北区の帰宅部の媚薬

エロマンガ(雑誌)の感想を書きます

COMIC快楽天 2020年6月号の感想

COMIC快楽天 2020年 06月号 [雑誌]
COMIC快楽天 2020年 06月号 [雑誌]

 amazonだと「キモチいーこと」が「キモイいーこと」に間違えられてて泣ける。

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chocolat de doux』Hamao

 フルカラー3ページ。続編ですな。新刊の表題作の続編。前作は感動的ながらラストはビターな味わいで、それがタイトルの通りだったんですが、本作は『doux』。思わずググったら「超甘口」と出てきたので爆笑しました。たしかに超甘口!! ページが少ないから細やかなストーリー展開が無理というのもあるんでしょうが、この振り切りっぷりが楽しいですね。ご褒美みたいな後日談。

カサブタ』きい

 前号の表紙イラストの奴。あのイラストの時点で決して明るい表情ではなかったんですが、本作もしっかりそのノリ。男女がふとしたキッカケで一線を越える物語なんですが、そのキッカケが圧倒的にネガティブ。男女2ー2の4人組、主人公が好きな子に告白しようとしてたらその子がもう1人の男と……。冒頭がいきなりセックスしてる場面から始まり、その後背景に飾られてる4人の写真にフォーカスして本編が始まるんですが、このアバンの部分では女性の顔が見えないんですよね。どっちだ、というのが一つのツイストになっているし、そもそも相手の顔を見てセックスしてるのか、相手のことを求めてセックスしてるのか、という心理表現にも思えてくる。からのタイトル『カサブタ』が良いですよね。傷が治りかけで、蓋をしただけの状態。爪の噛み癖もまた傷の話で、主人公の自傷癖……は言い過ぎだけど我慢できずに傷を放置できない、という心理状況を雄弁に物語ってて素晴らしかったです。この時点でもう面白いよなぁ。
 そんな主人公のことを密かに好いているヒロインがいて……となるんですが、この恋心を自転車とすれ違い場面でセリフ以外でスマートに描いたのも秀逸でした。あの目線のやりとりだけで分かってしまうし、あれだけだからこそむしろ心理の説明として説得力ある。
 2人とも恋心はキレイなんだけど、決してキレイとは言えない後押しによってセックスに至る。場所が “一人でしてたこの部屋で” なんですが、この部屋がまた汚くて最高。部屋はその人の脳内の具現化ですね。
 からのセックス。冒頭の場面もそうでしたが、徹底して顔を見ない。ヒロインが顔を隠したり、後ろからやったり。ラストのトイレの場面では彼女の顔が隅に追いやられてる始末。プレイ内容が物語と、キャラクターの心理と合致してるのはエロ漫画の良さですよねぇ。

『おしごとですもの!』えーすけ

 後編。前作は催眠によってとろけてくヒロインの心理が丁寧に描かれててエロかったんですが、後編だと少しずつ男優視点の描写が入ってくるのが印象的でした。超エロくなったヒロインのことを他者としても見る。2つの視点によってヒロインの魅力が倍増してましたね。前後編構成が単に半分で切っただけではなく、それぞれアプローチの違う語り口になってたのも見事。男優の方は監督に確認を取る余裕がかろうじて残ってるんだけど、それは同時に仕事を忘れるスイッチを自ら自覚して入れてるわけでもあるので、催眠によってタガが外れるヒロインとは対照的。
 そんな2人の視点が印象的だったんですが、最後の最後に3つ目の視点が出てきて、それが監督。最後の半ページだけ急に緩いノリの語り口になるのが爆笑であり、監督たちが別の意味で可愛いので最高。大体エロ漫画って竿役の立場に憧れるのが普通だと思うけど(ヒロインでもいい)、ちょっとあの監督もしくはスタッフになってそのまま飲みに行きたい気持ちにもなってしまったw ギャグでもあるんだけど、真に迫った優れたエロ作品を目の当たりにして感動してしまう、というのは今エロ漫画を読んでる我々の立場でもありますよね。監督だから作者の分身と見ることも出来るんでしょうが、あそこは読者の分身でもあるだと思うw

