北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

COMIC X-EROS(コミックゼロス)#85 の感想

COMIC X-EROS (コミックゼロス) #85 [雑誌] (コミック ゼロス)
COMIC X-EROS (コミックゼロス) #85 [雑誌] (コミック ゼロス)

 随分と遅くなってしまいました。ゼロスは隔月なので遅れてもいいから毎号感想書いていけたら……と縛りを設けるのも良くないかなw

kitaku2kitaku.hatenablog.com

『ナイショの溜まり場』nohito

 フルカラー4ページ。問題児の生徒に自宅を溜まり場にされる話。エロの予感がするだけで直接のエロはない1ページ目が良い。フルカラーショートってペース配分が人によって違いが出ると思うんですが、本作は1ページ目で溜めて2ページ目からフルスロットル。面白いのは状況説明も2ページ目以降なんですよね。エロと平行して語られる。1ページ目はエロの予感だけだし、そもそも状況もよく分からない。からの爆発がアガります。
 エピローグとしてギャグっぽいオチがつくんですが、エロ的にはさらなる盛り上がりが期待できますね。笑えるし、オチなのも分かるんですが、今後の様子も気になってしまう。日常と化したエロが本編終了後も続いていく、みたいなフェードアウト良いよね。

『ムラムラしたらおねーさんがすぐ駆けつけてくれる島』森島コン

 #1。フルカラーショートかと思ったら連載らしいので驚いた。フルカラーの連載らしい。今回2ページなんですが、今後もこのくらいで続けるのかしら。2ページだと物語の展開的に制限がかなりあると思うんですが、毎話ワンシチュエーションで、みたいな感じなのかな。それはそれで楽しみ。あくまでも島なので、ショタ固定でヒロインが交代……なのかな?

『いつもの係長』駄菓子

 『いつもの通勤路』の続編。まさかの続編。あれを続けるとは驚いたなぁ。
 『いつもの通勤路』は快楽堕ち的ではあるものの、ヒロインも変態なので変態同士のハッピーエンドみたいな印象があったんですが、本作ではまさかの男追加。ヒロインに憧れてる後輩が追加。カップルは既存なんですが、そこに後から寝取られ(いわゆるBSS)的な視点が加わる。これ面白かったなぁ。シリーズの拡張としてこんな方法があったとは。真面目な主人公が真面目な上司に恋をしていると、チャラい新人がヒロインを寝取っていく……と書くと定番の話ですが、本作の場合はそのチャラい新人の方が読者的にはお馴染みですよね。既存のカップルを第三者の視点から描き直すってだけでも面白いのに、それを寝取られにするのが最高。初めて見たんですが、この手法マジ発明だろ。すごい。
 いつものように変態プレイに興じてるんですが、それを何も知らない人が目撃したら “溝口係長が脅迫されている……ッ!!!” と誤解するのも仕方ないですよねw 笑えもするんですが、彼の寝取られの感情、そして鬱勃起は本物なのでそっちの迫力もしっかりあって面白い。
 からの佐久間との直接対決……が成立するはずもなく。これなぁ、詰め寄る気持ちは分かるんだけど、通常の寝取られ作品と違って佐久間が特別に外道ってわけでもないんだよなぁw いや、本作でかなり意地悪なのは間違いないんですが、ヒロインとの関係は変態なりに全うというか。
 んで、寝取られ的には本番。見せられる。ただ、誤解をとくのが目的なので、今度のプレイはイチャイチャ度高め。暴力的な支配じゃなくてよかったっちゃよかったんだけど、2人の間に愛があるとなるとそれはそれで寝取られ的には地獄w 言ってしまえばエロ自体は「いつもの」ものだとは思うんですが、新しい視点が加わるだけで同じプレイにもまったく別の味わいが生じる。これは物語の妙ですね。

