく。手とチンコの数は一定なんですが、位置が自由なので通常ではあり得ない4Pが成立するのも本作の設定を最大限活かしてて面白い。続編も期待してしまうんですが、今度はベロとか飛ばせるようになるんじゃないかしらw チンコが増えるという可能性もありますね。

『オートマチック・ガール』スミヤ

 こちらもカラーが1枚、事前にある。青髪のメイドが非常に可愛いのですが、このフィクション度の高い感じは快楽天だと珍しいのかな……と思ったら彼女は人間ではなくアンドロイドと明らかになるので青髪も納得。人工物だから色は自由ということですね。そして、このカラーピンナップでとても気になるのがお股。パンツを穿いてないように見えるんですが、パンツどころかいろいろとない。修正もない。肌色の下着とも考えましたが、要するにこれはセクサロイドとしての改造をする前なので女性器がないのでしょうね。本編より前に見ることになるカラーイラストにこういう描写を入れてくるとは。ただ可愛い絵を用意するだけじゃないからすごいよなぁ。
 まぁ、穴がなくてもパンツ穿かせるだろ、という気もするのでちょっと自信のないところではあります。ただ、本編で初めてパンツが視認できるのはセクサロイド改造後なので、穴が出来たのでパンツを穿く、という見方ももアリなんじゃないかしら。
 んで、本編。なかなかアンドロイドだと確証が持てないまま進行するオープニングが良い。感情表現や他人の感情を読み取るのが苦手な子とも見れるバランスですよね。それが徐々に「情報を入力」などのセリフが出てきて、極めつけが「セクサロイド」。セクサロイドのある世界だとここで確定するので、ここで彼女がアンドロイドだと確信が持てる。直前の『裸の学校』も特殊な設定でしたが、それを徐々に開示し、その設定を広げていくオープニング及び物語の展開が見事ですよね。シンプルに物語として面白いし、そのオモシロの加速がちゃんとエロに結びつくから二重においしい。
 そして、エロ本番。人間のメイド相手でも禁断の関係感あるんですが、そこに加えて、アンドロイドで、さらにはセクサロイド改造という壁まである。身も蓋もないことを言っちゃえば最初からセクサロイド機能を搭載してればいい話なんですが、逆に言うと、わざわざそこにワンクッション用意したのが本作の醍醐味。「坊ちゃまのために」という思考が誤解と暴走を重ねてセックスに至る。本作はそこにアンドロイド特有のデータ入力と情報処理、そして改造が加わる。そこまで準備されちゃったら断れないですね。坊ちゃま的にはそういう目で見ちゃいけないという意識もあったと思うんですが、「改造したんでセックスできます」と迫られたらそんな理性も吹っ飛んじゃうのも分かる。この理性の吹っ飛びがエロ漫画の味噌であり、さらにはセックスと通じたコミュニケーション、そして相互理解というのがアンドロイド設定と交えて語られるのがとても良い。データ入力もしくは出力の際に「カシャ」と目のアップになるのが印象的なんですが、感じて考えて動く、というのは人間でもある話なんですが、アンドロイド設定の「カシャ」が入ることでそれがより際立つ。そして最後の最後にタイトルである「オートマチック」を踏まえたセリフで劇終するというのが本当にオシャレだったと思います。

『なつあそび』楝蛙

 おねショタ。毎年夏休みに父親の実家に行くと出会う千夏ねえちゃん。この距離感、水着に着替える際の意識しちゃう感じ、からの悪戯っぽい笑み。最高かよ……。そのままお風呂に入り、実は去年いじわるの一環としてキスをしていたと明らかになり、今年はついに。激アツw この親戚で、子供だから異性として扱ってこなかったものの、年に一度の出会いなので徐々に、それでいて明確に2人に変化が生じていて……という蓄積を感じる。1年待ちわびたと明らかになるので、それがついに、という気持ちの盛り上がりも。単におねショタ好きってのもありますけど、設定と物語の展開が良すぎるとも思います。本作で行われる物語は非常にシンプルで一緒にお風呂に入ってやるだけなんですが、そのバックグラウンドが非常に良くて、それが本作を特別なものにしている。もちろん2人のキャラクターも最高。ヒロインのちょっと何考えてるか分からない感じというか、日常と性がフラットな感じとかすごいエロいんだよなぁ。おねショタでこのヒロイン像ってのが最高に強い。
 あと、エロ関係ないんですが、最後にチラッと出てきたデフォルメの利いたお婆ちゃんも可愛かったです。エロとは無縁のほのぼのとした良さがあるからこそ、それなのにエロに興じてしまった、という背徳感も出ますね。