『ななまん』亜美寿真

 オフ会で出会った2人。おねショタというほど幼くはないけど年の差があってそのキャラクター描写が最高ですよね。亜美先生、過去の2作は最初から恋人の2人の話だったので、「行くのか? 行っちゃうのか?」というハラハラが楽しめる本作はまた新鮮でした。ちゃんと年の差のオフ会で事案のことも認識してるのも常識人であり、その理性をぶっ壊してしまうドラマとして良いよね……。エロに発展するには2人ともフランクすぎる関係を築いてしまっていたんだけど、年下の彼が若さ故に異性と意識してしまって、という展開が熱い。 “ありがとう 私で反応してくれて” というセリフが中盤にありましたが、終盤にある本作のメインイベントとも言えるあの展開、あのアイテムをヒロインが仕込んだ心理とも通じますよね。 “あんまり女扱いされなすぎても” “それはそれで” “おもしろくないなと思って……”
 「手ぇ出す」のくだりが最高だったんですが、これ2人とも手を出す話なんですよね。年上ヒロインものなのでお姉さんがリードしてあげる、みたいな一義的な作品になりそうなもんなんですが、そう単純ではない。ヒロインはリードするけど、決して絶対的に優位に立つわけではなく、 “もしかして慣れてる…?” とむしろ焦る場面まであるから面白い。2人の関係性が濃いですよね。双方向でもあり、フェアでもあり、2人の心理が非常に入り組んでる中でのセックスなので迫力ある。
 あの胸のサプライズ展開なんですが、あの展開でも彼が「手を出した」ことがキッカケなのがうまいですよねw

『めざめあい』さくま司

 続いて「胸」が物語のフックになる作品。いいぞー。『ななまん』よりもコンプレックス全開な話になってて良いですよね。この手のジャンルとして正統派というか。
 2人ともコンプレックスを抱えてるデコボコカップルなんですが、この手のコンプレックスものの作品で衝撃だったのが彼氏の方の “俺こそ…自信なくてごめん” 。誤解だと分かった場面なのに謝るのが卑屈でもあるんですが、この誠実さすごい。その発想はなかった、とマジ衝撃のセリフでしたね。からの彼女が “私は はる君の身体も顔も好きだよ?” と相手のコンプレックスを包み込むようなセリフを言うのがまた最高ですね。エロ作品としてのジャンルがキャラクター当人にとってはコンプレックスであるのってまぁ定番だと思うんですが、その心理とその解消がここまで丁寧に描かれたのは珍しい気がします。ホント良かった。
 んで、メインイベントと言えるであろう陥没乳首。ここもまた最高。触れずに勃たせる、というのも素晴らしくて盲点だったんですが、その前に彼氏が “栂崎は…本気で悩んでたんだ…” “なのに俺…” “エロいとしか思ってな…” と反省するくだりが秀逸。陥没乳首エロいじゃん! と言って彼女が喜ぶ、という単純な話ではない。この誠実さにはマジ感動しました。その後、乳首以外への愛撫で乳首がコンニチハすることになるんですが、相手がコンプレックスに感じてる部分をズケズケと土足で踏み入れない、という距離感が素敵。
 コンプレックスの解消、克服の象徴としてエピローグに下着を見せたのも良かった。たしかに実用性重視の下着してて「そこが逆に良い」とかのんきなこと考えてたんですが、胸を見せることが解禁になったからこそ見られることを意識した下着になる、という変化ですね。丁寧。