『夏のおねショタ』いづれ

 タイトルでおねショタと言ってしまうのがすごい。ジャンル名をタイトルにしちゃうのか。
 おねショタ作品はショタ自体の可愛さももちろん魅力なんですが、そのショタに魅了されるヒロインも大事ですよね。元からショタ大好きなヒロインが変態的にショタを貪っていく作品もありますが、本作は逆。ひょんなことがキッカケでショタとの間に男女の関係が発生してしまい、そのままずるずるとショタの魅力に目覚めていく話。年上好きだったはずが、すっかり年下好きになってしまった、とオチがつくのが良い。ショタの扱いを間違えて困惑する序盤、ずるずるとエロに発展していき、まずはショタの方が夢中になり、その様子を見てヒロインが引き返せないほどハマっていく。このグラデーションが最高。2人とも互いに前のめりになっていくのがよく分かりますよね。その互いの大好きっぷりが見ていて本当に良い。そしてやはりショタが可愛い(そこかよ)。
 からのエピローグ。ヒロインの心境にフォーカスした作品だったんですが、最後の最後にショタが彼自身の気持ちをハッキリと伝えてくる。ここが男らしくて最高なんですよね。ショタの魅力の本質として伸びしろってのは間違いなくあるんだと思います。大人になる成長の予感、みたいなものにときめく、みたいな。そんなしっかりした一面にドキッとすると同時に最後に手を振る様がストレートに可愛いのでギャップでどちらもおいしいw

『おいなりさん』flanvia

 爺さんが死んで神社の掃除に来たら神様と出会う。稲荷神ながら怠惰の極みみたいなキャラクターがめちゃくちゃ可愛いのはもちろんなんですが、それを引き立てる意味で男キャラも魅力的だったと思います。漫才的な掛け合いがあり、ヒロインがだらしないのでツッコミが入ることで彼女の魅力がより光る。エロに突入すると互いに初々しい感じもあって、ギャグっぽい味わいからのギャップが良い。その後も照れ隠し的にギャグは入るし、そのまま変態プレイ的に飛躍していくのも最高でした。ちょっとごっこ感があるというか、2人の仲良し感としてすごく魅力的。プレイとして男の方が支配的な感じになるんですが、ヒロインのリアクションがギャグっぽくもあり、感情が剥き出しになってるので気持ちよさの説得力としてすごい。機微というより常に前回の感情で魅了してくる。
 あと、地味に好きなのは劇中に出てくるエロ漫画の絵が本編の絵と微妙に違うものになってるのも良かった。エロ漫画を踏み台にして、という良さ。

『さいみんクエスト』背徳漢

 #02。前回は、学校がエロに埋め尽くされる中主人公がプラトニックなまま終わるのが面白かったんですが、今回もそこはキープ。「もう無理だろ」って状況に追い込まれるんですが、ギリギリのところで回避。エロ漫画の連載だとどうしても毎話セックスを描くのが不可避だと思うんですが、本作は主人公だけそれを避けることで物語の求心力にしてる。サスペンスとしても楽しいし、どう回避するかのロジックも面白い。そして何より今後、もしくは最終回がどうなってしまうのか気になりますよね。物語的な決着もそうだけど、主人公がどうなるのか。
 んで、今回はかなり物語として踏み込んでるというか、かなり事態が前進する。一旦のゴールが見えてくるのに希望を感じるし、そこに向かって突き進む主人公がヒロイックであり、仲間が出来てく感じは王道の娯楽作品感もありますよね。催眠なので理不尽で何でもありな話になるのかと思ったら、しっかり「事件の真相はいかに」みたいな話になるので驚きました。
 催眠にかかったフリをして身体検査。荒唐無稽なエロ身体検査も楽しいんですが、そこに主人公のプラトニック設定が生かされて本当に面白い。演技する主人公も可愛いんですが、徐々に演技する余裕がなくなっていき、そのひたむきさこそが逆転の一打となり得る、という展開も熱い。そこに仲間の協力も加わって、不可能と思えた試験をクリアする、って王道というか、もはや少年漫画的ですらありますね。