『オレの幼馴染つよい』オクモト悠太

 前編。文章がバカになっちゃってるタイトル好きです。
 友達に見栄を張るために幼馴染に恋人のフリをしてもらう話。海水浴です。『なつあそび』も季節感のある話でしたが、帰省と違ってより2020年の惨禍を考えると非現実的というか、「あるべきはずだった理想の夏」という側面が強いんじゃないでしょうか。こういう季節感に全振りしたような作品、雑誌として非常に大事だと思います。読切だから連載ストーリー漫画よりはやりやすいだろうけど、計画的に季節を逆算して描かないといけないから大変ですね。つまり、ありがてぇ。
 目を離した隙に彼女がチャラ男にナンパされ、それを助けて気に入られる……というほど単純ではない。彼女は自力で解決し、イライラの発散として主人公を性的にからかい始める。もちろん助けてもらってドキッとした側面もあるかもしれないし、後編でそこらへんが言及されるかもしれないんですが、とりあえず今回大事なのは最初から最後まで常にヒロインの方が上にいる、というパラーバランスでしょう。2人のキャラクターと関係性をオープニングで見せつつ、その延長線上にエロがある。ちゃんと非エロパートとエロパートの連結があるのが良いですよね。主人公は水着を完全に脱いだ全裸なんですが、ヒロインはあくまでもずらすだけ。あの女性優位感が絵として一発で分かるのが良い。万が一人が来た際、彼女は背中を見せればとりあえずバレないけど、主人公は全裸なのでケツが見えちゃう、という危機感に違いがある。
 あとはやっぱ「次号に続く」で終わることのありがたさですよね。物語としてもそうですが、キャラクターが魅力的だと読切で終わっちゃうのが寂しくもあるんですよね。それが前編だとない。まだ読める、という心のゆとりを持てる。ありがてぇ。

『となりの王子様』ぼっしぃ

 ぼっしぃ先生モノクロ漫画久々。色の有無もそうだけど、やはりページ数の差が大きいですね。物語とキャラの掘り下げがある分魅力的。ヒロインの可愛さはバッチリ見せた上でしばらく非エロな物語が展開していく序盤のくだりも良いですよね。エロ漫画特有の「この後エロが見れる」という確信w AVのインタビューパートとかも同じですかね。私は好きです。
 んで、本作。こちらも幼馴染。細かいけど、本作だと表記が「幼なじみ」。だから何だって話ですが。
 太っちょオタクとギャルになった2人が再会し、かつてのプロポーズ(ヒロインの方から)の続きに至る。冒頭の友達との連絡シーンでも分かるんですが、彼女はかなり奔放なので、当然エロの経験というかテクが豊富。かつてのピュアな関係性に戻るのではなく、あくまでもヒロインのギャル性を残したまま仲良くなっていくのがとてもエロい。彼への接し方はカラッとしてて、エロに対しても軽い感じなんですが、心身共に彼女がリードする感じが良い。
 そのまま仲良くなって終わりかと思ったら、まさかの生男改造計画になるので笑った。そういう話になるのかw デブの見た目が悪いとかではなく、セックスを続ける体力が必要、という目的が最高ですね。そして痩せたら腹の肉で埋もれてた分チンコが長くなってより気持ちよくなる、という理屈で彼がエロ的にどんどん強くなる。プレイが変態な方向に加速するのではなく、より気持ちよくなるという説得力があるのが何気にすごい。それが2人のドラマの進行であり、エロ以外の意味で仲良くなる場面であり、それが同時にエロ的に気持ちよくなるんだから最高と言う他ない。
 ラスト。かつてのプロポーズ失敗のリベンジで成功して終わるんですが、子供の頃にはなかったスマホというアイテムを使って2人が結ばれるのがオシャレでした。思えば本作の冒頭の場面もヒロインがスマホで友人と連絡を取る場面だったんですよね。ただ、冒頭の場面では連絡が取れても「繋がらない」だったのに対し、ラストの場面では「繋がる」で終わる。この対比が非常にキレイでした。