『おるすばん』恥

 結構前ですがweeklyの方で一度載ってた方。最近は毎号weeklyからの初登場がありますね。あっちが試験運転みたいな場になってる。
 そんな前作が妹で、今回は姉。妹の方はどこまで分かってるのか分からないままやっちゃう話で、そのズルズル感が魅力だったんですが、今回の姉はもっと明白。互いにエロだと認識した状態で始める。この感じが良いんですよね。偶然の事故に背中を押された形ではあるんですが、割とノリノリと誘ってくるし、互いにゴニョゴニョしつつも意思表示がしっかりとある。ここらへん恋人の話とはひと味違う部分ですね。
 姉の方が理性に後ろ髪引かれてる感あって、弟の支配的な感じになるんですが、とはいえ仲の良さがしっかり感じられる。弟は弟で好きなのがダダ漏れな感じありますよね。 “チンポじゃなくてオレのことも?” と確認取るとことか子供っぽくて良かったです。ちゃんと冒頭の件も踏まえてるのが変なとこ意識してて面白い。男のめんどくささですね。そんな弟のワガママを姉が受け入れる、という関係性が素敵。出したあとのやり取りもその良さに溢れてましたよね。

『家庭×教師』mogg

 Lesson4「家族」。いつものように妄想から始まるのが良い。原点回帰のようでもあるし、今回も妹ちゃんにされる話……と思ったらすごい展開になるw まさかの母親参戦で驚きました。ただ、たしかに言われてみればタイトルが気になってたんですよね。兄妹、特に妹にに翻弄される話だったら「家庭」で区切るのは大げさだと思います。そこに母親投入で文句なしに「家庭」と「教師」のかけ算になる。これはやられたなぁ。4人いて4話構成というのもキレイですし、見事なシリーズ展開だったと思います。
 ということで4P。お兄ちゃん大活躍である。最も脇役なんだけどMVPでしょw 女3の4Pなのでどうしても先生中心のプレイになる感じでもないんですが、このバランスが面白かったです。先生が犯されまくる、みたいな話が想像しやすいんですが、そう簡単ではない。近親でやってる3人に比べたら先生はインモラルの度合いで大きく劣るってのもあるんですが、本作のエロで重要になってくるのは先生の心の変化。4Pなので先生の体が中心になることは決して多くはないんですが、徹底して先生の心があの家族の毒に侵食されていく。先生の妄想が第1話だったんですが、彼女の心がこの家庭に染められることで物語が完結する。そしてエピローグでは先生が立派に独り立ちして、というのが最高でしたねw 先生は常に悩みを抱えていてオドオドしてる受け身のヒロイン像だったわけですが、エピローグではしっかり成長した大人の女性として教え子を誘惑する悪魔側の存在になる。あのエピローグの百合マジ最高だったんで「あと1話下さい!!」と叫びたくなりましたw キレイに物語が締まったのは分かるんですけど。

『熱血オトメは止まらない!』外山じごく

 濃い、キャラが濃い。外山作品はいつも濃くて最高だけど、今回特に濃い。常に感情全開なのが可愛いですし、姫宮先輩の硬派だけど女子力もあるとことかホント良い。キャラの魅力で引っ張るラブコメはホント楽しい。そのまま何の疑問もなくセックスに突入するのも楽しいんですが、その前の股越しのショットでパンツ見えてるのもエロ漫画らしくて最高でした。股越しって西部劇とかで緊張感ある場面のイメージあるけどお尻が見えてて可愛いw
 セックス勝負なんですが、なぜか動じないと思ったら過去に経験あると分かる展開も面白かったです。あんなに強い(うまい)のは歴戦の猛者だから、という理屈が通る感じが不思議ですね。無茶苦茶で勢いで突っ走る感じなのに、妙に納得する展開でもある。からの今までは挿入前に勝負がついてたので姫宮先輩の初めて、と挿入の展開でヒロインが喜ぶのも良い。あの状況で喜べるのは本物の乙女ですよね。もっとバトルのギャグ要素マシマシで来るのかと思ったらのラブコメ。このバランス感覚、綱渡り感が最高。勝負に夢中になるのではなく、好きだと伝え、相手にも好きになってもらいたい、という本来の目的を見失わないのが素敵です。
 からの陥没乳首。今号多いですね。いいぞ。完璧な先輩に対してのコンプレックスとして陥没が機能しててあそこで急に弱気になり、先輩の方が逆に乗り気になる、という展開のメリハリ。
 んで、最後に激甘なラストを迎えるのも最高でした。気絶したヒロインに学ランかけてあげてたり、先輩が最後までイケメンなので笑いました。あと、セーラーの上に学ランってなかなか可愛いですね。