『いっぱいたべるキミが好き』変熊

 おねショタ……ではないか。同い年だし。体格差カップル。女友達の前ではヒロインが彼のことを弄んでるんだけど2人きりになると実は。と思ったらそれだけじゃないのでビビった。まさかの再逆転。すっかり騙されたんですが、本作、序盤からヒロイン視点で進行してると思いきや違うんですね。どちらかに偏るような描写は特にない。どっちが主人公かってのはモノローグが目安になると思うんですが、序盤にモノローグは一切ない。真相が明らかになる最後のヒロインの自宅に移動して、ここでようやく伊月くんのモノローグが入る。ヒロインに翻弄され、それでも彼女のために頑張る内情が語られる。まぁ、よく考えたらタイトルが伊月くん目線なんですが、序盤の展開でそんなの吹っ飛ぶじゃないですか。タイトルで騙すタイプかとも思ったけど、逆。タイトルは誠実で2回ひっくり返る。
 前半と後半で真逆のトーンになるんですが、チグハグかというとそんなことはなく、前半の責めは彼女を満足させるための献身。そのことをヒロインも理解していて、その上で最後はヒロイン優位。変態カップルの愛の形としてすごい面白かった。単に責められるのが好きってだけならずっと伊月くんにS役をやらせてればいいんだけど、そうではなくどっちもやるってのが意外であり新鮮。飽くなき追求というか、いろんな形で愛したいし、愛されたいみたいなことなのかな。そんな伊月くんの献身を象徴するのがタイトルであり、ラストに出てくる餌付けw 2人の関係性を象徴する場面で終わり、それが冒頭の場面と同じような日常の光景ってのが秀逸でした。

曲尺手さんと大縄くん』Ash横島

 かねんてさん。初めて知った読み方。今日もエロ漫画は勉強になる。
 真面目でクールな曲尺手さんの弱みを見つけてそのまま脅して。うれション展開良かったですね。なかなか感情が見えなかったヒロインが行動によって感情がダダ漏れになる感じが可愛い。
 脅して無理矢理……という話なんですが、大縄くんが徐々に弱体化するというか、結局のところ彼は童貞なので自分も気持ちよくなるのを境に余裕がなくなっていく。ここすごい面白かったです。直前の『いっぱいたべるキミが好き』と同じくSとMで単純に分けられる作品ではないんですが、あちらほど極端ではなく、本作は徐々に、SとMが、優勢劣勢が入り交じりながら……という部分が素晴らしかった。単純化できない2人のキャラクターにリアルを感じるし、そのぐちゃぐちゃな関係性が仲の良さに繋がる。
 セックスが終わってから大縄くんが写真に撮って再び脅すんですが、ここでは完全に曲尺手さんがいつもの強さを取り戻してるのもギャグ的でもあり、2人のイチャイチャのように見えて最高でした。大縄くんが写真で脅そうとしたのは結局のところ、またヤリたかったからに他ならないんですが、それだったら脅さなくても実現する、というオチが最高。あれだけのことがあったのに最終的にはただの仲良し。いや、あれだけのことがあったからこそなのかもしれません。

『みか姉ちゃんと千秋くん』神谷ズズ

 おねショタ。ショタ可愛いに全振りしたような作品で本当に素晴らしい。今号のゼロスやたらとおねショタ(もしくはおねショタ的なもの)が多くて嬉しい限りなんですが、本作の場合はヒロインが最初からショタのことを溺愛してるタイプ。ショタを愛でてるヒロイン可愛い、であると同時にヒロインに対して「分かるぞ」と謎の肩入れをしてしまうw
 ただ、本作で面白いのは語り。基本的にはショタ視点。心の中も筒抜けでヒロインに対してやきもきする態度すらも可愛い。なんですが、誤解があったりして、ショタがオナニー、ヒロインがそれを目撃して2人のエロが始まる。この目撃の場面で視点がヒロインに移るんですよね。ショタが他者になる。他者なんだけど、オナニーなので何考えてるかが行動で丸分かり。ここが良いですよね。2度おいしい。さらに言うと、エロが進むにつれて再び視点がショタに戻る。分岐点としては、挿入のあたりですかね。緊張から始まり、徐々にとろけていき、次第に慣れてうまくなっていく。というか、セックスを通じて気持ちを素直に吐露するようになっていく。コミュニケーションとしてのエロ、というのが物語的にも良かったです。セックスという見せ場によって物語に決着がつく。

『僕のおっきなお姫様』北原エイジ

 体格差カップル。今号だと『いっぱいたべるキミが好き』もありましたが、本作はもっとストレート。ヒロイン視点で彼のことを愛でる感じですね。文化祭でやる劇のために役作りとして、練習として恋人として振る舞ってみる、という体裁が良い。照れながら恋人として演技するのが可愛いし、それにキュンとくるヒロインも可愛い。元の演技は2人とも下手なんですが、この恋人のフリに関してはヒロインの方に余裕がある。この精神的な優劣が2人の関係性として非常に分かりやすい。そのままエロに突入するんですが、先に脱ぐのが彼の方、というも一貫性ありますね。その後も彼は脱がされたけど、彼女は自ら脱ぐ。いきなりおっぱいに行く前の下着描写も圧巻だったんですが、あれも「見せてる」のであって、優位性は彼女の方にある。
 体格差カップルなのでやはり挿入中のキスが、ちょっと無理をする体勢になっててエロいんですが、そのキスってのがエピローグ、劇の本番で再び出てくる構成も見事だったと思います。