『MULA MOOOLAH』外山じごく

 『MULA MOOLAH』の続編。komifloだと前作の配信が復活して読めます。あざす。読み返したら1ページ目のコマ割り、内容がまったく同じなので笑いました。流れるような説明ゼリフも同じ。こんなんで笑わされるとは……
 前作とまったく同じ開幕をしたんですが、本作の味噌はいつもの感じで始まり、いつもと違うところに着地するところにあると思います。要するに、コスプレ撮影という体裁がなくなり2人が恋人になる。というのも、今回コスプレがないんですよね。水着なだけ。本シリーズの肝はコスプレではなくあくまでも2人のキャラクターだと分かる。
 そんな「撮影」という体裁を失う過程がギャグ混じりに、それでいてサクサク描かれるのがすごい。例によって海行ったらヒロインがチャラ男にナンパされてそれを竿が助ける話になるんですが、本作の白眉はこの場面で森岡“やや やめないとけっけけk警察に写真を突き出しますッ” とカメラを構える。彼の武器としてカメラが出てくるのも良いし、そこでチャラ男にカメラを破壊される。ここでカメラを失い、2人の「撮影」という目的が消失。そして、その姿にドキッとした彼女が取る行動は1つ……ということでエロに至る。ここマジで見事でした。チャラ男の退治方法とか爆笑だったんですが、通しで見ると2人のドラマとしてとても大事な、というか象徴的なイベントだったのがよく分かります。前作と違って、明確な恋人の予感を抱いた状態でのエロパートになるので読み味というか、気持ちが違いますね。いつもと同じノリのようで、大事なところが全然違う、というのが続編として非常にうまい。
 続編なのでパワーアップ感も大事だと思うんですが、フェラの場面で何の説明もなくアナル責めしてるのでビビりました。前作そんな要素なかったのにw これが彼女の本気ということなんでしょうね。チンコのデカさで彼には圧倒的なアドバンテージがあるので、チンコ以外にも刺激しないと敵わない、みたいな話でもあったのかなw
 快楽天の掲載順的には「また海でやってる」「またギャルとオタクがやってる」という話なんですが(どれも好きです)、本作が強みはエピローグ。恋人となった状態でエロとは無縁の話をする。それが夕日を浴びた電車の中というシチュエーションもあって非常に感動的。決して辛気くさくはならず “絶対幸せにしよ…” とギャグっぽい味わいで終わるのも最高でしたね。そんな彼に対して照れながら攻撃的な言葉を投げかけてくるヒロインがまた可愛い。2人は今後こんな日常を送るのか……としみじみ。

『春の渇き』大箕すず

 大箕先生、前回の『うつろい』もそうでしたが、表層的なイメージで見てるとギョッとするようなギャップ、複雑な心理もしくは二面性みたいな部分が良いですね。その複雑さを主に竿が抱えていて、それをヒロイン視点で描く。本作の竿は前回以上に分かりやすくクズというか、ダメ男で、そんな彼のことを一途に好きでいるヒロインが可愛い……で終わるかと思ったら心理的にこじらせてるのはむしろ彼の方だった、と明らかになる展開が面白すぎる。共依存的でもあり、SM関係を支配してるのは実はMの方みたいな話でもあるんですが、彼の複雑さが作品の奥行きになってる。彼はダメだし、最初から最後までクズで、男の敵であり女の敵なんだけど、彼自身気持ちに整理がついてないのを見ると彼に同情してしまう……いや同情は言い過ぎかもしれないんだけど、ただクズと切り捨てるだけではない何かを感じる。その一筋縄でいかない感じが漫画として面白いし、その印象がヒロインに重なるので、結果的にヒロインを愛でるというエロ漫画的にも正しい着地を迎える。
 ヒロイン、言ってしまえば地味な子なんだけど、なぜあんなチャラ男が彼女にのめり込んでしまうのか、という風に見ると今度は彼女の魔性性みたいなものも際立ってくるので、そういう意味でも魅力的なんだよなぁ。本作、男側の視点で進行するので、読んでて「何考えてるんだろう」と想像してしまうのはヒロインの方なんですよね。他者としてのヒロインなので。また、本作、驚くほどにヒロインのセリフが少ないのも特徴。特に彼女が自分の気持ちを吐露するようなセリフはほとんどない。だからこそ彼女にのめり込んでしまう。
 そして、ラスト。主人公が完全に堕落してしまい、ちょっとだけカメラが彼女視点に寄り添って終わる、というのも最高でした。タイトルが『春の渇き』ってのも良いよなぁ。「どうなる?」と激しく興味を引かれるし、そこで終わることで「つまり彼女は?」と考えたくなってしまう。その前のスマホとラブレターが同じコマに収まってるのも2人の関係性、相手を求める気持ちの伝え方の対比が最高でしたね。