『るなてぃっく!』Noise

 大人しい見た目をしてたヒロインが実は。この「実は」を2ページ目で早速あかすので勢いがすごいw 主人公は彼女のどこが好きなのかが分からないまま彼女の正体が明らかになるのでショックを受ける余地がないのが良いですね。てか、主人公の受け入れっぷりが清々しいんだけど、それは同時にただのスケベなだけであって、とエロがどんどん加速していく。彼女の正体を知っても愛せる、という物語の展開がそのままエロの加速に繋がるのがうまいですよね。うまいというか徹頭徹尾「彼はエロい」なんですが。ヒロインの豹変がメインの作品ではあるんですが、主人公も負けないくらいの変人。相手の裏の顔を知って動揺する、という意味ではヒロにの方が大きいですよね。いつの間にか2人のパワーバランスが逆転してしまう。ヒロインがガンガン攻めるタイプにしか思えない開幕なんですが、彼が一切動揺しないのでそのまま彼が優位に立っちゃってるのが面白いです。あんな格好してるのにヒロインが受けに回る、というのが非常に魅力的。

『セーラー服を着せないで』石川シスケ

 彼女がセーラー服フェチ。フェチというか偏愛が過ぎるw エロ漫画でセーラー服っつったら男が好きになるものなはずなのに捻ってくるのが楽しい。セーラー服愛という変態を男ではなくヒロインの方にさせるのが面白いですね。何かに夢中になってる姿は愛おしいものですが、それがセーラー服でも大丈夫か、そしてその対象が自分になっても、という思考実験みたいな味わいすら感じるw
 ギャグベースだからいいけど、彼女がセーラー服を通してしか自分を愛してくれないって下手すりゃ悲劇にすらなると思うんですが、セーラー服を着た途端彼女がいつものノリでハァハァしてくるのが可愛い。この困った状況なんだけど目の前にいる彼女はめっちゃ興奮してるし彼女のことは好きだし……という葛藤が良い。自分がセーラー服着ることには抵抗あるんだけど、興奮した彼女の姿に理性が揺らぐ。
 おっぱいを出す都合上、ヒロインはセーラー服をたくし上げるけど、彼の方はチンコ出せば充分なのでセーラー服をしっかり着たまま、というのも面白いですよね。だからこそ彼女の興奮は維持するわけでw
 からのフィニッシュ。セーラー服に嫉妬したのでキスしたまま。キスしたままイクってイチャイチャ度高いプレイだと思うんですが、本作の場合はある種のすれ違いの果てという意味合い。キスでついに彼女の心が……動かないんかい!! というオチも笑いました。
 からのエピローグ。セーラー服が1つしかないなら大丈夫、と思ったら彼女が着てたセーラー服を着せられて……。「その手があったか」的なオチで笑うんですが、ちょっと彼女が着てたのを着るってそれはそれでエロいのでは……と変な性癖のスイッチが入りそうになりましたw からの腹いせにバックで、というのも彼の意地が感じられて良い。彼は彼で彼女のことが大好きで、だからこそ嫉妬もするしイライラもする、という感じが良い。