『おとなのじかん』川島よしお

 第3回。昭和浪漫のストリップのネタがすげぇ面白い。独特の情緒があってそれだけで魅力的なんですが、しっかりジェネレーションギャップというか、「変なもの」として見るツッコミが入るのが良い。懐古趣味ではあるけど、そのおかしさも充分に理解してる。オッサンたちが「ダサレオタード」に歓喜してるとことかマジ最高でした。ダサいとは認識してるんだw 懐かしさが欲しいのか、ダサさが欲しいのか倒錯してるようでもある。

『ハメパコトレーディング』七尾ゆきじ

 オタクくんが黒と白のギャル2人に捕まる。きっかけはソシャゲなんですが、何かを始める際に人脈を駆使して効率的に進める、というのがギャル的であると同時に、生き方として賢い気もしてくる。おそらくオタクくんにはないアプローチの仕方なので。そんな価値観にギャップがあるものの、たまたま共通の話題が出来たからこその交流。ギャルたちが目的に対して最短距離で詰めてくる感じが良いですよね。この人との距離の取り方というのがギャルとオタクは対照的であり、だからこそ翻弄される魅力がある。オタクくんはギャルの魅力で頭がいっぱいになってしまうんですが、ギャル2人はオタクくんの先にあるソシャゲへのフィードバックを想定してるのが2組の優劣として端的ですね。もちろん単に性的な経験の差とか人数の差もあるんですが、そもそも目的が違う。それがタイトルのトレーディングなわけで。ギャルたちはソシャゲのためにやってるので、エロある種サービス的な内容になってるのも良いですよね。快楽堕ちとかそういうものでは一切なく、心が通じ合ったとも言えるか怪しいんですが、対価としてサービスなので気持ちよさへの追求になってて、それがエロの説得力。

『けんかするほどきもちいい』鹿成トクサク

 夫婦の喧嘩。鹿成先生は夫婦ものが割と多いと思いますが、本作はいつもよりも喧嘩が深刻。いつも多少のすれ違い、喧嘩はあるんですが、漫才的なやりとりで楽しかったりするんですが、本作はちょっとそこから一歩踏み込んでる。夫の不理解を皿洗いに例えるくだりとか秀逸すぎて「マジ気をつけよう……」と思わされるんですが、この時点ではフレーズのオモシロもあってまだマシ。翌朝から始まる冷戦状態(露骨な嫌がらせもする)がすごいリアルでハラハラしました。どうしたら仲直りできるのか分からなくなる。
 本作、夫婦がどちらとも正しくないというか、どちらとも間違った振る舞い、子供っぽい言動をしてしまってるのがフェアですよね。「クズ男がよー」とか、「女のヒステリーがー」みたいにどちらか一方を責められる話ではない。そこからの強制的な仲直りがセックスなんですが、ここでちゃんと家庭内レイプの概念が出てきたのも良かった。「仲直りのためのセックスって気持ちいいよね」が本作のテーマだと思いますが、下手するとただの家庭内レイプの話になりかねない。その危険性をしっかり認識した上で、その先に話が進む。それが妻からのレイプ返し。 “いよいよレ○プじゃん!!” と言いながら彼女が襲ってくる。まぁ、もちろん暴力は暴力なのでこれで一般論としてすべてクリアとは思いませんが、少なくともこの2人の関係においては問題が解消する。からのそれまでの鬱憤を吐き出すかのような罵倒しながらのセックス。セックスとは究極のコミュニケーションという感じで素晴らしかったです。感情の爆発と、その交流としてのセックス。今回最も問題が深くなったのは冷静状態に入ったこと、と分かりますね。感情の爆発がリアルだからセックスの迫力、気持ちよさの説得力もすごいし、冷戦が終わったことでハッピーエンドに近づくような安心感もあるのですごい良い場面でした。キャラと物語としても魅力的なエロシーン。
 からのラスト。エピローグ。2人の仲直りとして2人の喧嘩の象徴であるものを交換する。めちゃくちゃオシャレな決着でしたね。この後はソッコーで皿洗いしたんでしょうねw