『雪解け』白菊

 ヒロインがメガネ。やったぜ。komifloコメ欄でも言及されてましたが、メガネが理性のメタファーになってるので、メガネが落ちることで彼女が真に性に没頭する、という表現になっててメガネ好き(メガネ演出)好きとしては大満足でした。
 白菊先生の作品、快楽天でしか知らないんですが、主要キャラ、カップルとの距離感が独特であり、そこが好きです。心の声が必要最低限な印象あります。本作も少ないんですが、その中の一つがヒロインの友人。友人が “何…この子可愛い…” と感慨にふける。ヒロインの気持ちにフォーカスするというよりは、ヒロインに心理を外から想像して「やだ可愛い……」と楽しむ距離感。本作はセックスでの気持ちよさが分からないヒロインがオモチャを使って開発することによって目覚める話なんですが、この知らない扉が開く感、知らない自分になっちゃうような感覚がこのちょっと引いた距離感にバッチリはまって魅力的になってたと思います。ヒロインの心の声は言っちゃえば正解なんで、多ければ多いほど「これで大丈夫」と安心できるんですが、少ないことによって「こんだけ気持ちよさそうにしてるんだから大丈夫だよな?」みたいな感じになってたと思います。彼氏がまた良い人なんだけど、ちょっと彼女に流されっぱなしな感じがしてそこも良かったですね。あくまでもヒロインが自分で反省して、自分で新たな扉を開く(開いてもらう)話なので。
 ちょっと危なげで淫靡な雰囲気に包まれてるんですが、最後のエピローーグで2人がストレートにイチャイチャし出すのもハッピーエンド感として最高だったと思います。

『蜜月とろり』SAVAN

 旅館で大学の先輩と。あかん、めちゃくちゃ可愛い。序盤の非エロなラブコメパートがとにかく可愛くて、そこからずるずるとエロに移行していくのが最高すぎる。そのラブコメパートとエロパートが浴衣がはだけることでシームレスに繋がっていくんですよね。エロの予感を溜め込んで、ついにヒロインが自らの意志で浴衣を脱ぐ。背中を向けての浴衣脱ぎ、最高にセクシーでした。
 んで、2人の気持ちが爆発することで一気にエロになだれ込む。キャラとドラマの行き着く先としてのセックスというのが良いですよね。エロ漫画の醍醐味を感じる。浴衣を最後まで脱ぎきらないのも嬉しいし、エロになって真面目になったかと思うと照れ隠しのようにいつものノリに戻る瞬間もある……んだけどそれも長続きしないってのがまた最高。
 エピローグがなくてフェードアウト的に作品が終わっていくんですが、何なら最終ページが一番エロいんじゃない? という迫力のトロ顔でした。序盤のラブコメパートとのビフォーアフターとしても楽しめるし、思ってたより数倍エロい、という嬉しい誤算でアガりました。
 重箱の隅をつつくような話になるんですが、大学の先輩後輩の話なのに、後輩くんが “四年間一緒にいてはっきり分かったんです” と言うのはおかしい。いや、2人とも留年とかしたら成立するんですが、たぶん違うと思う。