『かえってきたアンラッキースケベ先生』馬鈴薯

 学校の教え子の母親(未亡人)がエロい。あの無自覚だけど、男を惑わしちゃう感じ、良いですよね。彼女の方から迂闊にエロ展開に踏み出してくるんですが、それが都合の良さであると同時に「ほっとけない」魅力になってるのも間違いないと思います。「守ってあげなきゃ」という気持ちがオブラートとなった自分の下心をごまかしてくれるというか。後ろめたさをいかにごまかすか、というのはエロの本質だと思います。
 エロエロで危なっかしいんだけど、めちゃくちゃ可愛い一面もあって、というヒロインのキャラクターがとにかく良い。品の良さとエロさ(下品さ)がなぜか同居できてしまってる不思議。彼女の方から誘ってるんだけど実際のプレイとしては彼女は受けなはずなんだけど、積極的でもあり、本当にその場を支配してるのは紛れもなく彼女であって……という一言では表せない良さ。彼女の中に矛盾があるんだけど、彼女に魅了されちゃうと冷静さなんて吹き飛んでしまい、結果ずるずると……という流れが実にファムファタール的。本人がどこまで自覚してるか分からないし、ひょっとしたらすべて無自覚で勝手に周囲の男が狂ってしまう(息子以外)だけなのかもしれない、というバランス。彼女に溺れたら何か悪いことになる確信はあるんだけど溺れてみたい、と思わずにいられない魅力がある。

『ツメタイシグサ』スミヤ

 ナンパ野郎な主人公と職場では冷たい印象のヒロイン、そんな2人がプライベートでは実は……。主人公のナンパっぷりと、ヒロインの毒舌が結構強烈なので「これは脅されてるのか?」とか疑ってしまったんですが、読み進めるにつれ「ただのイチャイチャじゃねぇか!!(歓喜)」となるのが良い。このパッと見じゃ本心が分からないってのは本作の特徴であり、それがそのままヒロインのキャラクターですよね。そしてタイトル。
 ナンパ野郎だと思ったら実は一途に彼女のこと好きなのか? と彼の方にも意外性を感じるんだけど、最終的にはそれを凌駕する勢いで彼女がデレてくるので最高。いや、直接はデレない。そこまで安易なツンデレ作品ではないんだけど、最終ページでは「同じこと言ってるけどこの真意は……」とデレが察せられる、くらいのバランス。これがすごい良かったですね。安易にデレちゃったら下手すりゃ彼女のキャラクターが台無しになったとも言えるので。
 主人公は男なので、内省が描かれるのは彼だけ。ヒロインは最後まで他者として描かれるからこそのあのバランス。逆に言うと、主人公の方はナンパに見えて実は、の部分が言葉として描かれるので彼は彼で魅力的。 “性欲処理に使われてる気がするんだよな” のセリフとか素晴らしかったと思います。好きにエロにふけれて都合のいい相手とは割り切れないところに彼の本心がある。この発想の転換、見事でした。あの立場であそこまで考えられるのがすごいし、それは単に頭が良いだけではないよね……と続いていくのがキャラクターの奥行き。

『潮風に吹かれたので』シャモナベ

 地元の島に帰って姉の娘と。ヒロインの方から主人公に迫って、という鉄板の流れなんですが、綺麗事だけじゃない、甘いだけじゃないバランスなのが絶品。冒頭から地元のことを「牢獄みたいな島」と言うし、そもそも帰ってきた理由も仕事で体を壊したから。島を捨てたのに結局島の世話になる、という肩身の狭さが生々しい。ヒロインからの好意を「やれやれ」的に交わすだけの主人公だとちょっとイラッとする余地ありますが、本作の場合は主人公のお守りとしてヒロインがあてがわれてるに過ぎないのでそこで冷たい態度になるのも分かってしまう。とにかく心の闇の面、人生の汚い部分がしっかりある世界なのが良いですよね。リアル。ただ、そんな闇が前面に出てるわけではなく、あくまで背景として、のぞき込むとと見えるくらいのバランスで描かれてるのが秀逸。ロリ的な作品でここまでエモに突き抜けたドラマを描かれるとは正直予想外でしたので、端的に言うとめちゃくちゃ良かったw
 決して綺麗な話だけじゃない、という意味で最も衝撃だったのは、 “いれた事あるか?” “一回だけ” 。あるのか……。サラッと済まされた会話だけどすごい。どういう事情でそうなったのか、いろいろ考えちゃいますよね。大人への背伸びとして捨てたのか、普通に恋をして事に至ったがおじさんへの気持ちがチラついて別れてしまったのか。あのわずかなセリフだけで読者がこれでもかと振り回されてしまうw
 エロの見せ場としては日焼け跡。読者的には「あら可愛い」でいいと思うんだけど、おそらく本人としてはコンプレックスも多少あるし、何より島の外の人には見せられない、みたいな側面もあると思うんですよね。ある意味で島の呪縛としてあの日焼け跡があるのではないか。そんなことを考えたくなってしまうほど本作はエモい。最高。ラスト、突然昔の光景が差し込まれて終わるんですが、あの頃のヒロインは日焼けしてないんですよね。まっさらな関係だったあの頃……というラストが良い!! オシャレ!!