『コスプレ彼女のひみつ』鬼斬ゆにこーん

 大学生カップル。彼女とやるときはいつもコスプレ。高校生なのかと思ったら実は大学生によるコスプレで、というオープニングからして良かったです。変な話、漫画なんだから高校生って設定にすればただのいつもの格好でのセックスって話じゃないですか。そこに1コ「コスプレしてる」という設定が乗っかることで特別なエロさになる。プレイとして、エロの追求としてわざわざ着てるってのがエロい。
 主人公が「勝ち組」と自称しててその通りと認めるほかないんですが、順風満帆すぎて逆に新たな刺激を求めてしまう。そこで変態プレイに突き進むのではなく、いつものコスプレをやめる。邪な気持ちとして「それを捨てるなんてとんでもない」とか言いたくもなるんですが、2人の関係性として、誠実さとしてあまりに正しい。直前の『けんかするほどきもちいい』もそうですが、カップルがセックスを通じて一つ問題を乗り越える、2人の関係が一歩進展する、というのが感動的であり、気持ちいいんだろうなという説得力になる。
 からの裸で。オープニングの話とも通じますが、別に裸でセックスするのは普通なんですよ。よそのエロ漫画が普通にやってることなんですが、そこに「コスプレしてない」という物語を乗っけることでその普通のシチュエーションが特別なものになる。いつもはコスプレしてるので、今日はいつもよりも彼女が剥き出しの存在になって、セックスを通じて心にも触れてるような気がして非常にエロい。コスプレしてる人とセックスするのが気持ちいいのではなく、好きな人とセックスするのが気持ちいい、と言葉にしてしまえば陳腐な話なんですが、それが物語として、絵として見せられると非常に魅力的。前戯をねっとり丁寧にしたのもあって、彼の心境にも変化があるのがよく伝わってきて良かったです。
 そしてラスト。コスプレのことを全否定するわけではない、という結論を出したのも良かったです。どういう経緯でコスプレにハマったかは分かりませんが、まぁ趣味ってことなんでしょうね。だとしたらそれを否定するのもお門違いですので。あと単純にコスプレはコスプレでめちゃくちゃ可愛いw

『寄食するヒステリア』なまえれんらく

 超良い。前作の『萌ゆる歯は腐肉を噛み』も強烈な作品でしたが、本作はもうちょっとキャラ萌えが強めというか、2人の関係性に可愛らしい面が強くて最高。前作同様社会のはみ出し者と社会に居心地の悪さを感じてるヒロインの交流なんですが、恐怖すらあった出会いからのイチャイチャに至るギャップが本当に魅力的。強面の逃亡犯が実は花に詳しい(ヒロインが持ってた本で知る)とかずるいでしょ。そんなもん印象ガラリと変わるわw
 目隠しの場面も良かった。暗闇の恐怖を絵として、漫画として描いててめちゃくちゃフレッシュ。目では見えない「気配」の表現が最高にリアル。ホラー的でもあり、ハードなプレイで読んでてハラハラするんですが、後にヒロインは “あなたの匂いですぐわかりました” とただ怖いだけじゃない感情だったと明らかになるのも良い。ただ、当の場面では “…だれ…?” とモノローグが入ってたので、そこまで確信を持ってて犯されるのを楽しんでたというわけでもなさそうですね。多少のハッタリもあったんでしょうが、ここで2人の関係性がグッと近づく。逆転というほど単純ではなく、男の方が諦めにも近い感情によってセックスに至る。 “久々の女だからな” “もう暴発寸前なんだよ” と彼女を脅すようなことを言ってたんですが、本当に我慢できないんだったらその前の目隠しの時点で挿入してますよね。あくまでも恐怖を教えて自分に懐いてきてる彼女を遠ざけようとしたのでしょう。
 その後のイチャイチャぶりがもう眩しい。はみ出し者同士が出会った空き家が2人の愛の巣になってるのがもう最高すぎる。このときが永遠に続けばいいんだけど、彼の立場を考えるとそんなこともあり得なくて、というビターな結末を迎える。そこでヒロインがため息混じりに現実を受け止めるラストも素晴らしかった。その直前の場面ではどこまでもついて行くとベタベタしてたんですが、実際に別れが来た際のリアクションがリアル。ちょっと彼女の成長も感じますね。あそこで変に泣き叫んだりしないのが本当に良かった。ついやりがちだとも思うんですが、2人の思い出であるサンドイッチ、花、鳥を見聞きしながら現実を静かに受け入れていく。このラストが本当に美しかったです。
 余談なんですが、ツイッター経由で作者が自己解説をしてるのを知りました。本作の。そこで竿役のモデルが語られてて、一応明言はされてなかったんですが、「○さん!!」と声出して驚きましたw ホントだ、そっくり。優しい目をしてるのコマとか完全に○さん。それほど顔のアップのコマは多くないんですが、もう完全にあの人にしか見えない。たしかにかっこいいもんなぁ。分かるわ。