『焦熱』ももこ

 コーポうさぎ。そんなに大きくないアパートだと思うんですが、全室埋まってしまいそうな勢いw 今回外観がちょっとボロくなってたのは前作での台風被害ってことなんですかね。
 教育実習で出会った子がコーポうさぎにやってくる。彼女にやけに懐かれるんですが、それを鋼の理性で阻止できるか……という話かと思ったんですが、それよりも遙か前から主人公は彼女に欲情していた、と明らかになる展開に驚きました。モノローグ全開で語るタイプの作品だから彼の心情は分かったつもりにさせられてたんですが、まさかの展開。それが明らかになる場面でのハンカチ使いが最高でしたね。2人の出会い(再会)における最初の一手の時点で彼はもう……。あの数コマだけで描いてしまうのがオシャレでした。タイトルの『焦熱』ってのが単なる夏の暑さのことではなく、2人の中の燃えるような気持ちのことであり、そこに焦らし的なニュアンスも乗っかるので見事ですね。
 今回のヒロイン、手を出しちゃいけない存在なので、だからこそ焦らされるようでもあるんですが、そのダメな存在感というのが最初から全開で、そんな理性が彼女に誘惑されて崩れるカタルシスがすごい。とにかく彼女が華奢で、小さいし、線が細いしで「ダメだ!」と見てて感じます。そこが良い。2人が一線を越える場面として、ヒロインが “…嫌だったら避けてね” と言いながらキスしようと近づいてくるんですが、このセリフがまた最高ですね。最高であると同時にずるいw 最後の最後まで「断らなきゃ」という選択肢を意識させられる。逆に言うと、その選択肢を分かった上で放棄するのがドラマや感情の盛り上がりなのでやっぱり最高。彼女の幼さを示す腕の細さが “このまま力入れたら折れちゃいそうな…あ” と断れない理由になってるのも秀逸でした。細さは幼さなので断らないといけない理由なんだけど、それと同時に断ったら彼女を傷つけてしまう。そうこう悩んでるうちに、アウトー!! というのが熱いw

『ワークアウト!』アシオミマサト

 虚弱体質の主人公が鍛えようとジムに行ったらココアコーチと出会う。ジャイアンスネ夫的な友人にいじめられてるのか、からかわれてるのか分からないんですが、腕相撲というのが最初と最後にあり、本作を通過儀礼の物語にしてる。セックスが終わったあとのエピローグがヒロイン関係ない場面での腕相撲なんですよね。腕相撲が始まるところで終わるんですが、構えた彼の腕はたくましく……という終わり方。そこに取って付けたようにのんきなヒロインが差し込まれるんですが、この温度差は本作の魅力ですね。主人公はかなりマジで、辛気臭くもあるんだけど、ヒロインの方は深く考えてなさそうで、底抜けに明るく、その明るさに救われるところもある。この超陽性なヒロインが魅力的なんですよね。ちょっと何考えてるか分からないような感じもあるんですが、そこも含めて魅了されてしまう。主人公の悩みに誠心誠意向き合ってくれるような感じではないんですが、その動物的なノリというか、軽いノリがとにかく可愛い。
 鍛えたら腕相撲が強くなるだけでなく、セックスで2回戦突入できるようになる、というのは奇しくも『となりの王子様』と通じるところがありますね。あれもヒロインが脳天気な感じでしたが、これが黄金比なのかもしれないw