『好きな人』藍夜

 彼氏一歩手前の幼馴染と結ばれる前に間男が現れる。寝取りの構造の話だと思うんですが、やはり本作最大の仕掛けとしてはタイトル、そしてラストに出てくる “高宮さんと田淵くんがつき合ってるって本当?” “そんな訳じゃん” “私 好きな人いるし” 。初読時、人物の名前を把握してなくて「田淵=間男」として飲み込んでしまったんですが、違和感が残り読み返したら衝撃。本作、男の方に名前が断定される描写がないですね。なので「田淵=幼馴染」という風にも読める。このトリックは見事でした。叙述トリックかよ。本作は男の顔(目)が描かれないタイプの作品なんですが、藍夜先生の過去作からして「男に顔なんていらねぇんだよ」的なスタンスではなく、名前がない存在としての演出の一環ですね。本当にお見事でした。まさかエロ漫画でここまで鮮やかに騙されるとは……。寝取り作品の奥深さを思い知りました。
 快楽堕ちでハッピーエンド、とも取れるラストなんですが、単にそれだけじゃ済まない要素としては、間男がダークサイド一辺倒なキャラクターじゃないですよね。最初から最後まで一途であることをアピールし続けてるので「ひょっとして可愛い奴なのか?」「いやいや……」みたいに印象が揺れるw

『からかいオフライン』肋骨

 オンラインゲームのオフ会。ちょうど今号だと『ななまん』もありましたね。セットで読みたい。あちらは出会いの瞬間の驚きから描かれるんですが、本作の方はある程度オフでの関係性も完成してからのあれこれ。同じ題材でもこうもアプローチが違うのは面白いですね。あと、向こうは実は小さいが作品の転換点ですが、本作は思ってたよりもデカい。どっちも良いw
 本作はとにかく序盤に描かれる2人のダラダラ感が魅力だと思います。ゲームやって特に盛り上がるわけでもなく、そこからエロに発展する際も非常にズルズルと移行していく。この感じめちゃくちゃリアルでした。ゲームや過去のオフ会を通じて親友のように気心は知れてる。そこで一線を越せるのがヒロインのギャル性のおかげなんですが、本来なら関わりのないような2人がたまたまゲームを通じて知り合って、互いに心を許してて……という関係性がすごく良い。学校で童貞くんがギャルに気に入られるみたいな話は人気ジャンルですが、それとも違う良さがある。終始ヒロインが優位に立つんですが、セックス中の会話とか絶品ですよね。からかいだったキスが最後に出てきて2人がようやく結ばれる感じもリアルでした。まぁ、行為中はキスする余裕がなかった、という部分も生々しいw 肋骨先生、過去作的に大味というかギャグ的なノリで突き進む楽しい印象が強かったんですが、本作は静かでゆったりとした、ズルズルダラダラな機微が丁寧ですごく良かったです。名前を覚え間違えたかと錯覚しましたw