『個別授業あります! 絶対合格夏合宿♡』清宮涼

 寝る前に必ずオナニーする子が塾の合宿に行って困る話。と言ってしまえば味気ないんですが、 “今日は私のナイトルーティーンを紹介したいと思います” で始まるオープニングが面白い。自己紹介的な語りで始まるのはよくあるんですが、それをナイトルーティーンの紹介にすることで今っぽいエッセンスを入れつつ、やることはオナニーなのでエロも担保。不穏さのない1ページ目をめくったらオナニー開始、という急加速ぶりに魅了されます。メガネのオンオフも見れて嬉しいし、とにかく冒頭の5ページが圧巻。
 んで、合宿なのでオナニーが出来ない。こっそり触るくらいなら可能ですけど、かなり激しくやらないと彼女は満足できない、と事前に説明済み。つくづくあのオープニングが良かったですね。本作の良さの土台になってる。
 そして我慢できなったところを先生に見つかり、いざ。性欲が暴走して先生を襲う、とかではなく、ちゃんと “オナニーがしたいんです……!” 。あくまでもオナニーのために彼女は動いていて、その後セックスに至るのもオナニーの延長であり、新たなナイトルーティーンの形成というオチがつくのも最高。
 とにかくオナニーで、セックスも「チンコを使ったオナニー」という言い分だったんですが、ただ指では届かない部分に当たるだけではなく、先生の優しさに触れるのも良かったし、オナニーではないセックスの魅力として丁寧だったと思います。先生がエロを教授するような描写も多いんですが、知らなかったことを知れるのもそうだし、2人のコミュニケーションとしてのセックスという側面が強いのでオナニーではない良さを彼女は知ることになるんですよね。ただ即物的な快楽に溺れるのではない。そこが良かったし、ちゃんとタイトルとも合致するのが良いですね。

『音にのせて#』ミカリン

 続編。というかほとんど後編みたいな感じかな。前作の直後から始まる。前作は前作で一応完結したようにも見えたんですが、完結したんだけど、その直後から続編が始まる。結構不思議な作りですね。それが成立するのも前作がやっぱ特殊な構成でそこが面白かったんですよ。劇中の「現在」ではセックスに至らず、回想の中のセックスと交差するような描写で、「現在」でセックスに移るか? というところでエンド。そして本作がそこからスタートする。元々前後編のつもりで作ったのかもしれませんが、この続き方に魅了されました。
 なので、いきなりセックス……かと思ったら違う。まだ焦らす。そして、クラブ(曲聴く方)の中でプレイが始まっていく。本作は時系列が1本でシンプルな構成なんですが、その分クラブの中での変態プレイという側面が強調されてるのが魅力。当然バレることになるんですが、このバレまでのグラデーションが細かい。最初はバレそうになると、人気曲がかかって危機回避。いよいよバレるんだけど、 “いやバレたら止めちゃうだろ? このまま見とかない?” 。このクズ思考がマジ最高でした。意外な発想なんだけど、ちょっとだけ気持ちが分かってしまうw そして、目があって気づいてないフリも通用しなくなる、というさらなる展開。このバレるまでの細かい過程が秀逸だし、それがあるおかげでヒロインが徐々に堕ちていくドラマとして説得力あったと思います。最後に彼女のチョーカーが切れることで戻ることの出来ない一線を越えた、とするのがオシャレな演出でしたね。