『「ごめんね、素直に笑えない」』さくま司

 鍵括弧込みのタイトルなんてブログで感想書く際に困るじゃないか、なんて勝手なことを思ってたんですが、最後まで読んだら納得。直接このセリフが出てくるわけではないんですが、彼女の本音、彼女が言えなかった本音としてこのタイトルが利いてくる。
 ツンデレというほどではないけど、ヒロインが素直になれないでいると相手が海外に転勤してしまう。この彼がナイスガイで、ヒロインと喧嘩しつつ仲良しというのではなく、ヒロインの若干失礼な発言を嫌みなく受け止めてくる感じがすごい良かったです。2人の仲良し感としてもそうだし、「これはモテる……」という説得力w そして、ヒロインを応援する友人ってのも出番少ないながら良いキャラしてましたし、受付嬢って設定がまた良かったです。受付嬢との無駄話、憧れる……!(そこかよ)
 ついに素直になって告白、なんですが、ここはまだレストランですので、またエロに突入できない。このゆったりさが良い。エロ漫画だと告白と同時にガバッ!となる作品も多いじゃないですか。それとは違う良さがある。告白のあとホテルへ移動して、ベッドで座ってる際の緊張感がリアルw そんな緊張感を打破してキスするんですが、それも男の方から。どこまで出来た奴なんだ……。とにかく本作は素直になれないヒロインをひたすら愛でるような作品ということですね。その魅力を最大限引き出す触媒としてのナイスガイぶり。ヒロインの受けのリアクションで魅せるタイプの作品なんですが、その最高潮が挿入の場面。お尻を突き出して待機するのが可愛すぎる。恥ずかしくて顔が見れない(見せられない)ってのは分かるんですが、まだゴムもつけてない状態でのバックの体勢での待機ってのが可愛すぎる。そんなお尻を見ても理性を保ってゴムを装着する描写があるのも本作らしかったと思います。待ちの時間経過が感じられるのも良いですね。てか、フェラ(男側が気持ち良くなる前戯)もないまま挿入に至るのとかエロ漫画的にはかなり珍しいと思うんですが、それが本作のキャラクター、ドラマ的には大正解でしたね。エロパートの内容が彼女の「素直になれない」と合致してる。いつかしっかり付き合うようになったらお互いもっと前戯するようになるのかなぁ、という妄想も捗りますw
 そして、最後。素直になれず、ひたすら受けだったヒロインが勇気を振り絞って攻めに転じる、というところがドラマ的なクライマックスだと思うんですが、それが射精後の2回戦で、そのままフェードアウトして場面がエピローグへと移る、というのも良かったと思います。男女どちらかのエクスタシーの瞬間ではなく、あくまでも彼女が能動的になる、という点が最大の盛り上がり。

『アイの黙性』ICHIGAIN

 非エロパートというかドラマパートが長い。直前の『「ごめんね、素直に笑えない」』もドラマのためにエロ的なバリエーションを意図的に減らしてた作品だと思いますが、本作はそれ以上にじっくり、ねっとりと2人のドラマを見せていく。「やるだけ」の作品も好きですが、溜めて溜めて爆発するドラマ重視の作品も大好きなのでこういうのは大歓迎……と思ったら次号に続く。そう来たか。そう来るのか。ドラマパート長すぎの兼ね合いってことなのかな。最初に前編って明かされないパターンですので、「これが続くのか……」というワクワクがすごいですね。ICHIGAIN先生、ちょと前の作品が前後編、というより二部作だったんですが、おそらくそれとは別のアプローチの前後編って感じになるんじゃないかしら。楽しみすぎるやん。
 話としては、クラスに馴染めない2人が屋上で出会う。屋上、最初は主人公独りの城だったんですよね。そこにヒロインがやってきて、というボーイミーツガール。屋上への侵略があまりにスムースに進むんですが、その彼女のしたたかさ、賢さが彼女を孤立させる原因でもあり……というドラマが最高。読めば読むほど良く出来てる奴。
 そんな屋上。これが3人目の主人公と言いたくなるくらいに物語に関わってくる。1ページ目から屋上に机がある異様な光景が印象的なんですが、とにかくこの屋上の個性が強い。学園ドラマで割とベタなシチュエーションではあるんと思うんですが、その定番の使いこなしがすごい。秘密の場所なのにスピーカーを使っちゃう大胆さも屋上ならではですし(教室だとさすがにバレる)、夏になると日陰を求めて2人が自然に接近するというのも良い。逆に言うと、どんなに暑くても校内よりはマシと感じる程度に2人には居場所がないってことですよね。からのエロパートでは手すりにもたれ掛かって授業中の学生たちを見下ろしながら。これまた定番のシチュエーションではあるんですが、普通だったら露出とかそういう意味合いが強いじゃないですか。バレちゃう?? みたいなハラハラを煽る意味で。ところが本作の場合は違うんですよね。もちろん2人の中にはハラハラもあったかもしれませんが、本作のドラマ的にはそこは重要ではない。逃げ出してきた「普通」を遠くに見ながらエロにふける、というのが良い。逃避でもあるけど、ちょっと逆襲みたいなニュアンスもあるんですかね。次回がどうなるかは分からないんですが、屋上が続くんですかね。まぁ、今回セックスに至ったことで2人が新たなステージに移行すると考えたら屋上を卒業してもおかしくないんですが。とりあえず1ヶ月の楽しみが増えました。あざす。