『上手なペットのあやし方』飴沢狛

 か、かわいい……!!(吐血) ゆったりとしたオープニングから徐々に「ん? どういうこと?」とファンタジー設定に引き込まれてからの3ページ目、自宅に帰ってヒロインがどーん。はい好きー。可愛いの好きー。
 猫な彼女をペットとして飼ってる。最初「彼女をペット扱いしてるのか?」とかちょっと考えちゃいましたが、違いますね。大違いであった。そこの差は大事ですね。本作すごい独特なのが、可愛さ全振りみたいなキャラクターなのに、意外とプレイはハード。というか道具を多用するので、単なるイチャイチャとはニュアンスが違うんですよね。そんな水と油みたいな話を成立させてるのがファンタジー設定で、ペットみたいな彼女ではなく、彼女みたいなペット。あくまでもペットだから2人は対等な関係ではなく、ただそれが上下で高圧的、支配的なものではなく……という不思議なバランスだけどしっかり成立してるからすごい。人間相手に媚薬入りローションで快楽責めして最終的に彼女がそれに病み付きになる、という話だったらかなりダーティな印象も強まっちゃうと思うんですが、媚薬じゃなくてマタタビだから!! とライトなバランスが成立してしまうから本作は強い。猫ちゃんがマタタビに夢中になる話だと途端に微笑ましいw
 オモチャで一方的に責め立てるんですが、そこでしっかり彼女のアナルが見えるのも大事だったと思います。要するに、シッポがそこから生えてるわけではない。人間だったら裸になってもシッポを生やす方法はそこしかないですよねw

『大切なファンの皆様へ』こめざわ

 こめざわ先生、作風に幅がありすぎて油断ならない。ちょっと前の『なりきりプレイ』ではダークな雰囲気で始まったと思ったら実はカップルのじゃれ合いで、と印象が反転する明るい作品だったんですが、本作はもうのっけから暗い、重い、救いがないw AVが題材なんですが、ちょうど今号だと『おしごとですもの!』もあったじゃないですか。ギャグっぽく雑な催眠描写だったあちらとは全くの逆。こうも違う作品になるもんかね、と衝撃でした。
 アイドルでパッとしなかった子がスキャンダルによって失墜、そのままAVデビュー。最初からどん底すぎるんですが、とにかくヒロインの心情を丁寧に描き続ける。AVを題材にしたエロ漫画って下手すると「AVでいいじゃん」になりかねないと思うんですが、この徹底した心情描写はエロ漫画の強みですよね。AVとしての演技も多少はしてるんでしょうが、それよりもアイドル時代の気持ちを捨て切れてない彼女の内面がメイン。
 また、単に快楽堕ちみたいな話でもないのが面白い。気持ちよさに溺れる部分もありますが、それよりも彼女が心揺れるのは「売れる」「人気」などの言葉なんですよね。そしてラストで念願の「1位」をゲットする、というオチなんですが、喜んでいいのか分からないw 完全に割り切ってAVで頑張るみたいな話だったらもっと明るいけど、最後の場面でもアイドル時代の名前を言い掛ける描写があるんですよね。言い掛ける文字数が徐々に減ってきてるのがまた面白い演出だったんですが、割り切ったようで彼女はまだちょっと引きずってる。その後に1位になれたと気づくんですが、その際の乾いた笑いがまたこちらの心をエグってくるw