『ジキルとハイド』サバイバル刃

 快楽天への出張掲載も記憶に新しいサバイバル刃先生。そんな快楽天掲載の『初恋プールサイド』、そしてゼロス掲載の『恋は短距離走』のヒロインがそれぞれ本作にチラッと出てくるのが良い。青春路線が頻出したのはそういう狙いだったのか。2人がそれぞれの作品での経験を話し合ってるのがまた魅力的だし、そんな2人に本作のヒロインがどう関わってくるのか、というのが最高。
 んで、本作。先ほどの2作は青春全開でキレイな恋愛ものだったから本作もそうだと思うじゃないですか。ヒロインが早速変態で雲行きは怪しいんですが、まだ分からない……と思ったらハイドくんがとてもハイド的な性格の持ち主なのであった。ジキルとハイドが2人のキャラに分かれてるので、両極端な2人が惹かれ合う……みたいな可能性も考えたんだよなぁw 2人ともそれぞれ二面性を抱えたキャラクターであった、というオチ。『ジキルとハイド』なんてタイトルの時点である程度内容が想像できちゃいそうなもんなんですが、「そういう意味で!?」とちゃんと驚ける。
 クラスで地味なジキルさんは立ち入り禁止区間で露出する変態。好青年のハイドくんは実は暴力性を秘めた変態。2人とも意外な一面を見せるんですが、その結果普段の関係性が逆転するかというとそんなこともない。クラスでカースト低いヒロインは地位が低いままエロに至る。裏の裏は表みたいな意外性がありますね。
 ハイドくんの責めが圧巻でして。個人的には内向的なヒロインに対して “向かう努力もしねぇ 都合よく声掛けられンの待ってるだけ” “そういうのイライラすんだよ!!” が耳が痛くて最高でしたw 私もそういうとこあったかも……。1ページ目にあった「クラスで地味な私にも声を掛けてくれる」というヒロインのトキメキを容赦なく叩きのめすのが意地悪なんだけど、一部の無駄なく最悪なので見てて痛快な気持ちにすらなる。
 からのハイドくんが一瞬優しいフリをするのがまた面白かったです。彼は二面性を自由にコントロールできて、それを武器にしてヒロインを翻弄する。2人とも二面性はあるんですが、制御できるかどうかの部分が運命の分かれ目でしたね。とはいえ、優しいフリがかなり雑なのも事実。言葉でテキトーなこと言ってるだけなんですが、それでも騙されてしまうというか、信じたくなってしまうヒロインの心理がまたこじれてて良かった。結果だけ見ればストックホルム症候群にも近いんですが、 “こんな私でも” という部分が彼女の卑屈さが現れてて面白いですよね。複雑すぎて意味不明にもなりかねない心理なんだけど、ちょっとだけ分かるというか、分かる片鱗は感じる。

『裏垢女子の裏の顔』赤木クロ

 エロ配信してる子が同じクラスの子にバレる。普段と同じ髪留めしたまま配信してるので「迂闊ゥゥ!!」とか思いますが、まぁこれは漫画的な都合もありますねw とはいえ、冒頭の場面はいきなり配信で全裸なので、その後に服着た状態で出てくるとそのギャップに魅了されます。普段はこうなのか……という感動というか、可愛い。
 んで、秘密がバレてそのまま脅され……とはならないw 直前の『ジキルとハイド』がまさに秘密がバレる話だったんですが、そういうエロ漫画の定型を逆手に取るような展開で笑いました。意外性であり、それが同時にエロ配信をやってるヒロインの図太さ、たくましさの表現にもなってるので、キャラクターの魅力も増しますね。 “なんだ…” “いわゆるただの正義マンってやつか” とおっぱい出しながら冷静に状況を整理してるコマは笑いました(おっぱいも自ら出してる)。この状況で精神的優位に立てるってなんでだよw
 逆手に取るどころかマンネリになってた配信に利用する。そのままヒロインが優位のまま最後まで突っ走るんですが、正義マンの真面目くんは翻弄されるだけではなく、彼なりの誠意が彼女に伝わる場面があるのも良かったですね。単にチンコを利用するだけではなく、 “そんなに私の事考えてくれて…” と彼なりの頑張りが報われるのがとても良かった。まぁ、それで好きになるみたいな話ではなく、単に気に入られるだけなんですが、彼だからこそ、という話があるのが大事ですよね。
 そのままエロ配信の助手としての付き合いが始まる、というエピローグも微笑ましかったです。セックス配信ではないのが独特のバランスで良いですよね。たまにはするのかもしれませんがw エロという意味ではおいしいポジションだとも思いますが、ラストの困惑しきった顔が印象的でした。