『再逢パストラル』おかゆ

 おかゆ先生、ロリとか年下ヒロインというイメージが強かったのでおねショタには驚きました。かつてピアノを教えてくれてたっていうヒロインの設定も上品なイメージがあって最高だし、対人関係が苦手な帰国子女のショタも最高。ショタのパニックも可愛いし、ショタの魅力に当てられちゃってタガが外れていくヒロインも最高。互いの可愛いが互いの可愛いを引き出し合う相乗効果。理想のおねショタですね。どちらのモノローグも語られる作品なんですが、前半がショタで後半がヒロイン。それぞれ自己と他者という立ち位置で描かれるので2人の魅力が多面的に描かれる。ショタから見たヒロイン可愛い、からのヒロインから見たショタ可愛い、という構成。もちろん逆の意味でも成立する。暗いニュースも多いんですが、おねショタは癒されるぜ……
 ショタの幼稚性を象徴する場面として「おかーさん」呼びが出るんですが、ここも最高でしたね。ぶっちゃけエロの雰囲気が一気に冷めてもおかしくない危険性もあると思うんですがw ちゃんとそれが良いスパイスとなって作用する。ヒロインのバブみってのもそうですが、お母さん呼びされたヒロインがちょっとムキになる効果が大きいですよね。あの場面を境にヒロインの攻めが一気に加速する。意地悪しちゃうようなニュアンスが増すし、そのまま自分の欲望が止められなくなり、そのまま挿入へとエスカレートしていく。
 後半はヒロイン視点で描かれてたと思うんですが、最後の最後にショタが自らの意志で動いて物語に決着をつける。まぁ、それも「もー可愛いんだから」となるヒロインの視点なのかもしれませえんがw あそこでプロポーズしちゃうのが感動的でもあり、同時に彼の幼稚さも感じられるバランスで良かったですね。可愛いやんけ……

『いいこいいこときもちいいこと』こめざわ

 アバン3ページで「百合かな?」と思わせてからのタイトルのコマで作品が一気にダークに染まる。「百合を踏み台にしないでよぉ!!」と思ったら最後の最後に「やっぱ百合?」となる。すごいですね、このジェットコースター。百合関係を脅迫のダシに使った陵辱かと思ったら、陵辱パートが百合関係のスパイスだった、というオチ。もちろんエロのメインは陵辱だし、ヒロインが2人出てきてエロを担当するのが片方だけなのも意外なんですが、ドラマとしては陵辱よりも百合の方がメイン。この捻れというか二重構造。
 守り守られな百合関係なんですが、守られの方が最後までエロに至らない。これがもはや意外でもあるんですが、 “どうして” “代わりますって言えないの” という罪悪感が今後永遠に残るという意味では犯されるよりも絶望感があるとも解釈できる。また彼女を守りきったことが百合的には大勝利とも解釈できる。ページ数的には陵辱のが圧倒的に多いんですが、その2つが決して分離してるわけではなく、それぞれ関わり合ってる構成。百合あっての陵辱で、陵辱あっての百合なんですよね。最後に守られる側のりこちゃんがベッドに上がる、というアクションでエピローグに突入する構成もキレイでしたね。