『Dr.小原の鬱憤』ふらつ

 クールを通り越して感じ悪い女医と看護師の主人公は実は付き合っていて、休憩室でそのまま。イライラを発散するように主人公にぶつけてくるんですが、単に性格が悪いというよりは仕事の疲れやストレスに由来してるんだろうな、と察せられるバランスがすごい良かったです。医者と看護士という立場がそのまま恋人関係の上下になるんですが、単なるSM的な関係と言い切るのは早計で、徐々にヒロインの本音が漏れてくる終盤が最高でしたね。SとMで相性が良いのではなく、2人は愛し合った上で良好な関係、というのがハッキリと分かる。彼氏によって癒される様が可愛いし、口が悪いんだけどそれが彼氏の愛によって浄化されてく過程が良かったです。単なるデレとは違う、2人の関係性故の深みがありました。SMが逆転する下克上ではなく、彼氏の方が愛で彼女を包み込む。
 院内で2人が付き合ってるのはバレてるらしいのは事前に描かれてたんですが、それどころか休憩室でのことも実は……というオチも笑いました。ただ、あのナースさん、そもそも主人公に “休憩行って大丈夫だよ” と言っていたので、最初からこうなることも分かってた可能性もあるんじゃないですかね。ヒロインが疲れて不機嫌モード入ってたので、それを癒せるのは彼しかいない、とあてがったのではないか。理解のある人もいる、と分かるのが救いだったように思います。

『ガイド・イン・ラブ』アシオミマサト

 バスガイドさん。単にガイドさんの衣装可愛いよねだけでは終わらず、修学旅行中の浮かれ気分、男子生徒の中の悪ノリ、それらを通じて見たガイドさんになってるのが素晴らしい。もちろん衣装も可愛いんだけど、あの状況、関係性込みの魅力もありますよね。また本作、意外なほどに男友達とのドラマも濃いので面白い。実はバレてたオチは直前の『Dr.小原の鬱憤』とも通じるんですが、理解のある奴と、ただバカな奴、という2種類描かれることで彼らの、そして主人公キャラクターがより立体的に浮かび上がってくる。それがあるからこそガイドさんとの秘密の関係、というのがより魅力的に見えてくるわけですね。
 バカな学生の暴走によって告白に至るんですが、告白からエロに発展するのはヒロイン側の暴走。あのショタ狂い的な愛情表現に「あっ やばいかも……」と一瞬ひるむけど、やっぱ可愛いしエロいので最高、という心理の機微が良い。告白した手前断れないんだけど、そもそも告白は罰ゲームなので2人の愛情表現に温度差がある。
 あとはやっぱりガイドさんがガイドさんとしての魅力を終始振りまいてたのも大事だと思います。野外でのセックスなので服は脱ぎきらないし、帽子が常に映り込むのも良い。個人的にはラスト、エピローグでヒロインがバスガイドとして、ガイドさんの持つアイドル性みたいなのをちょっと強めに打ち出してきてるのがすげぇ可愛くて最高でした。あそこで彼女がウキウキしてるのはガイドとしての演技ではなく、本音だから。冒頭の場面との変化が良いですよね。

『青春リビドー山』位置原光Z

 第18回「拉致三昧」。微妙にかみ合わない女子3人のガールズトークが実は男子生徒拉致後のものだった、という冒頭のインパクトがすごい。それからどう責めるかの話になり、エロい雰囲気にもなるんだけど、そのやりとりが要領を得ない、それでいてテンポが良いので、エロいのか怖いのかおかしいのかよく分からない不思議な味わい(おかしい)。
 ラストの2ページでいよいよエロが開始。例によって直接の描写はないんですが、「これ普通にエロいよね?」という感じで最高。最初から一貫した女子たちの駄話ってのが彼女たちの絶対に揺るがない優位性になってて、これはM歓喜
 最高に盛り上がってからの、突然の終了で笑う。そもそも冒頭の拉致もそうなんだけど、どういう世界観なんだよw エロが始まってからは顔が描かれなかった彼が最後に消化不良みたいなリアクションをしてるのが最高でしたね。続けてほしいのは読者も同じw


 終わり。ものすごく遅くなってしまいました。もうあと1週間もしないで快楽天次号が出るという。
 来月こそは快楽天以外に何か1つ感想書ければいいなと思っております。先月も言ってた気がするけどw
forms.gle

 総括がてらアンケート。面白かった3つとしては『潮風に吹かれたので』『好きな人』『上手なペットのあやし方』になるかな。ちょっと掲載位置が固まりすぎててちゃんと選べてるか不安なんですが、たぶん良かった上位3つで間違いないと思う。

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