『白馬の王子様』「タカシ」

 またすごいの来たなw 闇モード全開で個人的にはトラウマ度が最大かもしれない。『母』もかなりキツかったんですが、あれはまだ知能犯的な感じがあったじゃないですか。詰め将棋的なすべてが手の上で踊らされてた絶望感みたいな。一方、本作は真っ正面からの暴力。悪意のある人が絶対的なチカラを持ちして主人公たちを支配する。悪意を煮詰めたような話で絶望感がハンパないw
 ぶっちゃけた話、エロ漫画なので、チカラを悪人がそのチカラを使った強引にセックスする、という話じゃなんですか。シンプルというか、「どうせそういう話」みたいな印象になりかねないと思うんですが、「タカシ」先生の闇作品はちゃんと気の利いた展開というか、「そう来る!?」と予想外な角度からブン殴られるようなアイディアが詰め込まれてるのが良いですよね。デウスエキスマキナじゃないけど、闇オチって下手にやると雑な展開になりかねないので、そういう意味では光作品のが作るの難しいのかなとか思う……思ってた時期もあるんですが、それだけじゃないと気づかされました。
 今回の、目に入る女性は全員犯すみたいな悪役グループが出てきて地獄度高いんですが、そんな本作の中でも白眉なのは「はずれ」の場面ですよね。タイトルがタイトルなので「あれっ これ実は主人公が逆転勝ちするのか……?」と油断させてからの奈落の底へw あの「はずれ」、一応疲れさせるという劇中の意味もあるんですが、やはり読者に宣言する目的も大きいんじゃないですかね。基本的に劇中のキャラクターが酷い目に遭うしかないってのはフィクションの限界なんですが、この「はずれ」は明らかに読者に向けての悪意も感じるw 「期待した?」とあざ笑われてるような感覚になるのであらゆる角度で救いがねぇ……。

『紫嶋さん』こっぽり生ビール

 しじまさん。ゼロス前号掲載の『橙乃さん』の続編。いや、続編というか2つで1つになるような、表裏一体みたいな構成ですね。今号のゼロスは『いつもの係長』の続編のアプローチに感動したんですが、本作もまたすごい。前作はいわゆる『ハングオーバー』的な酩酊して記憶を失った2人の物語だったんですが、本作はその酩酊の現場に居合わせたもう2人の物語。謎が解けるような快感もありつつ、キャラの立った2人の関係性がまた可愛いんだよなぁ。前作のカップルも魅力的でしたが、あちらは最初から性の匂いのする話だった一方、本作は気心の知れた友達が徐々に……というドキドキがすごい。マイペースでちょっと何考えてるか分からないヒロインと、目つきが悪いけど面倒見の良い竿。どっちも可愛いので見ててニヤニヤしてしまいます。前作のカップルがそんな2人に対してツッコミの視点を持つことで関係性の魅力がより引き立ちましたね。これも2作の仕掛けの強みだと思います。単に意外性のある話に驚くのではなく、ちゃんとその2作構成のおかげで2人が、てか4人が魅力的に輝き出す。前作のヒロインはかなりド迫力の胸をしてたんですが、本作は対照的で、性的な主張が少ないというのが友達関係としての彼女のキャラクターを反映してるようで良かったです。エロいんだけど、エロい目で見ていいのか!? みたいな。


 終わり。マジで感想書くのに1ヶ月かかってしまった。実働時間を考えたらそんなに時間かかってるわけじゃないのは明白なんですけどね。ちょっとそのぅ、Netflixで観たい作品も溜まっててついそっちを優先してしまったり。受動的な娯楽に逃げがちなの良くないですね。書き始めれば楽しいんですよ。
forms.gle

 ということで総括代わりにアンケート。面白かった3作品。『曲尺手さんと大縄くん』『寄食するヒステリア』『紫嶋さん』になるかな。聞かれてないけど個人的な優勝としては『寄食するヒステリア』です。すっごい良かった。好き。
 最もエロかったも聞かれるんですが、上記の3作品とは別に選ぶとするなら『夏のおねショタ』ですね。「ショタじゃねぇか」という話なんですが、ショタです。
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