『かなみちゃんには敵わない』歩芽バにら

 これまた一筋縄ではいかない作品というか、ジャンル分けが難しい作品。元カノがヤンデレで、一方的に詰め寄られてそのまま、という話自体はホラー的なんですが、作品のノリが軽いというかちょっとギャグっぽくもあるんですよね。とはいえ、「可愛い子に犯されて良かったやん」とは安易に言えなさそうな彼女のコミュニケーション不可能性が容赦なく描かれるw 最初から最後まで2人の対話がまったく成立しない……。そこがおかしくもあり、恐ろしくもある。ディスコミュニケーションの極みみたいな存在なんですが、エロで打つとエロで響いてしまうのが主人公の悲しいところよねw 女性へのレイプ作品でよく犯されてるのに濡れちゃうみたいな展開ありますけど、男の場合は勃起だからよりシンプルなのが情けないというか、不可避ですよね。一目で分かってしまう……。さらに言うと、男だと賢者タイムがあるので、一発出したあとの “まだイけますよね” の絶望感がよりヤバい。勃起さえしなければセックスを防げるという強みもあるけど、刺激を与えれば大体……というのが悲しい。心が伴ってなくてもチンコっは反応してしまうw
 可愛い子がエロに積極的でめっちゃ責めてくる、というのはそれだけ見ればエロ漫画的に理想の状況なので、楽しめるんですが、絵面としての多幸感とそれが意味するドラマのギャップ。とはいえ、こんなに狂っちゃうほど一途に愛されたい(実際はマジ勘弁)、という都合のいい願望を叶えてくれるのはフィクションの強みですね。コミュニケーション不能で不気味ではあるんだけど、あの一方的に責めてくるヒロインが可愛くないと言ったらウソになる……のがこちらとしても複雑なところです。勃起してしまう主人公のことを笑えないw

『高まり』ふらつ

 人妻がパート先の大学生と。旦那とセックスレスなのではなく、ヒロインの性欲が高まりすぎてアンバランス。昔はそれほどセックスが好きじゃなかったらしいので、旦那はむしろその状態のままキープしちゃってるんでしょうね。こういう捻れは実際あるんだろうな。セックスレスとか旦那がクズみたいな分かりやすい話じゃないだけどに生々しい。
 そんなヒロインに目を付けたイケメン大学生の吉田くんがまたずるい。直接は言わない、誘わない。匂わせつつ誘わせる余地のある言動を繰り返すのがうますぎる。うまいので最初は「彼は善良な大学生でそれをヒロインが汚す話なのか?」とか思ってしまったレベル。そんな彼の悪性が徐々に明らかになっていくんですが、ひょっとしたら欲求不満のヒロインが彼の才能を開花させてしまったという可能性も残ってるのかしら。最初から計画的にハメられた、という話ではないんですよね。すべての原因は間違いなくヒロインにある。そこが本作のポイント。
 一方、ヒロインの方は欲求不満に耐えられず、心の言い訳を常に用意しながら彼のことを誘惑していく。そんなヒロインの欺瞞を吉田くんが逐一ツッコミを入れていく終盤の展開が最高に意地悪であると同時に、ヒロインの罪、越えてしまった一線というのを強く感じさせられて良かったです。ヒロインの欺瞞にイラついた彼が暴走してしまったようにも見えますね。となると、やはり彼は最初からクズだったというわけではないのか? いや……と考えたくなってしまうw
 そんなヒロインの欺瞞、そして吉田くんの欺瞞に対するキレが最高潮になったのが、下の名前で呼んでほしいというヒロインの要求。これ人妻ものではかなり鉄板の展開じゃないですか。妻が女になる、的な。快楽堕ちの象徴的な展開だと思うんですが、本作だと下の名前で呼ぶことを拒否する。「甘えてんじゃねぇよ」と無慈悲な鉄槌を下す。そんな展開あるの!!? とマジで衝撃でした。たしかに彼の言い分は正しいし、ヒロインの罪の意識を強調するのは不倫ものとしては正統派とも言えるアプローチなんですが、まだこんな手が残っていたとは……

異世界はこう抜く』F4U

 300号記念でイレギュラーだったのもあり、まさかの3号連続登板。嬉しいぜ。
 今回は肉食植物マンイーター。触手とはなんとドストレートな題材w なんだけど、それに対するまくら嬢の一手というのが発想として面白すぎる。本作はいつもそうですけど、まくら嬢のアイディアがかなりクレバーというか、ロジカルですよね。ギャグ的な作品だから勢いで突っ走るのかと思いきや、まくら嬢の言ってることには「たしかに……」と納得させられてしまうw もちろん無茶苦茶な話なんだけど、異世界なんだけど「これなら抜ける」と納得してしまう。
 アイディアとしての面白さもあるんですが、それを実行できるまくら嬢の底知れないスキルも最高ですね。脱ぎはないのにエロいんだよなぁ……。


 終わり。もうちょっと早く終わると良かったんだけどね。
forms.gle

 総括代わりにアンケート。面白かった作品3つは『オートマチック・ガール』『となりの王子様』『蜜月とろり』かな。
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